フルタイム勤務なら、入社6ヶ月後に10日の有給休暇が付与されます。その後1年おきに11日、12日、13日……と付与日数が増えていき、20日が上限です。
有給休暇は労働者の権利として労働基準法で定められており、会社規模・業種に関係なく、条件を満たす労働者は全員に付与されます。
本記事では、有給休暇が付与される条件や日数、タイミングについてわかりやすく解説します。
目次
- 有給休暇の付与日数
- パターン1. 所定労働時間及び所定労働日数が基準を満たす労働者の場合
- パターン2. 所定労働時間及び所定労働日数が基準以下の場合
- 有給休暇が付与される条件
- 出勤率の計算方法
- 有給休暇が付与されるタイミング
- 有給休暇の初回付与は雇入れ日の6ヶ月後
- 有給休暇を前倒しで付与される場合
- 有給休暇の基準日を全員統一することも可能
- 有給休暇の使用期限と繰り越し
- 有給休暇の使用期限は2年
- 有給休暇の繰越上限と最大で保有可能な日数
- 有給休暇取得の注意点
- 有給休暇取得の義務化
- 労働者が有給休暇を取得できなかった場合の罰則
- 有給休暇管理簿の作成・保存の義務
- 有給休暇の買い上げは原則不可
- 半休・時間単位の有給休暇
- 有給休暇を取得する労働者に対して禁止される行為
- まとめ
- よくある質問
有給休暇の付与日数
有給休暇とは、一定の条件を満たす労働者へ付与される休暇をいいます。有給休暇は要件を満たすなら、アルバイトやパート、契約社員にも適用されます。
所定労働時間及び所定労働日数が基準を満たす労働者と、基準以下の労働者の場合に分けて、有給休暇の付与日数について説明します。
パターン1. 所定労働時間及び所定労働日数が基準を満たす労働者の場合
フルタイムの労働者や、所定労働時間が30時間以上かつ週5日以上の勤務の場合は、下記の表に従って付与する日数を決定します。
有給休暇の付与日数(基本) | |||||||
勤務年数 (入社日換算) | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年〜 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
「出勤日数÷所定労働日数」が8割以上(0.8以上)を満たしていれば、有給の付与対象です。
なお、初回付与日に10日付与される有給について、半年ごとに分割して1年かけて付与することなどは通常は認められていません。
また、就業規則に明記している場合でも、労働基準法と比較して労働者の不利益になるような変更は労働基準法違反となるため注意しましょう。
入社日にかかわらず有給休暇を労働者に一斉付与する場合には、短縮された算定期間はすべて出勤しているとみなして有給休暇付与日数の算出を行います。
パターン2. 所定労働時間及び所定労働日数が基準以下の場合
アルバイトやパートなど、所定労働時間が30時間未満かつ週の所定労働日数が4日以下の短時間勤務の労働者の有給は、所定労働日数と勤務年数に応じた日数を付与します。
<短時間従業員の有給休暇の付与日数>
所定労働日数 | 勤務年数と付与日数 | |||||||
1週間 | 1年間 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年 以上 |
4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
※所定労働日数が週によって決まっている場合は週所定労働日数、それ以外は1年間の所定労働日数によって判断します。
※所定労働日数は、付与時点における週所定労働日数で計算します。
フルタイムの労働者と同様に 出勤日数÷所定労働日数で計算し、8割以上(0.8以上)であれば有給を付与します。
週の所定労働日数が決まっていなければ、以下のいずれかに沿って計算します。
- 直近6ヶ月の労働日数の2倍
- 前年の労働日数
アルバイト・パートの有給休暇については、別記事「アルバイト・パートの有給休暇の付与日数や賃金の計算方法を解説」で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
有給休暇が付与される条件
労働基準法で定められている有給休暇付与の要件は以下の2点です。この要件を満たしている全ての労働者は、有給休暇が付与されます。
短期間の契約で働いている人でも、契約が更新された結果、半年以上継続して勤務している場合は対象となります。また、定年退職し嘱託として再雇用された場合も継続して勤務しているとみなして有給休暇が付与されます。
出勤率の計算方法
有給休暇の付与要件のひとつである「出勤率」は出勤日を全労働日で割って算出します。計算の結果、0.8(8割)以上の場合は有給休暇の付与対象です。
全労働日・出勤日としてカウントする項目は以下のとおりです。
- 有給休暇
- 産前産後休業・育児休業
- 業務起因による負傷や疾病で療養する際の休業
- 介護休業
- 遅刻・早退した日
一方、全労働日・出勤日としてカウントしない項目は以下のとおりです。
- 会社(使用者)都合による休業
- 就業規則で休日となっている日に労働した日
- ストライキやその他の正当な争議行為により労働していない日
- 休職制度を利用した休職期間
また、以下の項目は労使間の合意により、全労働日・出勤日としてカウントするかが決定されます。
- 生理休暇
- 慶弔休暇
- 通勤災害による負傷などで療養する際の休業
有給休暇は賃金が発生する休暇のため、出勤日数に含まれます。そのほか、産前産後休暇・育児休暇・介護休暇・労災による休暇も出勤日数としてカウントした上で有給休暇付与日数を計算します。
欠勤と出勤日数に含まれる休暇を混同し、誤った計算をすることがないよう注意が必要です。
出典:厚生労働省 「労働基準法第39条(年次有給休暇)について」
有給休暇が付与されるタイミング
有給休暇が付与される日のことを「基準日」といいます。基準日は労働基準法第39条で、以下のとおり規定されています。
- 入社日から継続して勤務し6ヶ月を経過した日
- 上記6ヶ月を経過した日を基準とした日から1年ごと
この法律はあくまでも最低限順守しなければならない日程を示しており、この法律よりも労働者に有利な条件であれば、有給休暇が付与される日を会社ごとに定めることができます。
出典:e-GOV法令検索「労働基準法」
有給休暇の初回付与は雇入れ日の6ヶ月後
上述したように、有給休暇が最初に付与されるのは入社日から6ヶ月が経過した日です。その初回付与が行われた日を基準日とし、その日から1年経過するごとに有給休暇が付与されます。
なお、労働者に不利にならなければ法律上問題ないため、基準日を法律で定められた日より早い日に定めている会社もあり、その場合前倒しで付与した日が基準日となります。
有給休暇を前倒しで付与される場合
年次有給休暇の初回付与日は、労働基準法により入社日から半年後と決められていますが、それより早く有給休暇を付与することも可能です。
勤務先によっては、入社日に初回の有給休暇を付与している場合もあります。この場合は、有給休暇を前倒しで取得できていることになります。
有給休暇の基準日を全員統一することも可能
入社日は従業員によって異なるため、有給休暇の基準日(有給の付与日)もそれぞれ異なります。しかし、従業員ごとに基準日が異なると管理コストがかかるため、基準日を揃えることが可能です。これを「有給休暇の斉一的取扱い」といいます。
たとえば初回の有給休暇は入社日に付与し、2回目以降は基準日をほかの従業員と同じく4月1日にするという運用も可能です。ただし、従業員の不利益にならないという条件をクリアしなければならないので注意しましょう。
出典:厚生労働省「 労働基準情報:FAQ (よくある質問) - 労働基準行政全般に関するQ&A」
有給休暇の使用期限と繰り越し
年内に使わなかった有給休暇は、翌年に繰り越すことができます。しかし、無期限で繰り越せるわけではありません。
年に5日取得する義務や退職時の消化など、ほかの注意点については以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
有給休暇とは?年5日の義務や、退職時の対応について解説
有給休暇の使用期限は2年
有給休暇には2年の使用期限があります。
たとえば、半年の継続勤務で初回付与された有給休暇については、1年後の次回付与時に繰り越し可能です。ただし、その次の付与日(継続勤務2年半)時点で初回付与された有給休暇が未消化の場合、このタイミングで消滅します。
有給休暇の繰越上限と最大で保有可能な日数
会社は労働者に対して、1年で5日間の有給休暇を取得させる義務があります。そのため、有給休暇付与日数の上限である20日間が付与された場合は、翌年に繰り越せるのは実質最大で15日となります。
また、有給休暇の消滅時効は2年です。新しく付与される20日の有給休暇と合わせると、最大で保有できる日数は35日になります。
有給休暇取得の注意点
有給休暇には、取得時の注意点がいくつかあります。
有給休暇取得の注意点
- 有給休暇取得の義務化
- 労働者が有給休暇を取得できなかった場合の罰則
- 有給休暇管理簿の作成・保存の義務
- 有給休暇の買い上げは原則不可
- 半休・時間単位の有給休暇
適切な運用を行わなければ企業側に罰則が与えられる可能性もあるため、労働者も正しい運用方法を理解しておく必要があります。
有給休暇取得の義務化
労働基準法の改正によって、有給休暇付与日より1年以内に5日の有給休暇を労働者に取得させることが企業に義務づけられました(年次有給休暇の時季指定義務)。なお、この義務化の対象となる労働者は、有給休暇が10日以上付与された者に限ります。
たとえば、就業規則により入社日に有給を10日付与した場合、入社日から1年以内に5日の有給休暇を取得する必要があります。この5日には時間単位の有給休暇は含まれません。
フルタイムの労働者などの場合は勤続半年の初回付与の時点で10日の有給休暇を付与する必要があるため、初回付与時から取得義務の対象となります。
一方、パートタイム労働者など短時間従業員の場合は、勤務年数によって途中から取得義務の対象となる場合があるので管理には注意が必要です。
取得義務のある年5日の有給休暇取得にあたる時季指定は、「(使用者による)できる限り労働者の希望に沿った時季指定」「従業員自らの請求・取得」「計画年休」の方法があります。労働者が取得した有給休暇の合計が5日に達した時点で、会社側(使用者)からの時季指定は不要です。
従業員が自ら請求・取得した有給休暇の日数のほか、労使間の取り決めによって取得日があらかじめ定められた有給休暇の日数は、その日数分を時季指定義務が課される年5日から控除します。このように計画的に決められた有給休暇は、計画年休といいます。
出典:厚生労働省「年次有給休暇の時季指定義務」
労働者が有給休暇を取得できなかった場合の罰則
労働者が年5日の有給休暇取得ができない場合には会社側は労働基準法の違反となり、有給休暇取得ができなかった労働者1人につき、30万円以下の罰金が科せられます。
労働者が有給休暇の取得申請を希望していない場合でも使用者が時季を指定し、労働者と相談の上、必ず5日取得させるよう徹底した管理を行わなければなりません。
有給休暇管理簿の作成・保存の義務
有給休暇の取得義務化にあたり、使用者は「年次有給休暇管理簿」の作成と期間の満了後から3年の保存が義務付けられました。
これにより、会社側は労働者ごとに基準日や時季、取得日数などを記録する必要があります。さらに、義務化となった5日の有給休暇の取得漏れが出ないよう、労働者一人ひとりの有給休暇の取得状況を把握して管理しなければなりません。
有給休暇管理簿の作成・保存は会社の義務であり、年次有給休暇管理簿の保存義務期間は有給休暇を与えた期間の満了から3年となります。保存に関する罰則はありませんが、有給休暇を適正に管理するために、年次有給休暇管理簿の運用を徹底することが重要です。
有給休暇の買い上げは原則不可
原則として、有給休暇の買い上げは認められていません。冒頭で解説したとおり、労働者の心身のリフレッシュや余裕のある生活を送ることを目的としているのが、有給休暇です。
ただし、以下に当てはまる場合は、有給休暇の買い上げを認められることもあります。
半休・時間単位の有給休暇
有給休暇の取得は日単位であり、1日休むのが原則です。しかし、労働者が有効に休暇を活用できるようにとの観点から、半日単位(半休)や時間単位での取得を認めると就業規則で定めている企業もあります。職場で半休や時間単位での有給休暇取得が可能かどうかは、必ず会社規定を確認しましょう。
半休については法律の定めがないため、企業側が就業規則によって自由に決められるという特徴があります。一方、時間単位の有給休暇の導入については、労働法39条に規定があります。
半休・時間単位の有給休暇
- 導入には使用者と労働者の過半数を代表する者との間で労使協定を結ぶ
- 対象者、日数を決める
- 時間単位年休1日分が何時間分に相当するかを決める
- 1時間以外の時間を単位とする場合の時間数(2時間・4時間など)を決める
- 時間単位で取得できる日数は5日以内
- 決めた内容を就業規則に記載する
出典:e-GOV法令検索「労働基準法」
なお、就業規則で定めているからといって、日単位で有給取得を希望する従業員に対して、忙しさを理由に半日単位や時間単位での休暇を強制することは認められていません。
有給休暇を取得する労働者に対して禁止される行為
有給休暇は法律で定められている労働者の権利であるため、企業側はこれを不当に扱ったり、不利益を与えたりする行為は禁止されています。
禁止されている具体的な行為は、下記のようなものが挙げられます。
- 有給休暇取得の理由を聞き取り、内容次第で拒否する
- 労働者が希望する日程での取得を拒否する
- 有給休暇を取得したことにより、給与面や昇進面で不当な扱いをする
正当な理由なく労働者が求める日程での有給休暇取得を拒否した場合、労働基準法39条により、企業側は6ヶ月以下の懲役または30万円の罰金を科せられる可能性があると定められています。また、給与面や昇給面で不当な扱いをする行為は、労働法136条にて明確に禁止されていることに注意が必要です。
出典:e-GOV法令検索「労働基準法」
ただし、企業側からすれば「その日に休まれると困る」「代わりの人員を確保できない」などの理由により、有給休暇を認めたくても認められない状況もあるかもしれません。このように、有給休暇取得を認めてしまうことで事業の正常な運営を妨げる恐れがある場合、企業側は「時季変更権」を行使できます。
時季変更権が認められるケースは、下記のような場合です。
- 代わりの人員を確保できない場合
- 有給休暇取得者が同時季に重なっている場合
- 本人不在では業務に支障がでる場合
- 長期間連続で有給休暇を取得する場合
有給休暇取得の日程については、労働者の希望する日程が会社の繁忙期にあたったり、その労働者が休むことで業務に支障が出たりするケースも少なくありません。
時季変更権を行使する場合はただ拒否するのではなく、ほかの日程に変更してもらうといった代替案を提示するなど、適切なコミュニケーションを心がけることが重要です。
まとめ
有給休暇は、労働者がゆとりをもって働くことを目的とした制度です。付与日数は入社から6ヶ月を過ぎた日に10日、その後20日を上限に毎年付与される日数が増えていきます。
毎年最低5日の有給休暇の取得義務がありますが、使いきれなかった有給休暇は付与された日から2年間の事項があるため、翌年に繰り越すことも可能です。
有給休暇は労働者の権利であるため、自身に付与されている日数が正しいかを確認しながら有効活用しましょう。
よくある質問
有給休暇とは?
有給休暇は、賃金が支払われる休暇のことをいいます。労働者の心身のリフレッシュやゆとりのある生活を確保することを目的とした制度で、要件に当たるすべての労働者への付与が法律で定められています。
詳しくは記事内「有給休暇とは」をご覧ください。
有給休暇が付与される条件は?
有給休暇が付与される条件は「6ヶ月以上継続的に勤務している」「全労働日の8割以上出勤した全ての労働者」です。
詳しくは記事内「有給休暇が付与される条件」で解説しています。
アルバイトやパートタイムも有給休暇は付与される?
有給休暇に雇用形態の制限はないため、アルバイトやパートタイムであっても有給休暇は付与されます。ただし付与される有給休暇の日数やその計算方法は就業規則などによって異なります。
詳しくは「パターン2. 所定労働時間及び所定労働日数が基準以下の場合」および「アルバイト・パートの有給休暇の付与日数や賃金の計算方法を解説」の記事で解説しています。