雇用保険被保険者証とは、自身が雇用保険に加入していることを示す証明書です。
雇用保険被保険者証は退職時に手当を受け取る際や転職の際に主に使用し、退職時までは会社側が預かっている場合が多いです。
本記事では、雇用保険被保険証とはなにか、また事業主が従業員の入退社に伴って行う手続きや、労働者(被保険者)が実際に雇用保険被保険者証を使用する機会、紛失した際の再発行手続きについて解説します。
目次
雇用保険被保険者証とはなにか?
雇用保険被保険者証とは、自身が雇用保険に加入していることを示す証明書です。
雇用保険は一定の加入期間がある労働者に対し、退職や失業した際に手当を給付したり、教育訓練を受ける補助金を給付したりするなどの援助を行ってくれる保険制度で、労働者の生活を安定させることを目的としています。
雇用保険に入っている証明となる雇用保険被保険者証は、初めて加入する場合も勤務先が手続きを進めるため、退職や転職などの機会がなければ普段からよく見るものではありません。
雇用保険被保険者証の内容
雇用保険被保険者証は横210mm、縦77mmの白地の用紙に黒インクで印刷されており、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)と一体になった書類です。
発行場所により若干の差はみられますが、雇用保険被保険者証には、以下の内容が記載されています。
雇用保険被保険者証の内容
- 被保険者番号
- 被保険者の氏名
- 被保険者の生年月日
- 確認(受理)通知年月日
- 資格取得年月日
- 事業所名略称
被保険者番号は、加入者ひとり一人に割り当てられる番号で、被保険者期間を算出するために必要です。
雇用保険に加入していない期間が連続して7年を超えなければ、雇用主が変わったり氏名の変更があったりした場合でも番号は変わらずそのまま引き継がれます。
確認(受理)通知年月日はハローワークで資格取得手続きを完了した日、資格取得年月日は雇用保険の加入資格を得た日が記載され、事業所名略称には資格を取得した事業所の名称が書かれています。
雇用保険の被保険者となる要件
一定の加入期間を満たせば、失職時の手当や在職時の育児休暇など、さまざまな援助を行ってくれる雇用保険ですが、被保険者となるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
雇用保険の被保険者になる要件
- 1週間に20時間以上労働していること
- 31日以上継続して雇用される見込みがあること
雇用保険は正社員のためだけの制度ではなく、パートやアルバイト、派遣社員、契約社員など、農林水産業の一部を除き、雇用形態の労働者が対象です。ただし、労働時間が1週間に20時間以下の人や、31日未満の短期アルバイトの場合は加入できないため、注意しましょう。
また、被保険者となる要件を満たしていても、法人の取締役や役員など会社と委任関係にある人、家事使用人や昼間学生、臨時内職的に雇用される人などは、被保険者の対象外です。
ほかに、4ヶ月以内の期間で季節的事業と雇用契約を締結している人や日雇い労働者、官公庁に雇用される人の一部は、雇用保険の適用外とされています。
雇用保険は加入していれば多くの援助を受けられる保険であるため、退職する際は、自分が手当を受けられる加入期間を満たしているかどうかも確認しておきましょう。
離職票と雇用保険被保険者証の違い
離職票は正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といい、労働者が退職したことを証明する書類です。離職中に条件を満たせば受け取れる失業保険給付の申請の際に必要となります。
転職先で必要となる雇用保険被保険者証と違い、離職票は転職先で提示を求められることはほとんどありません。雇用保険被保険者証とはまったく異なる書類であると認識しておきましょう。
【関連記事】
離職票・退職証明書・離職証明書まとめ!いつ届く?どこで発行?詳しく解説
雇用保険被保険者証の手続き方法
雇用保険被保険者証の手続きを行うのは、従業員の雇用主です。ここからは雇用主に向けて、さまざまなケースでの手続き方法を解説します。
初めて従業員を雇用する場合
初めて従業員を雇用する場合、雇用主は以下の流れで手続きが必要です。
初めて従業員を雇用した場合の雇用保険の手続き
- 「労働保険関係成立手続」を行う
- 所轄のハローワークに「事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する
- ハローワークから交付された「雇用保険被保険者証」を従業員に渡す
労働保険関係成立手続
「労働保険関係成立手続」とは、事業所が雇用保険の対象となる従業員を1人でも雇用した際に行わなければならない手続きです。
具体的には事業者と対象従業員の間で保険関係が成立した日から10日以内に、「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署へ提出します。
事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届
保険関係成立届の提出が完了したら、「事業所設置届」と「雇用保険被保険者取得届」を所轄のハローワークへ提出します。
「事業所設置届」は設置の日の翌日から起算して10日以内、「雇用保険被保険者取得届」は被保険者ごとに、資格取得の事実があった日の翌月10日までに行わなければなりません。
すべての書類を同日に提出できれば問題ありませんが、「雇用保険関連届出書」の記入に必要な労働保険番号は、労働保険関係成立手続を済ませてからでないと確認できないため、別日での提出となる点は注意しておきましょう。
また、保険関係が成立した日から50日以内に、「労働保険概算保険料申告書」の提出と、当該年度分12ヶ月の保険料の納付が必要です。
上記の手続きを経てハローワークから「雇用保険被保険者証」が交付されれば、手続きは完了します。
新たに従業員を雇用する場合
すでに雇用保険の対象となる従業員を雇っている状態で、新たに従業員を雇用する場合の雇用保険被保険者証の手続きは、以下のように行います。
新たに従業員を雇用する場合の雇用保険被保険者証の手続き
- 所轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する
- ハローワークから交付された雇用保険被保険者証を従業員に渡す
新たに従業員を雇用する場合は「労働保険関係成立手続」や「事業所設置届」を提出する必要はないため、雇い入れた労働者が被保険者となった日の属する月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出すれば、ハローワークから雇用保険被保険者証が交付されます。
ハローワークでは、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書と雇用保険被保険者証を本人に渡すよう通知しています。なお、雇用保険被保険者証と同時に交付される事業主通知用の確認通知書は、事業主がしっかりと保管しておきましょう。
また、雇用保険被保険者資格取得届の申請は、総務省が運営しているWebサイト「e-Gov」からも可能です。電子申請は手順に沿って申請書を作成し、添付書類を追加すれば自宅や事業所からでも行えるため、手軽といえるでしょう。
従業員が離職する場合
従業員が離職する際にも雇用保険被保険者証の手続きが必要です。
離職する労働者は退職日以前の2年間において、雇用保険の被保険者であった期間が通算して12ヶ月以上あれば、手続きを経て失業給付を受け取れます。
退職者が失業給付を受け取れるよう、事業主は以下の書類を所轄のハローワークに提出し、雇用保険の資格喪失手続を行うことが必要です。
従業員が離職する場合に提出が必要な書類
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 離職証明書
雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員が退職した日の翌々日から10日以内に行わなければいけません。離職の日や資格喪失の原因などを記入する必要があるため、あらかじめ確認しておきましょう。
作成した雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書をハローワークに提出すると、離職票が交付されます。
後述しますが、退職した従業員は交付された離職票と雇用保険被保険者証をハローワークへ持参すると、失業認定を受けられます。
そのほか手続きが必要な場合
従業員の雇用や離職のほかにも、以下の場合、雇用保険被保険者証の手続きが必要です。
従業員が離職する場合
- 事業所の名称・所在地の変更があった場合
- 従業員の異動や転勤があった場合
事業所の名称や所在地に変更があった場合、変更のあった日の翌日から起算して10日以内に「雇用保険事業主事業所各種変更届」の提出が必要です。
また従業員の異動や転勤も同様で、事実のあった日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者転勤届」を提出しなければなりません。
雇用保険被保険者証の手続きに関しても、「e-Gov」から電子申請が可能です。電子申請はあらかじめ電子署名が必要ですが、時間の節約などのメリットも多いため、使えるようにしておきましょう。
雇用保険被保険者証はいつもらえる?
雇用保険被保険者証が従業員に渡されるのは、原則交付されてすぐです。ただし重要書類であるため、退職時まで事業主が保管している場合も少なくありません。
雇用保険被保険者証は、再就職先に入社するときや、失業給付を受給する際に必要です。事業主が保管している場合は、退職時に必ず確認し、受け取るようにしてください。
雇用保険被保険者証はいつ使う?
退職時までほとんど雇用保険被保険者証を使う機会は、具体的には離職中や転職時です。
また雇用保険被保険者証そのものは使用しませんが、雇用保険に加入している方は、在籍中に受け取れる給付があります。
離職中
離職中に手当を受けたり、職業訓練を受けたりする際に雇用保険被保険者証を使います。離職中の手当とは一般的には失業保険や失業給付金などの名称で呼ばれ、雇用保険の加入状況により、お金がもらえる制度です。
離職中に手当をもらうには、退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12ヶ月以上あることが必要です。また就職する積極的な意志や能力があり、求職の申込みを実際に行っているにもかかわらず、職業に付けない状態でなければいけません。
退職して家業や学業へ専念する場合や、すでに就職先が決まり転職活動を行っていない場合などは給付の条件に当てはまらないため注意しましょう。手当を受け取る際に必要な書類は以下のとおりです。
離職中の手当をもらう際の必要書類
- 雇用保険被保険者証
- 離職票
- 本人確認書類
- 縦3.0cm横2.4cmの写真2枚
- 本人名義の普通預金通帳
- 求職申込書
- 個人番号確認書類
また手当は必要書類を提出すれば受け取れるわけではなく、以下の流れで給付されます。
離職手当を受け取るまでの流れ
- ハローワークで離職票と受付票を提出する
- 7日間の待機期間を過ごす
- 雇用保険説明会へ出席する
- 4週間に一度の失業認定日に出向く
- 失業認定日後約1週間で給付される
手当を受け取るまでに7日間の待機期間がある点や、雇用保険説明会に出席しなければならない点には注意しましょう。
さらに紹介した手当受給までの流れは退職理由によって異なり、自己都合での退職の場合、7日間の待機期間後にさらに2ヶ月間の待機期間があります。
転職時
雇用保険被保険者証は、離職中のほかにも転職先の企業が雇用保険の引き継ぎ手続きをする際に必要です。転職先で提出を求められた際、必ず期日までに事業主に提出するようにしましょう。
ただし雇用保険被保険者証には有効期限があり、雇用保険の適用外となってから7年以上経つと、被保険者番号がハローワークのデータから削除されてしまいます。
7年以上雇用保険に加入していない場合は、転職先に新たに雇用保険被保険者証の発行手続きを行ってもらい、番号を取得してもらいましょう。
在職中
在職中に雇用保険被保険者証そのものを使う場面は、ほぼありません。しかし雇用保険に加入している労働者が育児休業や介護休業を取得する場合、一定の要件を満たしていれば給付が受けられます。
育児休業や介護休業を取得する場合、被保険者番号が必要です。入社時に雇用保険被保険者証を自身で保管するよう事業主から渡されている場合は、紛失しないよう注意しましょう。
雇用保険被保険者証を紛失した際の再発行手続き
雇用保険被保険者証は離職中や転職時に、また被保険者番号は在職中も使う機会がありますが、紛失してしまった場合には再発行も可能です。
ハローワークで手続きを行えば即日で再交付してもらえるため、紛失に気づいたら早めに再発行して厳重に保管しておきましょう。
再発行の手続きに必要なものは以下の3点です。
- 在職中または退職した会社の正式名称と本社所在地、電話番号
- 運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類
- 印鑑
雇用保険被保険者証の再発行はハローワークの窓口で行えるほか、「e-Gov」での電子申請や郵便、代理人による申請にも対応しています。
電子申請や郵便での申請は電子申請は即日再発行はできませんが、ハローワークへ出向く必要がないため、時間のない人にも向いています。
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まとめ
雇用保険被保険者証とは、自身が雇用保険に加入していることを示す証明書です。主に退職時に必要となる書類で、入社した頃から事業者が保管している場合は、退職時は忘れず受け取るようにしましょう。
また自分で保管して紛失してしまった場合でも、ハローワークで即日発行が可能です。使う機会があった際に再発行するのではなく、大切な書類であるため紛失に気がついたらすぐに手続きを行いましょう。
よくある質問
雇用保険被保険者証とは?
雇用保険被保険者証とは、自身が雇用保険に加入していることを証明する書類です。雇用保険被保険者証に記載されている被保険者番号は、一度発行されれば転職した際も引き継がれます。
詳しくは記事内「雇用保険被保険者証とはなにか?」で解説していますので、ご覧ください。
雇用保険被保険者証は再発行できる?
雇用保険被保険者証の再発行は可能です。再発行の方法はハローワークの窓口で行う方法と「e-Gov」での電子申請、郵便申請、代理人申請があります。
詳しくは記事内「雇用保険被保険者証を紛失した際の再発行手続き」で解説していますので、ご覧ください。
雇用保険被保険者証はいつもらえる?
雇用保険被保険者証は、労働者が最初に就職した事業主の手続きによって発行される書類です。交付されれば原則すぐに労働者に手渡されることにはなっていますが、退職時まで事業主が保管している場合も多くあります。
詳しくは記事内「雇用保険被保険者証はいつもらえる?」で解説していますので、ご覧ください。