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内製化とは?メリット・デメリットや進め方をわかりやすく解説

内製化とは?メリット・デメリットや進め方をわかりやすく解説

内製化とは、これまで外部に委託していた業務を自社で行うことです。これにより、ノウハウの蓄積、品質の向上、人材育成の促進など、多くのメリットを期待できます。しかし、初期投資や人材育成のコスト、業務負荷の増加といったデメリットも存在します。

本記事では、内製化のメリット・デメリット、進め方について詳しく解説していきます。

目次

内製化とは

内製化とは、業務の一部または全部を外部の企業や個人に委託するのではなく、自社内で実施することを指します。従来は外部に依頼していた業務を自社で行うことで、外部への依存を減らし、自社でコントロールできる範囲を広げることが目的です。

たとえば、これまで外部の制作会社に依頼していたWebサイトの更新作業を、自社のWeb担当者が行うように変更するなどが内製化の例として挙げられます。これにより、外部とのやり取りにかかっていた時間やコストを削減し、迅速な対応や柔軟な変更が可能になります。また、業務を通して得られた知識やノウハウが社内に蓄積されるため、長期的な視点で見ると企業の競争力強化にも繋がります。

内製化は、単に業務を社内に移管するだけでなく、人材育成や環境整備なども含めた包括的な取り組みと言えるでしょう。

内製化の目的

内製化の主な目的は、業務の効率化とコスト削減、そして品質の向上です。

まず、外部委託にかかっていたコストを削減し、利益率の改善を図ります。外部業者との契約料や手数料などが不要になるため、直接的なコスト削減効果が期待できます。

次に、外部業者とのコミュニケーションにかかる時間や手間を省き、意思決定の迅速化や業務の効率化を図ります。社内で直接業務を行うことで、情報伝達のロスを減らし、スムーズな連携が可能になります。

さらに、自社で品質を管理することで、より高いクオリティの製品やサービスを提供することを目指します。外部委託では、どうしても自社の意図が伝わりにくく、品質のばらつきが生じる可能性がありますが、内製化によって品質の安定と向上を期待できます。

これらを通して企業の競争力強化に繋げることが、内製化の最終的な目標と言えるでしょう。

内製化が重要な理由

企業が内製化を推進する理由は、変化の激しい現代のビジネス環境において、迅速かつ柔軟に対応するためです。

外部委託では、どうしても外部業者との調整や契約手続きなどに時間がかかり、変化への対応が遅れてしまう場合があります。しかし、内製化を進めることで、社内で迅速に意思決定を行い、変化に合わせた柔軟な対応が可能になります。たとえば、市場のニーズが急激に変化した場合でも、社内で迅速に戦略を修正し、対応策を実行できます。また、内製化は業務を通して得られたノウハウや知識が社内に蓄積され、人材育成や技術力向上に繋がります。

これらの理由から、内製化は現代の企業にとって、持続的な成長と競争力維持のために重要な手段と言えるでしょう。

内製化のメリット

内製化のメリットとして主に以下4点が挙げられます。

内製化のメリット

  • ノウハウの蓄積
  • コミュニケーションの円滑化
  • 人材育成
  • 品質の向上

ノウハウの蓄積

内製化によって得られるメリットの一つは、業務に関するノウハウが社内に蓄積されることです。外部委託の場合、業務を通して得られる知識や経験は外部業者に留まり、自社には十分な形で蓄積されません。しかし、内製化を進めることで、業務プロセスや技術的な課題、解決策などが社内の人材に共有され、組織全体の知識レベルが向上します。

たとえば、システム開発を内製化した場合、開発過程で得られたプログラミング技術やシステム設計のノウハウは、社内のエンジニアのスキルアップに繋がり、将来のプロジェクトにも活かされます。

内製化は企業にとって貴重なノウハウを形成し、長期的な競争力強化に貢献します。また、蓄積されたノウハウはマニュアル化や研修プログラムに活用することで、組織全体の底上げにもつながります。

コミュニケーションの円滑化

内製化は社内外のコミュニケーションを円滑にする効果があります。

外部委託では、発注者と受注者の間に情報の伝達ロスや認識のずれが生じやすく、業務の進行に支障をきたすことがあります。しかし、内製化によって、関係者全員が社内にいる状態になるため、直接的なコミュニケーションが容易になり、情報伝達のスピードと正確性が向上します。

たとえば、Webサイトの改修を行う場合、デザイナーやエンジニア、マーケティング担当者などが同じ社内にいれば、直接意見交換を行いながら作業を進めることができ、スムーズな連携が可能でしょう。手戻りや修正作業が減り、業務効率の向上に繋がります。また、意思決定のスピードも速くなり、変化への対応も迅速に行えるようになります。

人材育成

内製化は社員のスキルアップと人材育成に寄与します。

外部委託の場合、社員は業務の進捗管理や外部業者とのやり取りに終始し、専門的なスキルを身につける機会が限られます。一方で、内製化によって、社員は実際に業務に携わり、実践的な経験を通してスキルを向上させることができます。

たとえば、マーケティング業務を内製化した場合、社員はデータ分析や広告運用、コンテンツ作成などのスキルを習得できます。また、先輩社員から後輩社員への指導や教育も行いやすくなり、組織全体の人材育成にも繋がります。

品質の向上

内製化は製品やサービスの品質向上に繋がります。

外部委託では、どうしても自社の意図が正確に伝わらなかったり、品質管理が難しかったりする場合があります。しかし、内製化によって、企画から開発、運用までを一貫して自社で行うことで、品質管理を徹底し、高い品質を維持することが可能です。

たとえば、ソフトウェア開発を内製化した場合、開発チームは顧客のニーズを直接理解し、それを製品に反映させることができます。また、テストや品質管理のプロセスも自社でコントロールできるため、バグの早期発見や品質の安定化に繋がります。

内製化のデメリット

内製化のデメリットとして主に以下3点が挙げられます。

内製化のデメリット

  • 固定費化
  • 人材確保・育成に時間がかかる
  • 業務量の変動に対応しにくい

固定費化

内製化の大きなデメリットの一つは、コストが固定費化することです。業務を内製化する場合、新たに従業員を雇用する必要があり、人件費が固定費として発生します。また、業務に必要な設備やシステムへの投資も必要となるでしょう。

これらの費用は、業務量の多寡に関わらず一定額発生するため、経営の柔軟性を損なう可能性があります。特に、景気変動の影響を受けやすい業種では、注意が必要です。一方で、外注を活用すれば、業務量に応じて外注費を調整できるため、コストを変動費化できます。内製化と外注のどちらが自社に適しているか、慎重に検討する必要があるでしょう。

人材確保・育成に時間がかかる

内製化には、専門的な知識やスキルを持った人材が必要となり、その確保や育成には時間とコストがかかります。

まず、内製化を行う業務に適した人材を見つけることは容易ではありません。特に専門性の高い業務においては、市場に人材が不足しているケースが多く、採用活動に時間と労力を要します。外部から人材を採用できたとしても、自社の業務内容や企業文化に適応させるための育成期間が必要です。また、既存社員に新たな業務のスキルを習得させる場合、研修やトレーニングを実施する必要があります。

このように、人材を育成し、内製化の体制を整えるまでには相応の準備期間が求められます。

業務量の変動に対応しにくい

内製化は業務量の変動に柔軟に対応しにくい点もデメリットでしょう。

外部委託であれば、業務量が増加した際には委託量を増やし、減少した際には委託量を減らすことで、コストを調整できます。一方で、内製化の場合は、業務量に関わらず一定数の人員を確保しておく必要があります。そのため、業務量が少ない時期には人件費が無駄になるリスクがあるでしょう。反対に、業務量が急増した際には、社内のリソースだけでは対応できず、業務が滞る恐れがあります。

また、内製化した業務が将来的に不要になった場合、人員や設備が余剰となり、経営の負担となる可能性があります。

内製化と外注のどちらを選ぶべき?

内製化と外注のどちらを選ぶべきか以下の4つの観点から解説します。

内製化と外注を決める4つの観点

  • コスト
  • コア業務との関連性
  • 品質
  • リソースの有無

コスト

内製化と外注のどちらがコスト面で有利かは、業務量や期間によって異なります。

一般的に、業務量が少ない場合や、一時的な業務の場合は、外注の方がコストを抑えられます。一方で、業務量が恒常的に多い場合は、内製化の方が有利になる可能性があります。ただし、内製化には初期投資や人件費などの固定費がかかるため、慎重な検討が必要です。また、外注の場合でも、委託先企業の選定や管理にコストがかかることを考慮する必要があります。

単に単価の比較だけでなく、中長期的な視点で、トータルコストを試算することが重要です。

コア業務との関連性

該当業務が自社のコア業務とどの程度関連しているかも、重要な判断基準となります。

コア業務に直結する業務や、自社の競争優位の源泉となる業務は、内製化が適しています。たとえば、製品開発や、顧客との関係構築などが該当します。一方で、ノンコア業務は、外注を積極的に活用することで、業務効率化やコスト削減を図れます。たとえば、データ入力や、給与計算などの定型業務が挙げられます。

ただし、コア業務の範囲は、企業の戦略によって異なります。自社のビジネスモデルを十分に理解した上で、内製化と外注のバランスを検討することが大切です。

品質

求める業務品質も、内製化と外注の判断に影響します。

一般的に、高い品質が求められる業務は、内製化が適しています。自社の従業員であれば、品質基準を徹底しやすく、細かな指示や修正も容易です。一方で、一定の品質が確保できれば良い業務は、外注でも問題ないでしょう。ただし、外注する場合は、委託先企業の品質管理体制を確認し、必要に応じて品質基準を明示することが重要です。また、定期的な品質チェックや、フィードバックの仕組みを構築することも有効です。

内製化と外注のどちらを選択する場合でも、品質を維持・向上させるための取り組みが欠かせません。

リソースの有無

社内に必要なリソースがあるかどうかも、重要な判断基準です。

内製化を行うためには、業務を遂行できる人材、設備、システムなどが必要です。特に、専門性の高い業務を内製化する場合は、高度なスキルを持つ人材の確保が不可欠です。もし、社内に十分なリソースがない場合は、外注を検討することになります。ただし、外注する場合でも、委託先企業を適切に管理するためのリソースは必要です。

内製化と外注のどちらを選択する場合でも、必要なリソースを確保できるか、事前に確認しておくことが重要です。リソース不足のまま内製化を進めると、業務品質の低下や、従業員の過重労働につながる恐れがあるため、注意しましょう。

内製化の進め方

内製化の進め方について以下の段階ごとに解説していきます。

内製化の進め方

  1. 内製化の目的と範囲の明確化
  2. 対象業務の選定
  3. コスト・効果の試算
  4. 体制構築
  5. 運用開始・評価

1.内製化の目的と範囲の明確化

内製化を成功させるためには、まず目的と範囲を明確にすることが重要です。何のために内製化を行うのか、その目的をはっきりさせましょう。たとえば、コスト削減、品質向上、ノウハウの蓄積などが考えられます。目的が曖昧なまま進めると、途中で方向性を見失い、効果が得られない恐れがあります。

また、内製化の対象範囲を定めることも大切です。すべての業務を一度に内製化するのは現実的ではありません。まずは、優先順位の高い業務から段階的に内製化を進めるのが良いでしょう。目的と範囲を明確化することで、効果的かつ効率的に内製化を進められます。

2.対象業務の選定

内製化の目的と範囲が明確になったら、次に具体的な対象業務を選定しましょう。

選定の際には、自社の強みやリソースを考慮することが重要です。内製化する業務は、自社の強みを活かせる領域が望ましいです。また、必要なスキルや人材を確保できるかどうかも検討しましょう。現在のリソースで対応できない場合は、新たな人材の採用や育成が必要です。

また、業務の重要度や緊急度も考慮すべきです。重要度や緊急度が高い業務から優先的に内製化することで、早期に効果を実感できる可能性があります。外部委託を継続する業務と内製化する業務を明確に区別し、効率的な業務プロセスを構築しましょう。

3.コスト・効果の試算

内製化の対象業務を選定したら、コストと効果を試算し、その妥当性を検討します。まず、内製化に伴う初期投資やランニングコストを詳細に算出しましょう。人件費、設備費、システム開発費など、必要なコストを洗い出します。

次に、内製化によって期待できる効果を予測します。コスト削減効果だけでなく、品質向上や納期短縮など、定量化が難しい効果もできる限り数値化します。そして、コストと効果を比較し、内製化が本当にメリットをもたらすのかを慎重に判断します。

試算の結果、十分な効果が見込めない場合は、内製化の対象業務や範囲を見直す必要もあるでしょう。適切な意思決定のために、現実的な試算が求められます。

4.体制構築

コストと効果の試算を経て、内製化を進めると判断したら、具体的な体制を構築しましょう。まず、内製化する業務を担当するチームや人員を決定します。必要なスキルや経験を持つ人材を配置し、責任者を明確にすることが重要です。次に、業務プロセスやマニュアルを整備します。業務の流れを可視化し、誰が担当しても同じ品質を維持できるような体制を構築します。

また、必要な設備やシステムを導入し、業務環境を整えましょう。設備やシステムを導入する際には、使いやすさや拡張性などを考慮し、将来的な業務の変化にも柔軟に対応できるようにしておくことが大切です。

最後に、内製化の目的や方針を社内に周知徹底しましょう。関係者全員が同じ方向を向いて業務に取り組めるよう、コミュニケーションを密にすることが大切です。

5.運用開始・評価

体制構築が完了したら、いよいよ内製化の運用を開始します。運用開始後は、定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて軌道修正を行いましょう。当初の計画通りに進んでいるか、期待した効果が得られているかを評価します。計画と実績に乖離がある場合は、その原因を分析し、改善策を講じることが重要です。

また、業務プロセスやマニュアルに不備がないかを確認し、継続的に見直しを行いましょう。さらに、現場の担当者から意見を吸い上げ、業務改善に活かすことも大切です。運用開始後も、PDCAサイクルを回し続けることで、内製化の効果を最大化できます。

まとめ

内製化は、適切に実施すれば、企業の成長に大きく寄与します。しかし、デメリットを理解し、準備を怠ると、逆効果になりかねません。

内製化には、目的の明確化、対象業務の選定、十分なコスト試算が不可欠です。

運用開始後も評価と改善を繰り返し、効果の最大化に努めましょう。