監修 松田 朋子 社会保険労務士あさぎ経営サポート
「健康保険資格喪失証明書」とは、健康保険の資格喪失を証明するための書類です。
会社を退職すると加入していた健康保険を脱退する(加入資格を喪失する)ことになるため、ほかの医療保険制度に加入しなければなりません。国民健康保険に切り替える手続きを行う際には、手続き時に「健康保険資格喪失証明書」を提示し、健康保険を脱退した日を明らかにする必要があります。
本記事では、「健康保険資格喪失証明書」を発行する手続き方法や書き方、必要書類についてくわしく解説します。
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目次
- 健康保険資格喪失証明書とは
- 健康保険資格喪失証明書はどこで発行される?
- 資格喪失届の手続き完了後から発行可能
- 証明書の発行には届出が必要
- 証明書を紛失した場合は再発行が可能
- 健康保険資格喪失証明書の提出が必要なケース
- 国民健康保険に加入する手続きの期限
- 国民健康保険に加入する際の提出先
- 国民健康保険に加入する際に必要な提出書類
- 健康保険資格喪失証明書の提出が必要ないケース
- 健康保険資格喪失証明書の発行手続き
- 1. 資格喪失証明書の請求書に記入する
- 2. 管轄の年金事務所に請求書を提出する
- 3. 資格喪失証明書を受け取る
- 健康保険・資格喪失等確認請求書の書き方
- 申請者が記入する欄
- 確認書を必要とする理由
- 被保険者 (被保険者であった者) について記入する欄
- 被扶養者 (被扶養者であった者) について記入する欄
- 社会保険の手続きや保険料の計算をラクにする方法
- 社会保険料の計算含む、給与計算事務全体を効率化
- 社会保険の手続きや保険料の計算をラクにする方法
- まとめ
- よくある質問
健康保険資格喪失証明書とは
健康保険資格喪失証明書は、退職などによって健康保険の被保険者資格を喪失したことを証明するための書類です。会社を辞めてから国民健康保険に加入する際には、届出書類として健康保険資格喪失証明書が必要になります。
退職により加入資格を失った場合、「喪失日」として証明書に記載されるのは退職日の翌日の日付です。また、被扶養者がいる場合はその分も含めて資格喪失が証明されるため、被扶養者分の証明書としても使用できます。
健康保険資格喪失証明書は、一般的に以下のような形式で作成されます。
健康保険資格喪失証明書はどこで発行される?
基本的には協会けんぽ加入者の場合は年金事務所、健保組合加入者の場合は健康保険組合から健康保険資格喪失証明書が発行されます。
資格喪失届の手続き完了後から発行可能
健康保険資格喪失証明書は、加入している健康保険の資格喪失手続きが完了しなければ発行されません。資格喪失手続きは会社側が行う手続きであるため、従業員側の対応は不要です。
そのため、資格喪失証明書の発行が必要な場合には、あらかじめ会社の担当者に資格喪失手続きの予定日を確認しておくとよいでしょう。
証明書の発行には届出が必要
健康保険資格喪失証明書を発行してもらうには、加入している健康保険または会社の担当者に資格喪失証明書の発行を申請する必要があります。
しかし、会社側には健康保険資格喪失証明書を発行する義務はありません。退職前に会社側で健康保険資格喪失証明書の手続きが可能か、確認しておきましょう。
会社側で資格喪失証明の手続きができない状況は、事業所倒産(廃止)などのケースで多く発生します。ただしこのような場合でも、資格喪失証明書の発行自体は可能です。会社側で手続きができないといわれた場合は、自身で年金事務所へ請求手続きをしなければなりません。
加入している健康保険協会などのホームページで必要書類や申請手順を確認できます。健康保険資格喪失証明書の発行手続きについては、こちらから下にスクロールしてご覧ください。
証明書を紛失した場合は再発行が可能
紛失してしまった場合でも、健康保険資格喪失証明書の再発行は可能です。
協会けんぽ加入者であれば、管轄の年金事務所へ問い合わせてみましょう。協会けんぽ以外の健康保険に加入していた場合も、健康保険組合に問い合わせをして資格喪失請求書の再発行を依頼してください。
なお、国民健康保険に切り替えるにあたって、原則は資格喪失証明書の提出が必要になりますが、自治体によっては退職証明書や離職票などがあれば資格喪失証明書の提出が求められないケースもあります。その場合は再発行が不要のため、まずはお住まいの自治体へ確認してください。
健康保険資格喪失証明書の提出が必要なケース
冒頭でも述べたとおり、退職後に国民健康保険へ加入する場合は健康保険資格喪失証明書の提出が必要です。国民健康保険に加入する場合は、次の3つを確認しながら手続きを進めてください。
- 国民健康保険に加入する手続きの期限
- 国民健康保険に加入する際の提出先
- 国民健康保険に加入する際に必要な提出書類
手続きの期限や提出先、そして必要書類などを事前に確認し、スムーズに手続きが進められるように事前に必要事項を確認しておきましょう。
国民健康保険に加入する手続きの期限
国民健康保険の加入手続きは原則、資格喪失日(退職日の翌日)から14日以内に行う必要があります。そのため、手続きに間に合うように健康保険資格喪失証明書を準備しておかなければなりません。
国民健康保険の資格は、取得手続き完了日から適用されます。資格喪失日から14日を過ぎてしまった場合、その間に生じた医療費は全額自己負担となるので注意しましょう。
一方、保険料は資格取得日にさかのぼって保険料が賦課されます。加入期間に応じて計算されるため、資格喪失日から取得手続き完了日まで未加入期間があった場合、その間の保険料は発生しません。
国民健康保険に加入する際の提出先
国民健康保険の加入手続きは、居住地の市区町村の国民健康保険担当課で行います。
なお、扶養家族が退職前の勤務先の健康保険に加入していた場合は、家族もセットで健康保険の資格を喪失するため、国民健康保険の加入手続きが必要です。国民健康保険には「扶養家族」という概念・制度が存在しないため、一人ひとりがそれぞれ加入して人数分の保険料を納めなければなりません。
国民健康保険に加入する際に必要な提出書類
国民健康保険に加入する際に必要な提出書類は、以下のとおりです。
- マイナンバーが確認できるもの(個人番号カードもしくは通知カード)
- 本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)
- 健康保険資格喪失証明書
- キャッシュカードまたは通帳と通帳使用印
出典:大阪市「就職・退職に伴う国民健康保険の手続き」
退職前に加入していた社会保険で扶養に該当していた家族が同時に加入する場合は、加入者全員のマイナンバーの確認資料が必要です。自治体によって必要な提出資料が異なる場合もあるため、手続きの前に居住地の市区町村の担当課に確認しましょう。
健康保険資格喪失証明書の提出が必要ないケース
主に以下の場合には、健康保険喪失証明書を提出する必要はありません。
健康保険資格喪失証明書の提出が必要ないケース
- 退職後に同じ医療保険制度の会社に転職する場合
- 退職後も加入していた健康保険の任意継続制度を利用する場合
退職後に別の会社に転職する場合は、転職先の会社が加入している健康保険の被保険者になります。
転職先から健康保険資格喪失証明書の提出を求められるケースは多くありません。とはいえ、転職先前後の会社の医療保険制度が異なる場合などには資格喪失証明書を提出しなければならないことがあるため、転職先にあらかじめ確認しておくと安心です。
また、退職後も加入していた健康保険の任意継続制度を利用するのであれば、任意継続資格取得手続きの際に健康保険資格喪失証明書の提出は不要です。
任意継続制度は、従業員の希望があれば、会社を退職しても原則2年間は継続して健康保険に加入できる制度です。
協会けんぽの任意継続制度を利用する場合、「資格喪失日の前日までに健康保険の被保険者期間が継続して2ヶ月以上あること」「資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に任意継続被保険者資格取得申出書を提出すること」が条件となります。
任意継続期間の満了後は加入していた健康保険から「任意継続被保険者資格喪失通知書」が送られます。それが資格喪失の証明書となるため、資格喪失証明書の発行手続きは必要ありません。
出典:協会けんぽ「任意継続とは」
健康保険資格喪失証明書の発行手続き
健康保険資格喪失証明書の発行手続きは、協会けんぽに加入していた場合は年金事務所、健康保険組合に加入していた場合は健康保険組合あてに行います。
ここでは協会けんぽに加入していた場合の発行手続きを解説します。健康保険組合の場合は手続きが異なるため、加入していた健康保険組合に問い合わせてください。
協会けんぽにおける健康保険資格喪失証明書の発行手順は、以下のとおりです。
健康保険資格喪失証明書の発行手続き
- 資格喪失証明書の請求書に記入する
- 管轄の年金事務所に請求書を提出する
- 資格喪失証明書を受け取る
それぞれ順を追って解説します。
1. 資格喪失証明書の請求書に記入する
資格喪失証明書を発行する際は、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失等確認請求書」を提出する必要があります。
ひな型は日本年金機構のホームページからダウンロードができます。
2. 管轄の年金事務所に請求書を提出する
請求書に必要事項を記入したら、自宅近くの年金事務所に提出します。提出方法は、郵送するか年金事務所の窓口に持参するかいずれかです。
直接持参する場合は、マイナンバーカードまたはマイナンバーが確認できる書類と身分証明書(運転免許証やパスポートなど)の提示が必要であるため、忘れずに持って行きましょう。
郵送する場合は、マイナンバーカードの表裏両面またはマイナンバーが確認できる書類と身分証明書のコピーを添付して、日本年金機構の事務センターに提出します。
3. 資格喪失証明書を受け取る
請求書を年金事務所の窓口に提出した場合は、資格喪失証明書を即日受け取れますが、郵送だと数日かかります。急いでいる場合は、直接年金事務所の窓口に行って申請しましょう。
ただし、会社が資格喪失手続きを完了していない場合は、資格喪失証明書は発行されません。年金事務所側で資格喪失の確認ができてからの発行となりますので、注意してください。
健康保険・資格喪失等確認請求書の書き方
ここでは、協会けんぽに証明書の発行を申請する際に必要な「健康保険・資格喪失等確認請求書」の書き方を解説します。健康保険組合に加入していた場合は、各組合のホームページから記入例をご覧ください。
請求書の記載内容は、大きく以下の4つに分かれています。
健康保険・資格喪失等確認請求書の記載内容
- 申請者が記入する欄
- 確認書を必要とする理由
- 被保険者 (被保険者であった者) について記入する欄
- 被扶養者 (被扶養者であった者) について記入する欄
それぞれの項目の書き方を解説します。
出典:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 資格取得・資格喪失等確認請求書(通知書)」
出典:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 資格取得・資格喪失等確認請求書(記入例)」
申請者が記入する欄
「申請者が記入する欄」には、資格喪失証明書を申請する人の情報を記入します。氏名・現住所・電話番号のほか、申請者の続柄の記入が必要です。
確認書を必要とする理由
「確認書を必要とする理由」には、「国民健康保険の加入(脱退)手続き」か「その他」のどちらかにレ印を入れます。
「その他」とは、転職先の健康保険組合に提出する場合などが考えられます。該当する箇所にレ印を入れましょう。
被保険者 (被保険者であった者) について記入する欄
「被保険者 (被保険者であった者) について記入する欄」には、被保険者本人の生年月日や会社名、会社の重所などの情報を記入します。
申請者が本人である場合には、氏名と現住所の記入は不要ですが、個人番号(マイナンバー)もしくは基礎年金番号の記入が必要です。
被扶養者 (被扶養者であった者) について記入する欄
「被扶養者 (被扶養者であった者) について記入する欄」には、被扶養者の氏名や生年月日、続柄を記入します。
国民健康保険には「被扶養者」という概念がなく、それぞれが国民健康保険に加入することになります。加入時には被扶養者の分も資格喪失の証明が必要になるため、忘れずに記入しましょう。
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まとめ
健康保険資格喪失証明書は、国民健康保険に加入する際に求められる書類です。会社を退職して国民健康保険に加入するなら、まず退職する会社の担当者に証明書を発行してほしい旨を伝えるようにしましょう。
従業員自身で申請する場合は郵送でも可能ですが、急ぎたい場合は年金事務所の窓口に持参すれば即日で発行されます。喪失日から14日以内に国民健康保険の加入手続きを済ませられるよう、できるだけ早めに進めてください。
よくある質問
健康保険資格喪失証明書を発行してもらうには?
退職時、会社側には健康保険資格喪失証明書の発行義務がないため、事前に会社側で発行してもらえるか確認しておきましょう。
会社で発行してもらえない場合は、自分自身で加入していた協会けんぽ、または健康保険組合にて発行手続きを行う必要があります。
詳しくは記事内の「健康保険資格喪失証明書の発行手続き」をご覧ください。
健康保険資格喪失証明書は必要?
健康保険資格喪失証明書は、在籍していた会社を退職した後、国民健康保険に加入するために必要な書類です。
詳しくは記事内の「健康保険資格喪失証明書の提出が必要なケース」をご覧ください。
監修 松田朋子(まつだともこ)
2005年に山梨県社会保険労務士会登録。「社労士労働紛争センター山梨」あっせん委員、「山梨働き方改革推進センター」専門メンバーなど、活動は多岐に渡る。製薬メーカーの労務管理事務にも従事。資格取得後、社会保険労務士事務所で経験を積み独立開業。現在に至る。