債権・債務の基礎知識

滞留債権とは?不良債権との違いや発生する原因、回収方法などを解説

監修 寺林 智栄 NTS総合弁護士法人札幌事務所

滞留債権とは?不良債権との違いや発生する原因、回収方法などを解説

滞留債権とは、売掛金などが支払期日になっても取引先から入金されていない債権のことです。滞留債権は今後回収の見込みがあるものですが、放置しておくと将来的に債権が回収できなくなり、不良債権として損金計上しなければなりません。

本記事では、不良債権や売掛金との違いをはじめ、滞留債権が発生する原因や回収方法、滞留債権を生まないための対策について解説します。

目次

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滞留債権とは

滞留債権とは「たいりゅうさいけん」と読み、支払期日になっても入金がされていない債権のことです。

企業によって定義は異なりますが、一般的に6ヶ月以上の入金が確認できない場合は「長期滞留債権」と呼びます。また、1年を経過した滞留債権は会計上のワンイヤールール(1年基準)に則って「長期未収入金」という勘定科目で計上されます。

不良債権との違い

不良債権とは取引先が倒産するなど、将来的に回収の見込みが立たないものをいいます。一方、滞留債権は、支払いが遅れているだけで今後回収できる可能性が高いものです。債権の回収見込みがあるかどうかで、不良債権と滞留債権は区別されています。

なお、滞留債権を何年も放置していると、不良債権になり「貸倒損失」として処理しなければなりません。

売掛金との違い

売掛金とは提供した商品やサービスの代金を期日までに受け取る権利のことで、勘定科目のひとつです。

一方、滞留債権は支払期日になっても入金がされていない債権を意味する会計管理上の呼称です。そのため、売掛金が期日までに入金されなければ滞留債権になります。

【関連記事】
売掛金とは?仕訳例や管理・回収する際の注意点をわかりやすく解説

滞留債権が発生する原因

滞留債権が発生する原因を取引先と自社のそれぞれのケースに分けて解説します。

取引先に原因のあるケース

取引先が原因で滞留債権が発生する主なケースは、次の3つです。

  • 経営状態が悪化した
  • 担当者が支払いを忘れていた
  • 請求書を紛失してしまった

支払い忘れや請求書の紛失が原因であれば、取引先に督促すれば回収できる見込みは高まります。しかし、取引先の経営悪化が原因の場合は回収が難しく、不良債権になる恐れ可能性もあります。

自社に原因があるケース

自社が原因で滞留債権となる主なケースは、次の2つです。

  • 請求書の送付漏れ
  • 消し込み作業の不備

売上が立っていても取引先に請求書を送っていなければ、取引先で入金漏れが生じて滞留債権になる可能性があります。

また、実際は取引先から入金があったにもかかわらず「消し込み」と呼ばれる売掛金などのデータを取り消す作業にミスがあった場合、気づかずに滞留債権となってしまうケースも考えられます。

滞留債権が経営に及ぼす影響

滞留債権が増え、債権が回収できなくなると不良債権となり、損金計上しなければなりません。また、滞留債権の額が大きいと将来の資金不足が懸念され、金融機関などの融資が通らない可能性もあります。

最悪の場合、売上は立っているのに債権を回収できていないことが原因で、黒字倒産も考えられます。滞留債権は経営に悪影響を及ぼす可能性が高いため、速やかに回収してください。

滞留債権の回収方法

滞留債権を回収する方法を3つ紹介します。

取引先に連絡して確認する

滞留債権がある取引先に対して、いきなり督促や法的手続きを行うと失礼にあたるため、今後の関係性に影響が生じる可能性があります。まずは取引先に連絡をして、支払い忘れなどの人的ミスがないかを確認しましょう。

念のため、自社で請求書を送り忘れていたり、支払期日を間違えていたりしないかを確認してから連絡してください。

督促状や催告書を送る

取引先に連絡しても明確な回答がない場合は、督促状や催告書を送ります。督促状とは、契約上の期日までに代金が支払われなかった場合に、請求元から請求先へ支払いを促す書面のことです。

督促状を送っても支払いがなければ、送付した事実などを公的に証明できる「内容証明郵便」で催告書を送ることも検討してください。

催告書とは、債権者が債務者に対して返済を求める書面のことです。催告書は裁判などの法的措置も検討しているという意味が含まれているため、督促状よりも強制力があります。

【関連記事】
督促とは?催促との違い、督促状の書き方などを解説

法的手続きを行う

催告書を送っても支払いがなければ、法的措置の「支払督促」を検討しましょう。支払督促とは、相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立て、裁判所から金銭の支払いを求める方法です。支払督促で異議申し立てが出れば、裁判に移行します。

取引先と話し合いの余地があるなら「民事調停」や「公正証書の作成」を検討するのも手です。ただし、民事調停で不調になった場合、訴訟を起こす必要があります。

また、債権が60万円以下の場合「少額訴訟」という法的措置もあります。

滞留債権を生まないための対策

滞留債権を生まないための対策を4つ紹介します。

定期的に自社の債権の状況を確認する

まずは債権回収に関する社内ルールを設けて、定期的に確認することが大切です。確認業務の属人化を防ぐためにも、複数人に担当を割り振りましょう。

具体的にはExcelやクラウド型のシステムでの管理が挙げられます。ただし、取引量が多くなるとExcelでの管理は困難になるので、作業量に応じて請求書を管理できるシステムに移行することも検討しましょう。

滞留債権を見逃してしまうと不良債権になりかねないため、社内での定期的な確認業務は重要です。

取引先の与信管理を怠らない

与信管理とは、売掛金のように掛け取引を行う取引先の与信を管理することです。与信管理を行っていれば、取引先の支払能力以上に売掛金を計上しなかったり、そもそも掛け取引をしなかったりといった判断ができます。

与信管理を怠ると、実際は支払能力がないのに売掛金で取引してしまう可能性があるので注意してください。

【関連記事】
与信管理とは?取引先の信用を見極め、スムーズに取引を行うポイント

請求代行を活用する

請求代行をしてもらえるアウトソーシングを活用すれば、自社の負担を減らしつつ滞留債権を防ぐことが可能です。請求代行では、請求書の発行から入金管理、消し込み処理などにも対応しています。

また、請求代行のサービスによっては、与信管理と支払督促まで行ってもらえるものもあります。請求書の発行や入金確認は、毎月発生する業務のため、アウトソーシングの活用を検討してみてください。

【関連記事】
請求代行を活用するメリットは?代行システム導入の注意点も解説

請求書発行システムを利用する

請求の管理にかけられる人手が不足している場合や、請求漏れなどの人的ミスを防ぎたい場合は、請求書発行システムを利用するのがおすすめです。

請求書発行システムは効率的に請求書を発行できるシステムであり、金額の転記ミスを防げたり封入作業を削減できたりします。インボイス制度や電子帳簿保存法のような法改正にも適応してくれるシステムもあり、請求に関する作業を効率化できます。

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まとめ

滞留債権は、取引先からの支払いが遅れているだけで今後回収できる可能性が高いものの、何年も放置していると不良債権になってしまいます。滞留債権を生まないためにも、定期的に債権の状況を確認して、掛け取引を行う際は取引先の与信管理を怠らないようにしましょう。

また、請求書管理ができるシステムや請求代行をしてもらえるアウトソーシングを活用すれば、自社の負担を減らしつつ滞留債権を防ぐことができます。請求管理システムは、請求書の発行や入金管理、消し込み処理などの業務にも対応しているので、導入を検討してみてください。

よくある質問

滞留債権とは何ですか?

滞留債権とは、支払期日になっても入金がされていない債権のことで、今後回収できる可能性が高いものをいいます。

詳しくは記事内「滞留債権とは」をご覧ください。

滞留債権と不良債権の違いは何ですか?

不良債権と滞留債権は、債権の回収見込みがあるかどうかで区別されます。滞留債権は、支払が遅れているだけで今後回収できる可能性が高いものです。一方、不良債権とは取引先が倒産するなど、将来的に回収の見込みが立たないものをいいます。

詳しくは記事内「不良債権との違い」をご覧ください。

監修 寺林 智栄(てらばやし ともえ)

2007年弁護士登録。2013年頃より、数々のWebサイトで法律記事を作成。ヤフートピックス1位獲得複数回。離婚をはじめとする家族問題、労務問題が得意。

寺林 智栄

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