人事労務の基礎知識

住民税の計算方法とは?税率や計算シミュレーションを紹介

監修 北 光太郎 きた社労士事務所

住民税の計算方法とは?税率や計算シミュレーションを紹介

住民税は、その地域に住む人たちが地域社会の費用を分担して負担するために納付する税金です。

住民税の納付額は年収だけではなく、扶養の有無や控除の適用などによって決まります。本記事では、住民税の税率や計算方法を詳しく解説し、支払い時期や非課税となる条件について紹介します。

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目次

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住民税の税率(納付割合)

住民税は、前年の所得に基づいて課税される「所得割」と、一定額が課される「均等割」の2つで構成されており、これらを合算した金額を納付する仕組みとなっています。

それぞれの税率や金額は以下のとおりです。

住民税の税率

  • 所得割:課税総所得金額 × 10%(道府県民税・都民税4% + 区市町村民税6%)
  • 均等割:5,000円(都道府県民税1,000円 + 区市町村民税3,000円 + 森林環境税1,000円)

所得割の税率は一律10%です。内訳としては都道府県民税が4%、区市町村民税が6%となっています。

一方、均等割の負担額は5,000円です。都道府県民税1,000円と区市町村民税3,000円に加え、2024年度からは森林環境税として1,000円が加わり、均等割の合計額は5,000円となります。

所得割は、所得が多いほど納付額も増える仕組みです。自治体の条例や財政状況によっては住民税が標準よりも高くなる場合や、特定の条件下で減税措置が適用されることもあります。


参考:総務省「個人住民税」

住民税の計算方法

住民税は所得割と均等割の合算された金額です。

住民税の計算式

  • 住民税 = 所得割 + 均等割

前述のとおり、均等割は一定の金額ですが、所得割については所得控除や税額控除といった控除を考慮する必要があります。

住民税を計算する流れは以下のとおりです。

  1. 所得額を求める
  2. 課税所得金額を求める
  3. 所得割額を求める
  4. 均等割を加算する

1. 総所得金額を求める

所得額とは、1月1日から12月31日の収入から必要経費を差し引いた額のことです。

所得額の計算式

  • 所得額 = 収入 - 必要経費

会社員の場合は「給与」、個人事業主やフリーランスの場合は「売上金額」が主な収入となります。

一方、必要経費とは、収入を得るために発生した支出のことです。

会社員の場合は、特定の支出以外の費用は経費として認められていないため、「給与所得控除」という控除枠が設けられています。そのため会社員は、原則として収入から給与所得控除を引いた金額が所得額になります。

給与所得控除額については、収入に応じてそれぞれ以下の計算式に基づいて算出されます。


給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から
1,800,000円まで
収入金額 × 40% - 100,000円
1,800,001円から
3,600,000円まで
収入金額 × 30% + 80,000円
3,600,001円から
6,600,000円まで
収入金額 × 20% + 440,000円
6,600,001円から
8,500,000円まで
収入金額 × 10% + 1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)
出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」

【関連記事】
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2. 課税所得金額を求める

課税所得とは、所得額から所得控除を差し引いた額のことです。

課税所得金額の計算式

  • 課税所得金額 = 所得額 - 所得控除額

主な所得控除は以下のとおりです。

所得控除の種類

  • 基礎控除
  • 扶養控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • ひとり親控除
  • 寡婦控除
  • 障害者控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 医療費控除
  • 雑損控除

会社員の場合、ほとんどの所得控除については年末調整で申告すれば適用できます。しかし、医療費控除や雑損控除については個人で確定申告をしなければ控除の適用を受けられないことに注意が必要です。

3. 所得割額を求める

所得割は、課税所得金額に税額10%を掛けた額から税額控除を差し引いて算出します。

所得割額の計算式

  • 所得割 = 課税所得 × 10%(税率)- 税額控除額

税額控除とは、配当控除や住宅借入金特別控除、寄付金控除など算出した税額から直接控除されることが認められたものの控除のことです。

4. 均等割を加算する

最後に、算出した所得割に均等割の5,000円を足した金額が住民税になります。

住民税の計算式

  • 住民税 = 所得割 + 均等割

算出した住民税は年額となるため、基本的に会社員は毎月天引きされ、個人事業主やフリーランスなどは年4回に分けて納付書または口座振替により納めます。


参考:東京都主税局「個人住民税と特別徴収について」

住民税の計算シミュレーション

住民税は前年(1~12月)に一定以上の所得がある人が、6月から翌5月にかけて納付する仕組みになっています。そのため、住民税は一般的には社会人2年目の6月分の給与から天引きされるようになります。

ここでは、以下の条件の場合における住民税の計算例を見ていきましょう。

  • 年収:500万円
  • 基礎控除:43万円
  • 社会保険料:75万円
  • 税額控除:なし
  • 扶養親族:なし

住民税の計算例

  • 所得額:500万円(年収) - 144万(給与所得控除) = 356万円
  • 課税所得額:356万円(所得額) - 43万(基礎控除) - 75万円(社会保険料) = 238万円
  • 所得割:238万円(課税所得額)×10% =23万8千円
  • 税額控除:なし
  • 住民税額:23万8千円(所得割)+5千円(均等割) = 24万2千円(年額)

※調整控除等の計算は除外しています。



実際には、給与所得以外の所得や扶養親族の有無、住宅ローン控除の有無など、個人の状況で金額は変わります。

住民税の支払い方法

個人の住民税は、賦課課税方式が採用されています。これは、納税者が納めるべき金額を国や地方公共団体が計算し、納税者へ通知する方式です。市区町村が年末調整や確定申告の情報から税額を計算し、納税額を通知する仕組みとなっています。

住民税の納付方法は自ら納める「普通徴収」と、毎月給与から天引きされる「特別徴収」があります。

会社員などの給与所得者は、原則として特別徴収で住民税を納めます。そのため、会社員の場合は住民税の年額を12ヶ月で割った金額(端数は6月に上乗せ)が毎月給与から天引きされ、会社が市区町村に納めています。

住民税が非課税となる年収の目安

個人の住民税は、以下の一定の条件にあてはまる場合は非課税となります。

  • 所得割・均等割の両方が非課税
  • 所得割のみ非課税

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所得割・均等割の両方が非課税

次のいずれかに該当する場合は、住民税が非課税となります。

住民税が非課税となる条件

  • 生活保護法による生活扶助を受けている
  • 障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年中の合計所得金額が135万円以下
    (給与所得者の場合は、年収204万4千円未満)
  • 前年中の「合計所得金額」が区市町村の条例で定める額以下

    ・条例で定める額の例(東京23区内の場合)

    (1)同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合:35万円 × (本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数) + 31万円以下

    (2)同一生計配偶者又は扶養親族がいない場合:45万円以下

上記の計算をもとに、所得割・均等割が非課税になる年収目安は以下のとおりです。

所得割・均等割が非課税になる年収目安

※1級地(東京23区・指定都市)の場合
単身世帯:100万円以下
夫婦のみ世帯:156万円以下
夫婦+子ども1人世帯:205.7万円以下
夫婦+子ども2人世帯:255.7万円以下
高齢者単身世帯(65歳以上):155万円以下


出典:厚生労働省「住民税世帯非課税の対象者等」

所得割のみ非課税

前年中の「総所得金額等」が以下の金額の場合は、所得割のみ非課税となります(東京23区内の場合)。

所得割のみ非課税となる条件

  • 同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合:35万円 × (本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数) + 42万円以下
  • 同一生計配偶者又は扶養親族がいない場合:45万円以下

上記の計算をもとに所得割のみの年収目安は以下のとおりです。

所得割のみの年収目安

単身世帯:100万円以下※1
夫婦のみ世帯:170万円以下
夫婦+子ども1人世帯:221.4万円以下
夫婦+子ども2人世帯:271.4万円以下
高齢者単身世帯(65歳以上):155万円以下※2

※1所得控除等により課税最低限である108.8万円までは非課税
※2高齢者単身世帯における所得割は、所得控除等により157.1万円(課税最低限)までは課税されない


出典:厚生労働省「住民税世帯非課税の対象者等」
出典:東京都主税局「個人住民税」

まとめ

住民税は、前年の所得に基づいて課税される「所得割」と、一定額が課される「均等割」の合計額です。所得割は一律10%の税率で計算され、均等割は2024年度から森林環境税が加わり5,000円となりました。

住民税の支払いは、会社員の場合は給与から天引きされる特別徴収が一般的で、個人事業主などは自ら納付する普通徴収となります。また、一定の収入以下の人は住民税が非課税となる場合があります。

住民税の計算方法を理解し、毎年6月からどのくらいの住民税を納付しなければならないのかを把握しておきましょう。

よくある質問

住民税はいつから払う?

前年(1~12月)に一定以上の所得がある人が6月から支払います。一般的には社会人2年目の6月分の給与から天引きされるようになります。

詳しくは記事内「住民税の計算シミュレーション」をご覧ください。

住民税の計算方法は?

住民税は所得割と均等割の合算して計算されます。均等割りは一定の金額ですが、所得割については以下の手順で計算されます。

  1. 所得額を求める
  2. 課税所得金額を求める
  3. 所得割額を求める
  4. 均等割を加算する

詳しくは記事内「住民税の計算方法」をご覧ください。

住民税は年収いくらから非課税となる?

住民税が非課税(所得割のみ)となる年収目安は以下のとおりです。

  • 単身世帯:100万円以下※1
  • 夫婦のみ世帯:170万円以下
  • 夫婦+子ども1人世帯:221.4万円以下
  • 夫婦+子ども2人世帯:271.4万円以下
  • 高齢者単身世帯(65歳以上):155万円以下※2

※1所得控除等により課税最低限である108.8万円までは非課税
※2高齢者単身世帯における所得割は、所得控除等により157.1万円(課税最低限)までは課税されない


詳しくは記事内「住民税が非課税となる年収の目安」をご覧ください。

監修 北 光太郎

きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。

北 光太郎

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