人事労務の基礎知識

雇用保険とは?加入条件や計算方法、手当の種類について解説

雇用保険とは?加入条件や計算方法、手当の種類について解説

雇用保険とは、失業者の生活保障や雇用促進を目的とした公的保険で、一定の条件を満たしている従業員が加入する社会保険のひとつです。

失業等給付や育児休業給付など、労働者が失業や休業した時にも安心して生活できるよう、さまざまな給付金が用意されています。

本記事では、雇用保険の加入対象者や社会保険との違い、手当の種類について詳しく解説します。

▶︎ 社会保険の加入条件については、まずはこちらの記事!

社会保険の加入条件とは?適用範囲拡大や従業員50人以下の場合について解説

目次

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雇用保険とは

雇用保険とは、労働者の失業時や継続的な雇用に困難な事由が生じた際、労働者の暮らしと雇用の安定を図るために必要な給付を行う公的保険です。


出典:e-Gov法令検索「雇用保険法 第1条」


雇用保険では、下図のとおり失業等給付・求職者支援事業・育児休業給付・雇用保険二事業の4つを実施しています。

雇用保険制度の概要

雇用保険制度の概要



出典:厚生労働省「雇用保険制度の概要(令和5年9月12日交付)」

雇用保険の目的

失業したときの再就職はもちろん、失業・育児・介護・定年後再雇用などによって収入が減少する労働者の生活維持を支援するのが雇用保険の大きな目的です。

雇用保険による雇用の支援は、労働者に対してだけでなく事業所に対しても行われます。労働者を雇用し続けるのが難しい理由が生じた場合に、事業主へ雇用を継続するための助成金や給付金などが支給されます。

具体的には、障がい者や母子家庭の母親、高齢者など就職が困難だとされている者を雇用した際に支給される特定求職者雇用開発助成金や、非正規労働者が企業内でキャリアアップするための取り組みを行っている企業に支給されるキャリアアップ助成金などが挙げられます。

また、職業経験や技能、知識などが不足しているため安定した就職が難しい求職者を一定の期間試行雇用した企業に給付されるトライアル雇用奨励金なども、雇用保険による支援のひとつです。

雇用保険の加入メリット

雇用保険に加入していることで、失業した場合や収入が減った場合に条件を満たせば「基本手当(失業手当)」や「高年齢雇用継続基本給付金」「育児休業給付金」「介護休業給付金」などの給付を受けることができます。

労働者が職業に関係があり条件に合う教育訓練を受けた場合にも「教育訓練給付金」を受けることができます。

社会保険との違い

社会保険は、広義の意味では健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つの保険の総称のことを指します。生活を保障する公的保険制度で、病気や怪我、介護、失業、労働災害などのリスクに対応します。

雇用保険は、社会保険のひとつとして失業や休業に対する給付を行うとともに、雇用の促進やスキル向上の支援を目的として設けられています。

また、社会保険の狭義の意味では、健康保険・厚生年金保険・介護保険を「社会保険」と呼び、雇用保険・労災保険を「労働保険」と呼んでいます。

社会保険の加入には一定の月額基準があり、労働保険には月額基準が設けられていないなど、それぞれ目的や加入条件が異なります。

詳細は別記事「社会保険と雇用保険の違いは?内容や加入条件の違いについて解説」で解説していますので、あわせてご覧ください。

雇用保険の加入対象となる人

雇用保険は、事業所の規模にかかわらず以下の条件を満たしていれば加入対象になります。

雇用保険の加入対象となる人

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用見込みがあること

ここでいう所定労働時間は、雇用契約上の労働時間をいい、一時的に週20時間労働したとしても時間要件を満たしたことにはなりません。

また、以下の場合には雇用契約期間が31日未満であっても、原則は31日以上の雇用が見込まれるものとみなして雇用保険の加入対象となります。


  • ・雇用契約に更新する場合がある旨の規定があり、31日未満での雇止めの明示がないとき
  • ・雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績があるとき

なお、加入条件を満たせば、在日外国人でも国籍問わず加入対象となります。


出典:厚生労働省「雇用保険に加入していますか」


【関連記事】
雇用保険の加入条件は? 加入手続きの方法や必要書類について

パート・アルバイトで働いている場合

パートやアルバイトで勤務している場合も、下記のいずれにも該当するときは雇用保険の加入対象となります。

アルバイトで雇用保険対象になる人

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用見込みがあること

ダブルワークで2ヶ所以上の事業所から賃金を得ている場合、生計を維持するうえでメインとなる事業所において加入条件を満たすかどうかで判断されます。

たとえば、アルバイト先Aで15時間、別のアルバイト先Bで10時間勤務している場合は、合計の労働時間が25時間となりますが、加入対象となりません。

ただし、65歳以上の場合は、2ヶ所以上の事業所で所定労働時間が合計20時間以上であれば、本人の申し出によって雇用保険の加入対象となる制度を試行しています。


出典:厚生労働省「雇用保険制度の概要(令和4年5月30日交付)」

雇用保険の加入対象とならないケース

雇用保険の加入対象とならない主なケースは以下のとおりです。

雇用保険の加入対象とならないケース

  • 法人の代表取締役や取締役(労働者性の強い兼務役員を除く)
  • 個人事業主
  • 公務員
  • 同居親族
  • 家事使用人
  • 昼間学生

その他、所定労働時間が20時間未満の労働者や31日以上雇用が見込まれない労働者も加入対象外です。


出典:厚生労働省「被保険者に関する具体例」

雇用保険手当の種類

雇用保険には、労働者が失業した場合の生活を保障する手当や就職を促進するための手当などが設けられています。

主な手当の種類は以下のとおりです。


求職者に対する主な手当・基本手当(失業手当)
・技能習得手当
・寄宿手当
・傷病手当
・高年齢求職者給付金
・特例一時金
・日雇労働求職者給付金
就職を促進するための手当・就業手当
・再就職手当
・就業促進定着手当
・常用就職支度手当
・移転費
・求職活動支援費
教育訓練を受講した場合の給付・教育訓練給付金
・教育訓練支援給付金
雇用を継続するための給付・高年齢雇用継続基本給付金
・高年齢再就職給付金
・育児休業給付金
・介護休業給付金

求職者に対する主な手当

求職者給付は、労働者が失業した場合に支給される手当です。失業した労働者の生活の安定と所得の保障を目的に支給されます。

基本手当(失業手当)

基本手当は、一般的に「失業手当」や「失業保険」といわれる給付金です。労働者が失業した場合に、次の就職先が決まるまでの生活保障として支給されます。

基本手当は、離職日以前に12ヶ月または6ヶ月以上被保険者であったことが支給条件です。必要な被保険者期間は離職理由によって異なります。

要件を満たしている場合は、離職票をハローワークに持参し、求職の申込み手続きを行うことで一定期間、基本手当を受給できます。

技能習得手当

技能習得手当は、基本手当受給資格者が指定の公共職業訓練を受ける際に基本手当とは別に受けられるもので、受講手当と通所手当の2つに分類されます。

受講手当は、訓練を受講した日に基本手当に加えて支給される手当です。一方の通所手当は、訓練施設への移動に要する交通費として支給されます。

寄宿手当

公共職業訓練を受けるために、生計維持されている同居家族と別居して寄宿する際に原則1万700円が支給される手当です。

なお、寄宿手当は、公共職業訓練の受講期間中に支給されるもので、受講開始前や受講開始後の寄宿日については支給されません。

傷病手当

求職の申し込み後の基本手当受給資格者が、病気やけがのために15日以上継続して仕事に就けない場合に基本手当に代えて支給されます。

高年齢求職者給付金

高年齢継続被保険者(65歳以上の被保険者であって、短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者とならない人)が失業した場合に、被保険者であった期間に応じて一時金として支給される給付金です。

被保険者期間が1年以上の場合は基本手当の50日分、1年未満の場合は基本手当の30日分が支給されます。

特例一時金

季節的に雇用されていて、短期雇用特例被保険者(4ヶ月以上雇用され、週の所定労働時間が30時間以上の者)に該当する人が失業した際に支給される一時金です。

離職日から6ヶ月以内にハローワークへ求職の申し込みを行うことで、基本手当の40日分が支給されます。

日雇労働求職者給付金

日雇労働被保険者が失業した場合に支給される給付金です。

印紙保険料(日雇労働被保険者にかかる保険料)の納付枚数に応じて給付日数が決定されます。


出典:ハローワーク インターネットサービス「基本手当について」

就職を促進するための手当

就職促進給付は、失業者が再就職するための援助・促進することを目的として支給される手当です。

再就職手当

基本手当受給資格者が、所定給付日数が3分の1以上残っている状態で再就職した場合に支給要件を満たしていれば支給される一時金です。

残日数が3分の1以上の場合は残日数分の60%、3分の2以上の場合は残日数分の70%が支給されます。

就業手当

再就職したものの、雇用形態が再就職手当の対象外となる常用雇用以外(アルバイトなど)の形態で就職した場合に支給される手当です。

就業に就いている日ごとに、基本手当日額の30%が支給されます。ただし、就業前日に基本手当の残日数が3分の1以上かつ45日以上あることが支給要件となります。

就業促進定着手当

転職後の賃金が、転職前の賃金と比較して低下している場合に支給される手当です。

再就職手当を受給し、かつ6ヶ月以上雇用されていることを要件に、最大で基本手当の40%が支給されます。

常用就職支度手当

障害のある方など就職が困難な受給資格者が、安定した職業に就いた際に支給されます。

支給額は、原則として「90日×40%×基本手当日額」ですが、基本手当の支給残日数が90日未満である場合には、支給残日数に相当する日数分となります。

移転費

受給資格者がハローワークなどが紹介した職業に就くため、あるいはハローワークの所長が指示した公共職業訓練等を受講するために移転に要する費用を支給します。

広域求職活動費

受給資格者等が待機期間後に広域求職活動を開始したり、ハローワークの紹介で、求職活動のため遠方の事業所に訪問したりする際などにかかる交通費や宿泊料として支給されます。

短期訓練受講費

受給資格者がハローワークの職業指導で再就職に必要な教育訓練を受け終了した場合に、支払った教育訓練経費の一定額が支給されます。

求職活動関係役務利用費

受給資格者が求人者との面接や教育訓練受講などのため、子どもの保育サービスなどを利用した際に、本人が負担したサービス利用の費用の一部が支給されます。


出典:ハローワーク インターネットサービス「就職促進給付」

教育訓練を受講した場合の給付

教育訓練給付制度は、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。

教育訓練給付金

一定条件を満たす一般被保険者や一般被保険者でなくなって1年以内の者が指定の教育訓練を受講終了した場合に、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給されます。

受講する講座によって「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」に分かれており、それぞれで上限額が異なっています。


出典:厚生労働省「教育訓練給付制度」

雇用を継続するための給付

雇用継続給付は、高齢や育児、介護などの事由が起こった際に、雇用継続を支援する目的で給付されるものです。

高年齢雇用継続基本給付

高齢者が再雇用などにより賃金が75%未満に減少した場合に、その状態で働き続ける場合に最大で賃金額の15%が支給される給付金です。なお、2025年4月より、給付率が10%に縮小される予定です。

育児休業給付

一定要件を満たした被保険者が、育児休業を取得した際に支給される給付金です。子どもが1歳または1歳2ヶ月(保育所に入れない場合は1歳6ヶ月または2歳まで)になるまで支給されます。

給付額は、育児休業180日目までは賃金額の67%、180日経過後は50%が支給されます。

介護休業給付

一定要件を満たした被保険者が、家族の介護目的で休業した場合に支給される給付金です。介護休業中に賃金額の67%が支給されます。


出典:ハローワーク インターネットサービス「雇用継続給付」


出典:厚生労働省「高年齢雇用継続給付の見直し(雇用保険法関係)」

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は企業と従業員の双方が負担しますが、企業の方が雇用保険二事業分を多く負担しています。

雇用保険料の計算式は以下のとおりです。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料 = 賃金(給与額または賞与額) × 雇用保険料率

雇用保険料は、毎月支払われる給与だけではなく、賞与からも控除されます。

また「賃金」とは、税金や社会保険料などを控除する前の金額です。基本給や時間外手当などの合計に雇用保険料率をかけて算出します。ただし、対象となる賃金は「労働の対価として支払われたもの」です。

たとえば、出張旅費や持株奨励金などは「労働の対価で得た賃金」ではないため、雇用保険料の対象となる賃金に該当しません。

雇用保険料率は、失業保険の受給者数や積立金の残高に応じて毎年見直され、料率に変更が生じた場合は毎年4月1日から施行されます。

雇用保険の計算方法は別記事「雇用保険料とは?雇用保険料の計算方法や対象について解説」で詳しく解説しています。

失業保険をもらうには

失業保険を受給するには、退職後に企業から送られてくる離職票をハローワークへ提出する必要があります。

離職票は退職後に企業の担当者が手続きを行ってから発行されるため、退職後すぐに失業保険は受給できません。

離職票が自宅に届いたらハローワークに持参し、求職の申し込みを行います。求職の申し込みをした後は、受給者説明会に必ず出席しましょう。やむを得ない事情で出席できない場合は、ハローワークに相談すれば日程変更が可能です。

その後、必要回数の求職活動を行いながら、4週に1回ハローワークの窓口に行き、失業の認定を受けることで失業保険が受給できます。

なお、会社都合で退職した場合は7日の待機期間後すぐに受給できますが、自己都合で退職した場合は、7日の待機期間に加え原則2ヶ月の給付制限があります。

失業保険は、離職理由によって受給開始時期が異なるため、注意しましょう。

【関連記事】
失業保険(失業手当)のもらい方とは?条件や期間・金額を解説

まとめ

雇用保険は、労働者の失業時や継続的な雇用が困難な事由が発生した際に、労働者の生活と雇用の安定を図る目的で設けられた公的保険です。

失業手当や育児給付金、教育訓練給付金など労働者の生活と雇用継続を保障するさまざまな給付金が用意されています。

失業や転職、育児・介護休業などが起こった場合には、雇用保険制度を活用しましょう。

よくある質問

雇用保険とは?

雇用保険は、公的保険のひとつです。労働者が失業した場合や雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、労働者の暮らしと雇用の安定を図り、再就職の促進を目的に必要な給付を行います。

詳しくは記事内「雇用保険とは」をご覧ください。

雇用保険で受給できる手当の種類は?

受給できる手当は目的に応じて、求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付の4つに分類されています。

詳しくは記事内「雇用保険手当の種類」をご覧ください。

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