フリーランス法を遵守し、業務委託先が安心して仕事に取り組める環境を実現。請求作業の煩雑さも解消され、差し戻しは90%削減

PXC株式会社 AMAIZIN事業グループ プロダクションマネジメントユニット ユニットリーダー 大邉 勇介 氏

課題
下請法、フリーランス保護法対応請求・支払の入力や管理をラクにミスなく

セールスプロモーション領域のプロフェッショナルとして、さまざまな企業をサポートしてきたPXC株式会社。同社は2024年1月、株式会社RaikumiとのM&Aにより、フリーランス委託を本格化するも、その取引において「フリーランス法などの法令に対応できていない」「発注や案件管理に関する仕組みが整っておらず、請求作業も非効率」という課題に直面していました。

そこで同年、同社はfreee業務委託管理を導入を決断。これらの問題を解決し、フリーランス法の遵守や、請求作業の効率化を実現しています。

今回は、AMAIZIN事業グループ プロダクションマネジメントユニット ユニットリーダー 大邉勇介氏に、freee業務委託管理を導入する前の課題と導入後の効果についてお話を伺います。

法対応ができておらず、発注から案件管理、請求管理も煩雑な状態に頭を悩ませていた

―― まず始めに、事業内容を教えてください。

大邉勇介さん(以下、大邉): 私が所属するAMAIZIN事業グループは、フリーランスの方の協力を得ながら、企業様のデジタルマーケティング全般の支援をしています。もともとは株式会社Raikumiという別会社で、フリーランスのWebライター向けサロン運営とコンテンツ制作事業をしていましたが、2024年にM&AでPXC株式会社に合流しました。


―― フリーランスへの委託において、どのような悩みがあったのでしょうか?

大邉: PXCへ合流後、PMI(統合プロセス)の過程でフリーランスへの委託や管理方法の違いが浮き彫りになりました。


Raikumiは元々「ライターのオンラインサロン」としてスタートしたため、仕事を委託する運営側と委託先のサロンメンバーとの距離が非常に近く、良くも悪くも仕事の依頼や契約にフランクなところがありました。これに対して、PXCは依頼や契約のワークフローが厳密に整備されていたため、PMIにあわせてRaikumi形式の委託手法を見直す必要が生じたのです。


―― 具体的にはどのような課題があったのでしょうか?

大邉: 1つ目の課題は、フリーランス法などの法令に対応できていなかった点です。お話したとおり、おもな発注先はサロンメンバーであり、委託する側との信頼関係が構築されていることから、仕事の条件提示が大まかな内容になりがちでした。


とくに課題に感じていたのは、証憑で条件を明確に提示せず「チャットや口頭で連絡しただけ」で業務が始まるケースがあったことです。なかには納期や報酬があいまいなまま作業が開始され、後から条件の調整をおこなうケースもありました。


万が一、条件調整のやりとりが抜け落ちることがあれば、支払い漏れから、いわゆる「下請法の60日ルール」に反する可能性がありますよね。それに、条件そのものについても「言った言わない問題」に発展する恐れがありますから、リスキーな状況だったと思います。


―― 確かに、フリーランス法対応を考えると不安ですね。ほかにどのような課題がありましたか?

大邉: 2つ目の課題は、請求作業が非効率だった点ですね。


当時は証憑管理が徹底できていなかったため、条件の確認作業に非常に手間がかかっていました。月末になると案件依頼時のチャットでフリーランス一人ひとりの条件を確認し、請求に関して個別の確認が必須だったのです。


毎月100件近くのチャットルームを確認しなければならない上に、チャットルームの命名規則もなかったため、確認作業だけでも大きな労力がかかっていました。契約のやりとりをしたチャットがどこにあるかわからなくなることも多々あり、情報収集だけで毎月1週間ほどかかっていたと思います。


提出してもらった請求書も、書式がフリーランスの方によって異なるため、チェックに時間を要していました。特にフリーランスの方が独自に表計算ソフトで作った請求書の場合、関数が違う・体裁が崩れているなどが原因で、約3〜4割の請求書が差し戻しになっていたのです。この対応だけでも追加で2〜3日かかっていたと思います。


その後の発注内容や金額の正誤チェックも、非常に煩雑でしたね。証憑がない案件については、請求内容が正しいのか判断できず、フリーランスの方に確認せざるを得ない状態が続いていたんです。


―― 請求書にまつわる作業に、かなり多くの時間を費やしていたんですね。

大邉: おっしゃるとおりです。結果的に、経理作業の締切を1週間ほどオーバーすることが常態化してしまい、効率化対策を打たないとスケジュールが守れない状態に陥っていました。加えて、M&A後、急速に事業拡大がはじまったこともあります。フリーランスの方への依頼増加も明白でしたから、新たな管理体制の構築が必要と感じていました。


フリーランス法に対応した請求書を簡単に作成できるfreee業務委託管理の導入を決めた

PXC


―― 効率化を目指し、どのような対策を始めたのでしょうか?


大邉: 最初は内製でのシステム化を検討し、表計算ソフトで「いつ・誰に・何を・いくらで依頼したか」を管理するところから始めました。


確かにチャットと比べて依頼のログが管理しやすく、一定の効果はありました。しかし、PXCとフリーランスの双方で、管理シートの更新の漏れや入力ミスが頻発するなど、課題の解決には至らず。加えて、証憑管理も徹底とはならなかったため、内製の簡単なシステムでは法対応は難しいと判断しました。


そこで、業務委託管理システムの導入を検討することにしました。5社ほどの資料を取り寄せ、価格・強み・機能などの項目で「勝敗表」を作成した結果、選んだのがfreee業務委託管理です。


―― freee業務委託管理の決め手を教えていただけますか?

大邉: 決め手は3つほどあります。1つ目は、フリーランス法対応に必要な機能が充実していた点です。


freee業務委託管理は、金額や納期などを入力するだけでフリーランス法に対応した発注書が生成され、しかもそれをPDFで共有したりメールで送付したりできるので、非常に便利です。またタスクの進行前にフリーランスの承諾をはさむステップもあるので、注文内容に合意いただけた記録を明確に残せる点も安心でした。


2つ目は、操作性が直感的でわかりやすかった点です。


契約前に自社の環境に合わせたデモを実施してもらったのですが、操作のわかりやすさに驚かされました。マニュアルを見なくても進められるほど明快でやさしい設計になっているため「フリーランスの皆さんも、初めてでも迷うことなく操作ができる」と確信が持てました。


3つ目の決め手は、拡張性が高かった点です。


freee業務委託管理は、freeeの姉妹ツールとも連携ができます。freee販売・freee会計とあわせて導入すれば、収支管理をまとめて効率化できると考えました。


M&A後、我々の部署は部門経理的に収支管理をしているため、本部の経理会計との連携も効率化しなければなりません。この過程において、ほかのfreeeプロダクトとも連携しつつ作業を進めたら、本部の経理への報告がスムーズに進められそうだという期待がありました。


なお、freee業務委託管理の進化が早く、商談をしている間に、みるみる利便性が向上していく点にも魅力を感じましたね。商談における営業担当者の熱意も、freee業務委託管理を導入する決め手のひとつです。


スモールスタートから、全体展開へ。フリー社の助力によりスムーズに進められた

PXC


―― 導入はどのように進められたのでしょうか?


大邉: スピードよりも手戻りが減ることを意識して、スモールスタート形式を選択しました。いきなり委託先の皆さんにリリースすることはせず、経理や総務など5名ほどのメンバーだけを招いて、ルール整備やシミュレーションをおこなっていったのです。


これによりタスクの命名規則や承認ルートなど細かな規定を早期に整えられたのですが、もし全体リリース後にこのあたりを整備していたら、何度も繰り返し委託先の皆さんにルール変更の案内をすることになっていただろうと思います。


ルール整備やシミュレーションが済んだあとは、本リリースということで委託先全体への周知を行いました。ここでは、フリー社のサポートに助けられました。


―― 具体的に、どのようなサポートがあったのでしょうか?

大邉: もっとも印象的だったのは月に一度のミーティングです。サポート担当者の方が、こちらの目的などを丁寧にヒアリングした上で、最適なソリューションを提示してくださいました。


特に、見落としていた便利機能や応用的な活用法などについて的確にアドバイスしていただけた点は、非常に助かりましたね。海外在住のフリーランスの方に発注した場合の対応など、細かな点についても詳しく教えていただけました。


また、サポートといえば、フリー社がマニュアルやスライドのひな形を準備してくださっていたことにも助けられました。全体リリースに際して、各種案内資料を用意する必要があったのですが、既成マニュアルやひな型のおかげで1〜2週間で完成しました。一からマニュアルを作る必要がない点は、非常にありがたかったです。


法令に対応し、フリーランスが安心して仕事に取り組める環境を実現できた

PXC


―― freee業務委託管理を導入し、具体的にどのような効果がありましたか?


大邉: 大きな効果は2つありました。1つ目は、フリーランス法などの法令遵守を実現できた点です。


freee業務委託管理の導入後は、ちょっとデータを入力するだけで、納期・金額が明確な証憑を簡単に作成できるようになりました。発注内容もツール上で一覧で確認できるため、作業漏れのチェックも簡単におこなえるようになり「下請法の60日ルール」対策もクリアできました。


さらに、freee業務委託管理の導入は、フリーランスの方の意識改善にも役立っています。「注文書を確認してから着手する」という流れを作ったことで「注文書はいつもらえますか?」とフリーランスの方が作業開始前に確認してくれるようになったのです。「お互い安心して仕事を開始できるようになった」と感じています。


そのほか、作業を進めていく上で変更や不安なことがあるときは、タスク画面上でやりとりができる点も便利です。いわゆるチャットツールとは異なり、埋もれたり流れたりしないため、安心して利用できています。


―― ほかにはどんな効果がありましたか?

大邉: 2つ目の効果は、発注内容の効率的な管理が実現できた点です。なかでも、依頼管理や請求書にまつわる作業の遅延問題を改善できたことは、大きなメリットだと感じています。


特に効果を実感しているのが、注文のテンプレート登録機能や一括注文機能です。これによりフリーランスの方への発注書作成が容易になりました。表計算ソフトでの管理と比べてもミスも少なく、業務スピードが改善しています。


それから、発注書や請求書の発行がワンストップで進められるのも、非常に便利です。案件の進捗状況もわかりやすく、作業の漏れなどもなくなっています。実際、導入前は請求書74件中27件と全体の1/3ほどで差し戻しが発生していたのですが、導入後の現在はわずか2件のみと大幅に減っています。


また、freee業務委託管理上に依頼内容が残るため、月末に一つひとつのチャットを確認して依頼内容を探す作業も不要になりました。請求書の正誤確認や、過去の履歴を遡るのもとてもスムーズです。


―― 以前は「請求の締め作業の締切を1週間ほどオーバーしていた」とおっしゃっていましたが、現在はどうなりましたか?

大邉: オンスケジュールで進行できるようになりました。締切を守れていることから、心理的な負荷も軽減されています。


―― フリーランスの皆さんの反響はいかがでしょうか?

大邉: 導入前に期待した通り、freee業務委託管理は操作もわかりやすく、つまずいた委託先の方はほぼいませんでした。


効果としても、請求書作成にまつわる作業が大幅に効率化されています。特に数クリックで請求書が発行できる機能が非常に好評で「請求書作成にかかる時間が1/100になった」という声もあがっているほどです。


委託先には、細かな作業が苦手だったり、あるいは案件が多すぎて大変だったりする人もいるのですが、こうした方々が請求書の細かな整合性チェックから解放され、本来の業務により集中してもらえるようになったのは、とても喜ばしいことですね。


ちなみに、これは我々のメリットですが、freee業務委託管理の導入により、消費税計算や源泉徴収の記載ミスによる差し戻しが約90%も激減しています。素晴らしい成果だと思います。


―― ほかに、何か導入してよかったことはありましたか?

大邉: 請求書のフォーマットを統一できたことによる効率化は想定外のメリットでしたね。以前は、請求書のフォーマットが人によって違っていたため、金額や振込先などの記載位置がバラバラでチェックに時間がかかっていました。しかし現在は、フリーランスの9割ほどがfreee業務委託管理の請求書に切り替え、確認する場所やポイントが統一されたため、チェックが非常にスムーズになっています。


さらなる業務効率化に向けて、freee業務委託管理を活用した体制づくりに取り組みたい

PXC


―― 今後、freee業務委託管理をどのように活用していきたいとお考えですか?


大邉: 課題であった法対応や業務効率化などの足場固めはできたので、今後はさらなる効率化に向けて体制と仕組みを整えていきたいと考えています。


現在は元Raikumiの経理スタッフが部門経理的に全フリーランスを一元管理しているため、特定のメンバーに業務負担が集中しています。そこで今後はチーム分けをおこない、チームリーダーがfreee業務委託管理でフリーランスの皆さんを管理することで、業務効率化と負担分散を目指したいですね。


効率化で得られた時間で、 フリーランスの皆さんにより気持ちよく働いていただけるよう、マニュアルや共有ナレッジの整備を進めていきたいと思います。


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