日本古来より伝わる伝統技術“土壁”を用いた左官工事業をはじめ、社寺仏閣の修繕の工事業、住宅のエクステリアの工事業などを行う「蒼築舎」。従業員数4名の小さな会社ながら、ユニクロのミラノ旗艦店の出店にも関わるなど、世界を股にかけ精力的に事業展開されています。
2024年で創業40年を迎え、来年には息子の一真さんへの事業承継を予定している創業者で現代表の松木憲司さんにお話を伺いました。
今年で創業40周年。父・憲司さんが土壁の伝統を大切に守ってきた会社は、息子・一真さんが来年承継予定
――事業内容と現在までの流れを教えていただけますか?
松木憲司さん(以下、松木): 主な事業としては左官工事業、社寺仏閣の修繕の工事業、家まわりのエクステリアの工事業の3本立てですね。
私は地元の四日市市の左官業者で16歳から5年間修行しまして、21歳のときに独立しました。事業を起こして今年(2024年)でちょうど40周年なので、41年目の来年から息子に代わってもらおうかと思っています。専務の仕事もがんばっているし、節目がいいかなと思いまして。
――キリのいいタイミングなんですね。もともと息子さんから継ぎたいというお話はあったんですか?
松木: もともと息子は私の事業を受け継ぐつもりはなかったと思います。ただ、工業高校の建築科を受験させたのも親の私でしたし、近くに居てくれたらという想いはありました。
高校卒業後の進路を 決めるときには、私の方から「蒼築舎に入って仕事を覚える」「私の知っている親方のところで修行する」「職業訓練校へ行って仕事を覚える」と3つの道を息子に伝えたんです。結果的に3つ目を選んで新潟の職業訓練校に入学しました。
――息子さんは職業訓練校を卒業した後、どこかで修行されたんですか?
松木:
職業訓練校の現場訓練で縁のあった新潟県の十日町の会社に5年ほど勤めていました。
ただ、息子が就職した会社は冬場は雪で仕事ができないのでお休みになるんです。親方に相談して、冬の休みの間はうちの手伝いに何度か帰ってきていました。
――新潟は豪雪地帯ですもんね。
松木: そう。それでうちで仕事をした後に新潟に戻って文化財修復の仕事をしているときに、やり方に疑問が湧いてきたようです。
土壁や漆喰の伝統的な仕事ができる人が本当に少なくなってきているので、文化財修復も少し現代的な技能も入れながら行うことが多いんです。でも息子としてはうちでやっているような伝統的な技法でやりたいと思ったようで。それでうちに戻ることを決めたようです。
衰退事業だからこそ、新しいつながりをつくっていくことが必要。父の技術力と息子の発信力で、よい流れが生まれ始めて いる
――息子さんが会社に入られてから、どんな変化がありましたか?
松木: 伝統的な仕事は減ってきているんですが、息子が専務として担当している新しい分野で穴埋めはできていますね。現代に合った土壁の在り方を建築家の方と実現できるようになってきています。
――息子さんも経営のことをしっかり考えて動いてらっしゃるんですね。
松木: 衰退事業なのでそういうことが必要なんです。材料を作ってくれる生産者さんでも、仕事がないとか後継者を育成できないとかでみんな廃業していっています。材料の調達先が限定されて、難しい時代が来ています。
その中でしがみつきすぎていてもダメで、「土壁っていいでしょ」とうまくアナウンスしていく必要があります。それで専務である息子がYouTubeやSNSでの発信を始めたんです。結果それがいい人たちとの出会いにつながって、私も息子もいい現場をやれています。
コロナ渦の在宅ワークを機にfreee会計を導入。経理にかかる時間や手間は約1/2に!
――freee会計を導入いただいたのは2年前くらいかと思いますが、きっかけは何でしたか?
松木: 当時はパンデミックで事務員も在宅での仕事が増えたこととインボイス対応もあり会計ソフトの導入を検討していた時に、freeeからのDMがタイミングよく届いて問い合わせて導入に至りました。IT導入補助金が使えたのも大きかったですね。
事務担当・澤田さん(以下、澤田): 以前使用していた会計ソフトは、1台のパソコンでしか入力など経理処理ができないものだったため共有がしにくく不便に感じておりました。
――導入後はどう変わりましたか?
澤田:
領収書は、スマホで撮ってfreeeに送るだけで保管できるようになりました。
銀行口座やクレジットカードが連動しているのもすごく楽ですね。クレジットの明細もすぐ確認できますし、登録時に写真データを貼り付けられるのもとてもありがたいですね。入力作業はだいぶ楽になりました。
あとは、子供が風邪で熱を出した時など、在宅ワークでも会計入力ができるので助かっています。
――お 役に立てているようでよかったです。作業時間は減りましたか?
澤田: 経理にかかる時間は1/2ぐらいに減りました。
――そうなんですね。社長として社員さんの働き方などの変化は感じていますか?
松木: 経理にかける時間は確実に減っていますし、経理以外の仕事も確実にスピードが上がっています。みんながマルチタスクで動いているので、ちょっとでも手が空くと他の業務に回せて助かりますね。
事業継承したいなら、苦労を語るよりも仕事に憧れを持ってもらうことが大切。経営者に夢がなければ誰もついてこない
――今後、事業承継を考えている方にアドバイスはありますか??
松木: 社長さんや代表さんの「あきらめない」という気持ちひとつだと思います。経営者に夢がなければ誰もついてきません。本当に事業継承したいなら、この仕事は大変だから…とかそういう苦労話を聞かせるよりも、自分がどういう立場にいたら憧れてもらえるのか、若い人たちが「いいな」と感じてくれるのか、そういうことを考えるのも大切だと思います。
(インタビュー取材:塚崎恭佳 執筆:鈴木康代)
Company Profile
蒼築舎株式会社
〒510-0031
三重県四日市市浜一色町16−35
URL:https://www.tutikabe.net/
事業内容
建築及び左官仕上げによる内外装仕上げの設計/施工/管理