人事労務の基礎知識

経営者なら知っておきたい「年次有給休暇の計画的付与」とは

経営者なら知っておきたい「年次有給休暇の計画的付与」とは

年次有給休暇には、5日を超える部分についてあらかじめ付与日を決めて取得させる制度があります。これを有給休暇の「計画的付与」といいます。導入には、事前に労使協定を結び、就業規則など関連する社内規程の整備が必要ですが、年次有給休暇の取得率を向上させ、労働環境の向上が期待できる利点があります。

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年次有給休暇の計画的付与とは

年次有給休暇とは、心身の疲労回復を目的として賃金の発生する休暇を与える制度です。しかし、職場の環境によっては取得が難しく、十分に活用されていないという状況もあり、問題視されています。

年次有給休暇の計画的付与とは、あらかじめ取得する日を決めておき、その指定の日に取得させる制度です。計画的付与の対象とできる日数は、保有日数に関係なく、5日を除く部分とされています。前年の繰り越し部分を含むものとし、年間最低5日は労働者の個人的な事由などのために使用できるよう、計画的付与から除外されます。

計画的付与によって、労働者側では休暇が取得しやすくなる、使用者側では計画的に事業運営できるようになります。年次有給休暇が取得できず結果として退職時にまとめて消化する、といったことも少なくなります。
また、計画的付与の日付は指定されるため、労働者は計画的に余暇を活用できるようになります。

計画的付与による休暇の設定方法

計画的付与による休暇の設定方法には、全社が一斉に休業し長期休暇を実現する「一斉付与方式」のほか、班やグループ別に交替で付与する「交替制付与方式」、個人が取得計画に基づいて取得する「個人別付与方式」などがあります。
年末年始や飛び石連休などと計画的付与を組み合わせることによって、長期休暇も実現可能です。また、閑散期に設定する、という方法もよく用いられます。

有給休暇の計画的付与の例

引用元:厚生労働省

年次有給休暇の計画的付与を行うために必要なこと

年次有給休暇の計画的付与を始めるには、事前準備が必要です。

労使協定の締結と就業規則等への明記

年次有給休暇の計画的付与を行うには、まず、年次有給休暇の計画的付与を実施することを労使協定の合意で可能とすることを就業規則等に明記します。そのうえで、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者との間で書面での協定を行います。
なお、この場合の労使協定は、労働基準監督署へ届け出る必要はありません。

詳しくは厚生労働省のページをご参照ください。

労使協定で定める内容

労使協定には、次のような内容を規定しておきます。

  • 計画的付与の対象者
    計画的付与の対象から除外する者がある場合には明確にしておきます。
  • 計画付与日数と方法、および時季
    計画付与対象の日数と、付与方法についても定めておくことが必要です。
    時季を使用者側が決定する場合には、その内容も盛り込んでおきます。個人の計画による付与の場合には、必要な手続きについても定めます。
  • 対象外の場合の取扱い
    全社一斉で取得する場合、入社後6か月未満で有給休暇を持たない者や、有給休暇の保有日数が少ない者に対する取扱いも取り決める必要があります。
  • 付与時季の変更があるときの取扱い
    計画的付与がなされた場合は、原則として労働者の時季指定権も使用者の時季変更権も行使できません。やむを得ない事由がある場合には付与時季を変更する可能性があることと、変更の際の手続きについて労使協定に記載します。

年次有給休暇の計画的付与を行う際の注意点

計画的付与は有給休暇の消化に貢献しますが、注意点もあります。

年次有給休暇の日数が少ない、もしくは未付与の者に対する対策

年次有給休暇の計画的付与の日数は、年間5日を除く部分とされています。
しかし、労働者の所定労働日数や勤続年数によって保有している日数は異なるため、保有日数の少ない者は有給休暇の多くの部分が計画的付与となってしまい、不満の原因となることもあるので注意が必要です。

また、年末年始や飛び石連休に計画的付与を活用して、事業所全体で長期連休とする際には、保有日数が足りない労働者については、何らかの対策が必要です。この場合、対象者に特別の有給休暇を付与する方法と、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う方法とがあります。

原則として時季変更ができない

計画的付与により年次有給休暇の日を設定する場合、やむを得ない事情がある場合を除き、事業者側からも、労働者側からも変更ができないようになっています。
通常の年次有給休暇は、労働者の希望により取得でき、使用者側は事業の正常な運営を妨げる場合に時季変更権を行使できますが、計画的付与の場合は例外となります。変更しなければならない事態が発生した場合には、労使協定に基づく所定の手続きや、協定の再締結が必要です。

退職予定日以降の計画的付与分は変更に応じる必要がある

計画付与導入後、計画日に到達する前に退職を予定している場合には、計画日にかかわらず、退職前の任意の時期に計画対象日数分の有給休暇を取得することができます。使用者側に取得拒否権はありませんので注意してください。

詳しくは厚生労働省のページをご参照ください。

まとめ

年次有給休暇は、ワークライフバランスの実現のためにも欠かせない制度です。計画的付与制度を利用すると、効率的に年次有給休暇の活用ができます。未導入の経営者はもちろん、正しく運用するためにも計画的付与に関する規定を理解しておきましょう。

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