雇用保険被保険者資格取得届とは、従業員を雇用保険に加入させる際の手続きに必要な書類です。
書類の作成自体は、各項目で当てはまる数字を記入していくだけで完了するため難しくはありませんが、いくつか注意すべきポイントが存在します。
本記事では、雇用保険被保険者資格取得届の書き方や注意点、手続きの方法についてわかりやすく解説します。
▶︎ 雇用保険被保険者証については、まずはこちらの記事!
目次
- 雇用保険被保険者資格取得届とは?
- 雇用保険被保険者資格取得届の書き方
- 【1.個人番号】
- 【2.被保険者番号 / 3.取得区分】
- 【4.被保険者氏名 / 5.変更後の氏名】
- 【6.性別 / 7.生年月日 / 8.事業所番号】
- 【9.被保険者となったことの原因 / 10.賃金 / 11.資格取得年月日】
- 【12.雇用形態 / 13.職種 / 14.就職経路 / 15.1週間の所定労働時間】
- 【16.契約期間の定め】
- 雇用保険被保険者資格取得届の提出方法
- 雇用保険被保険者資格取得届を作成する時の注意点
- 誤った記入をしないようにする
- マイナンバーの記入が必要
- 雇用保険の対象かどうか確認する
- 添付書類の漏れがないか確認する
- 雇用保険被保険者証を本人に交付する
- 社会保険の手続きや保険料の計算をラクにする方法
- まとめ
- よくある質問
雇用保険被保険者資格取得届とは?
雇用保険被保険者資格取得届とは、従業員を雇用保険に加入させる際の手続きに必要な書類です。雇用保険は、加入対象になる従業員を雇用したら必ず加入する必要があります。
万が一、加入し忘れると雇用保険法による罰則で「6ヶ月以上の懲役または30万円以下の罰金」が課せられます。
雇用保険は、失業手当や育児休業の給付・教育訓練など労働者のための大切な保険です。雇用保険被保険者資格取得届の提出期限は、従業員を雇用した翌月10日までのため、忘れずに提出しましょう。
雇用保険被保険者資格取得届の書き方
雇用保険被保険者資格取得届の書き方は難しいものではありません。記載欄は全部で事業所名を含め18ヶ所ありますが、ポイントを押さえながら順を追って解説します。
なお、雇用保険被保険者資格取得届はハローワークのページからダウンロードが可能です。
【1.個人番号】
個人番号はマイナンバーを記入する欄です。マイナンバーは本人確認を行ったうえで記載します。
【2.被保険者番号 / 3.取得区分】
2.被保険者番号は、前職で雇用保険に加入していたのなら、そのまま転記します。
3.取得区分は、初めて雇用保険に加入もしくは前職から7年以上経過している従業員は、新規1とします。前職で雇用保険に加入していたのなら、再加入の2を記載します。
【4.被保険者氏名 / 5.変更後の氏名】
被保険者証の氏名を、被保険者氏名欄に記載します。被保険者氏名の名前と現在の氏名が異なる方は「5.変更後の氏名」に現在の氏名を記載します。姓名の間は1マス分のスペースをあけましょう。
【6.性別 / 7.生年月日 / 8.事業所番号】
性別と生年月日を記載します。生年月日の元号は対象の番号を記載し、年月日が一桁なら前に0を付けます。
(例:平成08年7月1日→4-080701)
8.事業所番号には、雇用する事業所に付与されている10桁または、11桁の番号を記載します。
【9.被保険者となったことの原因 / 10.賃金 / 11.資格取得年月日】
9.被保険者となったことの原因は、以下の中から数字を選びます。
番号 | 被保険者になった原因 |
1 | 新規雇用(新規学卒) |
2 | 新規雇用(その他) |
3 | 日雇いからの切替 |
4 | その他 |
8 | 出向元への復帰等(65歳以上) |
10.賃金は通勤手当を含む、月額の賃金を記載します。11.資格取得年月日は雇用した日にちを記載します。
【12.雇用形態 / 13.職種 / 14.就職経路 / 15.1週間の所定労働時間】
12.雇用形態は7つの雇用形態の中から、該当する番号を記載します。13.職種は用紙裏面に記載された職種の中から、配当する数字を記入します。職種は以下の11項目に分かれています。
番号 | 職種 |
01 | 管理的職業 |
02 | 専門的・技術的職業 |
03 | 事務的職業 |
04 | 販売の職業 |
05 | サービスの職業 |
06 | 保安の職業 |
07 | 農林漁業の職業 |
08 | 生産工程の職業 |
09 | 輸送・機械運転の職業 |
10 | 建築・採掘の職業 |
11 | 運搬・清掃・包装等の職業 |
上記の中で、当てはまるものを適切に選びましょう。14.職業経路は「安定所紹介」「自己就職」「民間紹介」「把握していない」の、4つの中から数字を選びます。
15.1週間の所定労働時間は雇用契約書によって定められている、1週間の所定労働時間を記載します。
【16.契約期間の定め】
期間の定めがある人は1、ない人は2を記載します。定めがある際は、契約期間と契約更新の有無を記載します。最後に契約期間の定め直下の事業所名の記載と、事業主の欄・日付を記載して終了です。
雇用保険被保険者資格取得届の提出方法
雇用保険被保険者資格取得届の提出方法は、以下の3つから選べます。
・郵送
・電子申請
雇用保険被保険者資格取得届は、従業員を雇用した翌月の10日までにハローワークへの提出が必須であるため、提出方法を誤ると提出期限を超過してしまう可能性があるため注意が必要です。職場の環境や提出時期に合わせた提出をするよう心がけてください。
一般的な窓口への提出方法は、所轄のハローワークに直接提出する方法です。窓口であれば、以下の書類が即日発行されます。
窓口で発行される書類
- 雇用保険被保険者証
- 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主用・被保険者用)
- 雇用保険被保険者資格喪失届
手続きが即日で終わるため、期日が近く急いでいる人や記載方法に不安がある人は窓口での提出が安心です。
窓口提出以外には郵送での申請も可能です。雇用保険被保険者資格取得届の用紙はパソコンからダウンロードして印刷するか、ハローワークで直接貰ってくるかを選ぶことができます。
雇用保険被保険者資格取得届には個人情報であるマイナンバーを記載しますので注意して郵送しなければなりません。そのため、一般郵便ではなく簡易書留や特定記録どちらかの郵送方法を選びましょう。このとき書類返送で使用する返信用封筒の用意と、返送時の郵送方法を指定します。
郵送は時間を要するため提出期限が近い人は、ハローワークに直接行くか電子申請がおすすめです。
ハローワークに直接行くことや、用紙の印刷が難しい場合は、インターネットから申請することもできます。電子申請は、行政機関に関する書類申請ができる「e-GOV」で行います。電話やメールでのサポートも充実しており、24時間365日申請可能です。
また提出時にチェックリストがあるため、記入漏れも防ぐことができます。電子申請にはOSなど、一定のPC環境やアカウント登録が必要です。利用する際は、利用環境を事前に確認してから書類申請をしてください。
雇用保険被保険者資格取得届を作成する時の注意点
雇用保険被保険者資格取得届を作成・提出する際には、以下の5点に気を付ける必要があります。
申請時に差し戻しになったり、申請しなければならない従業員を見落としたりしないよう、事前に確認するようにしましょう。
誤った記入をしないようにする
雇用保険被保険者資格取得届は、各項目で当てはまる数字を記入するだけで書き終わらせることができます。ただし、そのなかでも記入時にとくに気をつけたいポイントは、以下の4つです。
雇用保険被保険者資格取得届を書くうえで注意したい項目
- 【2.被保険者番号】が分からないときの書き方
- 【8.事業所番号】が10桁の企業の書き方
- 【11.資格取得年月日】の日にち間違い
- 【15.所定労働時間】の誤り
【2.被保険者番号】を従業員に確認しても不明なら、雇用する従業員に承諾をもらい備考欄に前職の事業所を記載するか、職歴が分かる履歴書を添付しましょう。
また、【8.事業所番号】が11桁ではなく10桁の事業所もあります。もし10桁の際は、そのまま左詰めで記載すれば問題ありません。
【11.資格取得年月日】は、雇用契約書に記載のある雇用関係になった初日を記載します。実際に入社した日や、研修期間後の日にちを書きがちです。間違いやすいので注意しましょう。
同様に【15.所定労働時間】も、雇用契約書に記載のある通常の週に働く時間を書きます。もし残業があったり試用期間で時間が明確ではない場合は、雇用契約書や就業規則を確認します。
マイナンバーの記入が必要
雇用保険被保険者資格取得届には、原則としてマイナンバーの記入が必要です。個人情報に関わる番号のため、雇用保険に加入する従業員には使用用途を事前にしっかり伝えるようにしましょう。
ただし、従業員からマイナンバー届出を拒否された場合、その旨を所轄のハローワークに伝えれば問題ありません。その際は、雇用保険被保険者資格取得届の備考欄に「本人事由によりマイナンバー届出不可」と記載します。
マイナンバー通知カードやマイナンバーカードを持っていない従業員は、住民票を取得すればマイナンバーを確認することができます。
雇用保険の対象かどうか確認する
雇用した従業員が、雇用保険の対象となるかどうかを事前に確認するようにしましょう。雇用保険の対象者は、以下のとおりです。
雇用保険の対象者
- 31日以上雇用する予定がある
- 所定労働時間が週20時間以上(休憩時間を除く)
- 学生ではないこと
上記に当てはまれば、パートやアルバイト(短時間労働者)であっても加入が必須です。今まで週20時間を超える勤務をしていなかった従業員が勤務時間の見直しをし、週20時間以上になった場合にも加入の義務が発生します。
雇用した従業員が雇用保険の対象者なのか確認したい方は、以下の記事を確認してください。
【関連記事】
雇用保険の加入条件は? 加入手続きの方法や必要書類について
また、令和4年1月から雇用保険マルチジョブホルダー制度が開始されました。マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で働く65歳以上の労働者が以下の基準を満たせば、雇用保険に入れる制度です。
雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用要件
- 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
- 2つの事業で所定労働時間が合計週20時間以上
- 2つの事業所で31日以上の雇用見込みがある
上記のように雇用した労働者の所定労働時間が週20時間以下であったとしても、雇用保険の対象になる可能性があります。65歳以上の雇用をした際は副業をしていないか、確認が必要です。
出典:厚生労働省「【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について」
添付書類の漏れがないか確認する
雇用保険被保険者資格取得届には、基本的に添付書類は必要ありません。ただし、以下のケースに該当する場合は、別途添付資料が必要な場合があります。
- 初めて従業員を雇用する事業所
- 提出期限を過ぎてしまったとき
- 労働保険料を納付していないとき
必要な添付書類は、所轄のハローワークで確認するのがもっとも安心です。一般的なケースでは、タイムカードや雇用した日が分かる書類・賃金台帳などの添付書類が求められます。
雇用保険被保険者証を本人に交付する
雇用保険被保険者証が発行されたら、すみやかに本人へ渡しましょう。本人用の被保険者証は、本人が雇用保険に加入した事実を確認できる重要な書類です。事業所側で保管せず、早期に渡すことが大切です。
社会保険の手続きや保険料の計算をラクにする方法
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まとめ
雇用保険被保険者資格取得届は、就業規則や雇用契約書を確認しながら記載すれば、難しい書類ではありません。記載例を確認しながら記載していきましょう。もし添付書類や不明な点がある際は、直接所轄のハローワークに確認すると安心です。
また提出方法は、窓口・郵送・電子申請の3つです。事業所のPC環境や提出期限までの日数を考慮し、期限に遅れないよう確実に申請しましょう。
よくある質問
雇用保険被保険者資格取得届の手続きはどうやる?
雇用保険被保険者資格取得届の手続きは、郵送・窓口・電子交付のいずれかを選択できます。詳しくは記事内「雇用保険被保険者資格取得届の提出方法」をご覧ください。
雇用保険被保険者資格取得届はいつ届け出る?
雇用保険被保険者資格取得届は、従業員を雇用した翌月10日までに提出が必要です。詳しくは「雇用保険被保険者資格取得届とは?」をご覧ください。