人事労務の基礎知識

社会保険料とは?改定のタイミングや注意点などをわかりやすく解説

社会保険料とは?改定のタイミングや注意点などをわかりやすく解説

社会保険料とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険からなる社会保険の保険料のことです。 社会保険料は、給与などの1ヶ月分の報酬を一定の範囲ごとに区分した標準月額報酬をもとに算出します。

本記事では、社会保険料の種類や負担割合、改定のタイミング、支払いが免除される期間について詳しく解説します。

▶︎ 社会保険の計算方法については、まずはこちらの記事!

社会保険料の計算方法まとめ!算出方法や賞与についてもわかりやすく解説

目次

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社会保険料とは

一般的に社会保険料とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険からなる社会保険の保険料を指します。

これらは広義で使用される社会保険料であり、狭義の社会保険料は健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つの保険料を指します。雇用保険・労災保険の保険料はまとめて労働保険料と呼びます。

会社員および一定の条件を満たすパート・アルバイトの人には、健康保険と厚生年金保険の加入義務が生じます。これらの社会保険料を支払うことで、病気やケガなどのリスクに備えられたり、将来的に年金が支給されたりします。

社会保険の定義


社会保険の加入条件についての詳細は別記事「社会保険の加入条件を解説!手続き方法や提出書類をわかりやすく」をあわせてご確認ください。

【関連記事】
社会保険とはこんな仕組み!国民健康保険との違いや、切替方法を解説

社会保険料の種類

社会保険料には、以下の5種類があります。


種類内容
健康保険料従業員とその扶養家族を対象に、病気・怪我・出産で生じる医療費を補償する制度に対する保険料
厚生年金保険料正社員・公務員本人が加入できる保険で、老後の生活を補償する制度に対する保険料
介護保険料高齢者・障害者を支援する制度に対する保険料
雇用保険料労働者の雇用・生活安定を補償するための制度に対する保険料
労災保険料就業中の事故・病気を対象にした制度に対する保険料

社会保険料の負担割合

社会保険料の負担割合と保険料率は、以下のとおり社会保険の種類によって異なります。

また、健康保険料率は都道府県によって異なるため、以下に示しているのは東京都の健康保険料率です。さらに、雇用保険と労災保険については業種によって保険料率が変動します。


種類負担割合保険料率
健康保険料従業員と会社で折半9.98%(東京都の場合)
厚生年金保険料従業員と会社で折半18.3%
介護保険料従業員と会社で折半1.60%
雇用保険料業種によって負担額が変動するが、会社の負担がやや多い15.5/1,000~18.5/1,000
労災保険料会社が全額負担3/1,000~52/1,000
出典:全国健康保険協会「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」
出典:日本年金機構「厚生年金保険料額表」
出典:全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」
出典:厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について」
出典:厚生労働省「特別加入保険料率表(令和4年7月1日施行)」

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、社会保険料の計算を容易にするため、従業員が得た給与などの1ヶ月分の報酬を一定の範囲ごとに区分したものです。

それぞれの区分を「等級」と呼び、健康保険は50等級、厚生年金保険は32等級に分けられています。それらの等級に対して標準報酬月額が定められており、その標準報酬月額をもとに社会保険料を算出します。

標準月額報酬と社会保険料の計算についての詳細は別記事「標準報酬月額とは?決め方や変更方法、計算方法をわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。

標準報酬月額の対象となる賃金

標準報酬月額の対象となる賃金、対象外となる賃金は以下のとおりです。


標準報酬月額の対象となる賃金標準報酬月額の対象外となる賃金
・基本給
・残業手当
・家族手当
・住宅手当
・役職手当
・通勤手当
・(年4回以上の場合)
・祝い金、見舞金
・出張旅費
・臨時に支給されるもの(年3回以下の賞与など)
・退職手当

標準報酬月額は、基本給および諸手当に適用されます。

なお、標準報酬月額に一時的な収入は含まれません。

たとえば、賞与が年3回以下であれば一時的な報酬とみなされるため、標準報酬月額の対象外です。賞与が年4回以上支給される場合は、給与と同様に定期的な報酬とみなされます。

出典:全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?」

社会保険料が改定されるタイミング

社会保険料は、毎年2月を基準に見直しとなり、3月分(4月納付分)より改定される場合があります。

また、標準報酬月額も定期的に見直されるほか、以下の条件により改定されることもあります。

標準報酬月額の改定条件

  • 定時決定
  • 資格取得時決定
  • 随時改定
  • 育児休業等終了時改定

定時決定

定時決定とは、毎年7月に実施される標準報酬月額の改定のことです。

7月1日現在で事業所に在籍している被保険者の4月から6月の平均報酬額を計算し、その年の標準報酬月額を決定します。このときに決定した標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで適用されます。

また、事業主は、毎年7月10日までに「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届/厚生年金保険 70歳以上被用者算定基礎届」を事務センターもしくは管轄の年金事務所に提出する必要があります。

なお、以下に該当する場合は、算定基礎届を提出する必要はありません。

算定基礎届の提出対象外

  • 6月1日以降に資格取得した人
  • 6月30日以前に退職した人
  • 7月改定の月額変更届を提出する人
  • 8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った人

出典:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」

資格取得時決定

資格取得時決定とは、新入社員が入社し、社会保険の被保険者資格者になった段階で行われる標準報酬月額の決定のことです。

新入社員の場合は、給与の実績がないため標準報酬月額を算出できません。この場合は見込額を用いて標準報酬月額を決定します。

基本給や通勤手当などの固定部分に残業手当などの流動的な部分を見込みで加えることで、1ヶ月分の見込額を算出します。その見込額を標準報酬月額に当てはめることで、新入社員の社会保険料を算出できます。

見込額によって算出された標準報酬月額は8月まで適用され、9月以降は4月から6月までの実際の給与にもとづいた標準報酬月額が適用されます。

なお、資格取得時決定の際、事業主は新入社員を雇用した日から5日以内に「被保険者資格取得」を事務センターもしくは管轄の年金事務所に提出する必要があります。

出典:日本年金機構「資格取得時の決定」

随時改定

定時改定を待たず標準報酬額を改定することを随時改定といいます。

基本給や家族手当など固定部分が過去3ヶ月の賃金の平均から2等級以上変動があった場合に随時改定が実施されます。

随時改定の際は、事業主が「被保険者報酬月額変更届」を事務センターもしくは管轄の年金事務所に提出します。

出典:日本年金機構「随時改定(月額変更届)」

育児休業等終了時改定

育児休業等終了時改定とは、育児休業から従業員が復職した際に標準報酬月額の見直しが入ることをいいます。

以下の条件に該当する場合に育児休業等終了時改定が行われます。

育児休業等終了時改定の条件

  • 育休前と比較して標準報酬月額が1等級以上変動した
  • 育児休業終了日翌日から3ヶ月間、1ヶ月の支払基礎日数が17日を超える

育児休業等終了時改定による標準報酬額の改定が1月から6月までの場合、同年8月までの各月で適用されます。(改定が7月から12月までの場合は翌年8月までの各月で適用)

育児休業等終了時改定の際は、「育児休業等終了時報酬月額変更届 厚生年金保険 70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額相当額変更届」を事務センターもしくは管轄の年金事務所に提出することで手続きできます。

出典:日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」

社会保険料に関する注意点

社会保険料にはいくつかの注意点があります。以下では間違えやすい2点を解説します。

産休・育休中は社会保険料の支払いが免除される

産休・育休中は、事業主・従業員ともに社会保険料の支払いが免除されます。

免除の対象期間は以下のとおりです。

社会保険料の支払い免除期間

  • 産休:産休開始月から終了日の翌日が属する月の前月まで
  • 育休:育休開始月から終了日の翌日が属する月の前月まで

雇用保険料を除く社会保険料は日割り計算がない

雇用保険料を除いた社会保険料は月単位での計算となり、日割りの減額はありません。たとえば、月の途中で新たに就職した場合でも、その月の保険料は全額支払う必要があります。

また、退職に関しては、社会保険の資格喪失日は退職日の翌日となります。したがって、退職日が月末であれば、その翌月の資格喪失日に至るまでの月分(退職月分)の保険料を支払う必要があります。

社会保険の二重加入が起きる可能性がある

国民健康保険の被保険者である方が企業などに従業員として入社し、社会保険の適用対象となった場合は、従業員自ら国民健康保険資格喪失手続きを行わなければ二重加入の状態になります。その場合、国民健康保険の保険料も請求されてしまいます。

国民健康保険資格喪失手続きは、勤務先の会社で社会保険資格を取得した日から14日以内に行う必要があります。

ただし、国民年金に関しては会社が社会保険の加入手続きを行った段階で、国民年金第1号被保険者から第2号被保険者に切り替わるため、従業員側の手続きは不要です。

また、これまで収入が少なく家族の扶養に入っていた場合は、収入の増加や2024年10月以降の社会保険適用拡大によって社会保険の資格要件を満たすようになるケースも考えられます。社会保険適用拡大については別記事「社会保険の適用拡大とは?2024年10月以降の変更点や企業への影響」をご覧ください。

上記のようなケースでは、自身の勤務先で社会保険に加入する必要が生じます。具体的には、勤務先で「健康保険被扶養者(異動)届」の手続きをして被扶養者の削除を行います。この手続きを行わないと二重加入が起こる可能性があるため、注意が必要です。

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まとめ

社会保険料とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の5つからなる社会保障制度の保険料のことです。

社会保険料は標準報酬月額をベースに適宜改定されるため、定時決定・資格取得時決定・随時改定・育児休業等終了時改定それぞれの改定内容についても覚えておきましょう。

よくある質問

社会保険料とは?

社会保険料とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険からなる社会保険の保険料のことをいいます。

詳しくは記事内「社会保険料とは」をご覧ください。

標準報酬月額の対象となる賃金は?

標準報酬月額の対象となる賃金は、以下のとおりです。


  • 基本給
  • 残業手当
  • 家族手当
  • 住宅手当
  • 役職手当
  • 通勤手当
  • 賞与(年4回以上の場合)

詳しくは記事内「標準報酬月額の対象となる賃金」をご覧ください。

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