人事管理の基礎知識

OKRとは?大手企業が導入する目標管理法をわかりやすく解説

OKRとは?大手企業が導入する目標管理法をわかりやすく解説

「OKR」とは、目標(Objective)と、目標達成のための具体的な結果(Key Results)を設定する目標管理方法のことです。

本記事では、OKRの基本概念から具体的な運用例、導入のメリットまで詳しく紹介します。

目次

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OKRとは

OKRとは、「Objectives and Key Results」の略称であり、「目標と主要な結果」という意味をもつ目標管理方法のひとつです。

すぐに達成するのが難しい大きな目標と、その目標を達成するために求められる主な結果を設定します。

OKRを用いることで、企業が目指すべき目標と従業員一人ひとりの目標が明確になり、社内全体で同じ方向を向きプロジェクトに取り組めるようになります。

またOKRは達成率が60〜70%を目安に設定することも特徴です。

OKRの具体例

たとえば、「市場シェアの拡大」を目標として掲げた場合、どの程度の拡大を目指すのか、どのレベルを“シェアの拡大”とみなすのかは企業や個人によって異なります。

OKRの場合、以下のようにより具体的な目標を設定するのがポイントです。

【目標:市場シェアの拡大】

  1. 新規顧客獲得数を前四半期の50%増やす
  2. 既存顧客のリピート購買率を10%上げる
  3. 新商品の売上を前四半期で1,000万円達成する

また、「チームの効率向上」が目標の場合は、以下のような成果指標を示す必要があります。

【目標:チームの効率向上】

  1. プロジェクト完了までの平均時間を20%短縮する
  2. チーム全体のコミュニケーション効果を向上させ、プロジェクトの遅延を30%削減する
  3. チームメンバーのスキル向上のためのトレーニングプログラムを100%完了させる

OKRの考えが広まった背景

1970年代に、アメリカの大手半導体メーカーが導入したのをきっかけに、OKRの考えが広まりました。現在では米国を代表する企業をはじめ、日本の大手企業がOKRを採用しています。

数々の企業でOKRの考えが広まった背景には、ビジネスのグローバル化や移り変わりが激しい市場環境が大きく関係しています。企業が変化の激しい時代を生き抜くためには、異なる価値観をもつ者が、みな納得できる業績の評価を行わなければなりません。

従業員全員が一丸となりモチベーションを保ちながら成果を上げるために、企業のビジョンと個々の目標を共有し、それぞれに明確な指標を示せるOKRが注目されるようになったのです。

OKRと混同しやすい用語

OKRと併せて使用されることが多い用語として、「KPI」「KGI」「MBO」があります。

それぞれの違いについて詳しく説明します。

OKRと混同しやすい用語

  • KPIとの違い
  • KGIとの違い
  • MBOとの違い

KPIとの違い

KPI(Key Performance Indicator)は、組織やプロジェクトのパフォーマンスを評価するための主要な指標です。具体的な目標や戦略の達成度を測定し、組織の健全性や成功を評価する際に役立ちます。

OKRとの違いは、達成すべき結果の具体性です。

たとえばOKRで「サイトの流入数を2倍にする」と設定した場合、KPIはより具体的に「検索から◯%」と「広告から◯%」のようにそれぞれ設定します。OKRを達成するために発生する業務それぞれに、細かく指標を設けるのがKPIです。

特徴KPI(Key Performance Indicator)OKR(Objectives and Key Results)
目的プロジェクトのパフォーマンスを評価する目標に向けて目線を揃える
・オーガニック検索からの集客を〇〇人
・リスティングからの集客を〇〇人
目標:Webからの集客を倍増させる
・PV数を2倍にする

OKRは1〜3ヶ月単位で目標設定を見直すのに対し、KPIは業務のプロジェクトごとに変動するという違いもあります。

KGIとの違い

KGI(Key Goal Indicator)は、組織やプロジェクトにおいて設定された主要な目標の達成度合いを評価するための指標です。

通常、KGIはビジョンや戦略的な目標に対する進捗を測定するために使用され、主な目的は組織全体の健全性や長期的な成果を把握することにあります。

つまりKGIは組織全体の進捗を把握するための総合的な指標であり、OKRは具体的な目標と成果を数値化して評価する仕組みという違いがあります。

たとえば、「今年は売上120%を目指す」というKGIを設定した場合、それに対応するOKRは以下のとおりです。

特徴KGI(Key Goal Indicator)OKR(Objectives and Key Results)
目的組織全体の健全性や長期的な成果を把握する具体的な目標と成果を数値化して評価する
売上120%の達成 目標:ビジネス成長の加速化
・新規顧客からの売上を50%まで伸ばす
・顧客離反率を20%以下に抑える

MBOとの違い

MBO(Management by Objectives)は、組織や個人の目標を策定し、それらを達成するための計画と評価を重視する目標管理法のひとつです。通常1年ごとに設定し、達成率に基づいて報酬などを決定する際に用いられます。

たとえば、「新規顧客獲得の増加」を目指したOKRとMBOは下記のとおりです。

<MBOの場合>

  • 次の四半期までに新規顧客を3,000人獲得する
  • 新規顧客の獲得経路を分析し、効果的なマーケティング戦略を立案する
  • 新規顧客獲得のプロセスを改善し、次の半期までに獲得コストを30%削減する

<OKRの場合>

  • 次の四半期までに新規顧客を3,000人獲得する
  • 新しいマーケティングキャンペーンを立ち上げ、新規顧客獲得につながるリード数を50%増加させる
  • Webサイトの改善を通じて、次の半期までに新規顧客のwebサイトのコンバージョン率を30%向上させる

OKRを導入する4つのメリット

OKRを導入することで得られるメリットは、主に以下の4つです。

OKRを導入するメリット

  • 自社の目標を社員に浸透させやすい
  • 社員のコミュニケーションが活性化される
  • 「会社に貢献している」と実感しやすい
  • 仕事が効率化される

それぞれのメリットをわかりやすく解説します。

自社の目標を社員に浸透させやすい

OKRを設定することで、社員に対して自社の目標を明確に示し、共有しやすくなります。

OKRは、企業が目指すべき目標と社員が目指すべき目標をリンクさせることが重要です。設定した自社の目標に対して、部署やチームごと、さらに社員個人の目標にしっかりと落とし込みます。

そうすることで、社員一人ひとりが自社の目標に対する意識を高められるようになるでしょう。

社員のコミュニケーションが活性化される

自社が目指す目標を社員全員と共有できるようになれば、社員同士のコミュニケーションも自然と活性化します。どうすれば目標が達成できるのか、話し合い、協力し合いながら日々の業務に取り組めるでしょう。

また、OKRは1〜3ヶ月と短いサイクルで設定が見直されるため、その都度目標を確認し合ったり、課題を把握したりするなどコミュニケーション促進のきっかけにもなります。

「会社に貢献している」と実感しやすい

従業員が「会社に貢献している」と実感しやすくなるのも、OKRを設定するメリットです。

自社の目標設定を明確に共有できるため、従業員一人ひとりが自分のすべきことも明確になり、会社への貢献につながります。

貢献度合いが実感しやすくなると、仕事に対する従業員のモチベーションも上がるでしょう。もっと会社に貢献できることはないかと自分で模索したり、スキルアップを目指したりするきっかけに繋がるかもしれません。

仕事が効率化される

仕事の効率が上がるのも、OKRを設定するメリットです。

OKRは自社の目標からチームの目標、そして個人の目標へとより具体的に落とし込むことになるため、個人の業務がそのまま会社の目標へとつながります。

従業員の業務がそのまま会社の目標達成へと繋がるため、漠然と仕事をするよりも業務の効率向上が期待できます。

OKRの導入に適した企業・適していない企業の特徴

OKRの導入を成功させるためにも、OKRに適した企業と適していない企業の特徴を把握しておきましょう。

OKRの導入に適した企業

以下の特徴に当てはまる企業は、OKRの導入に適している企業だといえます。

OKRの導入に適した企業

  • 柔軟性を持ち、迅速かつ適応力を発揮できる環境にある企業(アジャイル型の企業)
  • 革新的なアイデアを生み出したり、新しいサービスや商品を提供したりする企業
  • 多岐にわたる情報に容易にアクセスできる、組織に壁がない企業
  • 制約がある中でも高い目標を追求するカルチャーをもつ企業
  • 中央的な権限がなく、分権的でありかつ民主的な構造を有している企業

OKRの導入に適した企業は、高い成長率を目指し、柔軟に目標を設定し調整できる企業です。

特に明確なビジョンを持ち、その実現に向けて全社員が一致団結して取り組む意欲がある企業が適しています。

また、定期的なフィードバックと評価を重視し、社員の成長と企業の目標達成を同時に追求する組織文化が根付いている場合、OKRの導入が成功しやすくなります。

OKRの導入に適していない企業

以下の特徴に当てはまる企業は、OKRの導入に適していない企業だといえます。

OKRの導入に適していない企業

  • 事業計画や企業の方針など、目標を全社に公開していない企業
  • 挑戦的な目標を作る必要がない、目標の設定が必要とされていない企業
  • 各部署のトップなど特定のメンバーだけが発言できる企業
  • 事業が未確定の状態にある企業
  • 既存の目標管理制度(MBO)が効果を失いつつある状況、かつ問題点を指摘できない状態にいる企業

OKRの導入に適していない企業は、伝統的な管理スタイルをもち、変化に対する抵抗感が強い企業です。

特に、上層部からの一方的な指示で運営されるトップダウン型の組織では、OKRの効果を最大限に発揮するのが難しいでしょう。

また、短期間での目標設定や頻繁な目標の見直しに対して消極的な企業も同様です。

【4ステップで解説】OKR導入の流れ

OKR導入の流れは、以下の4ステップとなります。

OKR導入の流れ

  • STEP1:会社全体のOKRを設定する
  • STEP2:チームごとのOKRを設定する
  • STEP3:個人のOKRを設定する
  • STEP4:レビューを実施する

各工程について詳しく説明します。

STEP1:会社全体のOKRを設定する

OKR導入の最初のステップは、会社全体のOKRを設定することです。

この段階では経営層が中心となり、自社が果たすべきミッション・目指すべきビジョンに沿った目標を設定します。また経営層だけでなく、さまざまな部署の意見を取り入れ、ボトムアップのアプローチを行うことで、会社全体のモチベーションを上げられるでしょう。

設定する目標は具体的かつ挑戦的であり、全社員が理解しやすいようにシンプルな言葉で表現します。

STEP2:チームごとのOKRを設定する

会社全体のOKRを設定した後は、チームごとのOKRを設定します。

ポイントは、会社全体のOKRとチームごとのOKRをリンクさせることです。社員のモチベーションを高めるためにも、社員が納得できるOKRを設定しましょう。

STEP3:個人のOKRを設定する

次に、会社全体のOKR・チームごとのOKRとリンクするように、個人のOKRを設定します。

個人のOKRを設定する際は、部門長やチームリーダーと話し合って調整しましょう。連携を取りながら個人のOKRを設定することで、お互いに納得した形で仕事に取り組めます。

STEP4:レビューを実施する

会社全体→チーム→個人の流れでそれぞれのOKRを設定したあとは、定期的に進捗を確認し、レビューを実施します。

OKRのレビューは、中間レビューと最終レビューの2つに分けるのが一般的です。

中間レビューでは、全体的なレビューを1〜2回程度実施し、改善点を議論したり必要に応じて目標を変更したりします。

そして、各OKRの結果を評価するのが、レビュー期間の最後に行う最終レビューです。達成度の状況を確認し、同じ目標を今後も続けるか、新しい目標に変更するかを決定します。

OKR導入時に大切な4つのポイント

OKR導入時に大切なポイントは、以下の4つです。

OKR導入時に大切なポイント

  • OKRの設定条件を理解する
  • ボトムアップで意見を取り入れる
  • フィードバックを高頻度で実施する
  • OKR導入後は定期的に改善する

それぞれのポイントについて詳しく説明します。

OKRの設定条件を理解する

OKRの設定時は「達成目標(Objects)」と「主要な成果(定評目標/Key Results)」を決める必要があります。それぞれに設定条件があるため、 きちんと理解しておかなければなりません。

達成目標(Objects)主要な成果(定評目標/Key Results)
設定条件 ・チームとして実現可能か
・期限が明確であるか
・60〜70%の達成率で挑戦的なものか
・定量的に計測できるか
・客観的に評価できるか
・困難だが実現可能なものか

上記の設定条件を踏まえた上で、次の3つのポイントを意識してOKRを設定するのが大切です。

  • 高いレベルで目標を設定する
  • OKRの達成率を評価に反映しない
  • KPIとは異なる目標管理法であることを理解する

OKRは、達成率が60〜70%になるような、高いレベルの目標を設定するのが理想とされています。

そのため、OKRの達成率は評価に反映させず、評価制度は別に設定しましょう。

ボトムアップで意見を取り入れる

OKRは、会社全体からチーム・個人の目標を設定することになりますが、経営陣や責任者などトップダウンだけで決めるのではなく、従業員からボトムアップで意見を取り入れるのも大切なポイントです。

トップダウンの意見だけでOKRを設定すると、会社全体のモチベーション向上につながりません。

組織は従業員一人ひとりで成り立つものだからこそ、個々の意見をしっかりと取り入れてOKRを導入する必要があります。

フィードバックを高頻度で実施する

OKRの設定は、会社全体の高い意識やモチベーション保持が目的です。

そのため各工程で掲げた目標が形骸化されないよう、高頻度でフィードバックを実施しましょう。

可能であれば、週1回以上の頻度でチーム内または上司と部下で、振り返りや進捗状況の確認を行うのが望ましいです。

OKR導入後は定期的に改善する

より高い目標へ挑戦し続けるためにも、OKR導入後は定期的に改善する必要があります。

継続的な改善は習慣化につながるため、従業員一人ひとりが目標に挑戦しやすい環境が構築できるでしょう。

定期的な改善を習慣化する方法としては、コミュニケーションが取りやすい環境を整えたり、システムを用いて進捗率を把握したりするなど、さまざまな取り組みがあります。

まとめ

OKRは、会社全体や従業員一人ひとりに透明性を持った目標が共有されるため、全体の方向性を理解しやすく、重要な取り組みにフォーカスできる目標管理法のひとつです。

会社全体の連携と成果を促すためにも、OKRを導入する前に仕組みを理解し、OKRに適した企業であるかどうかを慎重に検討する必要があります。

OKR導入後も定期的なレビューと改善を繰り返すことで、会社全体でより高い目標へとチャレンジできるようになるでしょう。

よくある質問

OKRとKPIは併用できる?

OKRの要素を抜いたKPIマネジメントもありますが、OKRとKPIは併用というよりも同時に使用するものです。

同時に使用する場合、OKRは会社全体や従業員個人に対する全体的なマネジメント、KPIは売上や原価など数値目標の明確化と、それぞれふさわしい場所で活用しましょう。

OKRの欠点は?

KPIやKGIとの違いをきちんと理解したり、導入後も定期的に改善が必要だったりと、運用に手間がかかる点です。

また、OKRは最初に高い目標を設定することになるため、過度に高すぎると従業員のモチベーションを下げてしまう恐れもあります。