勤怠管理は、労務・人事担当者が必ずといってもいいほど、関わる業務の一つです。昨今では、「残業手当の未払い」や「過労死の問題」が頻繁に取り上げられており、企業には今まで以上に正確な勤怠管理が求められています。
本記事では、そもそも勤怠管理とは何なのかという基礎知識から、勤怠管理が求められる背景や重要性、カンタンに勤怠管理を行う方法について解説します。
目次
勤怠管理とは
勤怠管理とは、企業が従業員の出勤や退勤をはじめとする「就業状況」を把握して、適切に管理することです。
大きな会社では、従業員一人ひとりの就業状況を、手作業やエクセルで正確に管理するのは困難を極めますので、タイムカードやICカードを用いた「勤怠管理システム」を導入して勤怠管理を行うのが一般的です。
企業に勤怠管理が求められる理由
企業に勤怠管理が求められる理由として、従業員の過重労働、いわゆる働きすぎを防止する目的や挙げられます。
労働基準法では、「使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。」と定められており、時間外労働に関しても、限度が設けられています。参考:労働基準 |厚生労働省
また、政府が推し進める「働き方改革の実現」に伴い、2019年4月1日より「労働安全衛生法」が改正、客観的方法による労働時間の把握が義務化されました。
このことから、企業は従業員の勤怠状況に関して、タイムカードやICカードを用いて客観的に記録し、3年間保存することが必要になっています。
事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。
勤怠管理を行うべき事業所
厚生労働省によると、勤怠管理を行うべき事業所とは、労働基準法の労働時間の規定が適用される事業所であるとしています。反して、労働時間の規定が適用されない職種は、自然や天候に仕事が左右される農業や水産など限定的です。従業員を雇うほとんどの事業所において勤怠管理は必要です。
勤怠管理の対象になる従業員
勤怠管理の対象である従業員は、管理監督者以外が該当します。管理監督者とは、工場長や部長など、従業員の労務管理において一定の責任がある者や秘書など業務が経営者などと一体になった従業員などをさします。
勤怠管理により管理する事項
労働基準法では、労働時間を適切に管理することとなっています。労働時間を適切に管理するというのは、各労働日において、従業員の始業時間と終業時間を記録することです。従業員の勤怠の記録によって、休日や時間外労働の有無、有給休暇の取得などを正確に把握することができます。
勤怠管理の方法
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」によると、勤怠管理の方法として、使用者自ら確認・記録することと、機器を用いて客観的に確認・記録すること、従業員の自己申告制による方法が認められています。客観的な確認とは、タイムカードやICを使った勤怠管理の方法のことです。
タイムカードによる勤怠管理
機器を用いた客観的な記録の方法として一般的だったのが、タイムカードではないでしょうか。現在でも、中小企業を中心にタイムカードで勤怠管理を行っている企業は少なくないかと思います。タイムカードは、タイムレコーダーに専用のタイムカードを入れて、時間を記録するというものです。
ICカードや指紋認証などそのほかの勤怠管理
機器を用いた勤怠管理の方法には、タイムカード以外にも、近年ではICカードや指紋認証を利用した方法も導入されています。タイムカードと比較したときのICカードや指紋認証の利点は、システムによって自動で勤怠管理を行うことが容易になったということです。
さらに、タイムカードのように誰でも押すことが難しくなったため、適正な労働時間の確認においてもメリットがあるといえます。
自己申告制の勤怠管理では従業員への周知も重要
勤怠管理の方法として、自己申告制によるものも認められています。自己申告制での勤怠管理とは、たとえば下記のように従業員が出勤簿をつけて、会社に提出することです。
ただし、自己申告制をとる場合は、従業員に対し適正に記録を行うことを周知したうえで、必要に応じ実態調査も行わなければならないので、自己申告制を取り入れる際は注意が必要でしょう。
勤怠管理の方法などは厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずるべき措置に関する基準」で確認できます。
勤怠管理の重要性
そもそも勤怠管理は、労働基準法によって使用者が適正に行わなければならないものですが、勤怠管理を行うことは健全な労務をアピールできるので、会社側にもメリットがあります。
労働時間の管理は使用者側の義務
前述したように、一部を除いて従業員の勤怠管理を行うことは使用者側の義務です。直接的・客観的または自己申告のいずれかの方法によって、従業員の就業の実態を明らかにしなければなりません。
正しい給与計算に繋がる
勤怠管理は労働基準法に基づいた使用者の義務と説明しましたが、会社側にも勤怠管理を行うことはメリットに繋がります。まず、正しい労働時間の確認による正しい給与計算の算出です。単にコストの見直しに役立つだけでなく、正しい給与算出のアピールにも繋がるはずです。
また、残業代は保険料や税金の計算にも関わり、勤怠管理が正しく行われていないと、残業代も正確に把握できず、保険料や税金の計算が異なってしまう可能性もあります。未払いの残業代については、2年を遡って支払うことができますが、いずれにせよ正しく勤怠管理を行うことが重要です。
コンプライアンス(法令順守)による健全化
コンプライアンスとは、企業が法令を正しく守ること。近年、残業手当を出さない企業や長すぎる労働時間など、いわゆるブラック企業といわれる会社が問題になってきました。ブラック企業は、適正な労務が行われておらず、コンプライアンスができていない企業のことです。
勤怠管理を正しく行うことは、法令を順守し、企業が健全な経営を行っているということを示すことでもあります。
トラブル回避にも繋がる
正しく勤怠管理が行われていなければ、従業員の勤務時間や時間外労働時間数などを把握することはできません。特に、会社の規模が大きいほど、従業員一人一人を管理することは難しくなります。
勤怠管理を行うことは、問題のある労働について早期に対策ができ、訴訟などのトラブルや過重労働を未然に防ぐことにもつながるのです。さらに、長時間労働を減らすことにより、従業員の心身の健康維持や増進、生産性の向上につながる可能性もあります。
勤怠管理を行う際の注意点
ここからは、勤怠管理の担当者が注意すべき点について解説します。
テレワークの従業員の勤怠管理
2021年現在では新型コロナウイルスの影響から、従業員がオフィスに出社するのではなく、自宅で業務を行うテレワークの勤務形態を採用する企業も増えています。
テレワークで働く場合、タイムカードやICカードによる出退勤管理が難しくなります。そのため、オンラインで打刻するなど従業員の自己申告制を採用するのが一般的です。上司が直接、従業員の勤務状況を把握できないので、社内ルールを徹底させる・実態調査を行うといった対策が必要になってきます。
扶養控除を希望する従業員の勤怠管理
アルバイトやパートの従業員の場合、扶養控除の対象内での勤務を希望するケースもあります。扶養控除には、所得税の支払いが発生する103万円の壁や、扶養から外れて社会保険への加入が必要となる130万円の壁など、年収によって扶養控除の条件が異なってきます。
管理者は従業員の希望をヒアリングし、勤務日数や時間を調整する必要があるでしょう。
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まとめ
勤怠管理は、使用者の義務だということをまずは念頭に置く必要があります。方法としては、直接管理する以外にもタイムカードや自己申告などの方法もあるので、業種や規模にもあった方法を取り入れるのが良いでしょう。