第三の賃上げとは、福利厚生サービスを活用して従業員の手取り給与を増やす方法のことです。
物価高騰が問題となっている昨今、企業の負担を抑えつつ従業員の実質手取りを増やせるため重要視されています。
本記事では、第三の賃上げの仕組みやメリット、導入事例などを詳しく解説します。
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目次
第三の賃上げとは
第三の賃上げとは、「実質手取り」を増やすために、福利厚生サービスを活用することです。
実施すれば、従業員は福利厚生サービスを受けることで実質手取りが増え、企業側は経費として処理できるため税負担の抑制につながります。以下では、第三の賃上げの仕組みや必要性などを詳しく解説します。
福利厚生サービスで手取りがアップする理由・仕組み
定期昇給やベースアップは、給与が増えると税金や社会保険料も増加するため、大きく手取り額が増えることはありません。
しかし、賃上げ分を福利厚生サービスにあてがったり従業員に提供したりした場合、一定の要件はあるものの、基本的には非課税で処理が行えます。従業員の手取りへの影響や企業の税負担も小さくて済みます。
制度によっては社会保険料にも影響しないため、さらに実質的な手取りを増やすことができます。
第三の賃上げが注目されている背景
昨今では、物価の高騰から、賃上げを求める声が大きくなっています。物価の上昇に応じて賃上げがされない場合、実質賃金は低下するため生活は困窮します。危機的状況や諸外国との賃金格差などから、社会の賃上げに対する上昇圧力が高まりました。
その結果、4月18日に発表された2024年春闘では、賃上げ率5.20%と2013年以降最も高い数値を出しました。
出典:日本労働組合総連合会「中堅・中小組合の健闘が続く!~2024 春季生活闘争 第 4 回回答集計結果について~」
しかし、賃上げを進めたくても、企業の財務状況や今後の売上への影響を考えると、賃上げに踏み切れない企業は少なくありません。
そのために、福利厚生サービスを利用して実質手取りを増やす「第三の賃上げ」へのニーズが高まってきたのです。
第三の賃上げのメリット
「第三の賃上げ」のメリットは従業員側だけでなく、企業側にもメリットがあります。
以下では、企業と従業員のメリットをそれぞれ解説します。
第三の賃上げのメリット【企業側】
企業側のメリットは次の通りです。
企業側のメリット
- 税負担を抑えられる
- 少額から始められる
- 離職率減少・定着率アップに期待できる
- 採用力の向上につながる
第三の賃上げは、福利厚生サービスの一環として食事や住宅などを補助し、従業員の実質手取りの増加が見込める仕組みです。加えて企業側も税負担を軽減できるため、双方にとって有益な施策だといえるでしょう。
以下では、第三の賃上げの企業側のメリットをそれぞれ解説します。
税負担を抑えられる
従業員の食事や住宅の補助を「福利厚生費」として取り扱うことで、課税対象となる利益から差し引くことができ、企業が納めなくてはならない法人税の負担を軽減できます。
給与をもとに算定される社会保険料は、企業と従業員で折半して負担しなくてはなりません。そのため、給与を上げると企業は社会保険料の負担が大きくなります。
しかし、福利厚生費であれば、法人税や社会保険料の負担を軽減できます。
少額から始められる
福利厚生サービスは少額から始められます。
定期昇給やベースアップは、多くの企業で年に1回など規約で定められているため、柔軟な対応が難しいのが現状です
福利厚生サービスであれば、まずは月5,000円や10,000円などの少額から始められ、従業員の反応を見ながら調整がしやすく、中小企業でも導入しやすい点が魅力です。
離職率減少・定着率アップに期待できる
第三の賃上げを行えば福利厚生が充実するため、離職率の低下につながり、企業内での人材の流出防止効果が期待できます。
昨今の賃上げムーブメントが起こっているなかで、賃上げに対してなにもアクションがなければ、従業員の不満が高まり人材流出による人手不足が懸念されます。
そのため、第三の賃上げによって実質手取りをアップさせ、従業員の満足度を上げる必要があるといえるでしょう。
採用力の向上につながる
福利厚生が充実すれば、他企業との差別化ができるため採用力の向上につながります。さらに、就職・転職希望者からは、「従業員を大切している企業」というイメージを持たれやすくなるでしょう。
優秀な人材を確保するためには、求人の応募を増やすことが大切です。第三の賃上げで福利厚生を充実させ、就職や転職希望者の注目を集めましょう。
第三の賃上げのメリット【従業員側】
従業員側のメリットは、次の通りです。
従業員側のメリット
- 実質的な手取り額がアップする
- 働きやすくなる
以下では、従業員側のメリットをそれぞれ解説します。
実質的な手取り額がアップする
第三の賃上げにより、従業員の手取り額が実質的にアップするのは大きなメリットです。第三の賃上げは、従業員の生活水準を向上させるだけでなく、経済的な安定をもたらす効果があります。
手取り額が増加すれば日常生活の質が向上し、将来に向けた貯蓄や投資の機会も増えるため、経済的な自由度が高まるでしょう。
働きやすくなる
福利厚生が充実すれば、より働きやすく魅力的な職場になるメリットもあります。
たとえば、自由に安くご飯を食べられるようになれば、職場のメンバーとも食事を通じて交流できるため、打ち解けやすくなるでしょう。また、家賃補助を行えば、従業員の固定費が減少し、自由に使えるお金が増えて心の余裕が生まれます。
このように、第三の賃上げによって福利厚生が充実すると、職場でのコミュニケーションが深まり、働きやすくなる可能性が高まります。
第三の賃上げの注意点・課題
福利厚生の充実は、直接的な給与の増加とは異なり、企業には別の形でコストが発生します。福利厚生の提供にはサービスの導入と維持に費用がかかり、これらの費用が負担となることがあります。
また、福利厚生の提供は税務処理を複雑にし、追加で必要な処理が負担になる可能性も考えられるでしょう。
安易に取り入れるのではなく、上記のような注意点・課題を検証し上手く取り入れていく必要があります。
まとめ
第三の賃上げを行えば、企業の税負担をおさえつつ従業員の実質手取りを上げられるため、給与アップが難しい企業にも有効な手段といえるでしょう。主に、家賃補助や食の福利厚生が有効的です。
注意や課題点もありますが、メリットの多い施策なため、前向きな検討をすることが人材確保にもつながります。
ぜひ本記事を参考にして、第三の賃上げを理解し、賃上げを検討する際の判断材料に役立ててください。
よくある質問
第三の賃上げができない福利厚生サービスはある?
第三の賃上げを行うには、福利厚生費と認められるものでなくてはならず、以下の要件をすべて満たしている必要があります。
●すべての従業員が利用できる
一部の従業員しか利用できないサービスは、機会の平等性がないため福利厚生費として認められない可能性があります。
●常識の範囲内の金額であること
福利厚生費の金額には明確な基準はありませんが、目安となる金額の範囲内におさめる必要があります。
●現金や換金性の高いものではないこと
現金や金券などの換金性の高いものは、福利厚生費として認められません。