先代から引き継いだ会社の業務改革をするためにfreeeを導入 経営状況がデータで見える化され、業務も大幅に効率化

株式会社エーステック 代表取締役 加納 理子さん

課題
複数人・複数拠点で経理データを共有初心者でも経理や労務を簡単に

株式会社エーステックは、兵庫県神戸市に本社を置き、近畿圏を中心にエレベーターの設計・製造・施工・メンテナンスなどのサービスを展開する企業です。


同社では、代表取締役の加納理子さんが現会長であるお父様から事業承継した後、経営管理を立て直すにあたってfreeeを導入しました。


導入のきっかけや運用状況、社員を巻き込みながら業務改善を進める難しさ、今後の展望などについて、加納さんに話を聞きました。


後継者として経営を引き継ぎ、業務改善のためにfreeeを導入

――まずは、御社の事業概要や加納さんの役割などをお聞かせください。

加納 理子 さん(以下、加納): 当社は、近畿圏でエレベーターをはじめとする昇降機の設計、施工、製造、メンテナンスをしている企業です。父が創業した際は祖父母の電器店を間借りする形で事務所を構え、エレベーター販売の仲介から少しずつ事業を拡げて今に至ります。


私は事業承継者で、現会長の父から経営を引き継ぐために当社に入社し、丸3年が経ったところです。アパレル業界でビジネス経験を20年ほど積み、自分への自信をもつことができていたので、経営を担う決断ができたのだと思います。


ところが、後継者として突然入社した私を社員がはじめから歓迎するはずもなく、最初は話を聞いてもらえないことも少なくありませんでした。


この時期はとても辛い思いをしましたが、技術者にも自分から話しかけて関係性を築いてきました。当社は前職とまったくの異業種ですが、ずっと接客をしていたこともあり、初対面の人と対話することには抵抗感がありませんでした。


エーステック


――freeeを導入いただくきっかけは何でしたか。

加納: 入社した際、業務全体を見渡すと、現場とバックオフィスの連携が十分でなく、個別に動いている状態でした。それゆえに、複数の部門で同じような業務をしている無駄もあったと思います。バックオフィス業務自体も、紙媒体や計算ソフトなどを使って手作業で情報管理している状況で、決して効率的とはいえませんでした。


どの部門も忙しいことが常態化していたものの、バックオフィス業務の知見がなく、何から改善すればいいのかがわからない状況でした。そのため、まずはシステムを使って業務を可視化したいと考えたのが、導入のきっかけです。


普段の業務で何回も同じ入力をしている気がして、それを1回で済ませられるサービスはないものかと思い、会社に出入りしている業者に聞きましたが、そんなものはないと言われました。そこで、インターネットで調べたところ、freeeを知って問い合わせました。


1回やったことをもう1度やりたくない、という私の思いが実現されており、freee会計、freee販売、freee経費精算、freee勤怠管理といった複数のシステムを導入することにしました。ロゴのつばめがかわいかったというのも、一つの決め手です。


――こうした課題は、先代の時代から抱えていたのでしょうか。

加納: これまでは、そもそも経営課題が明確になっていなかったように思います。
父と私の間にもう1人社長がいましたが、急逝してしまったため、社長が不在の時期が3年間ありました。


この期間は、これまで設置してきた昇降機のメンテナンスによる売り上げが見込めたことと、社員の努力によって会社が持ちこたえていたんです。


こうした事情があったので、私が事業継承してからは、父から教わりつつも、自分自身で判断して経営していくしかない、と腹を括りました。


――代表取締役に就任されてから、どのようなことから着手しましたか。

加納: 社員数が20名ほどの小規模な会社ですから、私が掲げる方針に賛同してくれるメンバーが多くそろわないと結果が出ないと思い、考えが異なる社員は残念ながら退職してもらいました。


その後、過去に活躍していた元社員に声をかけるなどしながら、新たに人材を採用しました。私が自ら何度も会いにいき、「力を貸してほしい」と伝えたこともありましたね。こうして、仲間を少しずつ増やしていった形です。


昔からデジタルが苦手な父が、今ではデータ入力をしてくれるように

――freee導入後、どのように活用していますか。


加納: 今はまだ、運用を軌道に乗せようとしている段階です。当社は37年の歴史があり、業務フローもアナログながら現場に根付いているので、じっくり時間をかけながらfreeeを浸透させていきたいと考えています。


そのなかで最も浸透が進んでいるのは、freee勤怠管理です。社員全員にスマートフォンを貸与し、アプリ上で勤怠管理してもらっています。当社は直行直帰をする社員が多いので、訪問先にいても勤怠登録ができるようになりました。


これまで勤怠情報の提出は紙媒体で行っていたため、勤怠登録のために外出先からオフィスへ戻る必要がありましたし、総務のメンバーも手作業で社員一人ひとりの勤怠管理をしている状況でした。freeeによってこうした手間がなくなり、残業時間も大きく減らせました。


freee経費精算も便利ですね。freeeカードを利用すれば、リアルタイムでカード利用のデータが反映されるので、登録作業が要りませんし、データで発行された領収書もアップロードすれば作業完了です。紙媒体のレシートも写真を撮ってデータ化できるので、これまでの経費精算フローとは大きな違いを感じています。


――freee導入による社内の変化はありましたか。

加納: デジタルは決して得意とはいえない高齢の会長が、freee販売を使ってデータ入力をしてくれています。


実はこれまで、父の仕事をデータで精緻に把握できていなかったのです。私としては、会長が担っているトップ営業の仕事を可視化して理解したいと思い、freeeを使うメリットや、当社の経営が順調であることをデータで社員に示したいと伝えたところ、手を動かしてくれるようになり、今も入力作業を行ってくれています。


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――その他、業務効率化などの効果は感じていますか。

加納: 社内の資料共有に、freee販売が役立っています。


これまで、営業や設備関連の資料は社内のサーバーに入っていたり特定の個人が保管していたりして、整理して管理できていませんでしたが、freee販売にすべて格納するよう徹底しました。


この改善によって資料を探しやすくなりましたし、神戸や大阪、京都の拠点間での資料共有もスムーズになりました。父もfreee販売を迷わず操作できるようになり、必要な資料を必要なときに探し出せて喜んでいます。


今は既存の資料をとりあえず格納している段階ですが、今後は資料名のルール作りなども進めたいと考えています。


社内に仲間を一人でも増やしていくことで、経営改革が実現される

――今後の展望をお聞かせください。


加納: 今は移行の最中なので、現場のメンバーに一時的に負担をかけてしまっていますが、まずはfreeeを用いた運用を軌道に乗せることを目指したいです。この運用が社内に浸透すれば、業務がかなり効率化できると期待しています。


業務を効率化するためには、既存業務にシステムを当てはめるのではなく、システムに合わせて業務フローを変えていく意識が大切だと考えています。ただ、あらゆる業務をいきなり180度変えると混乱が生じたり、気持ちの面で抵抗があったりすると思うので、社内にfreeeが浸透するまでじっくりと粘り強く進めていくことが必要ですね。


そして、freeeはクラウドシステムなので、当社が利用し始めた短期間でも機能が追加されていることを感じますし、ユーザーである私たちの意見も聞いていただけるので、一緒に成長している感覚があり、愛着が湧いてきています。


――最後に、御社のように事業継承があり、経営や業務フローを見直している会社へアドバイスがあればお願いします。

加納: 改革を進めるためには、自分と同じ思いをもつ仲間を社内でつくることがまず大切です。たとえ社長でも一人では何もできませんし、社内に味方がいないと、どのような施策もやりにくいと思います。


ポジションパワーを使ってワンマンで進めることはできるかもしれませんが、施策を行う理由を社員が理解し、納得してもらえなければ、気持ちよく動いてもらえません。


社員全員が同じ方向を向くことは難しいものですが、業務を改善して仕事を効率化している同僚を目の当たりにして「自分もやってみよう」と思う社員が少しずつ現れることを期待しています。こうして一歩一歩、仲間を増やしていくことで、会社全体が変わっていくのだと思います。


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(執筆:御代貴子 撮影:三好沙季 編集:ノオト)


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