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不動産取引の電子契約が解禁!メリット、導入する際の注意点を解説

公開日:2023/10/26

監修 志塚洋介 行政書士・1級FP技能士・CFP

不動産取引の電子契約が解禁!メリットや導入する際の注意点を解説

2022年5月、従来の重要事項の書面などの押印や書面交付義務が廃止され、宅建業法の改正によって不動産取引の電子契約が解禁されました。

これを受けて、不動産取引に必要な手続きがオンライン上で完結可能になりました。

本記事では、不動産取引の電子契約の概要や解禁となった背景を解説します。電子契約のメリット導入する注意点も説明するので、ぜひご覧ください。

目次

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不動産取引における電子契約とは?

不動産取引の電子契約とは、書面ではなく電磁的記録(電子データ)で契約を結ぶことです。重要事項説明書などの書類の交付を、書面ではなく電磁的方法で行います。

電磁的方法の例

● 電子メール
● Webページからのダウンロードによる提供
● USBメモリの交付
不動産取引の電子契約が解禁されたのは、2022年5月です。宅建業法(宅地建物取引業法)が改正され、不動産取引に必要な契約手続きをオンラインで完結できるようになりました。

書面契約と電子契約の違い

書面契約と電子契約の主な違いは、以下の通りです。

項目書面契約電子契約
契約書類紙の書面電子データ
本人確認印鑑証明書など電子証明書
押印実印など電子署名
変更や訂正訂正印などタイムスタンプ
収入印紙必要不要


電子証明書は、なりすましやデータ改ざん防止のために利用する電子的な証明書のことです。書面取引における印鑑証明書に相当します。

電子契約では、印鑑による押印ではなく電子証明書による電子署名を用いて契約を結びます。

また、タイムスタンプとは、電子的なスタンプの付与によって文書が改ざんされていないことを証明する技術です。

不動産の電子契約の流れ

不動産取引を電子契約で行う場合も、契約の流れ自体に大きな変化はありません。ただし、書面でのやりとりがなくなるため、電子署名など書面での契約とは異なる作業が発生します。

不動産の電子契約の流れ

1. 契約書類の作成・アップロード
2. 電子署名(不動産会社側)
3. 契約書類の送付
4. IT重説(IT重要事項説明)の実施(※)
5. 電子署名(入居者側)
6. 契約書類のサーバー保管
(※)IT重説とは、重要事項説明をテレビ会議などのITを用いて行う方法です。

不動産取引の電子契約解禁の背景

電子契約が解禁された宅建業法の改正には、2021年5月に公布された「デジタル社会形成整備法」が影響しています。

デジタル社会形成整備法では、民間企業同士の契約関係で交付される書類の電磁的方法による提供が認められました。

これを受けて、2022年5月に宅建業法が改正され、押印と書面交付の義務が廃止されました。

近年、AI技術の進化や新型コロナウイルス感染症によるオンライン需要が高まっています。それにより、行政手続きや金融サービスなどさまざまな業界で電子化が進んでいます。

不動産取引でも、Web申込やIT重説、オンライン内見など電子化の動きが進んできました。賃貸借契約では2017年から、売買契約では2021年からIT重説が可能となっています。
宅建業法改正による変更点は、大きく以下の2点です。

宅建業法による変更点

● 重要事項説明書などへの押印が廃止された
● 重要事項説明書の電磁的方法による提供が認められた

電子化できる主な契約書類

今回の改正によって、以下の書類が電子契約として電子ファイルでの交付が認められました。

電子化に対応している主な書類

● 重要事項説明書(35条書面)
● 売買契約書・賃貸借契約書(37条書面)
● 媒介契約書(34条の2書面)
● レインズ登録証明書

不動産取引における電子契約のメリット

不動産取引で電子契約を導入する主なメリットは、以下の通りです。

不動産取引で電子契約を導入するメリット

● 手続きが簡素化する
● コストを削減できる
● 書類を管理しやすくなる

手続きが簡素化する

契約手続きを電子化すれば、書面でのやりとりが不要になるため、契約締結までの時間の短縮が期待できます。

書面で契約手続きをする場合、書類をそろえて相手に送るのには時間がかかります。加えて、売主・買主(貸主・借主)や媒介業者、取引主任者など複数人が押印しなくてはなりません。修正が必要になれば、さらに時間を要するでしょう。

電子契約にすれば、不動産会社の業務効率が向上するとともに、取引当事者の負担軽減にもつながります。

IT重説や電子契約によって一連の手続きがオンラインで完結するため、忙しい人や遠方の人も手続きしやすくなるでしょう。

コストを削減できる

不動産取引を電子契約すれば、印紙税や郵送代のコストを削減できます。

不動産売買契約などを書面で締結する場合、規定の収入印紙を貼付しなければなりません。印紙税額は契約金額に応じて決まるため、不動産取引では印紙税の負担が高額になる場合もあります。

一方、電子契約で締結した場合は収入印紙を貼付しなくてよいため、コストを大幅に削減できる可能性があります。

また、書面で契約を締結する場合、書類の印刷費や封筒代、郵送費用も必要です。電子契約なら書面でのやりとりが必要ないため、書類の準備や郵送にかかる費用も削減できます。

書類を管理しやすくなる

電子契約では契約書類をデータで保存できるため、ファイリングの手間がかからず、保管スペースも不要です。

不動産取引の契約に必要な書類は、万が一のトラブルに備え長期間保管するのが一般的です。書面の場合は契約締結のたびに書類が増えるため、ファイルから探し出すのに時間や手間がかかります。

電子契約なら目的の書類を検索で瞬時に探し出し、確認できます。

不動産取引において電子契約を導入する際の注意点

不動産取引で電子契約を導入する際、以下の点には注意しましょう。

不動産取引で電子契約を導入する際の注意点

● 相手方の同意を得る必要がある
● 電子証明書やタイムスタンプには有効期限がある

相手方の同意を得る必要がある

電子契約をするには、取引相手の同意が必要です。承諾が得られない場合は、従来通り書面で契約を締結してなくてはなりません。たとえば、以下のようなケースが考えられます。

相手方の同意が得られないケースの例

● 取引相手のインターネット環境が整っていない
● 取引相手が高齢でパソコンの操作に慣れていない

電子証明書やタイムスタンプには有効期限がある

電子契約時の電子署名に用いる電子証明書やタイムスタンプには、有効期限が設けられています。

項目有効期限
電子証明書最長5年
タイムスタンプ最長10年


有効期限が切れると、なりすましや非改ざん性を証明できません。有効期限を超える場合は、電子証明書にタイムスタンプを付与する、長期署名を利用する必要があります。(※)
(※)長期署名とは、新たなタイムスタンプを付与して有効期限を延長するものです。

電子契約の導入に向けて不動産会社が取り組むべき課題

電子契約を導入する際に、不動産関連会社が取り組むべき主な課題は以下の通りです。

電子契約導入に向けて取り組むべき課題

● 業務フローを見直す
● セキュリティ対策を徹底する
● 電子契約サービスの導入を検討する

業務フローを見直す

現在の業務フロー一覧を作成し、導入後の書類準備から契約締結、保管までの業務フローを検討しましょう。あわせて、契約書類の文面や社内規程・マニュアルの見直しも行います。

運用ルールの例

● 契約書類を確認する際の手順
● 電子署名を行う際の権限や承認に関するルール
● 書類の保管方法
円滑に運用できるように、役割分担などの運用ルールも明確にしておきましょう。

セキュリティ対策を徹底する

契約書類の漏えいや改ざんを防ぐためのセキュリティ対策を徹底しましょう。

セキュリティ対策の例

● こまめにバックアップをとる
● 高度なセキュリティ対策を備えた電子契約システムを導入する
電子契約を導入すれば書類の管理が簡単になる一方で、情報漏えい・ウイルス・サイバー攻撃などのセキュリティリスクが伴います。パスワードの漏えいやメールの誤送信、USBのデータ紛失を防止するための教育・研修も実施する必要があるでしょう。

電子契約サービスの導入を検討する

電子契約を円滑に運用するために、電子契約サービスの導入も検討しましょう。

電子契約サービスを導入すれば、契約書類の作成や社内での承認・保管などを一括で行えます。進捗状況を可視化できるので、業務の効率化が図れるでしょう。さらに、法律への対応やセキュリティ対策にも役立ちます。

電子契約システムで契約業務を効率化する方法

契約書の作成や郵送、締結後の管理など、契約業務は手間がかかる作業です。テレワークの普及で決裁に時間を要し、契約書の押印や郵送のために出社しなければならないなど、面倒な場面もあります。

面倒な契約業務を効率化するには、電子契約サービス「freeeサイン」がおすすめです。

freeeサインは弁護士監修の契約システムで、文書作成から契約締結までワントップで完結できます。書類はクラウド上に保管され、紛失や破損の心配もなく、書類整理の手間を省けます。

テンプレートを登録でき、必要な項目を入力すれば、簡単に契約書を作成できます。作成から承認までのワークフローもオンラインで管理・完結するから、契約書のためだけに出社する必要もありません。

社外向けの契約書だけでなく、従業員との雇用契約書や就業条件明示書、見積書・発注書・請求書など、幅広い文書作成にも対応できます。セキュリティ体制も万全で、文書作成時刻の信頼性が保証され、通信はすべて暗号化されています。

契約業務を安心して効率化したい場合は、ぜひ「freeeサイン」をお試しください。

まとめ

2022年5月、不動産取引の契約に必要な書類への押印、書面の交付義務が廃止されオンラインでの契約締結が可能になりました。

不動産取引の契約手続きを電子化すれば、業務効率の大幅な向上やコスト削減が期待できます。

ただし、電子契約を利用するには相手方の承諾が必要です。注意点も踏まえたうえで、電子契約の導入を検討しましょう。

よくある質問

不動産取引における電子契約とは?

不動産取引の電子契約とは、書面ではなく電磁的記録(電子データ)で契約を結ぶことです。電子契約では、重要事項説明書などの交付を書面ではなく電磁的方法で行います。

不動産取引の電子契約を詳しく知りたい方は「不動産取引における電子契約とは?」をご覧ください。

電子契約導入に向けて不動産関連会社が取り組むべき課題は?

電子契約を導入するために不動産関連会社が取り組むべき主な課題は、以下の通りです。

電子契約導入に向けて取り組むべき課題

● 業務フローを見直す
● セキュリティ対策を徹底する
● 電子契約サービスの導入を検討する
電子契約導入に向けて不動産関連会社が取り組むべき課題を詳しく知りたい方は「電子契約の導入に向けて不動産会社が取り組むべき課題」をご覧ください。

監修 志塚 洋介(しづか ようすけ) 行政書士・1級FP技能士・CFP

大学在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。証券会社で資産運用コンサルティングに従事したのち、不動産会社で保有不動産の収支計算や資産管理、収支改善業務などに従事し、独立開業。行政書士とファイナンシャルプランナーというお金と法律の2つの側面から会社設立、相続、遺言、運用、不動産などに関する幅広い業務を展開中。雑誌やwebでの執筆や株式や投資のセミナーなどの講師も行い、YouTubeでの投資に関する動画も好評。

監修者 志塚洋介