請求管理システムとは、自社で発行した請求書や請求先からの入金状況、顧客情報などの管理を電子化し、社内における請求管理業務の効率化を図るサービスです。
請求管理業務には、請求はもちろん入金管理や消費税計算なども含まれます。一連の作業における手間や人的ミスを削減し、請求管理業務をスムーズに進めるうえで請求管理システムの活用は有効といえるでしょう。
本記事では、請求管理システムのタイプやメリット・デメリット、選び方のポイントなどを紹介します。請求管理システム導入の流れについても解説するので、自社へのシステム導入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 請求管理システムとは
- 請求管理システムでできること
- 請求管理システムのタイプ
- クラウド型
- オンプレミス型(パッケージ型)
- オンプレミス型(独自システム型)
- 請求管理システムを利用するメリット
- 請求書発行の手間とコストを削減できる
- 誤請求・請求漏れを防止できる
- リモートワークを促進できる
- 請求管理システムを利用するデメリット
- システム利用料がかかる
- 情報漏えいのリスクがある
- 請求管理システムを導入する流れ
- 1.予算を決める
- 2.導入したい請求管理システムについて情報収集する
- 3.無料トライアルを導入する
- 請求管理システムの選び方のポイント
- 法律や税制変更に対応しているか
- セキュリティが万全か
- 取引先の事情に合わせられるか
- 運用サポートがあるか
- まとめ
- よくある質問
請求管理システムとは
請求管理システムとは、請求書の発行や作成など請求に関する管理業務を効率化し、電子化するシステムです。
請求書作成から送付、管理までシステム上で完結するため、従来、人の手によって行われていた作業の手間を大幅に削減できます。手作業によって起こり得たミスやトラブルなどの課題も解消できます。
また、電子帳簿保存法の改正により、税務関係の帳簿や書類は電子データにて保存することが認められるようになりました。請求書は取引関係書類に該当し、自ら作成した書類の写しは電子帳簿保存法の対象となるため、電子データによる保存が必要です。このような背景からも、請求管理システムの導入を進める企業が増えています。
電子帳簿保存法については、別記事「電子帳簿保存法とは?対象書類や保存要件・改正内容についてわかりやすく解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
請求管理システムでできること
管理請求システムでは、次のような業務ができます。
これらの業務は企業の売上に大きく関わる重要なもので、日々の正確な管理が求められます。
しかし、これらをすべて手作業で行うには、リソースや正確性の面で従業員の負担が大きくなりがちです。
請求管理システムの導入はこれらの業務の効率化を図り、人的ミスを減らす点で大きなメリットがあります。
請求管理システムのタイプ
請求管理システムには、オンプレミス型とクラウド型といった2つのタイプがあります。オンプレミス型は、さらにパッケージ型と独自システム型に分類されます。
請求管理システムを導入する際は、どのタイプが自社に適しているかを見極めることが大切です。それぞれのシステムの特徴について、詳しく解説します。
クラウド型
クラウド型は、インターネットを通じて請求管理サービスを利用するタイプです。
システム導入時もインターネット上で行い、独自のサーバも必要ないため、初期費用を抑えられるのが大きなメリットです。
システムのアップデートやメンテナンスもサービス提供者が行い、自社で行わなくて良いので専門的な知識がなくても簡単に利用できます。
しかし、クラウド型システムの利用はネットワーク環境に依存するため、接続が不安定な場合やセキュリティが厳格な業界では導入が難しいケースも考えられます。
オンプレミス型(パッケージ型)
オンプレミス型は、企業が自社のサーバにシステムを設置して利用するタイプです。
パッケージ型では、パッケージ化されたシステムのライセンスを購入して利用します。追加費用不要で永久に使い続けられるタイプ(買い切りタイプ)と、年単位などで利用料を支払って使うサブスクリプションタイプがあります。
パッケージ型のシステムは、利用者によってアップデートやメンテナンスが必要です。また、自社のニーズに合わせた機能追加や変更などのカスタマイズには追加料金がかかるのが一般的で、クラウド型よりもコストがかかる傾向にあります。
一方で、インターネット接続不要で利用できるので、ネット環境に依存せず利用しやすいタイプといえます。
オンプレミス型(独自システム型)
オンプレミス型の独自システム型は、自社の独自の要件に合わせて開発されたシステムです。
自社のニーズに合ったシステムを構築でき、業務の最適化や効率化も大いに期待できますが、開発コストは高い傾向にあります。
請求管理システムを利用するメリット
請求管理システムを利用するメリットには、次の3つが挙げられます。
請求管理システムを利用するメリット
- 請求書発行の手間とコストを削減できる
- 誤請求・請求漏れを防止できる
- リモートワークを促進できる
請求書発行の手間とコストを削減できる
請求管理システムには請求書のフォーマットがあらかじめ用意されており、単純な入力操作だけで請求書を自動で作成できます。
請求書の発送作業についても、システムを介して自動的にクライアントへ請求書の送信が可能です。
何百もの請求書を個別に送信する必要がないので、これまでに手作業でかかっていた請求書発行の手間を大幅に削減できます。
また、請求管理システムを利用した請求書発行は、紙の場合と比較して発送にかかる以下のようなコストが一切かかりません。
- 請求書の印刷
- 請求書の封入
- 封筒への宛先記載
- 郵便局への持ち込みなど
システムによって請求管理業務が自動化されるため、人件費も節約できます。
なお、クライアントによっては請求書の郵送が必要となるケースもあります。このような場合には、サービス提供者などが展開している郵送代行を利用することも可能です。
ただし、システムによっては、郵送代行を提供していない場合もあるため、注意が必要です。
誤請求・請求漏れを防止できる
手作業による請求書作成・発行は、誤請求や請求漏れなど、クライアントの信用を失うような人的ミスを招く恐れがあります。
請求管理システムを利用することで、確実な請求管理が可能になり、人的ミスによる誤請求・請求漏れなどの防止につながります。
リモートワークを促進できる
昨今のリモートワークの普及に伴い、請求管理システムの価値も高まっています。これまでの紙ベースの請求管理業務では、「出社しないと請求書を確認できない」という課題を抱えていました。
請求管理システムの導入によってこのような課題を解消し、リモートワークでも業務を円滑に進められます。
すぐに特定のデータを取り出したい場合でも、請求管理システムなら社外からも簡単にアクセスが可能です。属人化を解消し、担当者が休みだと必要なデータがどこにあるか分からなかったという状況も打開できます。
請求管理システムを利用するデメリット
請求管理システムの利用によるデメリットは以下のとおりです。
請求管理システムを利用するデメリット
- システム利用料が発生する
- 情報漏えいのリスクがある
システム利用料がかかる
請求管理システムを導入するには、システム利用料が必要となります。初期導入費用をはじめ、タイプによっては月額または年額のライセンス料が発生することもあります。また、システムによっては多機能なものもあり、場合によっては高額な利用料がかかります。
高額な料金なら、導入を控えようと考える人もいるかもしれませんが、手間やコストを考慮すると請求管理システムの利用料はそこまで高いものだというわけではありません。
なお、利用料はシステムによってさまざまなので、自社にとってメリットのある機能が備わっているかを事前に確認したうえで、最適な請求管理システムを選ぶことが大切です。
情報漏えいのリスクがある
請求管理システムの利用には、情報漏えいのリスクがあります。請求管理システムのタイプによっては、オンライン上にデータが保存されるため、外部から不正アクセスされる恐れがあるためです。
請求管理システムの利用による情報漏えいを防止するためには、データのセキュリティを確保する対策を講じることが重要です。
具体的には、機密性の高いデータについてはアクセス権限を制限したり、常時アクセスを監視する体制も整えたりすることが挙げられます。
また、請求管理システム自体にも以下のような対策が施されているものを選ぶようにしましょう。
- 2段階認証
- IPアドレス制限
- SAMLログイン
それぞれの対策については「セキュリティが万全か」にて後述します。
請求管理システムを導入する流れ
請求管理システムを導入する流れは、以下の4ステップです。
請求管理システムを導入する流れ
- 予算を決める
- 導入したい請求管理システムについて情報収集する
- 無料トライアルを導入する
- 導入するシステムを決定する
1.予算を決める
請求管理システム導入にあたって、まずは予算を設定します。すでに説明したように、請求管理システムの導入には一定の費用が発生するので、予算の範囲内で最適なシステムを選定することが重要です。
予算を決定する際には、システムの導入・運用コストだけでなく、維持・保守にかかる費用も考慮します。
2.導入したい請求管理システムについて情報収集する
次に、自社に必要な機能や業務要件に当てはまる請求管理システムをいくつか候補を挙げていきます。
候補を絞る際には、すでに自社で利用している他システムとの連携可否についても確認するのがおすすめです。
システムの候補を絞ったら、実際にそのシステムのサービス内容を詳しく知るために情報収集します。
3.無料トライアルを導入する
情報収集してある程度システムの内容を把握できたら、無料トライアル版があれば、実際の使い心地を確認するためにも一度導入することをおすすめします。
また、他社員にも使ってもらった上でフィードバックをもらい、システム導入の検討材料にします。
ここまで社内検討したうえで、最終的に自社に合ったシステムを決めましょう。システム導入が手配できたら、実際にシステムの利用が開始します。
請求管理システムの選び方のポイント
一度請求管理システムを導入すると、別のシステムへ変更することは簡単ではありません。
最初から自社に合った適切な請求管理システムを選ぶためには、以下の4つのポイントをチェックしましょう。
請求管理システムを選ぶ4つのチェックポイント
- 法律や税制変更に対応しているか
- セキュリティが万全か
- 取引先の事情に合わせられるか
- 運用サポートがあるか
それぞれ詳しく解説します。
法律や税制変更に対応しているか
請求書の発行・管理には法律や税制が大きく関係します。請求管理システムで、法律や税制の変更に対応できるかどうかを確認しましょう。
特に、サービス提供者側でシステムに対して改正後の法律や税制に適用してくれるかを確認することが大切です。
セキュリティが万全か
請求管理システムでは、複数の取引先の情報を取り扱うことになるため、セキュリティが万全かどうかが重要な要素となります。
具体的には、以下のポイントを確認しましょう。
セキュリティに関するチェックポイント
- 2段階認証:システムへアクセスする際などに、パスワードに加えて別の認証手段を要求。不正アクセスを防ぐ効果がある。
- IPアドレス制限:指定されたIPアドレスからのみアクセスを許可する。外部からの不正アクセスを防ぐ。
- SAMLログイン:ひとつのログイン情報で複数のシステムにアクセスが可能。パスワード管理を一元化し、セキュリティ強化につながる。
取引先の事情に合わせられるか
取引先の中には、紙ベースでの請求書にしか対応しておらず、電子メールでの請求書送付ができないケースもあります。
このような取引先の事情にも対応できるように、郵送代行サービスを提供しているかどうかについても、システムを選ぶ際のチェックポイントです。
運用サポートがあるか
請求管理システムを導入してから運用後も、さまざまなトラブルが発生する場合があります。このような運用後に出てきた疑問や不明点などを問い合わせられるように、サービス提供会社にサポート体制が整っているかを確認することも大切です。
サポート方法としてメールやチャット、電話など、どのような手段での問い合わせに対応しているかを確認します。
また、サポート内容としては質問回数の上限や返信にかかる時間、サポートの有償・無償の対応範囲なども確認できると、導入後により安心してシステムを利用できます。
まとめ
請求管理システムは、請求書の作成・発行から入金状況の追跡、顧客情報の管理などを一元化し、請求管理業務のスムーズな進行が可能です。
従来、手作業で行うことで手間とコストがかかっていた請求関連業務は、システム導入によって作業負荷を大幅に軽減でき、人的ミスの防止も期待できます。
なお、請求管理システムにはさまざまなタイプがあります。本記事で紹介したシステムを選ぶチェックポイントを参考に、自社に最適なシステムを選んでください。
よくある質問
請求管理システムとはどのようなシステム?
請求管理システムとは、請求書の発行や作成など請求に関する管理業務を効率化し、電子化するシステムです。
請求書作成から送付、管理までシステム上で完結するため、従来、人の手によって行われていた作業の手間や人的ミスを削減できます。
詳しくは記事内「請求管理システムとは」をご覧ください。
請求書発行システムを選ぶポイントは?
自社に合った適切な請求管理システムを選ぶためには、以下の4つのポイントをチェックしましょう。
- ・法律や税制変更に対応しているか
- ・セキュリティが万全か
- ・取引先の事情に合わせられるか
- ・運用サポートがあるか
一度請求管理システムを導入すると、別のシステムへ変更することは容易ではありません。初めから自社に最適なシステムを選択するためには、このチェックポイントを確認することをおすすめします。
詳しくは記事内「請求管理システムの選び方のポイント」をご覧ください。