
クラウドソーシングは、インターネットを通じて不特定多数の人々に業務を委託する手法です。企業は専門知識を持つ外部の人材を活用でき、コスト削減や業務効率化が期待できます。
本記事では、クラウドソーシングの概要とメリット・デメリット、適切な活用方法について解説します。
目次
クラウドソーシングとは
クラウドソーシングとは、インターネットを通じて不特定多数の人に業務を委託する仕組みのことです。企業は、自社の業務の一部を外部の個人や企業に依頼することで、必要なスキルやリソースを迅速かつ柔軟に調達できます。代表的な業務としては、データ入力、ライティング、デザイン、システム開発などが挙げられます。
クラウドソーシングの活用により、企業は社内の人材不足を補い、業務の効率化やコスト削減を図ることが可能です。また、時間や場所にとらわれずに働けるため、働き手の多様化にもつながります。
一方で、品質管理や情報セキュリティ対策などの課題も存在するため、適切なプラットフォームの選定と運用が求められます。
アウトソーシングとの違い
どちらも外部に業務を委託するという点では共通していますが、依頼先と業務プロセスに違いがあります。アウトソーシングでは、特定の企業や組織に業務を一括で委託するのが一般的です。たとえば、システムの運用保守を専門のIT企業に委託するケースなどが該当します。
一方で、クラウドソーシングでは、インターネットを通じて不特定多数の個人に業務を分散して依頼します。そのため、アウトソーシングに比べて柔軟性が高く、短期間のプロジェクトや単発の業務に適しています。
また、クラウドソーシングはアウトソーシングに比べて、比較的低コストで多様な人材を活用できることが多いです。簡単に言えば、アウトソーシングは企業対企業の取引、クラウドソーシングは企業と個人の取引という分類ができるでしょう。
クラウドソーシングの仕組み
クラウドソーシングは、企業や個人がインターネット上のプラットフォームを通じて、不特定多数の人に業務を依頼する仕組みです。
まず、業務を依頼したい側(発注者)が、プラットフォームに業務内容や報酬、納期などを掲載します。この情報は、プラットフォームに登録している個人や小規模事業者(受注者)に公開されます。受注者は、自分のスキルや興味に合った案件を選び、応募します。
発注者は、応募者の中から適切な人材を選定し、業務を依頼します。業務が完了すると、受注者は成果物を発注者に納品し、発注者は成果物を検収後、報酬を支払います。
プラットフォームは、この一連の流れを仲介し、契約や報酬の支払いなどの手続きをスムーズに行えるようにサポートします。また、プラットフォームによっては、受注者の評価システムや、発注者と受注者間のコミュニケーションツールなどが提供されている場合もあります。
クラウドソーシングは、オンライン上で業務の発注から納品、報酬の支払いまでを効率的に行うための仕組みと言えるでしょう。
クラウドソーシングの対象となる業務
クラウドソーシングで依頼できる業務は非常に多岐にわたります。大きく分けると、専門知識やスキルが求められる業務と、比較的簡単な作業に分類できます。
専門的な業務としては、ウェブサイトやアプリの開発、ロゴやイラストなどのデザイン、記事やキャッチコピーの作成、翻訳、データ分析、プログラミングなどが挙げられます。これらの業務は、特定のスキルや経験を持つ人材に依頼することで、質の高い成果を期待できるでしょう。
一方で、比較的簡単な作業としては、データ入力、アンケート回答、簡単な記事のリライト、写真の選定、資料作成の補助などがあります。これらの業務は、特別なスキルがなくても取り組めるものが多く、短時間で完了するものも少なくありません。
クラウドソーシングは高度な専門業務から簡単な作業まで、幅広いニーズに対応できる点が特徴です。企業は自社の状況や必要に応じて、最適な人材に業務を依頼することで、業務効率の向上やコスト削減につなげることができます。また、個人にとっても、自分のスキルや空き時間を活用して収入を得る機会となっています。
クラウドソーシングを活用するメリット
クラウドソーシングを活用することの主なメリットを紹介します。
クラウドソーシングを活用するメリット
- コスト削減
- 専門知識やスキルの活用
- 業務効率化
- リソースの柔軟な調整
コスト削減
クラウドソーシング活用による大きなメリットの一つは、コスト削減です。
たとえば、データ入力や資料作成などの業務を、社内の従業員ではなくクラウドソーシングで外部に委託することで、人件費を大幅に削減できます。また、必要な時に必要な分だけ業務を依頼できるため、固定費の削減にもつながります。オフィススペースや設備などのコスト削減も期待できるでしょう。
特に、スタートアップ企業や中小企業にとっては、限られた予算内で効率的に業務を遂行する上で有効な手段となります。
専門知識やスキルの活用
自社内に不足している専門知識やスキルを持つ人材を、必要な時に必要なだけ活用できるのもクラウドソーシングの大きな利点です。
特定のプロジェクトや業務に特化したスキルを持つ人材を、期間や業務量に応じて柔軟に活用できます。これまで社内では対応が難しかった高度な専門知識を必要とする業務も、外部の専門家の力を借りてスムーズに進めることが可能です。
業務効率化
たとえば、単純作業や定型業務を外部に委託することで、社員はより付加価値の高いコア業務に専念できます。その結果、生産性の向上が期待できるでしょう。
また、24時間稼働しているクラウドソーシングサービスを利用すれば、時差を利用して業務を迅速に進めることも可能です。日本時間の夜間に、海外のワーカーにデータ入力を依頼することで、翌朝には作業が完了しているといったことも実現できます。
業務のスピードアップは、ビジネスチャンスを逃さないためにも重要な要素です。
リソースの柔軟な調整
クラウドソーシングを活用することで、繁忙期には多くの人材を確保し、閑散期にはリソースを抑えるといったように、状況に応じた対応が可能です。無駄な人件費を削減し、経営の効率化に繋がります。また、急な欠員が出た場合や、突発的な業務が発生した場合にも、迅速に対応できるでしょう。
必要な時に必要な人材を確保できることは、ビジネスの機動力を高める上で大きな強みとなります。その点、クラウドソーシングはリソースを柔軟に調達するために有効です。
クラウドソーシングを活用するデメリット
続いてクラウドソーシングを活用することの主なデメリットを解説します。
クラウドソーシングを活用するデメリット
- 品質のばらつき
- セキュリティリスク
- コミュニケーションコストが高くなる可能性
- 自社ノウハウの蓄積不足
品質のばらつき
クラウドソーシングでは、様々なスキルや経験を持つ不特定多数の人材に業務を依頼するため、成果物の品質にばらつきが生じやすいというデメリットがあります。
発注前に応募者の実績やポートフォリオを確認することはできますが、実際に業務を依頼してみるまで品質を完全に把握することは困難です。そのため、期待していた品質に達しない成果物が納品される可能性も考慮しておく必要があります。特に専門性の高い業務を依頼する場合は、品質管理に注意が必要です。
セキュリティリスク
クラウドソーシングでは、社外の人材に業務を委託するため、情報漏洩などのセキュリティリスクが高まる可能性があります。機密情報や個人情報を含む業務を依頼する場合は、特に注意が必要です。
発注前に受注者との間で秘密保持契約を締結したり、情報管理に関するルールを明確にしたりするなどの対策を講じることで、リスクを軽減することができます。しかし、完全にリスクを排除することは難しいため、重要な情報の取り扱いには慎重になるべきでしょう。
コミュニケーションコストが高くなる可能性
クラウドソーシングでは、ワーカーとのコミュニケーションコストが高くなる可能性があります。特に、海外のワーカーに依頼する場合、時差や言語の違いが障壁となり、円滑なコミュニケーションが難しい場合があります。
また、オンライン上でのやり取りが中心となるため、細かいニュアンスが伝わりにくいこともあるでしょう。その結果、認識の齟齬が生じ、手戻りが発生する可能性があります。
コミュニケーションコストを抑えるためには、明確かつ詳細な指示を出す、定期的に進捗を確認する、必要に応じてオンライン会議ツールを活用するなどの工夫が必要です。
自社ノウハウの蓄積不足
業務を外部に委託することで、社員が実務経験を積む機会が減り、スキルアップの機会が失われる可能性があります。結果として、将来的に同様の業務を内製化しようとしても、対応できる人材がいないという事態に陥りかねません。
自社のノウハウの蓄積のために、クラウドソーシングと社内人材の役割分担を明確にし、バランスよく活用することが重要です。たとえば、定型業務はクラウドソーシングで効率化し、専門性の高い業務は社内で対応するなど、業務の特性に応じて使い分けると良いでしょう。
クラウドソーシングを活用する際のポイント
クラウドソーシングを効果的に活用するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
クラウドソーシング活用する際のポイント
- 業務内容の明確化
- 適切なワーカー選定
- 丁寧にコミュニケーションを取る
- 評価とフィードバック
業務内容の明確化
クラウドソーシングを活用する上で依頼する業務内容を明確にすることはとても重要です。業務の目的、具体的な作業内容、納期、成果物の形式などを詳細に記述した業務指示書を作成することで、ワーカーとの認識のずれを防ぎ、スムーズな進行につながります。
曖昧な指示では、期待通りの成果物が得られない可能性が高まります。誰が見ても分かりやすく具体的に業務内容を伝えることで、認識のズレ、進行の遅延を防止しましょう。必要に応じて、参考資料や具体的な事例などを添付することも有効です。
適切なワーカー選定
業務内容に適したワーカーを選定することで、プロジェクトをスムーズに進捗させられます。
ワーカーの過去の実績や評価、ポートフォリオなどを参考に、スキルや経験、過去の評価などを総合的に判断し、最適な人材を選びましょう。
必要であれば、事前に簡単なテストや面談を行うことも有効です。単に報酬の安さだけで選ぶのではなく、業務遂行能力を重視することが重要です。
丁寧にコミュニケーションを取る
クラウドソーシングでは、対面でのコミュニケーションが少ないため、オンラインでの丁寧なコミュニケーションが非常に重要です。業務の進捗状況をこまめに確認し、不明な点や疑問点があれば迅速に質問するように心がけましょう。
また、ワーカーからの質問や相談にも丁寧に回答することで、信頼関係を築き、より良い成果につながります。レスポンスの速さや正確な情報伝達を意識し、円滑なコミュニケーションを心がけましょう。
評価とフィードバック
業務が完了したら、ワーカーの仕事ぶりを適切に評価し、フィードバックを行うことが大切です。良かった点だけでなく、改善点も具体的に伝えることで、ワーカーの成長を促し、今後の取引にもつながります。
また、プラットフォームの評価システムを活用することは、他の発注者にとっても有益な情報となります。客観的かつ建設的なフィードバックを心がけ、双方にとってより良い関係を構築しましょう。
クラウドソーシングを提供しているサービスの例
ここでは、例としてクラウドソーシングサービスと提供会社を紹介します。
サービス名 | 提供会社 |
---|---|
クラウドワークス(CrowdWorks) | 株式会社クラウドワークス |
ココナラ | 株式会社ココナラ |
Lancers(ランサーズ) | ランサーズ株式会社 |
shufti(シュフティ) | 株式会社うるる |
JOB HUB(ジョブハブ) | パソナグループ |
mama works(ママワークス) | 株式会社アイドマ・ホールディングス |
Craudia(クラウディア) | 株式会社エムフロ |
まとめ
クラウドソーシングは、インターネットを通じて不特定多数の人に業務を委託する手法です。
コスト削減や専門性の活用といった利点がある一方で、品質管理や情報セキュリティなどの課題も存在します。
業務内容の明確化、適切な人材選定、丁寧なコミュニケーションを心がけることで、これらの課題を軽減し、クラウドソーシングを効果的に活用できます。