監修 松田 朋子 社会保険労務士あさぎ経営サポート
会社を退職した際、次の就職先が決まるまでの生活を支える手当となるのが失業保険(失業手当)です。しかし、失業保険は退職したら自動的にもらえるものではありません。必要書類を集めて適切な手続きをしなければ受け取れないため、退職を検討し始めたら制度についての理解を深めておくことが重要です。
本記事では、失業保険の概要や受け取れる条件・金額、受け取るための手続きなどについて解説します。
▶︎ 雇用保険被保険者証については、まずはこちらの記事!
目次
- 失業保険(失業手当)とは?
- 自己都合の退職でも失業保険(失業手当)はもらえる
- 失業保険(失業手当)でもらえる金額の計算方法
- 失業保険(失業手当)を受け取れる期間
- 失業保険(失業手当)を受け取れる条件
- 失業している状態である
- 一定期間以上雇用保険の被保険者期間がある
- 失業保険(失業手当)のもらい方
- 失業保険(失業手当)の受け取りに必要な書類
- 失業保険(失業手当)とその他に受け取れる雇用保険の給付
- 失業保険(失業手当)とその他に受け取れる給付に必要な書類
- 就業促進手当
- 教育訓練給付金
- 失業保険(失業手当)に関する注意点
- 不正受給は絶対に行ってはいけない
- 求職活動の実態がなければ失業保険は受け取れない
- 離職証明書の提出など、会社が行う雇用保険関連の手続き
- まとめ
- よくある質問
失業保険(失業手当)とは?
失業保険(失業手当)とは、離職から再就職までの間、安定した生活を送りながら再就職活動を進められるよう、給付や職業紹介を通じて求職者を支援する制度です。
失業保険は公的な正式名称ではなく、雇用保険の一部である「失業等給付」を指します。
雇用保険は公的な保険制度のひとつであり、失業した場合や子どもの養育をするために休業した場合など、一定の条件を満たすことで手当の給付が受けられる仕組みです。
一般的な失業時には失業手当である基本手当が支給されますが、突然の解雇や予期せぬ倒産により離職せざるを得なかった離職者については、一般の離職者よりも給付日数や受給要件について免除や緩和などの措置もあります。
基本手当以外にも、就業促進手当や教育訓練給付金などが失業等給付には含まれています。
雇用保険について詳しく知りたい方は、別記事「社会保険と雇用保険の違いは?内容や加入条件の違いについてわかりやすく解説」をご覧ください。
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険制度の概要」
自己都合の退職でも失業保険(失業手当)はもらえる
自己都合の退職でも失業保険は受け取れます。ただし、会社都合での退職の場合とは条件が異なります。
特に異なる点が、受給までにかかる期間です。会社都合での退職の場合は、ハローワークで受給資格の決定を受けたのち、7日間の待機と説明会への参加で失業保険の給付を受けられます。
一方で自己都合での退職では、7日間の待機期間とは別に2ヶ月間の給付制限期間が発生するため、会社都合よりも給付までに時間がかかります。
また、会社都合の退職では失業保険の給付期間が最大330日あるのに対して、自己都合による退職では給付期間が最大150日です。
さらに雇用保険の被保険者期間は、会社都合による退職であれば離職前の1年間で6ヶ月以上あればよいところ、自己都合による退職では離職前の2年間で12ヶ月以上必要です。
なお、失業保険の給付日数と、給付に必要な被保険者期間については後述します。
出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
失業保険(失業手当)でもらえる金額の計算方法
失業保険で一度の離職に際して受け取れる総額は、1日あたりの「基本手当日額」と給付日数によって決まる仕組みです。基本手当日額は離職前6ヶ月の月収や離職時の年齢によって給付率が変わります。
基本手当日額の計算方法は以下のとおりです。
基本手当日額の計算方法
- 賃金日額 × 給付率 = 基本手当日額
賃金日額とは、離職した日の直前の6ヶ月に毎月決まって支払われた賃金から算出した金額であり、「雇用保険受給資格者証」の14欄に記載されています。
また、給付率は下表のように定められています。
離職時の年齢 | 賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
---|---|---|---|
〜29歳 (65歳以上の場合もこちらを適用) | 2,869円以上5,200円未満 | 80% | 2,295円〜4,159円 |
5,200円以上12,790円以下 | 50〜80% | 4,160円~6,395円 | |
12,790円超14,130円以下 | 50% | 6,395円~7,065円 | |
14,130円(上限額)超 | 一律 | 7,065円(上限額) | |
30〜44歳 | 2,869円以上5,200円未満 | 80% | 2,295円~4,159円 |
5,200円以上12,790円以下 | 50〜80% | 4,160円~6,395円 | |
12,790円超15,690円以下 | 50% | 6,395円~7,845円 | |
15,690 円(上限額)超 | 一律 | 7,845円(上限額) | |
45〜49歳 | 2,869円以上5,200円未満 | 80% | 2,295円~4,159円 |
5,200円以上12,790円以下 | 50〜80% | 4,160円~6,395円 | |
12,790円超17,270円以下 | 50% | 6,395円~8,635円 | |
17,270円(上限額)超 | 一律 | 8,635円(上限額) | |
60〜64歳 | 2,869円以上5,200円未満 | 80% | 2,295円~4,159円 |
5,200円以上11,490円以下 | 45〜80% | 4,160円~5,170円 | |
11,490円超16,490円以下 | 45% | 5,170円~7,420円 | |
16,490円(上限額)超 | 一律 | 7,420 円(上限額) |
※離職時の年齢が60歳〜64歳で賃金日額が5,200円以上11,490円以下の場合、下記2つの計算式に当てはめた低い方の金額
基本手当日額=0.8 × 賃金日額 - 0.3 × {(賃金日額 - 5,200) ÷ 7,590} × 賃金日額
基本手当日額=(0,05 × 賃金日額) + 4,596
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和6年8月1日から~」
基本手当日額の計算例
例:離職時の年齢30歳/控除前の給与総支給額(賞与のぞく)40万円
離職直前の半年の月給(賞与除く) ÷ 180(6ヶ月 × 30日) = 賃金日額
(400,000(円) × 6) ÷ 180 = 13,333(円)(賃金日額)
給付率が50%に該当するため、下記の計算式に当てはめて計算します。
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率
13,333(円) × 0.5 = 5,972(円)
基本手当日額 = 5,972円
なお、所定給付日数を90日間とした場合、ここで受給できる基本手当の最大額は以下のようになります。
受給できる基本手当の最大額 = 基本手当日額 × 所定給付日数
5,972(円) × 90(日) = 537,480(円)
失業保険(失業手当)を受け取れる期間
失業保険の受給期間は、原則として離職した次の日から1年間(所定給付日数が330日の場合は1年と30日、360日の場合は1年と60日)です。
この場合の所定給付日数330日と360日においての最長期間は、3年30日と3年60日です。
なお、所定給付日数とは基本手当日額が受け取れる最大日数のことで、受給期間のうち所定給付日数を限度として、失業している状態である日分の基本手当が支給されます。
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
所定給付日数は、年齢や被保険者であった期間によって異なり、一般の離職者・倒産や解雇等による離職者でそれぞれ以下のとおりです。
【一般の離職者(自己都合)の所定給付日数】
被保険者であった期間 | ||||
---|---|---|---|---|
〜10年未満 | 10年以上〜 20年未満 | 20年以上〜 | ||
離職時の年齢 | 全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
【倒産・解雇等(自己都合または会社都合)による離職者】
被保険者であった期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1〜4年 | 5〜9年 | 10〜19年 | 20年〜 | ||
離職時の年齢 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30〜34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35〜44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45〜59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60〜64歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
失業保険(失業手当)を受け取れる条件
失業保険は、失業していれば誰でも受け取れるというものではなく、以下の条件を満たさなければ受給できません。
失業保険を受け取れる条件
- 失業している状態である
- 一定期間以上雇用保険の被保険者期間がある
- 求職活動中である
失業している状態である
失業している状態とは、すぐに働ける能力があり、働く意思があるにもかかわらず失業している状態のことです。
そのため、次のようなケースに該当する場合は、被保険者期間が失業保険の受給資格を満たしていても、支給はされません。
失業していていても失業保険を受けられない状態の例
- 病気やけがのため、すぐには就職できない
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できない
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っている
- 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職できない
- 退職後は学業に専念し、すぐに就職できない
- 会社などの役員に就任した
- 退職後は起業し自営業をはじめた など
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
なお、妊娠・出産や病気・けがなどにより就職できない場合では、受給期間を最大3年まで延長できます。延長の申請は、離職した日の翌日から2ヶ月以内に、住居所を管轄するハローワークにて行う必要があります。
一定期間以上雇用保険の被保険者期間がある
失業保険を受給するのに必要な被保険者期間は、離職理由に応じて自己都合である「一般の受給資格者」「特定理由離職者」と、会社都合である「特定受給資格者」の3つに分けられ、それぞれ以下のとおりです。
分類 | 離職理由 | 被保険者期間 | |
---|---|---|---|
自己都合 | 一般の受給資格者 | 特定受給資格者・特定理由離職者に該当しない離職をした場合 ※自己都合または定年による退職 | 離職前の2年間で12ヶ月以上 |
特定理由離職者 | 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した場合 など | 離職前の1年間で6ヶ月以上 | |
会社都合 | 特定受給資格者 | 倒産・解雇等の理由により離職した場合 | 離職前の1年間で6ヶ月以上 |
出典:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
上記で該当する分類における被保険者期間を満たした場合で、失業保険は受給できます。自分がどの分類に該当するかについては、ハローワークが事業主と離職者双方の主張を判断して決定します。
失業保険(失業手当)のもらい方
失業保険を受け取る際の手続きは、ハローワークにて行います。手続きの流れは、以下のとおりです。
失業保険を受け取る際の手続き
- 離職時に事業主から、離職票-2(3枚複写の3枚目)と必要書類をもらう
- 「離職理由」などの必要事項を交付された離職票-2(3枚複写の3枚目)に記入後、所轄のハローワーク(または地方運輸局)に必要書類と共に提出
- 所轄のハローワーク(または地方運輸局)から、受給資格決定の通知をもらう
- 受給説明会に参加し、認定日に提出する必要書類を受け取る
- 必要回数の求職活動を行う
- 4週に1回、ハローワークの窓口に行き、失業の認定を受ける
- 失業保険(基本手当)を受け取る
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
失業保険(失業手当)の受け取りに必要な書類
ハローワークにて失業保険の受け取り手続きをする際は、以下の書類が必要です。
失業保険の受け取りに必要な書類
- 雇用保険被保険者離職票-1・2
- 個人番号確認書類
- 本人確認書類
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
- 証明写真 × 2 ※縦3cm × 横2.4cmの正面上半身のもの
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
なお、ハローワークでは、失業保険の受給手続きとは別に求職の申込み手続きも行います。そのため、手続きを行う際にはできるだけ時間に余裕を持って来庁しましょう。
雇用保険被保険者離職票-1と-2の書き方については、以下を参考にしてください。
出典:ハローワークインターネットサービス「記入例:雇用保険被保険者離職票-1」
出典:ハローワークインターネットサービス「記入例:雇用保険被保険者離職票-2」
失業保険(失業手当)とその他に受け取れる雇用保険の給付
失業保険に含まれる主な給付の種類には、以下の3つがあります。
失業保険とその他に受け取れる給付の種類
- 基本手当
- 就業促進手当
- 教育訓練給付金
雇用保険の全体について詳しく知りたい方は、別記事「雇用保険とは?加入対象や社会保険との違い、手当の種類について解説」をご確認ください。
失業保険(失業手当)とその他に受け取れる給付に必要な書類
基本手当は失業中の生活を支え、再就職を促進するための給付です。一般被保険者の給付日数については、離職時の年齢・被保険者期間・離職の理由などによって、90日〜360日の間で決められます。
特定受給資格者と特定理由離職者についての給付日数は、一般被保険者より多く設定されています。
就業促進手当
就業促進給付は再就職後に受けられる手当で、以下の4つの種類があります。
就業促進手当の種類
- 再就職手当
- 就業促進定着手当
- 就業手当
- 常用就職支度手当
再就職手当
「再就職手当」は、基本手当の受給資格がある人が安定した職に就けたとき、所定給付日数の3分の1以上が残っていることで支給される手当です。
就業促進定着手当
「就業促進定着手当」は、再就職手当の支給を受けた人が再就職先に6ヶ月以上継続して雇用され、かつ1日の賃金が離職前(雇用保険給付を受ける以前)に比べて低下している場合において給付されます。
就業手当
「就業手当」は、基本手当の受給資格がある中、所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残る段階において、再就職手当の支給対象とならない形で再就職した場合に、一定の条件のもとで支給される手当です。
常用就職支度手当
「常用就職支度手当」は、基本手当の受給資格がある人のうち、残所定給付日数が3分の1未満である人や高年齢受給資格者・特例受給資格者・日雇い受給資格者が対象となります。そして、この中から障害などで就職が困難でありながらも安定した職業に就いた場合、一定の条件のもとで支給される手当です。
出典:ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」
教育訓練給付金
教育訓練給付金は、就業に必要なスキルを身につけるためなどの教育を受けた際に、支払った費用の一部が支給されるものです。教育訓練給付金には、以下4つの種類があります。
教育訓練給付金の種類
- 一般教育給付金
- 専門実践教育訓練給付金
- 特定一般教育給付金
- 教育訓練支援給付金
(※令和7年3月31日までの時限措置)
教育訓練給付金は、離職者だけではなく、一定の要件を満たす雇用保険の被保険者(在職者)も対象です。
出典:ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付金制度」
一般教育給付金
一般教育給付金は、専門実践教育訓練や特定一般教育訓練に該当しない、教育訓練が対象です。
一般教育給付金の対象者 | |
---|---|
対象者 | ・受講開始日に雇用保険の支給要件期間が3年以上(初回支給は1年以上)ある ・被保険者資格を喪失した離職翌日以降、1年以内である ・前回の教育訓練の受講から3年以上経過している |
支給額 | 一般教育給付金の支給額は教育訓練費の20%(上限10万円) |
専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金は、中長期的な視点でキャリア形成に役立つ専門的な教育訓練が対象です。
専門実践教育訓練給付金の対象者 | |
---|---|
対象者 | ・受講開始日に雇用保険の支給要件期間が3年以上(初回支給は2年以上)ある ・被保険者資格を喪失した離職翌日以降、1年以内(延長がない場合)である ・前回の教育訓練の受講から3年以上経過している ※雇用保険が初回支給であれば2年以上 |
支給額 | 専門実践教育訓練給付金の支給額は教育訓練費の50%(上限120万円) |
特定一般給付金
特定一般教育給付金は、再就職やキャリア形成を早期に進めるために有用な教育訓練が対象となる給付金です。支給対象者は「一般教育給付金」と同様ですが、一般教育訓練に比べて、キャリアアップや就職しやすい講座として指定されているため、給付率が高くなっています。
また、専門実践教育訓練は中長期的な視点での教育訓練ですが、特定一般教育給付金はキャリアアップや就職に結びつきやすい教育訓練です。
特定一般給付金の対象者 | |
---|---|
対象者 |
・受講開始日において雇用保険の支給要件期間が3年以上(初回支給は1年以上)ある ・被保険者資格を喪失した離職翌日以降、1年以内(延長がない場合)である ・前回の教育訓練の受講から3年以上経過している |
支給額 | 特定一般教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の40%(上限20万円) |
教育訓練支援給付金
教育訓練支援給付金は、令和7年3月31日までの時限措置としての制度です。
教育訓練支援給付金の対象者 | |
---|---|
対象者 |
・45歳未満の離職者 ・専門実践教育訓練給付金の対象である ・教育訓練支援給付金の受給資格が決定される以前に離職となり、雇用保険に加入していない、または教育訓練給付を受けた経験がない |
支給額 | 教育訓練支援給付金の支給額は、基本手当日額の80%(1日あたり) |
失業保険(失業手当)に関する注意点
失業保険は離職・退職した人にとって非常にありがたい制度ですが、受給するには相当のルールも設けられています。そのため、失業保険の手続きをしたり受給したりする際は、以下の点に注意してください。
失業保険に関する注意点
- 不正受給は絶対に行ってはいけない
- 求職活動の実態がなければ失業保険は受け取れない
不正受給は絶対に行ってはいけない
理由にかかわらず、働いたことを申告せずに手当を受けたり嘘の申告をしたりするなどの不正行為をすると、すべて不正受給とみなされます。
不正受給をすると給付金を受ける権利をすべてなくすだけでなく、受給した金額以上の返還を求められる場合もあるため、絶対に行ってはいけません。不正行為とされるのは、主に次の7つです。
不正受給と判断される例
- 就職・就労の申告もれ(収入がなくても申告が必要)
- 就職日や求職活動の実績を偽って申請
- 内職・手伝いをしたこと。得た収入の申告漏れ
- 自営業を始めた、または準備をしたが申請しない
- 名義だけだとしても役員や顧問、非常勤にて就任の申告漏れ
- 雇用保険と重複して受け取れない労災保険や休業補償給付などを受けた
- 就職ができる状態ではないことを申告しなかった
求職活動の実態がなければ失業保険は受け取れない
失業保険の受給期間中は、4週間に1回、失業認定を行う日があります。そのときに求職活動の実態がなければ、失業保険は受け取れません。求職活動として認められるのは、主に以下5つの活動です。
求職活動と認められる活動
- 求人への応募
- ハローワーク開催のセミナー・職業相談・紹介
- 届け出や許可のある民間事業者が開催するセミナー・職業紹介・相談
- 公的機関が開催するセミナー・職業相談・紹介
- 再就職に役立つ国家試験や検定など
出典:愛知ハローワーク「求職活動について」
失業保険を受けるには、次の認定日の前日までに上記の求職としてみなされる活動が2回以上必要です。
ただし、応募書類郵送・筆記試験・面接の選考過程や認定対象期間が7日以上14日未満となる場合や、障害などで就職困難な受給資格者は、1回以上の求職活動があれば失業認定されます。
離職証明書の提出など、会社が行う雇用保険関連の手続き
事業主は従業員から退職の意思を受けた場合、「雇用保険の資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」を作成しなければなりません。
離職した日から10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届と雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)を所轄のハローワーク(または地方運輸局)に提出します。この手続きを行うことで、離職者に送付する必要がある離職票が交付されます。
また、労働者名簿・タイムカード(または出勤簿)・賃金台帳・退職理由を確認できる退職届も添付しましょう。これらは、離職票の記載が正しいかの確認書類として必要です。
なお、事業主が期日以内に手続きを済ませなかったり、離職者から請求されているにもかかわらず離職票を発行しなかったりすることは雇用保険法違反です。違反となれば、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
離職証明書や退職証明書などについて詳しく知りたい方は、別記事「離職票・退職証明書・離職証明書の違いまとめ!いつ、どこで発行?わかりやすく解説」もあわせてご確認ください。
まとめ
次の就職先が決まらない状態で退職したとき、失業保険は貴重な手当となります。しかし、受給条件や手続き方法などを正確に把握しておかなければ、受け取れるものも受け取れません。
特に、退職理由が会社都合か自己都合かによって受給までにかかる時間や給付期間、受け取れる金額に違いがあることをわかっていないと、実際に受け取る段階で戸惑うことになります。失業保険の制度を正しく理解して、手当を適切に受け取りましょう。
よくある質問
失業保険を受け取れる条件は?
失業保険を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 失業している状態である
- 一定期間以上雇用保険の被保険者期間がある
- 求職活動中である
詳しくは記事内「失業保険(失業手当)を受け取れる条件」をご参照ください。
もらえる失業保険の計算方法は?
雇用保険としてもらえる金額は、1日あたりの「基本手当日額」と給付日数によって決まり、そのうち「基本手当日額」は、離職前6ヶ月の月収や離職時の年齢によって給付率が変わります。
詳しくは記事内「失業保険(失業手当)でもらえる金額の計算方法」をご参照ください。
失業保険のもらい方は?
失業保険をもらうには、ハローワークで所定の手続きを行う必要があります。
詳しくは記事内「失業保険(失業手当)のもらい方」をご参照ください。
監修 松田 朋子
2005年に山梨県社会保険労務士会登録。「社労士労働紛争センター山梨」あっせん委員、「山梨働き方改革推進センター」専門メンバーなど、活動は多岐に渡る。製薬メーカーの労務管理事務にも従事。資格取得後、社会保険労務士事務所で経験を積み独立開業。現在に至る。