NPO法人は本業の活動がメインですが、NPO法人の会計はとても大切な要素です。寄附や事業などの実態も、事業報告と共に会計の流れからシビアに追うこともできるのです。会計がそのNPO法人の真の顔を表しているとも言えるかもしれません。ここでは、NPO法人の会計に求められている要件と共に、推奨されているNPO法人会計基準について概説します。
目次
NPO法人の会計に関する要件
事業報告と会計報告は連動しています。その事業年度において、NPO法人が掲げる目的を達成するために、どのような事業を行い、どう目的を達成したかを示すのが事業報告です。
そして、この活動にどのような資金を用いたか、それらをどう調達したか、その結果、NPO法人の財産はどうなったのかを示すのが会計報告です。
両者は連携しており、整合性を持たなければなりません。NPO法人を運営していく上で、会計はとても重要であることを組織の全員が理解し、経理の体制を整えて、帳簿類を作成していきましょう。
NPO法人の会計は、次に掲げる会計の原則に従って行うこととされています。
- Ⅰ 会計簿は、正規の簿記の原則にしたがって正しく記帳すること。
- Ⅱ 計算書類(活動計算書及び貸借対照表をいう。)及び財産目録は、会計簿に基づいて活動に係る事業の実績及び財政状態に関する真実な内容を明瞭に表示したものとすること。
- Ⅲ 採用する会計処理の基準及び手続については、毎事業年度継続して適用し、みだりに変更しないこと。
正規の簿記の原則とは、次の3要件を満たすことが必要です。
(1)取引記録が客観的に証明可能な証拠によって作成されていること。
(2)記録、計算が明瞭、正確に行われ、かつ順序、区分などが体系的に整然と行われること。
(3)取引記録の結果を総合することによって、簿記の目的に従い法人の財務状況あるいは財産管理の状態などを明らかにする財務諸表が作成できること。
NPO法人にとっての会計の重要性
NPO法人の会計でも、企業と同様に、管理会計・財務会計・税務会計の3つの視点をもつことが大切です。会計は、活動の推進や透明性を大きく左右します。組織全員の協力だけでなく、役員や事務局長に大きな責任があることを理解し、経理担当者だけに責任や業務を押し付けない体制が求められます。
管理会計
予算管理や資金繰り等、NPO法人の理事や管理者が業績を測定し意思決定を行うために、組織内部に共有される会計を「管理会計」と呼びます。
NPO法人は非営利法人の一種で、利益の分配を目的としていませんが、活動継続のためには、費用を上回る収益を上げ、繰越金(剰余金)を出すことが重要ですし、助成金や補助金を受けたときには、予算に従った支出義務が生じ、日常的な管理が不可欠です。年度末にバタバタと収支をあわせるように支出したりすることは避けなければなりません。
財務会計
NPO法人は、NPO法によって、活動計算書や貸借対照表等の計算書類等を作成し、会員や社会に公表する義務があります。このように外部へ情報提供される会計を「財務会計」と呼びます。
会員や寄附者、助成団体等は、これらの計算書類等から、会員を継続すべきか、寄附すべきか、助成すべきかといった判断の重要な資料として考えます。計算書類等は、NPO法人が様々な資金獲得につながる最も信頼できる重要な情報と言えるでしょう。
税務会計
NPO法人には、様々な納税義務があります。税金の額を決定するために行う会計を「税務会計」と呼びます。
NPO法人の役員・経理担当者には、適切な納税が求められています。税務会計を怠ると、追徴課税等、法人に損害が生じるので要注意です。
推奨されるNPO法人会計基準
2012年3月、内閣府は「特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」を公表し、NPO法人の望ましい会計基準として、「NPO法人会計基準」を推奨しました。
この基準は、全国90のNPO支援センターが構成するNPO法人会計基準協議会が策定したものです。アカウンタビリティ向上のために「NPO法人会計基準」を積極的に採用しましょう。
NPO法人会計基準の構成
社会や支援者に対するアカウンタビリティの向上や認定NPO法人申請のためには、NPO法人のためにつくられたNPO法人会計基準が役立ちます。
提出段階になってあわてないように、日頃より積極的な採用の検討と準備対応が薦められています。なお、実態に応じて公益法人会計基準や社会福祉法人会計基準など、その他の会計基準を用いることも可能です。
NPO法人会計基準では、「活動計算書」、「貸借対照表」、「注記」の3点を「財務諸表」と呼び、これらに財産目録を加えて「財務諸表等」と呼んでいます。NPO法では「財務諸表」ではなく「計算書類」と呼んでいますが、同じものです。
東京都で案内している各書類の書式はこちらから確認できます。
活動計算書は、企業会計における損益計算書に相当します。発生主義を採用し、収益と費用をより正確に表現できるようになったことが、NPO法人会計基準の大きな特徴です。
活動計算書で明確に表すことができる運営コスト
活動計算書は収益の部と費用の部に分類して構成されます。
収益の部は、資金の種類別に、費用は事業費と管理費に分けて計上できます。さらに、事業費と管理費それぞれにおいて、人件費とその他経費に分けて表記できます。
複数の事業を行っている場合、各事業別の内訳を注記に詳しく示すことができます。つまり、資金の使途が事業ごとに非常に明確になり、活動の実態をわかりやすく示すことができるようになります。
活動計算書と貸借対照表の一致ポイント
前述のように、活動計算書は、企業の損益計算書に該当し、その事業年度における収益と費用を表します。貸借対照表は企業の貸借対照表に該当し、事業年度末におけるNPO法人の全ての資産、負債、正味財産の状況を表しています。
すなわち、活動計算書の「前期繰越正味財産」の金額と、前期末の貸借対照表における「正味財産合計」の金額が一致しなければなりません。また、活動計算書の「次期繰越正味財産」の金額と、貸借対照表の「正味財産合計」の金額が一致している必要があります。数字が合わない場合はいずれかの計算を見直しましょう。
注記の活用について
注記には、重要な会計方針、事業別内訳、NPO法人に特有の取引に関する詳細等を掲載します。
様式にある項目以外にも、事業費と管理費の共通経費を按分する方法や、「その他の事業」に関わる資産で重要なものがある場合など、必要に応じて積極的に情報提供するものとして活用できます。また、様式に例示されていても、該当しない事項について記載する必要はありません。
重要な会計方針や、事業別の内訳、使途制約金の内訳等、活動計算書と貸借対照表で説明しきれないことを注記に記載することで、より実態に即した丁寧な情報公開につながります。会員や支援者の理解度が高まるとともに、組織内の予算管理、資金繰り等の共有化にも役立ちます。
財産目録について
財産目録は、貸借対照表の詳細を具体的に記載する補完書類です。金銭評価できないけれども法人にとっては重要な資産を持っている場合は、「金銭評価せず」として記載、計上することができます。
現物寄付やボランティア活動を記載することで、会計上認識できます。これより、活動の規模や内実をより実態に則して正確に表すことが可能になっています。
まとめ
以上のように、NPO法人の会計は営利法人の会計と同じではないため、会計税務の専門家であっても、NPO法人会計に関する知識がないと答えられないといったケースも多くあります。
そのため初めてNPO会計を始めるという際は最低限、NPO会計に関しての知識を身に着けるのと同時に、NPO法人会計基準に即した処理ができる会計ソフトを導入していくことをお勧めします。
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