監修 好川寛 プロゴ税理士事務所
確定申告の方法には、青色申告と白色申告の2つがあります。
簡単にまとめると、青色申告は節税効果が高いが、提出書類が多かったり記帳方法が複雑だったりと手間がかかります。一方、白色申告は青色申告に比べて手間はかかりませんが、節税効果も低いです。
本記事では、青色申告と白色申告の違いを項目別に詳しく解説します。
目次
青色申告と白色申告の違いを項目別に解説
確定申告の準備をする前に、青色申告と白色申告のどちらで行うかを決める必要があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、違いを正しく理解して自分に最適な方を選ぶことが大切です。
ここからは、青色申告と白色申告の違いを以下の項目別に解説していきます。
青色申告と白色申告の違いを項目別に解説!
① 税制上の優遇措置
② 申請の有無
③ 提出書類・保存帳簿・保存書類
④ 記帳方法
⑤ 不動産所得に関わる控除
⑥ 節税効果
① 税制上の優遇措置
青色申告を選択すると、最大65万円の青色申告特別控除を受けることができます。一方、白色申告にはこういった税制上の優遇措置がありません。
なお、青色申告特別控除は要件に合わせて控除額が65万円・55万円・10万円と変動します。最大65万円の控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 不動産所得または事業所得がある
- 不動産所得の場合は事業的規模である
- 単式簿記ではなく複式簿記で記帳している
- 現金主義ではなく発生主義で記帳している
- 申告時に貸借対照表と損益計算書を添付する
- 確定申告の法定期限の厳守
- e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」
青色申告特別控除以外にも、青色申告には節税につながる優遇措置が複数あります。詳しくは後述している「⑥ 節税効果」で解説していますので、あわせてご確認ください。
② 申請の有無
青色申告をするためには、その年の3月15日までに開業届と青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出しなければなりません。その年の1月16日以降に開業したときは、開業後2ヶ月以内に提出が必要です。
一方、白色申告をするために必要な申請は特にありません。青色申告承認申請書を出さなければ、自動的に白色申告になります。
③ 提出書類・保存帳簿・保存書類
青色申告は白色申告に比べて提出・保存する書類や帳簿が多いため、作成に手間がかかります。また、青色申告特別控除の控除額によっても異なるので注意が必要です。
それぞれの提出・保存帳簿は以下のとおりです。
青色申告 (65万円控除・55万円控除) | 青色申告 (10万円控除) | 白色申告 | |
---|---|---|---|
提出書類 |
・確定申告書 ・青色申告決算書 ・貸借対照表と損益計算書 ・第三表 ※分離課税用、事業所得に加え譲渡所得がある場合 ・第四表 ※損失申告用、赤字で青色申告する場合 |
・確定申告書 ・青色申告決算書 (損益計算書) ・第三表 ※分離課税用、事業所得に加え譲渡所得がある場合 ・第四表 ※損失申告用、赤字で青色申告する場合 |
・確定申告書 ・収支内訳書 ・第三表 ※分離課税用、事業所得に加え譲渡所得がある場合 |
保存帳簿 |
・総勘定元帳 ・仕訳帳 ・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・固定資産台帳など |
・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・固定資産台帳 ・経費帳など |
・法定帳簿 ・任意帳簿など |
保存書類 | ・決算に関して作成した棚卸表など | ||
そのほか | ・業務に関して作成し、または受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類など |
上記の書類に加えて、確定申告時には各種控除に関する書類やマイナンバーが記載された本人確認書類などを添付する必要があります。
各種控除で必要な書類は青色申告・白色申告どちらでも違いはありません。ただし、受けられる控除は個人によって異なるので、自身に適用される控除を事前に確認しておきましょう。
【関連記事】
確定申告の所得控除は15種類! 対象となる条件や控除額、税額控除との違いについて解説
【2025年向け】確定申告の必要書類・添付書類は? 準備するものをケース別にわかりやすく解説
④ 記帳方法
青色申告は複式簿記、白色申告は簡易簿記(単式簿記)で行います。ただし、10万円の青色申告特別控除を受けるのであれば、青色申告でも簡易簿記が認められます。
青色申告で65万円控除または55万円控除を受ける場合は、主要簿として仕訳帳と総勘定元帳を必ず複式簿記形式で作成する必要があります。
青色申告 (65万円控除・55万円控除) | 青色申告 (10万円控除) | 白色申告 |
---|---|---|
複式簿記 | 簡易簿記(単式簿記) |
複式簿記は、取引の原因(売上)と結果(増加)の2つの側面から、取引を記録する方法です。一方の簡易簿記(単式簿記)は、ひとつの取引についてひとつの記録をする方法です。
例:3万円の商品を現金で売り上げたときの記帳方法
◎複式簿記
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
令和6年○○月××日 | 現金 30,000円 | 売上 30,000円 | 〇〇商店への売上 |
◎簡易簿記(単式簿記)
日付 | 勘定科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|
令和6年○○月××日 | 売上 | 30,000円 | 〇〇商店への売上 |
⑤ 不動産所得に関わる控除
不動産所得がある場合、青色申告で65万円または55万円の控除を受けるためには、不動産貸付が事業的規模である必要があります。具体的には、アパートは10室以上・貸家は5棟以上の規模です。
ただし、事業所得と不動産所得の両方がある場合は、不動産所得が事業的規模である必要はありません。マンション1室からの不動産所得がある場合は、10万円の控除を受けることができます。
青色申告 (65万円控除・55万円控除) | 青色申告 (10万円控除) | 白色申告 |
---|---|---|
アパートは10室以上 または 貸家は5棟以上 | マンション一室から | なし |
⑥ 節税効果
青色申告と白色申告では、特別控除の有無や経費として認められる範囲が異なるため、節税効果に大きな違いがあります。
青色申告では、青色申告特別控除のほか、赤字の3年間繰越しを始めとした制度上の特典が設けられています。白色申告では、青色申告で認められる特典を受けられません。
青色申告と白色申告の節税効果の違いは以下のとおりです。
節税につながる優遇措置 | |
---|---|
青色申告 |
・青色申告特別控除(65万円・55万円・10万円) ・青色事業専従者給与 ・赤字3年間繰越 ・減価償却資産(30万円未満)は一括経費 ・貸倒引当金の経費計上 |
白色申告 | 税制上の優遇措置はない |
節税効果を高めたい人は青色申告がおすすめ
上述したように、青色申告と白色申告では提出書類や税制に大きな違いがあります。記帳方法が複雑だったり、提出書類が多かったりと手間はかかりますが、さまざまな優遇措置がある青色申告だと節税効果が期待できるでしょう。
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青色申告と白色申告関連のよくある質問
白色申告と青色申告どちらがお得?
青色申告は、青色申告特別控除をはじめとする税制上の優遇措置がさまざまあり、節税効果が期待できます。
一方、白色申告は提出書類が少なかったり簡易簿記(単式簿記)での記帳でよかったりするため、青色申告に比べて確定申告の手間が少なく済みます。
節税効果を高めたい人にとっては青色申告で確定申告をしたほうがお得になるでしょう。ただし、複式簿記での記帳が必要だったり、提出書類や保存帳簿が複数あったりして手間がかかるので注意が必要です。
青色申告と白色申告それぞれのメリット・デメリットを知りたい方は、別記事「確定申告は青色申告と白色申告の2種類!それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説」をあわせてご覧ください。
誰でも青色申告できますか?
確定申告で青色申告を選択できるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のある人のみです。また、青色申告をする場合は、その年の3月15日までに開業届と青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出しなければなりません。
この2つの書類を提出していない場合は自動的に白色申告となります。
【関連記事】
青色申告とは?白色申告との違いや豊富なメリット、必要な準備・書類を解説
白色申告に向いている人は?
確定申告の対象となる所得額が少ないと、青色申告の税制上の優遇措置も限られてしまうため、節税効果が期待できない可能性があります。そのため、所得額が少ない人は青色申告よりも事務工数が少ない白色申告のほうがおすすめです。
まとめ
青色申告と白色申告は、提出する書類や記帳方法、節税効果など大きな違いがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解して、自身に適切なほうで確定申告を行いましょう。
青色申告をする場合には、その年の3月15日までに開業届と青色申告承認申請書を事前に税務署へ提出しなければなりません。事前申請がないとその年の確定申告は白色申告になるので、青色申告をしたい人は忘れずに対応しましょう。
確定申告を簡単に終わらせる方法
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。
確定申告書を作成する方法は手書きのほかにも、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用するなどさまざまですが、会計知識がないと記入内容に悩む場面も出てくるでしょう。
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監修 好川寛(よしかわひろし)
プロゴ税理士事務所代表。20年以上のキャリアをもつ国税OB税理士。税務調査や複雑な税務判断に精通し、幅広い税務相談に対応。クライアントの事業を深く理解し、長期的な視点で最適な税務戦略を支援しています。