戦後の労働基準法制定以来、70年ぶりの大改革。その中でも注目が集まる有給義務化とは? この記事では有給義務化について分かりやすくご紹介します。
また記事の内容は動画でもご紹介しております。文字ではなく音声で聞きたいという方は下記の動画をご覧ください。
目次
有給休暇義務化とは
10日以上の年次有給休暇が付与される労働者が、年に5日以上の有給取得を企業側の義務とする事です。
2018年に働き方改革関連法が成立し、労働基準法が改正されたことにより、2019年4月から義務化が開始されました。
最低でも5日有給消化しないと罰則?
「年10日以上有給が付与されている人が年に5日以上有給消化」を出来ていない場合、事業所に対して1人当たり30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。1人につき30万ですので、理論上は10人いれば300万円、100人いれば3,000万円にもなります。
また、労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合は、30万円以下の罰金及び、6ヶ月以下の懲役になります。罰金以外に懲役までつくことになりました。
今までは有給申請をしても上司に断られる事もあったかもしれませんが、これからの社会は、有給申請を上司にお願いされる事にもなるかも知れません。
なぜ有給休暇の取得が義務付けられたのか
有給取得率の低さ
国際的なデータも取り入れて解説していきたいと思います。先進7カ国の有給支給日数と有給取得日数を表した、下記のグラフをご覧ください。
ドイツやフランスと比べてみると日本は意外と有給を付与していることがわかりますが、取得率でみると、日本は50%しか有給消化を行なっていません。取得率も取得日数も、先進7カ国と比べると最下位になります。
労働生産性の低さと生産年齢人口の減少による長時間労働
それだけでなく、下記のグラフから先進7カ国と比べ、1時間あたりの労働生産性も最下位であることがわかります。
さらに悩ましいのがピークから比べて激減する働き手の問題です。生産年齢人口の推移は2020年には7341万人、2040年には5787万人、2060年には4418万人と右肩下がりとなっています。
1時間あたりの生産性が低く、労働力も激減するとなると、これまでの生産量を担保するために長時間労働で補うという傾向が出てきます。その長時間労働で補っている傾向がわかるのが、精神障害(鬱など)に係る労災請求件数の増加です。
このように長時間労働が蔓延するにも関わらず、有給取得にためらいをもつ人が、半数以上に及びます。
その理由は「みんなに迷惑がかかる」「あとで多忙になる」など日本人らしい一面もありますが、「職場の雰囲気」「上司がいい顔をしない」「昇格や査定に影響がある」など職場環境がネックになっています。
仕事と生活の調和と長時間労働の是正のためには、休んでリフレッシュするということが必要不可欠ですが、現実として有給が取りづらい状況を打破するために有給取得化が義務付けられ、罰則もできたのです。
そもそも年次有給休暇とは
従業員が一定の条件を満たしたときに発生する給与を貰いながら休むことが可能な権利です。
一定の条件は2つあります。1つ目は入社日から6ヶ月経過している事、2つ目はその期間中8割以上出勤している事です。有給付与の権利とは細かく定められており、6ヶ月働くと10日付与されます。
勤続年数の増加に伴い有給日数も増加します。有給休暇は取得せずに残しておいても2年間で時効になり、権利がなくなってしまいますので注意しましょう。
パート・アルバイトの有給について
パートやアルバイトも週の所定労働日数と勤続年数に応じて付与日数は変わりますが、有給は付与されます。週の所定労働日数が1日の場合でも有給は付与されます。
重ねてとなりますが、年10日以上有給が付与されている労働者が付与日から1年以内に5日以上有給消化を行わなければ30万円以下の罰金となります。これはパートアルバイト、問わず罰則の対象になりますのでご注意ください。
有給付与のプロセス
従業員1人が有給の付与、消化されるプロセスについて説明します。
例えば4月1日に入社した人がどのように有給が付与されるのか、具体的な例を元に見てみましょう。
従業員が4月1日に入社して、半年の期間中8割以上勤務を行うと10月1日に10日間の有給が付与されます。その後、付与された10月1日を基準日として1年間働くと11日間の有給が付与されます。
今回の法律改正で変わったことは、初めて有給が付与された10月1日から1年間の間、9月30日までに5日間の有給を消化しないと罰則が課せられるように変わったのです。
しかしながらこの基準日は入社年月日だったり会社によって一斉に付与するなど、オペレーションを組み込まれていることもありますので会社の労務担当等に確認が必要です。
まとめ
ワークライフバランスが整っていないと生産性も上がる事は難しく、仕事のやる気も出ません。この有給取得義務化を契機に会社全体の働き方を見直して、従業員の長時間労働の解消と仕事と生活の調和を見直すよう働きかけていくと良いでしょう。
勤怠管理をカンタンに行う方法
従業員の打刻情報の収集、勤怠情報の確認、休暇管理に毎日膨大な時間を割いていませんか?
こうした手続きはfreee人事労務を使うことで、効率良く行えます。