人事労務の基礎知識

育児休業給付金(育休手当)の給付率引き上げはいつから?申請方法や計算方法も解説

監修 北 光太郎 きた社労士事務所

育児休業給付金(育休手当)の給付率引き上げはいつから?申請方法や計算方法も解説

育児介護休業法とは、従業員が仕事と育児・介護を両立できるよう育児や介護に関わる人を支援する法律です。この法律に基づき、育児休業を取得した従業員に対し、雇用保険から「育児休業給付金(育休手当)」が支給されます。

2025年4月からは育児休業給付金の給付率を引き上げる施策として、新たに「出生後休業支援給付金」が創設されます。

本記事では、育児休業給付金の引き上げに関する詳細や計算方法、申請手続きをわかりやすく解説します。

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目次

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育児休業給付金(育休手当)とは

育児休業給付金(育休手当)は、育児休業を取得した際に受け取ることができる給付金です。

育児休業中は給与が減少または無給となる場合が多く、育児休業給付金を活用することで収入の減少を補い、仕事を継続して続けられるよう支援する仕組みとなっています。

また、2022年10月からは新たに「出生時育児休業(産後パパ育休)」の制度が設けられました。出生時育児休業(産後パパ育休)は、子どもの出生後8週間以内に最大4週間まで取得できる育児休業です。従来の育児休業とは別に取得でき、2回に分割して取得することも可能です。

出生時育児休業を取得した場合には、「出生時育児休業給付金」が支給されるため、特に父親が育児に関わりやすくなることが期待されています。

このように、育児休業給付金の制度は年々拡充されており、育児をしながら働く従業員を支える仕組みが整えられています。

2025年4月から育児休業給付金が引き上げられる

現状の育児休業給付金は、育児休業期間が180日目まで賃金の67%が支給されていますが、2025年4月から一定の条件を満たすと、育児休業給付金の給付率が最大28日間80%まで引き上げられます。

具体的には、2025年4月から共働き夫婦がともに育児休業を取得した場合に、従来の育児休業給付金に13%の給付率が上乗せされるという制度が創設されます。この制度を「出生後休業支援給付金」といいます。

「出生後休業支援給付金」の支給条件は、子の出生直後の8週間以内(産後休業後8週間以内)に、夫婦それぞれが14日以上の育児休業を取得することが条件となります。ただし、ひとり親や配偶者が自営業者の場合などは夫婦取得要件は求められません。

出生後休業支援給付金は、従来の育児休業給付金に上乗せして支給され、休業開始前の賃金の13%が最大28日間支給されます。

これにより、育児休業給付金の67%と合わせて80%の給付率となり、その期間は実質手取り相当の給付がされるようになります。


出典:厚生労働省「育児休業等給付について」

育児休業給付金の支給対象者

育児休業給付金(育休手当)は、雇用保険に加入している従業員が育児のために休業する際に受け取ることができる給付金です。支給対象となるのは雇用保険の被保険者であり、自営業者など雇用保険に加入していない人は受け取ることができません。

育児休業給付金(育休手当)を受け取るための要件

  • 1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した雇用保険被保険者であること
  • 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある月)が12ヶ月以上あること
  • 一支給単位期間中の就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下であること

出典:厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」

また、期間を定めて働いている有期雇用労働者も上記の条件を満たせば、育児休業給付金(育休手当)の対象となります。ただし、有期雇用労働者の場合は「子どもが1歳6ヶ月になるまでに労働契約期間が満了することが明らかでないこと」も支給条件となります。

育児休業給付金の申請方法

育児休業給付金を申請するにあたり、提出書類や手続きの流れを把握しておきましょう。実際の申請は勤務先が行うため、従業員側で用意する書類は勤務先に提出する必要があります。

提出書類

育児休業給付金の申請に必要な主な書類は以下のとおりです。

育児休業給付金の申請に必要な書類

  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  • 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書
  • 上記の2つの書類に記載した賃金の額および賃金の支払い状況を証明できる書類(賃金台帳、出勤簿、育児休業申出書など)
  • 母子健康手帳(出生届出済証明のページと分娩予定日が記載されたページ)
  • 出生後休業支援給付金の支給要件を満たしていることが確認できる書類(住民票や戸籍謄(抄)本など)

初回の育児休業給付金と出生後休業支援給付金は同時に申請することを原則としますが、初回の育児休業給付金の支給決定後に、単独で出生後休業支援給付金について支給申請することも可能です。

また、必要書類は対象者の状況によって求められるものが異なります。企業側はハローワークに確認のうえ従業員に必要書類を用意してもらうようにしましょう。

なお、2回目以降の申請は、「育児休業給付支給申請書」と「賃金台帳・出勤簿」の提出で申請が可能です。


出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」

申請の流れ

育児休業給付金(育児手当)の申請は、勤務先がハローワークあてに必要書類を提出します。

手続きの流れは以下のとおりです。

育児休業給付金申請手続きの流れ

  1. 従業員が必要書類を揃える
  2. 勤務先がハローワークに必要書類を提出する
  3. 指定口座に育児休業給付金(育休手当)が振り込まれる

育児休業給付金(育休手当)は原則2ヶ月に1回振り込まれます。従業員側で必要書類を用意するのは、延長する場合を除き初回のみです。従業員が育児休業を取得している限り、勤務先が2ヶ月に1回支給申請手続きを行います。

なお、実際の入金については、会社の担当者が申請を行い、ハローワークで支給決定がされた日から1週間程度で指定口座に入金されます。

育児休業給付金の支給期間

育児休業給付金の支給期間は、原則1歳に達する日の前日(誕生日の前々日)までです。子どもが1歳になる前に職場復帰した場合は、復帰日の前日までが支給期間となります。

ただし、「保育所に入所できない」などの理由により育児休業を延長する場合は、必要書類を提出することで最長2歳まで育児休業給付金を受け取ることができます。

また、出生時育児休業を取得した際には「出生時育児休業給付金」として育児休業給付金と同等の金額が支給されます。

出生時育児休業給付金の申請は、子ども出生日(出産予定日前に子が出生した場合は出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から申請が可能です。

ただし、当該日から起算して2ヶ月を経過する日の属する月の末日までに、申請する必要があります。たとえば、4月15日に子どもが出生した場合、8週間経過日が6月10日になります。その2ヶ月を経過する日の属する月の末日である8月末日までに、申請を行う必要があるということです。

なお、申請期限は出生時育児休業を2回に分割して取得した場合でも同様です。2回に分割して休業した場合は、給付金の申請を1回にまとめなければならないことにも注意しましょう。


出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」

支給期間の延長条件

育児休業給付金の支給期間は、原則として子どもが1歳に達する前日(1歳の誕生日の前々日)です。

ただし、以下のいずれかのやむを得ない事情がある場合は、子どもが最大2歳になる前々日まで延長が可能です。

育児休業給付金支給期間の延長条件

  • 待機児童等で保育環境を確保できない場合
  • 配偶者が死亡した配偶者の疾病、負傷等で養育が困難になった場合
  • 婚姻解消等で配偶者と別居することになった場合
  • 別の子の産前産後休業や育児休業を取得した場合

なお、2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする延長手続きが変わります。

従来は、市区町村の発行する「入所保留通知書」などにより延長手続きをしていましたが、2025年4月からは入所保留通知書に加え、「保育所等の利用申込書の写し」も必要となります。

市区町村に対して保育所などの利用申し込みをする際は、必ず申込書の写しを保管しておきましょう。電子申請で申し込んだ場合には申込内容を印刷したもの、もしくは申し込みを行った画面を印刷したものを保管します。

その他の理由で必要な書類については、下記の資料をご参考ください。


出典:厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続き」

育児休業給付金の計算

育児休業給付金は、180日目以前と181日目以降で給付率が異なります。また、2025年4月から創設される出生後休業支援給付金は最大28日まで支給されるため、それぞれ計算する必要があります。

また、支給額には上限額・下限額が設けられており、必ずしも休業開始時賃金日額に給付率をかけた額が支給されるわけではありません。

なお、育児休業給付金の計算はハローワークで行います。ここでは、参考としてご覧ください。

支給額の上限・下限

育児休業給付金の上限・下限額は日額で定められており、申請期間の支給日数によって異なります。

2025年4月1日時点では、休業開始時賃金日額(休業開始前6ヶ月の賃金を180で割った金額)の上限額は15,690円、下限額は2,869円となります。

支給日数が30日の場合の支給上限額と、支給下限額は以下のとおりです。

育児休業給付金支給額の上限・下限

  • (給付率67%)支給上限額 315,369円 支給下限額 57,666円
  • (給付率50%)支給上限額 235,350円 支給下限額 43,035円

支給下限額とは、育児休業期間中に事業主から給与を支払われなかった場合の額のことです。育児休業期間中に支払われた賃金額によっては、この額を下回ることがあります。

また、出生後休業支援給付金については、支給日数が28日の場合は支給上限額と支給下限額は以下の額となります。

  • (給付率13%)支給上限額 57,111円 支給下限額 10,443円

支給上限額・下限額は、毎月勤労統計の平均定期給与額の増減をもとに毎年8月1日に見直されます。


出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」

支給額の計算式

育児休業給付金(育休手当)の支給額は、以下の式で計算されます。

育児休業給付金支給額の計算式

  • 育児休業給付金の支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(育児休業開始から181日目以降は50%)
  • 出生後休業支援給付金の支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数(28日が上限)× 13%

休業開始時賃金日額とは、休業開始日前直近6ヶ月間に支払われた賃金総額を180で割った額のことです。この賃金総額にはボーナスは含まれません。

育児休業給付金の支給日数は通常30日ですが、申請は原則2ヶ月に1回行うため育児休業をしている期間は、通常「休業開始時賃金日額×30日×2ヶ月分」が支給されます。

また、出生後休業支援給付金は育児休業給付金に加え、夫婦がともに育児休業を取得した場合に取得した日数分が支給されます。ひとり親などの場合は、配偶者休業要件はありません。

支給額のシミュレーション

育児休業給付金(育休手当)の具体的な支給額をシミュレーションしてみましょう。

条件

  • 休業開始前の平均賃金が30万円
  • 出生後休業支援給付金の条件を満たす
  • 配偶者が出生時育児休業を28日間取得
  • 計算式:30万円 × 6ヶ月 ÷ 180日
  • 賃金日額:1万円
 28日目まで180日目まで181日以降
計算式10,000円 × 30日 × 67%
10,000円 × 30日 × 13%
10,000円 × 30日 × 67%10,000円 × 30日 × 50%
1ヶ月(30日分)の支給額240,000円201,000円150,000円

まとめ

育児休業給付金は、育児休業を取得する従業員の収入を補うために、雇用保険から支給される給付金です。2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が創設され、一定の条件を満たすことで給付率が80%に引き上げられ、より安心して育児休業を取得できるようになります。

また、支給期間は原則子どもが1歳に達する前日(誕生日の前々日)までですが、保育所に入所できないなどの理由があれば最長2歳まで延長可能です。

育児休業給付金は、今後も法改正により制度が拡充される可能性があるため、最新情報を確認しながら適切に活用しましょう。

よくある質問

育児休業給付金の引き上げはいつから?

2025年4月から「出生後休業支援給付金」が創設され、共働き夫婦がともに育児休業を取得した場合に従来の育児休業給付金に13%の給付率が上乗せされます。支給日数は最大28日間で、育児休業給付金と合わせて給付率が80%となります。

詳しくは記事内「2025年4月から育児休業給付金が引き上げられる」をご覧ください。

育児休業給付金はいつ入金される?

育児休業給付金は2ヶ月に1回申請を行うため、原則として2ヶ月に1回入金されます。実際の入金は、会社の担当者が申請を行い、ハローワークで支給決定がされた日から1週間程度で指定の口座に入金されます。

詳しくは記事内「申請の流れ」をご覧ください。

育児休業給付金の金額にボーナスは影響する?

育児休業給付金の計算の基礎となる「休業開始時賃金日額」にはボーナスは含まれません。

休業開始日前6ヶ月間に支払われた賃金総額(ボーナスを除く)を180で割った額が「休業開始時賃金日額」となります。

詳しくは記事内「支給額の計算式」をご覧ください。

監修 北 光太郎

きた社労士事務所 代表
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事。計10年の労務経験を経て独立。独立後は労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。法人・個人問わず多くの記事執筆・監修をしながら、自身でも労務専門サイトを運営している。

北 光太郎

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