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AI契約審査サービスとは?導入のメリット、法務省が示した違法性の有無を解説

監修 松浦絢子 弁護士

AI契約審査サービスとは?導入のメリットや法務省が示した違法性の有無を解説

昨今話題となっているAI契約審査サービスとは、AI(人工知能)が契約書のレビューをサポートしてくれるサービスです。

契約書のチェックを自動化することで法務関連業務の負担が大幅に削減され、コスト削減や法的リスクの軽減を図れます。

2023年8月には、法務省からAI契約審査サービスに関するガイドラインが示され、適法となる基準が明確になりました。

本記事では、AI契約審査サービスの概要違法性の有無導入のメリットを解説します。AI契約審査サービスについて詳しく知りたい方や、導入を検討している方は、ぜひご覧ください。

目次

freeeサインで契約業務をカンタンに

freeeサインは契約に関する一連の業務・書類の保存までクラウド上で完結!契約書作成から締結までにかかる手間やコストを大幅に削減できます。

AI契約審査サービスとは?

AI契約審査サービスとは、AI(人工知能)が契約書を自動で審査し、リーガルチェックをサポートしてくれるサービスです。契約書をアップロードすると、契約書に潜むリスクの洗い出しや修正の提案などを自動で行ってくれます。

AI契約審査サービスによって仕様は異なりますが、以下のような機能が利用できます。

項目機能の例
自動レビュー機能● 不足する単語や条文などのリスク洗い出し
● 基準となる契約書との差分の洗い出し
修正支援機能● サンプル文例や修正例の表示
● 表記ゆれの検知
● 条番号の修正
作成支援機能● ひな形のダウンロード
● 過去の契約書や条文の検索
ナレッジ蓄積機能● 条文や自社のひな形の保存
● 修正履歴の保存

契約書のチェックに労力やコストがかかっている企業は、AI契約審査サービスの導入によって、法務関連業務の負担を劇的に軽減できる可能性があります。

AI契約審査サービスが議論されている背景

AIの普及に伴い、AI契約審査サービスが広まる一方で、「非弁行為ではないか」との議論もなされてきました。議論の背景にあるのは、2022年10月に法務省が公表した見解です。

非弁行為は、弁護士法第72条で禁じられています。非弁行為とは、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、弁護士にしか認められていない業務を行うこと、または当該業務の周旋をすることです。

2022年10月、法務省はグレーゾーン解消制度で寄せられた照会に対する回答として、AI契約審査サービスが違法である可能性について触れました(※)。
(※)グレーゾーン解消制度とは、事業者が新規事業を計画する際に、安心して新事業を進められるよう、あらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度です。

法務省は、AI契約審査サービスについて「個別具体的な事情によっては、弁護士法第72条本文に違反すると評価される可能性があることを否定することはできない。」と回答しています。

これにより、「AI契約審査サービスは違法なのではないか」との議論が広がりました。

そこで法務省は、2023年8月にAI契約審査サービスに関するガイドラインを公表し、弁護士法第72条に抵触するかどうかの判断基準を明確に示しました。次章でその内容を詳しく解説します。
出典:法務省大臣官房司法法制部「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について(2023年8月)」

法務省のAI契約審査サービスに関するガイドラインの内容

法務省はAI契約審査サービスに関するガイドラインのなかで、事件性のない一般的な契約などは非弁行為にあたらないと示しました。

ガイドラインでは、弁護士法第72条に抵触するかどうかの判断基準を示しています。非弁行為にあたる可能性があるのは、以下の3つすべてを満たす場合です。

弁護士法第72条に抵触し得る場合

1 弁護士法第72条の「報酬を得る目的」に該当する
2 弁護士法第72条の「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件」に該当する
3 弁護士法第72条の「鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」に該当する

1 報酬を得る目的

たとえば、利用料などを払って利用資格を得たものに対してのみAI契約審査サービスを提供する場合は、「報酬を得る目的」に該当します。

一方、一切の利益供与を受けずにAI契約審査サービスを提供する場合は、通常、弁護士法に違反しません。

ただし、一般的にAI契約審査サービスは初期費用や月額費用がかかるため、「報酬を得る目的」に該当します。

2 その他一般の法律事件

法務省は弁護士法第72条にある「その他一般の法律事件」に関して、事件性があるかどうかで個別の事案ごとに判断されるべきだと示しました。

たとえば、取引当事者間で紛争が生じたあとの和解契約を締結する場合は、「その他一般の法律事件」に該当する可能性があります。一方で以下のような契約の場合、一般的に弁護士法第72条には違反しないと見なされる場合があります。

「その他一般の法律事件」に該当しないと考えられるケース

● 親子会社やグループ会社間で従前から慣行として行われている物品や資金のフローを明確にする場合
● 継続的取引の基本となる契約を締結している会社間で特段の紛争なく従前同様の物品を調達する契約を締結する場合

3 鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務

「鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」に該当するかどうかは、AI契約審査サービスの内容によって異なります。

たとえば個別の事案に応じた法的リスクの有無や程度、具体的な修正案が表示される場合、上記に該当する可能性があります。

一方、審査対象となる契約書の内容とひな形の記載内容に相違があることを指摘するのみの場合、原則として弁護士法には違反しません。

利用者が弁護士や弁護士法人で、AIの判定結果も踏まえて自ら契約書を精査・修正する場合は、①~③に該当しても違反はしないと考えられます。

ただし、法務省によると、ガイドラインの内容はあくまでも一般論です。非弁行為に該当するかどうかの最終判断は裁判所に委ねられます。

AI契約審査サービスを導入するメリット

AI契約審査サービスを導入する主なメリットは、以下の通りです。

AI契約審査サービスを導入するメリット

● 契約書チェックの手間・時間を削減できる
● 法的リスクを軽減できる
● 人的コストを削減できる

契約書チェックの手間・時間を削減できる

AI契約審査サービスを利用すれば、確認すべきポイントが絞れるため、契約書チェックにかかる負担を大幅に削減できます。

表記ゆれや条番号の抜けなどのチェックをAIが代替することで、定型作業にかかる時間を短縮でき、業務の質も向上するでしょう。

また、AI契約審査サービスを導入すれば、契約業務に詳しくない現場担当者でも一次チェックができるようになります。その結果、特定の担当者に業務が集中するのを防いだり、取引先との契約締結スピードを早めたりすることが期待できます。

法的リスクを軽減できる

AI契約審査サービスならAIが必要な単語・条文の漏れなどを自動で検知・指摘してくれるため、法的なリスクを最小限に抑えられます。

契約書を手作業で確認する場合、リスクの見落としが生じる可能性があり、担当者の精神的負担も小さくありません。

AI契約審査サービスを導入すれば、AIによるリスク検知によって、人的なミスや経験不足による漏れを防止できます。修正案やサンプル条文が表示されるサービスもあり、修正もスムーズです。

人的コストを削減できる

契約書のチェックを自動化し、正確な契約書をより短時間で作成できるようになれば、人件費や外部委託費用も削減できます。

ダブルチェックの代わりにAIを活用することで、チェックする担当者の人数を減らせる可能性もあります。

契約にまつわる業務を簡単にする方法

契約書の作成や押印、管理など、契約にまつわる作業は多岐に渡ります。リモートワークが普及した近年、コミュニケーションを取りづらくなってしまい、契約締結までに時間がかかってしまう場合や、押印のためだけに出社しなければいけない...なんてケースも少なくありません。

そんな契約まわりの業務を効率化させたい方には電子契約サービス「freeeサイン」がおすすめです。

freeeサインはインターネット環境さえあれば、PCやスマホで契約書作成から締結まで、契約にまつわる一連の業務を完結できます。さらに、過去の契約書類はクラウド上で保存できるので、紛失や破損の心配も解消します。

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freeeサインでできること

契約書を簡単に作成!

契約によって書式が異なるので、一から作成すると工数がかかってしまいます。 freeeサインでは、テンプレートを登録し、必要な項目を入力フォームへ入力するだけで簡単に契約書を作成できます。

社内の承認作業がリモートで完了!

freeeサインでは、契約書の作成依頼から承認にいたるまでのコミュニケーションもオンラインで管理・完結。ワークフロー機能は承認者の設定が可能なので、既存の承認フローをそのまま電子化することができます。

文書に応じて電子サイン・電子署名の使い分けが可能!

電子契約サービスの中には、どんな文書であっても1通送信する度に100~200円程度の従量課金が発生するものも少なくありません。freeeサインでは、従量課金のない「電子サイン」と従量課金のある「電子署名」のどちらを利用するかを、文書の送信時に選択できます。

重要な契約書や、後に争いが生じる可能性が高い文書には「電子署名」を利用して、より強固な証跡を残し、それ以外の多くの文書には「電子サイン」を利用するといった使い分けができるので、コスト削減につながります。

電子契約で契約書作成にかかる手間・コストを削減

電子契約にすると押印や郵送、契約管理台帳へのデータ入力の必要がなく、契約に関わる手間が大幅に削減されます。さらに、オンライン上での契約締結は印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙も不要です。

電子契約で完結することで、郵送する切手代や紙代、インク代なども不要となり、コストカットにつながります。

過去の契約書もクラウド上で保存してペーパーレス化

紙ベースで契約書類を作成すると、紛失や破損の恐れがあります。また、管理するための物理的なスペースを確保しなくてはなりません。また、電子帳簿保存法の改正でPDFでの保管にも制約が発生します。

freeeサインでは、過去の契約書もPDF化してタイムスタンプ付きで保存ができるので、今まで紙やPDFで保存していた契約書も一緒にクラウド上で管理することができます。クラウド上で管理することで紛失や破損の恐れも解消され、社内間での共有も楽になります。

気になる方は、無料登録でも書類の作成や電子締結ができる「freeeサイン」をぜひお試しください。

まとめ

AI契約審査サービスは、AI(人工知能)が契約書のレビューをサポートしてくれるサービスです。

AIがリスクの洗い出しや修正例の提示、表記ゆれのチェックなどを行ってくれるため、契約業務にかかる時間やコストを大きく減らせます。他の業務に充てられる時間が増え、業務の質も向上するでしょう。

また、人的ミスによる漏れを防ぎ、法的リスクを最小限に抑えられます。

AI契約審査サービスは大手企業でも導入されており、2023年に適法性に関する基準が示されたことで、さらなる普及が期待されます。

AI契約審査サービスの概要や法務省が示したガイドラインの内容を正しく理解しましょう。

よくある質問

AI契約審査サービスとは?

AI1契約審査サービスとは、AI(人工知能)が契約書を自動で審査し、リーガルチェックをサポートしてくれるサービスです。契約書をアップロードするだけで、契約書に潜むリスクの洗い出しや修正の提案などを自動で行ってくれます。

AI契約審査サービスの概要を詳しく知りたい方は「AI契約審査サービスとは?」をご覧ください。

AI契約審査サービスは違法?

法務省が公表したガイドラインによると、下記の場合などは一般的に弁護士法で禁じられている非弁行為にはあたらない可能性があります。

非弁行為にあたらないと考えられるケース

● 無料でAI契約審査サービスを提供する場合
● 企業の継続的な取引契約に基づき従前同様の条件で行う契約の場合
AI契約審査サービスの合法性を詳しく知りたい方は「法務省のAI契約審査サービスに関するガイドラインの内容」をご覧ください。

監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

監修者 松浦絢子