freee会計導入で、アナログな介護業界でのDX化を実現。 情報の「見える化」で業務時間の大幅削減と社内の意識改革に成功。

株式会社エムケイ・コーポレーション 代表取締役社長 平林 勇二 さん

課題
経営の課題をリアルタイムに把握エクセル・紙管理からの脱却

株式会社エムケイ・コーポレーションは、三重県伊勢市に本社を置き、地域密着型の事業を複数展開している企業です。1996年に創業され、訪問介護やデイサービスなどの介護事業や、配食サービス、火災保険や自動車保険の代理店事業などを行うことで地域の活性化を目指しています。

介護業界ならではのアナログな業務を効率的に改革していくためにDX化に取り組んでおり、freee導入もその一翼を担っています。業界ならではの課題からfreee導入後の変化まで、代表取締役社長の平林 勇二さんにお話を伺いました。


――まず最初に、御社の事業概要を教えてください


平林 勇二 さん(以下、平林): グループ会社である株式会社マスヤから独立してできた会社で、1996年に創業されました。85名ほどの会社です。株式会社マスヤはおにぎりせんべいを販売する会社であったため、もっと地域に密着した事業をやりたいという創業者の想いから、 地域密着型の事業を展開する会社として誕生しました。
2000年に介護保険制度が始まったのを機に、訪問介護やデイサービスなどの介護系の事業をスタートしました。この他にも、配食サービスというお弁当の宅配、製造、さらに我々のグループ9社の建物の火災保険や、営業で使う車の自動車保険、さらに福利厚生の一環の従業員食堂などの運営もしています。


「食」が一つのテーマになっているので、例えばデイサービスの事業では食のレクレーションを行っています。通常は「ご高齢になってくると危ないから」と、包丁を持って調理するのは控えるという話になるのですが、弊社はそうではなくて、できることは自分でやってもらうというスタンスでやっています。こういったスタンスはご家族さん、ご利用者さんにもご好評をいただいています。こうした自主性は、普段は喋らないご利用者さん同士が喋るきっかけにもなりますし、ここから人と人との繋がりが生まれています。こうした繋がりが、一人一人のご利用者さんの生きがいややりがいに繋がっていくという考えのもと、デイサービス事業を運営しています。


お弁当の製造、宅配の事業では、高齢者食を作っています。歳を重ねると少しずつ噛む力が弱くなってきますので、柔らかく調理したり、刻んだりして食べやすいものを作っています。また、高血圧、腎臓、糖尿病なども発症しやすくなるため、こうした病気向けの食事も作っています。


また、基本的には1軒1軒手渡しでお弁当を届けることにこだわっています。手渡しをする中で、体調が悪いことに気づき、ご家族さんや医療機関に連絡を取るケースもあります。また、地方は独居老人の方も増えてきているので、お話し相手になることで利用者さんの寂しさを紛らわすような、社会インフラ的な機能も果たしていると考えています。


――ご担当されている業務とfreeeとの出会いについて教えてください。

平林: 私個人としては、2015年くらいにはfreeeの存在を知っていました。当時、飲食店をやっていた知人がfreeeを使っており「こんなに簡単に日ごとのデータが見れるのか。こんなに便利なものがあるのか!」と思っていたので、自分もいつか会計ソフトを入れ替えるタイミングがあったら絶対検討したいという思いがベースとしてありました。
オンプレソフトからfreeeに切り替えたのですが、freeeは画面自体がやっぱり分かりやすく、操作性が高いと感じています。


現在私は、経理の方が伝票入力してくださった毎月の財務の結果、試算を含めて、全部自分で見て、管理や分析をしています。また、弊社は色々な部門がありますので、このデータを活用して、各部門責任者とのコミュニケーションをとる際に、部門別会計を用いて状況確認や指導をしています。


エムケイ・コーポレーション


freee導入で、会議なしの意思決定が実現。
そのカギは経営者も実務者も情報をキャッチできる環境づくり。

――freeeを導入する前のバックオフィスはどのような状態でしたか。当時、困っていた点などを教えてください。

平林: 経理の担当者しかシステムに触れないような状況でした。また、伝票関係がかなりアナログで、ペーパーレスとは程遠い状態でした。経費精算についても、レシートに経費精算の小さい紙をつけて、手書きで「こういう名目で使いました」という詳細を書いて、それを上長にあげて、上長が印鑑をついて、それが回っていくといった、かなりアナログな伝票起票になっていました。
また、一部の人しかシステムを触っていなかったので、他の人が会社のタイムリーな財務の状況を把握できないことも大きな問題でした。


まとめると、アナログな運用、限られた人しか関わっていないこと、タイムリーな状況把握ができないこと、この3つが大きな問題となっていました。


こうした状況の中で、もともと導入していたオンプレソフトの更新のタイミングが来たのでシステムを変えましょう、という方針に全社的になりました。
どのサービスがいいんだろうと検討するタイミングで、もちろん本社任せにすることもできる一方、弊社としてはどんなソフトがいいのかという点については、勉強も兼ねて自分たちで一度調査をしました。
個人的に、先ほどお話した通り、以前からfreeeに興味があったので、直接問い合わせをして、説明も数回受けさせていただきました。グループの中でも一番早くfreeeの話を聞いていたと思います。


――導入にはどのくらい時間がかかりましたか?困った点などありましたら教えてください。

平林: それほど多くの時間はかかっていないです。4ヶ月くらいだったと思います。
現場のスタッフはもしかしたら負担を感じていたかもしれないですが、私自身はあまり困ったことはありませんでした。幸いにも、介護事業所には珍しく、弊社の総務担当者が比較的ITに対して抵抗感がなかったんです。また、これは組織文化の話ですが、新しく何かやっていこうと号令があった時には、まずは一旦やってみるという気概の人が弊社は多いです。その結果、導入は意外とすんなりと進んでいったのかもしれません。


総務担当者もみんな50代後半ですが、元々本社でグループのIT責任者を勤めていた経緯があったり、業務の中で大きな代理店とやりとりをする際には全部iPadを使用しなければいけない状況だったりと、比較的日常的にITと触れていたメンバーでした。


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――DXを進める中で、会社に変化はありましたか?

平林: これは私自身もそうですし現場もそうなのですが、圧倒的に意思決定が速くなりました。
色々な情報がタイムリーに見える化されているため、常に現場で起こっていることも可視化される状況になりました。今までなら、会議をやって、そこで初めてみんなで情報を共有して、この情報を元にどうするのか決めるといった意思決定のプロセスでした。しかし今では、この会議をやらなくても、もう常に現場の情報が見える化されていますので、その中で意思決定がどんどん進んでいくので、 かなりスピードが速くなったと思いますね。
これは、経営者側の立場だけではなくて、現場の責任者、担当者レベルでの意思決定がかなり速くなりました。現場の担当者もこれについてきています。


また、情報をとにかくあげなきゃいけないという意識の変化もありますね。今までは誰か1人がボールを持っていればいいという意識でしたが、とにかく情報を見える化していこうというスタンスに変えたので、報連相の意識はかなり高まりました。


加えて、意思決定に関わる情報自体も、今まではどちらかというと定性ベースの意思決定が多かったのですが、数字や実際のお客さんの声といった、いわゆる定量化されたデータが入ってきたので、定性も定量も両方を取り入れた意思決定になり、意思決定の精度がかなり上がりました。


介護現場って書類作成は紙がメインなんですよ。私が5年半前にここに来た時に、例えば、デイサービスのご利用者さんが来て、今日の体温測定や血圧測定をして、これを紙に手書きし、加えてご家族向けのレポートも手書きして共有させていただき、国に提出する書類もまた手書きするといった形で重複がすごく多かったです。これを全部エクセルで管理し、一回データ入力をしたら、そのデータが全部飛んで行くように変えました。これをきっかけに、社員みんながパソコンを使い始めたと思います。その後、iPadを導入し、専用システム上でデータ入力をしていく形に変えました。このデータ入力したものを国に提出して、費用を請求するのですが、その請求が会計ソフトと紐づくようシステムを連動させるような形にもしました。


今うちの訪問介護のヘルパーさんに76歳で現役の方がいるのですが、その76歳のヘルパーさんも事務所に帰ってきて、iPadを開いて、そのまま情報の入力をしてくれています。


定例業務が1/6に。浮いた時間が会社の未来の時間に生まれ変わった。

――freeeを導入して、実感した変化はありますか?

平林: まず、ホールディングス全体で毎月、株主に対して月時の財務結果の報告会があるのですが、freee導入前の状態だと、紙をエクセルに打ち直して決算書を作るといった形をとっていたため、1回あたり6時間程度時間がかかっていました。今は試算表をダウンロードして、これを貼り付けできるようにフォーマットも組んであるので、大体1時間ぐらいで報告資料ができるようになりました。


経費精算もすごく楽になりました。あとは、もちろん出先でもデータ確認ができるようになったことはすごく便利です。やっぱりシステムによっては、このパソコンでしかダメというケースはあるじゃないですか。freeeだと、出先の隙間時間でも、ちょっとした経費精算やデータチェックができるようになりました。私自身も各現場も経費精算が結構あるのでとても助かっています。


時間が生まれたことで変化した点も2つあります。
まず一つは、とにかく残業の削減に繋がりました。やっぱり日中はどうしてもご利用者さんと接するので、バックオフィス業務は残業でやるしかなかったのです。ですので断然残業削減に繋がりました。
そしてもう一つ。これはマネージャークラスだとは思うのですが、管理のための事務作業の時間が削減されたことで、部下のコーチングや運営方針の検討など、未来に向けた時間の使い方ができるようになりました。


――この先、同じような業界でDXをしていく事業者へのアドバイスはありますか?

平林: まずは、いきなりシステムを導入するのではなく、事前に下地を作ることが大切です。新しいものが入ってきた時に、そもそも人間って心理的な抵抗が強いと思うのですが、特に介護業界はこれがすごく強いんですよ。アナログな世界でみんな生きているので、まずは地ならしをやっておくことが大切です。
その地ならしは、もう少しハードルが低いシステムを入れてもいいかもしれないし、日頃から新しいことにチャレンジするなどでも良いです。いわゆる「どんどん何かを変えていく」という組織文化の醸成みたいなところの下地作りが1番重要だと思います。


もちろん本社にITに慣れた人がいたことも大きいですし、そもそも社内の引っ張り役をどう作るかという観点もとても大切です。先ほどお話しした76歳のヘルパーさんを僕らは「ハブ人材」と呼んでいるのですが、ヘルパーさんは平均年齢60代の世界なので、みんながiPadを使えるようになるかどうかというのは、当時72歳だったヘルパーさんが起爆剤になるわけですね。まだまだ負けん気が強くて、自分より若い人たちはスマホを使っているのに、自分だけ手書きみたいなのが悔しくて、若者には負けてたまるかと言っていて、マニュアルを持ち帰って娘さんに家で操作を教えてもらって、そのヘルパーさんがiPadを使い始めました。


そうしたら、初めはものすごい反対して、面倒臭いと言っていたベテランのヘルパーさんたちが「あのヘルパーさんが頑張ってるんだったら、私も頑張らなあかんね」と言い始め、一気に浸透が進んで行きました。その起爆剤となる人を、現場でいかに見つけて、その人に対してあらかじめ働きかけができるかどうかはかなり大切です。


あとは、よく言われることだと思いますが、一気に進めすぎず、小さな成功を作る意識が大切だと思います。ゴールがここだったとしても、いきなりゴールここだよって伝えるとギャップがすごすぎて、もういいでしょってなっちゃうんですよね。だから、結構小さいマイルストーンを作って、まずは半年後、何ヶ月後にはこの状態になっていよう!という、 ちょっと頑張ればなんとか手が届くぐらいのゴール設定をしてあげる。そのゴール設定をして「できた」となると、やれたことが自信に繋がって、じゃあ次はもう少しステージが大きいことにチャレンジしようとなるので、その小さい成功をいかに作るのかが大事だと思います。


――最後に、今後の御社のバックオフィスにおける展望があれば教えてください。

平林: 現在、うちは事業拡大に向けての準備の段階に入っています。デイサービスをはじめとする様々な各主要事業を多店舗展開していくので、店舗を展開していった時に、やはりバックオフィス業務はここでやっていくことになるので、ここを拠点に各店舗の管理をしっかりしていきたいという思いがあります。会計領域でいうならfreeeを使って、タイムリーにある程度情報を見れるような状態にしていきたいなと思っています。


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