監修 前田 昂平(まえだ こうへい) 公認会計士・税理士
請求業務の代行システムとは、請求書に関する一連の業務を自動化する機能を備えたシステムのことです。システムによって機能に差はありますが、請求書の発行から送付、請求ごとの債権管理、振込があった際の債権との入金消込まで、経理のさまざまな業務に役立ちます。
本記事では、請求業務の代行システムでできること・メリット、導入の注意点、請求業務の代行システムの選び方を解説します。
目次
請求業務の代行システムでできること
請求業務の代行システムとは、請求書に関する一連の業務を自動化する機能を備えたシステムのことです。具体的には、請求書の発行から送付、請求ごとの債権管理、振込があった際の債権との入金消込まで、システム上の操作で処理できます。
請求書には会社によって独自のフォーマットやルールなどがあるため、近年のシステムはカスタマイズ性に優れたものも増えています。これまで使ってきたフォーマットを変えずにシステムに移行できたり、請求書の送付先や送付方法を顧客ごとに変更できたりと、柔軟な運用が可能になっているため、導入企業は増加傾向にあります。
請求業務の代行システムを導入するメリット
請求業務の代行システムでできることを説明しましたが、より具体的な導入メリットを紹介します。システム導入によって得られる主なメリットは、次の5つです。
請求代行システムを導入するメリット
- 事務作業の省力化
- 債権管理の効率化
- 人的ミスの防止
- 郵送コストの削減
- 法改正への柔軟な対応
事務作業の省力化
請求業務の代行システムの導入によって、一連の請求業務を自動で処理できるようになるため、これまで時間を費やしていた事務作業の省力化につながります。
企業が事業活動を行ううえで、請求業務は必ず発生するものです。各部署の担当者や経理担当者がすべて手作業で処理する場合、どうしても時間や手間がかかります。
請求業務の代行システムを導入すれば、担当者の作業負担が減り、より注力すべきコア業務に集中できるようになるでしょう。組織内の人的リソースが最適化され、生産性向上が期待できます。
債権管理の効率化
請求業務の代行システム導入の大きなメリットとして、債権管理の効率化が挙げられます。
手作業で債権管理を行う場合、債権未回収や請求漏れが発生した際には、何が原因で、どの顧客から入金がないのかなどを確認するのに時間がかかりがちでしょう。
システム上での一元管理に切り替えることで、債権未回収や未収入金をリアルタイムに把握し、督促などの対応がしやすくなります。そもそも請求が漏れていないかも確認が可能です。システムの導入は業務の効率化だけでなく、健全な債権管理の実現というメリットも期待できます。
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人的ミスの防止
請求業務に限りませんが、手作業による処理は対応ミスや漏れのリスクを高めます。たとえば、請求書の送付漏れや二重送付、金額などの誤りなどが考えられるでしょう。
請求業務は企業にとって重要なのはもちろん、顧客にも影響を及ぼすため、致命的なミスが起きてしまった場合は取引の停止や社会的信用の低下にもつながりかねません。
一連の請求業務をシステムで自動化することで、人的ミスを防ぎ、より正確な処理が行えるようになります。
郵送コストの削減
請求書を顧客や取引先へ郵送している場合、郵送コストも無視できません。2024年10月からの郵便料金値上げに伴い、請求書を郵送する件数の多い企業では、コストの増加が大きな負担となっています。
一般的な請求業務の代行システムには、請求書をデータで送信できる機能が備わっています。郵送コストが抑えられるほか、紛失のリスクがなくなるといったメリットも得られるでしょう。
また、取引先の要望によっては、すべての請求書を電子送付に切り替えられないケースもあるかもしれません。その場合は、取引先ごとに郵送と電子送付のいずれかを選択できるシステムの選定をおすすめします。
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法改正への柔軟な対応
請求業務は、電子帳簿保存法やインボイス制度など、さまざまな法律の影響を受けやすいものです。法改正などがあるたびに法的要件を満たす環境整備が必要となるうえに、対応が間に合わない場合は罰則に科せられる可能性もあります。
請求業務の代行システムは法改正に応じて順次アップデートされるものが多いため、自社で一からオペレーションを変更しなくても、法律を遵守した対応が可能になります。
請求業務の代行システムを導入する際の注意点
導入することでさまざまなメリットを得られる請求業務の代行システムですが、導入にあたって注意すべき点もあります。
一つは、導入にあたっての初期費用や、毎月のランニングコストが発生するという点です。費用や料金体系はシステムによって異なるため、導入前に詳しく確認しましょう。
もう一つは、事業規模が小さく請求書の発行件数が多くない場合は、システム導入の費用対効果が期待できない可能性がある点です。システムを導入することで既存業務がどう変化し、どのくらいの効率化が図れるか、費用面とあわせてよく検討する必要があります。
請求業務の代行システムの選び方
導入するシステムが自社に合っていなければ、思うような効果は見込めません。
具体的にどのような観点で請求業務の代行システムを選ぶべきか、次の3つのポイントから解説します。
- 自社のビジネスモデルに適しているか
- 請求書発行以外の業務も対応可能か
- 既存システムとの連携が可能か
自社のビジネスモデルに適しているか
導入を検討している請求業務の代行システムが、自社の業務に合っているか、自社のビジネスモデルに適しているかは必ず確認してください。
業界特有の慣習や支払いサイクルがある場合、カスタマイズ性の低いシステムでは対応しきれないケースがあります。たとえば、近年急成長しているサブスクリプション型のビジネスを行っている会社や、返品が発生する委託販売を行っている会社などは、システムの機能にマッチしない可能性があるでしょう。
また、既存事業だけでなく今後予定している新規事業があるのであれば、長期的な影響も踏まえて最適なシステムを検討すべきです。
請求書発行以外の業務も対応可能か
請求業務の代行システムを導入するうえでは、どういった機能があり、請求業務のどの部分までカバーできるかも、確認しておくべきポイントです。
前述のとおり、請求書の発行から送付、請求ごとの債権管理、振込があった際の債権との入金消込まで、一連の請求業務をシステム上で完結できるものもあります。システム導入の費用対効果を考慮すると、できるだけ多くの業務でシステムを活用できるほうがメリットは大きいといえるでしょう。
請求書の発行や送付だけでなく、請求業務の全般にわたってシステムを活用したい場合は、自社にとって必要な機能と導入費用のバランスを見て判断しましょう。
既存システムとの連携が可能か
すでに基幹システムや営業支援システム、会計システムを導入していたり、自社で構築していたりする企業は少なくないでしょう。この場合、請求業務の代行システムと連携することで、社内の業務を多角的に効率化できるようになります。
ただし、すべての請求業務の代行システムが他のシステムとの連携に対応しているわけではありません。システム連携には改修のための時間や費用がかかるケースもあるため、それぞれのシステムの開発元に必ず確認しておきましょう。
また、システムの連携はできても、いざ使ってみると業務がスムーズに進まないという可能性も考えられます。業務効率化を目指すどころか、かえって手間がかかるようでは本末転倒です。こうしたリスクを防ぐには、導入前の念入りなシミュレーションをおすすめします。
まとめ
請求業務の代行システムは、業務効率化の観点から注目度が高く、近年は導入する企業が増えています。また、債権未回収を放置してしまうと、いずれ会社の経営状態に影響が及ぶリスクが考えられます。そのため、債権管理の仕組み化という観点でも、請求業務の代行システムの導入は効果的です。
システムによって機能や費用、特徴が異なるため、自社の業務やビジネスモデルとの相性を見極め、最適なシステムを検討する必要があります。既存事業はもちろん、新規事業の展開も見据えて、長期的に導入メリットが得られそうなシステムを選定しましょう。
よくある質問
請求代行システムとは?
請求業務の代行システムとは、一連の請求業務を自動化する機能を備えたシステムのことです。
詳しくは記事内「請求業務の代行システムでできること」をご覧ください。
請求代行システムの導入メリットは?
請求代行システムの導入によって得られる主なメリットは、次の5つです。
- 事務作業の省力化
- 債権管理の効率化
- 人的ミスの防止
- 郵送コストの削減
- 法改正への柔軟な対応
詳しくは記事内「請求業務の代行システムを導入するメリット」で解説しています。
監修 前田 昂平(まえだ こうへい)
2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。2022年9月に独立開業し現在に至る。