人事労務の基礎知識

厚生年金保険の加入条件とは? 対象や加入義務をご紹介します

厚生年金保険の加入条件とは? 対象や加入義務をご紹介します

厚生年金保険の加入義務や加入条件などがよくわからずに放置していませんか。厚生年金保険は、一定条件を満たした事務所や労働者なら加入しなければならない制度です。平成28年10月からは適用条件が拡大し、パートなどでも加入義務対象となる可能性が高くなりました。今回は厚生年金保険の加入義務や条件などについてご紹介します。

▶︎ 社会保険の加入条件については、まずはこちらの記事!

社会保険の加入条件とは?適用範囲拡大や従業員50人以下の場合について解説

目次

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厚生年金保険とは

厚生年金保険とは社会保険のひとつで、会社に勤める従業員などを対象にした年金制度です。20歳以上60歳未満の全ての人が加入する国民年金(基礎年金)に、上乗せする形で保障されるもので、保険料は会社と従業員の折半によって支払われます。

引用元:厚生労働省

厚生年金保険加入のメリット

  • 会社側のメリット
    従業員に対して長く安心して働ける環境を提供できることが、厚生年金保険料を支払うメリットのひとつです。また、会社負担が発生するので経営上支払いに苦慮することもありますが、会社が支払った保険料については経費として認められますので、メリットといえるでしょう。
  • 従業員側のメリット
    保険料を会社が半分折半してくれるため、国民年金よりも支払額が安く済む場合があります。また配偶者については保険料の負担がないため、家族がいる場合は大きなメリットが得られるといえるでしょう。
また厚生年金保険に加入しておけば、本人が亡くなった場合の遺族年金や、障害を負ってしまった場合の障害年金の給付対象にもなります。そのため、老後だけでなく、万が一のことがあった場合の保険として利用できることも、従業員側のメリットのひとつといえます。

厚生年金保険の加入義務がある事業所

一定の条件を満たした事業所は、必ず厚生年金保険に加入しなければなりません。加入義務を怠った場合は大きなペナルティが課せられるため、注意が必要です。

厚生年金保険に加入しなければならない事業所

以下の事業所は強制適用事業所と呼ばれており、厚生年金保険への加入が義務付けられています。

  • 法人事業所
  • 常時5人以上の従業員を抱える個人事業所(一部業態を除く)
法人事業所については、たとえ経営者しかおらず従業員を雇用していない場合でも、厚生年金保険に加入しなければなりません。

一方、農業や漁業などの農林水産業、また弁護士などの法務業やサービス業、宗教業を営む個人事業所については、従業員が5人以上でも強制適用事業所とはみなされません。

任意で厚生年金保険に加入することができる事業所

強制適用事業所に含まれない事業所でも、半数以上の従業員が加入に同意した場合は、厚生年金保険に加入することができます(任意適用事業所)。この場合、事業所単位で加入申請するため、同意しなかった人も厚生年金保険への加入義務が発生します。

任意で加入する場合は、会社の所在地にある年金事務所に郵送か窓口にて申請が必要です。また電子申請も可能となっています。任意加入の場合の詳細は日本年金機構のページをご覧ください。

強制適用事業所が加入を怠った場合

金銭面および社会的責任面で以下のペナルティが課せられます。

  • 厚生年金保険への強制加入と過去未払い分の支払い
    厚生年金保険への強制加入とともに、最大で従業員の過去2年分の厚生年金保険料を一括納付するよう求められます。この場合、発覚した時点で退職していた従業員の分についても支払い義務が発生する可能性があります。
    退職した従業員について、本来負担すべき保険料の総額を一括で負担してもらうことが金額などから現実的でないケースが多く、その場合は事業所が全額負担することになります。
  • 罰金または懲役
    悪質な場合、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される場合があります。この場合、社会的信用も失う可能性が高いため、取引にも影響が出る可能性もあります。

被保険者の加入条件

ここでは従業員側から見た、厚生年金保険の加入条件についてチェックしていきましょう。

厚生年金保険に加入しなければならない従業員

厚生年金保険に加入している事業所で雇用されている人のうち、以下の条件に当てはまる人については加入義務が発生します。

  • 常時雇用されている
  • 70歳未満である
ただし、70歳以上であっても、加入期間の問題で年金が支給されない人については、不足分を補う目的で加入することができます。また外国人労働者であっても、上記に当てはまる人は厚生年金保険料を支払う必要があります。

厚生年金保険の加入条件に該当しない人

強制適用事業所で働いていても、以下条件に当てはまる場合は厚生年金保険への加入義務はありません。

  • 日雇いの場合
  • 雇用契約が2ヶ月以内の場合
  • 季節的事業(4ヶ月以内)または臨時事業所(6ヶ月以内)で働く場合
  • 事業所の所在地が一定でない場合

アルバイトやパートの場合の加入条件

アルバイトやパートであっても、一般社員の勤務時間および労働日数の4分の3以上働いている人は、厚生年金保険への加入義務が発生する可能性があります。

また、上記条件を満たしていない場合でも、以下の条件にすべて当てはまる場合は、加入条件を満たした従業員とみなされます。

  1. 週20時間以上働いており、1ヶ月の所定内賃金が88,000円以上である
  2. 従業員数が501名以上の会社に勤めていること
  3. 学生ではないこと
  4. 予定される雇用期間が1年以上であること
所定内賃金は以下の方法で計算することができます。
時給 × 1週間の所定労働時間 × 52週 ÷ 12ヶ月
  上記を満たせば、たとえ年収が130万円未満であっても、厚生年金保険に加入しなければなりません。これは先に述べた「厚生年金保険の加入条件に該当しない人」にも該当するものです。

特に1の条件は、平成28年10月から新たに加わったものですので、アルバイトやパートだからと安心せず、当てはまっていないかこの機会にチェックしてみましょう。

厚生年金保険の加入手続き

厚生年金保険の手続きは事業所が行います。提出書類は以下のとおりです。

  • 新規適用届(事業所自体が新たに厚生年金保険に加入する場合)
  • 被保険者資格取得届(新たに加入対象となる従業員を雇い入れた場合)
新たに雇用した従業員に扶養家族がいる場合は被扶養者(異動)届の提出も必要となります。

上記書類は、いずれも該当する事案から5日以内に提出する必要があるため、事業所側は速やかに手続きが行えるよう準備しておく必要があります。管轄の年金事務所については、日本年金機構のページより調べることができますので、確認しておきましょう。

提出方法・提出書類

各書類の提出は、窓口または郵送、電子申請で行います。申請に必要な書類や添付資料については、日本年金機構のページをご確認ください。

従業員が退職した場合

該当する従業員が退職した場合は、事業所側で「被保険者資格喪失届」を作成し、年金事務所に提出する必要があります。申請方法は上記と同じく窓口または郵送、電子申請となります。詳しい書式などについては日本年金機構のページをご覧ください。

まとめ

厚生年金保険への加入義務があるにも関わらず、申請を怠っていると罰則があるだけでなく、社会的制裁を受ける可能性もあります。また従業員の加入条件は平成28年10月から変更されているため、申請漏れがないかしっかり確認しておきましょう。

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入社時の資格取得届の作成が可能

加入義務の事実が発生してから5日以内に、該当従業員の健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を提出する必要があります。被扶養者がいるときは、健康保険被扶養者(異動) 届・国民年金第3号被保険者にかかる届出書も作成します。

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