日本最北のクラフトビール工場、北海道美深町(びふかちょう)にある美深白樺ブルワリー。代表取締役の高橋克尚さんは、旅行で美深を訪れたときの偶然の出会いをきっかけに、東京から美深に移住してクラフトビール事業を立ち上げることを決めました。
都市部とはまったく異なる環境の美深という町でクラフトビール作りに向き合う高橋さんの想い、そのなかでfreeeのサービスがどのように事業の支えになっているかを伺いました。
この町に貢献したいという想いに共感、美深での偶然の出会い
――高橋さんが美深でクラフトビール作りを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
高橋さん(以下、高橋): 6年前、旅行ではじめて美深に来たときの出会いがきっかけです。
僕は東京生まれ東京育ちで、もともとは都内のIT企業に勤めていて、そのころから地方で仕事をしたい気持ちがありました。その会社はITで地方を盛り上げようというビジョンの会社だったのですが、当時の僕の担当は社内情報システムというどちらかというと社内向けの業務で、なかなか地方に関わる機会はありませんでした。
そんなときに友人に誘われて、美深に来たんです。美深にはじめて来たとき、自然がとても豊かで、町の中心には天塩川という大きな川が流れており、とても良い自然環境が残っている町だとすぐに分かりました。
そこで偶然出会ったのが、美深白樺ブルワリーのオーナーである、柳生佳樹(やぎゅう よしき)さんです。 柳生さんは、美深で農園の運営や白樺樹液の生産、北海道産ラム肉の生産などさまざまなことを手がけています。柳生さんが営むペンションに宿泊したときに、柳生さんがお酒を飲みながら美深のことをたくさん教えてくれました。
冬は厳しく雪が多いこと、人がどんどん減っていること。だけどとても魅力のある町で、その可能性が埋もれていること。町の魅力を掘り起こすために、柳生さんはさまざまな事業を手がけているということ。
そのときに、クラフトビール事業を立ち上げを考えていることを聞き、自分も協力したいと感じました。新たな事業で人を集めて町に貢献したいという柳生さんの話に、とても共感した記憶があります。
そこから美深に移住してきて、4年前に会社を立ち上げ、今に至ります。
厳しい冬を乗り越え、ゼロからビール作りを学び、やっと手応えが見えてきた
――東京からの移住は、環境も大きく異なり、大変なことも多かったのではないでしょうか。
高橋: 最初は大変でした。生活面で一番大変だったのは冬の寒さと雪です。-27℃の寒さを経験したこともあります。
実は、美深に移住してくる人は多いのですが、冬の厳しさに負けて諦めて帰る人も少なくないそうです。だから、地元の人は移住者に対して「どうせ帰っ ちゃうのかな」という気持ちがあり、最初は少し距離があったように感じました。でも、一年間がんばったらその距離は埋まったように思います。近所のおばちゃんから「よくがんばったね。この冬を越したならもう大丈夫だね」と言われて、あたたかみを感じました。
だから、もちろん周りの人の助けもありますが、まずは自分でがんばってみることが大切で、そうしないと残っていけない厳しさもあるのが現実です。
僕の場合、東京でまあまあ盛大に送り出してもらって美深に来たので、帰るに帰れない、帰るのは悔しいという気持ちもありました。また、それまで働いてきた経験から、難しい問題を解決することへの自信があったことも大きかったです。とにかく事業を立ち上げようと。
今ではビール事業を立ち上げたことをとても感謝してくれて、いろいろな人が宣伝してくれますし、優しい、嬉しいサポートを頂いています。
――ビール作りはどうやって学んだのでしょうか?
高橋: 最初は自分が作る計画ではなく、醸造担当のドイツ人の方を採用していました。ところがその方が辞めてしまったので、自分が作る方向に方針転換しました。
まず、ビール作りを教えてもらうために、札幌のクラフトビール醸造家の方と1年間契約しました。その方に美深まで頻繁に来てもらい、とにかくビ ールを作ってみて、ゼロから学んでいきました。
最初はなにもわからず、作業間違いもたくさんしました。1日がかりで仕込んだ300リットルのビールを、ちょっとした手違いで駄目にして、すべて捨てたこともあります。悔しくて悲しくて、絶対次は同じ間違いをしないと強く思ったことを覚えています。
僕たちのビールは手作りで、気候や材料など要素の変化の影響を大きく受けます。作りはじめたら修正も難しいので、この材料とレシピでこう調合したらこういう味になるだろうと、想像するしかない。レシピや材料は無限大なのでゴールはありません。つねに新しくておいしいビールを探しながら作りつづけることをしないといけない、でも、それがおもしろさでもあります。 笑
少人数で運営するなかで、できることは自分でやるように。はじめての請求書は手渡しだった
――現在、どのような体制で事業を行っていますか?
高橋: ビール作りに関しては、僕ともう1名のスタッフの実質2名体制です。現在は製造業務全体をそのスタッフに任せています。ビール作りはとても繊細なもので、工場も広くはないので、1人で回せる業務に抑えて1人に任せたほうが良いという判断です。
僕が製造に関わるのは2割ほどで、あとは営業や出荷、配達、経理や申告など製造以外のすべての業務を担当しています。前職でPC業務には慣れているので、できることは自分でやるようにしています。
――請求書発行はどのように行われていますか?
高橋: 電話・ファックス・メールなどでご注文をいただいたら納品書・請求書を同時に発行して、印刷したものを商品と同封して送っています。個人向けの通販も行っていますが、現時点ではお店などに卸すほうがメインです。
また、ビールの販売の一部ではAirレジ、通販ではBASEを使っているのですが、それらと連携してデータがタイムリーに読み込まれるのはとても便利です。こういった機能をどんどん利用できると良いなと思います。
――はじめて請求書を発行したときのことを教えてください。
高橋: はじめての請求書はfreeeで発行して、手渡ししたのを覚えています。
最初に頂いた注文は、4年前にはじめてビールを作ったとき、完成直後にビアフェスを計画したことがきっかけです。そのときのビアフェスに来てくれていた、ビール醸造を教わった先生とつながりのある札幌のお店が、はじめての請求書発行の相手です。
ビールができてすぐ8樽の注文を頂き、車にビールを乗せて自分で持っていき、請求書を手渡ししました。請求書の作成自体はfreeeで簡単にできたのですが、本当に請求書を渡すとなると感慨深く、震えながら渡したのを覚えています。
地方で事業を行っているからこそ、freeeのような新しいツールを使うべき
――freeeのサービスを利用するきっかけは何でしたか?
高橋: 前職で会計システムの支援に関わっていたこともあり、そのころからfreeeの存在は知っていました。クラウド型の会計システムをいち早く、中小規模の企業向けに使いやすい価格で提供していること、会計知識がない人でも簡単に使えることなど、扱ったらおもしろいのだろうなというのが第一印象です。
会社を立ち上げて、一番やらなきゃいけないけれど弱い部分が経理会計でした。事業を進めるにあたり、不得意な部分は他に任せて得意な部分を伸ばすという考え方だったので、それができるシステムを使ってみようと、freeeにたどりつきました。
最初に、会社設立時にfreee会社設立を使いました。手続きが非常に簡単で、自分でできる部分は自分で行うことができたので、すべて行政書士に頼むよりもコストを抑えることができました。次にfreee会計、freee請求書も使いはじめました。
――freeeのサービスを実際に使ってみていかがでしたか?