人事管理の基礎知識

タレントマネジメントとは?効果や導入方法、注意点をわかりやすく解説

タレントマネジメントとは?効果や導入方法、注意点をわかりやすく解説

タレントマネジメントとは、戦略的な人材活用を目的とした管理方法です。

従業員のスキルや能力・経験を把握し、適材適所に配置して業務を効率化する方法ですが、適切に実施しなければ逆効果になる可能性もあります。

本記事では、タレントマネジメントの概要や導入時の注意点、具体的なメリット・デメリットについて解説していきます。

目次

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タレントマネジメントとは

タレントマネジメントは、従業員のスキルや能力を最大限に活かすための人事マネジメント方法です。

長期的な目標達成を見据えた経営戦略的な人材活用の取り組みで、雇用から離職までの人事全般を包括的に管理でき、適切な人員配置が可能になります。

効果的に実施できれば、リーダーの育成や個々の能力の最大化、従業員のモチベーション向上が期待できるでしょう。

タレントマネジメントが注目された背景

従来の日本では、人材それぞれがもつ能力を活かすよりも、社員が会社に適応することが重視されてきました。

しかし、少子高齢化により労働力人口は減少し、そのうえ労働者の価値観が変わり人材の確保は厳しい状況です。この状況の中で個々の人材がもつ力に目を向け、経営戦略に沿った人事施策を実行するタレントマネジメントが注目を集めています。

そのうえグローバル競争の激化は、適材適所に人材を配置し競争力を上げなければ生き残れないという危機感を広げ、タレントマネジメントの重要性を高めています。

タレントマネジメントと人事管理の違い

タレントマネジメントと人事管理は、人材戦略や労務管理などどちらも人材と関わりがあるため混同されがちです。しかし、両者は目的と取り扱う情報が異なります。


タレントマネジメント人事管理
目的組織と従業員のパフォーマンス最大化と経営戦略の成功を目指す人事業務の効率化と実務負担の軽減
取り扱う情報従業員の能力や才能従業員の基本情報や労務情報

人事管理は、従業員の基本情報や労務情報などを包括的に管理し、主に人事業務の効率化が目的でおこなわれます。

一方、タレントマネジメントは従業員がもつ能力や才能などの意味をもつ「タレント」を重視し、これらを一元管理して人材配置や開発、採用に活用する方法です。

タレントマネジメントは組織と従業員のパフォーマンス最大化や経営戦略の成功が目的であり、単に実務負担を軽減することだけを目的としていません。

タレントマネジメントの目標|4つの中間目的

タレントマネジメントの目標は企業の経営目標の達成ですが、それだけでは具体的な役割がわかりにくいかもしれません。

人事戦略の視点から経営目標の達成を実現するためにも、タレントマネジメントを使い、以下4つの中間目的を達成すると実施しやすいでしょう。

タレントマネジメントの中間目的

  • 人材調達
  • 人材育成
  • 人材配置
  • 人材定着

それぞれの中間目的の意味と、タレントマネジメントを活用して目的を達成する方法を具体的に解説します。

人材調達

経営目標を達成するうえで、組織が必要とする適切な人材を見つけ出すことを人材調達と呼びます。

タレントマネジメントを用いて目的を達成するには、外部からの新規採用だけでなく、組織内部に潜在する人材の発掘なども効果的です。

人材育成

人材育成で最初に行うのは、現状と組織が求める人材像の違いの洗い出しです。そのギャップを埋めるために従業員に業務経験を積ませたり、その能力や才能などにあわせて教育研修や体験セミナーなどのプログラムを提供したりします。

現状の洗い出しは定期的に実施しましょう。

人材配置

従業員のポテンシャルを最大限に引き出すために、スキルと適性に合ったポジションへの人材配置が重要です。

具体的には、タレントマネジメントシステムを通して個々の能力やスキルをデータ化し、一元管理します。データに基づいてスキルや経験を活かせる人材配置を行えば、パフォーマンスを最大化できます。

人材定着

労働人材の確保が難しい現状では、育成した人材の離職を防ぐ人材定着も、タレントマネジメントを実施する目的となります。

従業員のモチベーションやエンゲージメントを向上させ離職を減らすことは、企業内の人材を保持し、スキル向上やキャリア支援などの土台となります。

具体的には従業員のキャリア志向と組織の方向性の調整や、能力に見合ったポジションの提供、そして適性な報酬の提供などの方法があげられます。

タレントマネジメントを行うメリット【5つの効果】

タレントマネジメントにより、人事分野や組織全体に以下のメリットが期待できます。

タレントマネジメントを行うメリット

  • 社員育成や人材開発の促進
  • 採用コストの削減
  • 人材配置の最適化
  • 公平性が高い人事評価制度の構築
  • 社員のエンゲージメント向上

それぞれのメリットについて確認しておきましょう。

社員育成や人材開発の促進

自社の人材の現状を正確に把握すれば、個々の従業員の課題解決に向けた育成や教育を行えます。これにより、従業員のスキルアップや成長を促進し、経営方針に沿った人材育成が実現可能です。

また、将来の方向性を明確にしたうえで、目標にあった教育や研修などに取り組めば、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。

採用コストの削減

必要な人材像が明確化されると、社内の異動によって人材を補充できるかもしれません。むやみに外部から人材を採用する必要がなくなり、コスト削減の効果が見込めます。

さらに、離職した従業員の特性や傾向を分析すれば、外部採用時に求める人材像が明確になり、ミスマッチも防止できるでしょう。結果的に採用コストの削減が期待できます。

人材配置の最適化

従業員のスキルや経験、ノウハウが可視化できれば、人材配置の最適化が可能です。これにより、従業員は自分の能力に適したポジションに就くことができるため、個々の生産性が向上しやすい状況がつくれます。

人材配置の最適化を実施できれば組織全体の成果につながるだけでなく、従業員のモチベーション維持にも良い影響が期待できます。

公平性が高い人事評価制度の構築

人事評価で業務内容や評価者によりばらつきが生じると、組織に対する不公平感や不信感につながります。タレントマネジメントを使えば、社員の能力やスキルなどを一括でスコアリングできるため、公平性が高い人事評価制度の構築が可能です。

適切な能力評価や具体的なキャリアパスの提示などを行えば、従業員からの信頼感を高められるでしょう。

社員のエンゲージメント向上

従業員の能力に合った部署への配置や、多面的な評価ができれば、社員のポテンシャルを最大限に活かすことが可能です。

従業員は自らの能力が認められれば、仕事に対するモチベーションや熱意が高まると同時に、企業に対する貢献を感じられます。その結果、企業に対するエンゲージメントも向上しやすくなります。

タレントマネジメントの導入方法

タレントマネジメントを導入するためには以下のステップを理解しておきましょう。

タレントマネジメントの導入方法

  • ステップ①実施目的を明確化させる
  • ステップ②タレントの現状を把握する
  • ステップ③タレントの発掘・採用を行う
  • ステップ④タレントを配置する
  • ステップ⑤人事評価を行う
  • ステップ⑥運用を見直す

それぞれの導入ステップを順を追って解説します。

ステップ①実施目的を明確化させる

タレントマネジメントを導入するためには、経営戦略や長期的なビジョンに基づいて明確な実施目的を定めることが重要です。

どのようなタレントをどの程度増やすのか、企業が目指す人材像とは何かなどを具体的に洗い出し、どのような目的を成し遂げたいかを明確にします。

経営戦略と人事戦略をリンクさせ、人材の育成や配置についてもビジョンを統一するのがいいでしょう。

ステップ②タレントの現状を把握する

従業員の人数・スキル・目標・評価などの情報を、数字やデータとして可視化し、明確な現状把握を行います。

タレントに関する情報は適切に管理し、関係部署間でも情報共有できるようにして、常に最新の情報にアクセスできる環境を整えます。

また、企業目標の達成に不足しているタレントも分析し、必要な人材の特定に役立てましょう。

ステップ③タレントの発掘・採用を行う

データを活用してタレントの発掘・採用を行います。

現状の人材のみで行えれば理想的ですが、社内に人材が不足している場合は、今いる人材の教育や新たな人材の採用などを検討する必要があるかもしれません。

ステップ④タレントを配置する

発掘・採用したタレントを、適切なポジションに配置するのも重要なポイントです。タレントは単に現在の能力だけで判断せず、これまでの経歴や保有資格など整理されたデータに基づき、個々の志向やキャリアパスも考慮し適材適所に配置しましょう。

また人材配置は、企業の人事戦略にのっとって行うことも、忘れないでください。

ステップ⑤人事評価を行う

運用結果をモニタリングし、企業業績と個々の貢献度を照らし合わせます。また、1on1面談などを通じて得られた、キャリア志向や仕事上の意欲なども評価対象とします。

この過程で計画や教育体制の見直しを行い、従業員の成長や組織の目標達成に向けた支援を行いましょう。

ステップ⑥運用を見直す

もしも、タレントマネジメントを実施した結果能力不足や業績向上の見込みが低いと判明した場合は、適切な対策が必要になります。

能力の向上を図るためにトレーニングやフォローアップを行い、異動など新たな挑戦の提供も検討しましょう。

適切な異動は、従業員の成長とモチベーション向上につながり、新たな挑戦の機会を提供できます。

タレントマネジメントを導入するときの注意点

タレントマネジメントを導入する段階では、システムの検討や導入に多大な労力を費やします。失敗を回避し成功するためにも、導入前に注意すべき点を確認しておきましょう。

全社員に方針を浸透させてから導入する

経営層だけが導入目的を理解していても、社員全体へ目的が浸透していなければ運用がスムーズに行えない可能性があります。

広報活動や研修の実施、運用マニュアルの準備などを検討し、全社員に方針を十分に浸透させ、理解を深めた上で導入しましょう。

目的がすり替わらないようにする

単に「タレントマネジメントを導入したい」というだけでなく、タレントマネジメントの導入は、経営目標の達成が目的であることをはっきりさせるのも大切です。

目的を明確に定めず導入すると、うまく機能せず成果を上げられなくなります。

タレントマネジメントの支援システムツールについて

独自でシステムを組み実行するのは、膨大な時間や労力が必要です。より効率的にタレントマネジメントを実現するための支援システムツールとして「タレントマネジメントシステム」が提供されています。

具体的にどのようなシステムなのか見ていきましょう。

タレントマネジメントシステムでできること

従業員の一般情報に加え、スキルや経験をデータ化し、組織全体で一元管理できます。

システムを活用すれば、人材の効率的な活用が可能です。代表的な機能として以下が搭載されています。

機能内容
人材管理スキル・キャリア・実績など基本プロフィール登録および検索
コンピテンシー情報の管理機能 コンピテンシーモデルの作成
コンピテンシー項目の洗い出し など
配属管理、組織図の作成 従業員情報をもとに組織図を生成
配置転換のシミュレーション など
育成計画の管理評価や資格など、特定の項目で絞り込んだ社員情報リストの作成など
目標管理 年次や四半期、月単位で目標を管理
全社目標や部門目標など組織やチーム単位での目標管理
データ分析、スコアリング データを分析
タレントマネジメントをビジュアル化 など

システムの活用によって個々の能力や成長を追跡し可視化することで、組織のニーズに合わせた人材戦略の構築が容易になります。

タレントマネジメントシステムはさまざまな種類があるため、自社のニーズや目的に適した機能が搭載されていることが大切です。

タレントマネジメントシステムの注意点

タレントマネジメントシステムは支援ツールであり、導入だけでタレントマネジメントができるわけではありません。使い方によっては効果を得られず、逆に作業量が増える可能性もあります。

たとえば、既存の業務フローと導入したシステムの連携がうまくいかなければ、データが重複し作業量が増えるかもしれません。

リスクを回避するためには、適切なシステム選定と従業員とのコミュニケーションに加え、既存の業務フローとの連携にも配慮しながら進めることが大切です。

タレントマネジメントシステムの選定方法

タレントマネジメントシステムの選定にあたって、確認が必要なポイントを以下にまとめました。


選定ポイント内容
目的に合った機能が備わっているか「人事評価」「目標管理」など、製品によって強みは異なるため、自社のニーズや目的に合った機能が備わっているかどうか。
コストパフォーマンスがよいか組織の予算やニーズに合った、導入・運用費用になっているか。
既存システムとの連携は可能か既存システムと連携できるかどうか。
アプリケーション同士を連携できる製品もあるため、API連携機能の有無も調査しておくとよい。
セキュリティは十分か情報漏えいや不正アクセス防止への配慮が十分であるか。従業員の個人情報や評価等の重要な情報が含まれているので細心の注意を払う。
十分なサポートを受けられるか電話・メール・チャットといった連絡手段や、サポートの有償・無償など、サポート体制。

効果的に活用できるシステムを導入するためにも、これらのポイントを確認して自社の目的に合うシステム選びをするのが大切です。

タレントマネジメントに関するよくある質問【Q&A】

タレントマネジメントについて、よくある質問からいくつかお答えします。

タレントマネジメントとはどういう意味ですか?

人材の資質や能力を最大限に活用するための人事戦略という意味です。

組織内の人材データを一元管理し、優れた人材の発掘や適切なポジションへの配置に役立てるために実施されます。

タレントマネジメントはデメリットがありますか?

従業員が多いほどデータを集めるのに時間がかかるデメリットがあります。

また、システムを導入する場合はコストがかかるため、導入・運用におけるコストパフォーマンスの確認が大切です。

まとめ

タレントマネジメントは、従業員の能力やスキル、経験などの情報を一元管理することで、採用や育成、配置に活用する人材マネジメント方法です。

採用コストの削減や人材配置の最適化など多くのメリットがある一方で、明確な目的を設定できなければ効果は薄れてしまうでしょう。

タレントマネジメントでは支援システムツールも開発されており、人材管理の効率化も可能です。

企業と個人がともに取り組み、システム導入前に十分な準備を整え、効率的なタレントマネジメントを実現しましょう。

よくある質問

タレントマネジメントとはどういう意味ですか?

人材の資質や能力を最大限に活用するための人事戦略という意味です。

組織内の人材データを一元管理し、優れた人材の発掘や適切なポジションへの配置に役立てるために実施されます。

タレントマネジメントはデメリットがありますか?

従業員が多いほどデータを集めるのに時間がかかるデメリットがあります。

また、システムを導入する場合はコストがかかるため、導入・運用におけるコストパフォーマンスの確認が大切です。