MBO(目標管理制度)とは、社員の目標と企業の戦略的目標を一致させ、組織全体のパフォーマンス向上を目指す手法のことです。
本記事では、MBOの運用方法やメリット・注意点を解説し、効果的な目標設定のポイントもご紹介します。
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目次
- MBOとは
- MBOの具体例
- MBOが重要視される背景
- MBOの3つの種類
- MBOを設定する6つのメリット
- 社員のメリット1:成長を感じられる
- 社員のメリット2:仕事のモチベーションが上がる
- 社員のメリット3:セルフマネジメントスキルが上がる
- 会社のメリット1:企業の方向性が定まる
- 会社のメリット2:人材育成が進む
- 会社のメリット3:人事評価が容易になる
- MBOの4つの注意点
- 結果だけを追い求めると社員のモチベーションが下がることがある
- 成果を数値化しにくいケースがある
- 極端な目標設定は逆効果になる
- 管理職の負担が大きくなる
- 【4ステップで解説】MBO運用の流れ
- STEP1:会社全体の目標を決める
- STEP2:社員個人の目標と行動プランを決める
- STEP3:プランを実行する
- STEP4:振り返りと評価を実施する
- MBOをうまく導入するための5つのポイント
- 目標設定はトップダウンで行わない
- 達成確率が50%ほどの目標を設定する
- 具体的な指標を定める
- 目標達成基準を明確にする
- プロセスも評価に組み込む
- MBOと混同しやすい用語
- まとめ
- よくある質問
MBOとは
MBO(Management by Objectives)は、個人や企業の目標設定と、目標の達成度合いを評価する制度で、経営管理手法のひとつです。
企業の目標や方針を社員一人ひとりのレベルに具体的な目標として落とし込み、個々の目標の達成度合いを評価します。
つまり社員は、企業の目標と同じ方向に向いているため、自分の成功が企業の成功につながっていく実感を得ることができます。
MBOが整っていれば、その目標を達成できたか・できていないのかが明確に判断できるため、社員のモチベーション向上や組織の効率化、目標達成に焦点を当てた管理体制の構築を目指せます。
MBOの具体例
MBOでは、誰が見ても理解しやすい目標を具体的に掲げることが重要なポイントです。
例として、営業・販売など目標数値が入れやすいケースと、事務職など目標数値が入れにくいケースを下記にまとめました。
目標数値が入れやすいケース 営業職や販売職など | 目標数値が入れにくいケース 事務職など |
---|---|
・毎月の売上目標を前年比10%以上増やす ・新規顧客の獲得数を月平均で20%増やす ・既存顧客からのリピート購買率を前年比5%以上増やす | ・顧客からのフィードバックを収集し、改善提案を月ごとに3つ以上提出する ・文書のデジタル化率を100%に向上させる ・ミーティングの議事録を正確に作成し、遅延や漏れをゼロにす |
MBOが重要視される背景
経営管理手法のMBOは、1954年に経営学者のピーター・ドラッカーが提唱しました。日本では「目標管理手法」と呼ばれており、社員の自主的な業務への取り組みを促すための仕組みを意味しています。
1990年代に日本でもMBOが広まり、新型コロナウイルス感染症の拡大で、より一層MBOが重要視されました。
重要視される背景には、企業に対する情報公開の要求が増加し、シビアな目標達成が求められていることが挙げられます。企業が財務報告を作成するための枠組みとなる「FRS(国際会計基準)」の導入によって、企業が公開すべき情報量が増えている状態です。
そのほか、事業を継続するためにも長期的な事業計画を実行できる組織づくりや、社員一人ひとりが目標達成に向けた取り組みを促進するためにも必要とされています。
MBOの3つの種類
MBOの種類は、「組織活性型」「人事評価型」「課題達成型」の3つです。
MBOの3つの種類
- 組織活性型
- 人事評価型
- 課題達達成型
自社の目標に合わせたタイプを採用している企業もあれば、3つを同時に実践している企業など使い方はさまざまです。
それぞれの特徴を詳しく説明します。
◆組織活性型
組織の活性化が目的のタイプです。社員が進んで目標を設定し、自発的に行動できるよう働きかけます。
社員の意向を尊重することで成長につながり、組織やチームの活性化を目指すのが特徴です。
◆人事評価型
効率良く人事評価を行うことが目的のタイプです。多くの企業がMBOを採用し、目標の達成度や取り組みを人事評価に反映させています。
組織活性型と同時に用いられることもあります。
◆課題達成型
企業の課題解決や目標達成を目的に、個々の目標設定を行うタイプです。
社内全体の目標を部門ごとの目標に、そこからさらにチームごとの目標に細分化し、個々の目標を明確化します。
MBOを設定する6つのメリット
MBOを設定するメリットを、社員・会社にわけて6つご紹介します。
MBOを設定する6つのメリット
- 成長を感じられる
- 仕事のモチベーションが上がる
- セルフマネジメントスキルが上がる
- 企業の方向性が定まる
- 人材育成が進む
- 人事評価が容易になる
社員のメリット1:成長を感じられる
MBOは社員が自ら設定した目標に向かって取り組めるため、自身の成長をより一層感じられるようになります。
設定した目標に向かって学習したり、スキルアップを目指したりするなど、社員一人ひとりのキャリア向上にもつながるでしょう。
社員のメリット2:仕事のモチベーションが上がる
MBOで設定される具体的かつ達成可能な目標は、社員の仕事へのモチベーションを大きく向上させます。
目標が明確であることで、何を成し遂げるべきか、そしてその成果がどのように評価されるかがはっきりします。自らの努力が認められ評価されることは、仕事に対する熱意を持続させる重要な要因です。
社員のメリット3:セルフマネジメントスキルが上がる
社員が自ら決めた目標に向かって突き進むMBOは、セルフマネジメントスキルの向上も期待できます。
自己統制に基づくMBOを導入することで、自分の行動を律し、業務効率化やスキル向上を目指した自己管理スキルが高まるでしょう。
会社のメリット1:企業の方向性が定まる
MBOは、企業の目標に基づいて各社員の目標に落とし込みます。そのため、企業と個人の目標に一貫性が生まれ、同じ方向を向きながら業務に取り組むことが可能です。
企業の方向性がしっかり定まっていると、会社と部門、各チームの目標も明確になります。
会社のメリット2:人材育成が進む
MBOは人材育成にも大きなメリットをもたらします。すべての社員が自らの目標を決めて実行に移すのがMBOの特徴なので、非管理職の社員でもセルフマネジメントの基礎を身につけることが可能です。
社員一人ひとりが目標達成に向けた問題を率先して分析し、改善できる力を身につけられれば、組織のパフォーマンスも必然的に上がるでしょう。
会社のメリット3:人事評価が容易になる
MBOは、掲げた目標の達成率やそのプロセスを踏まえて、達成できたことや達成できなかったことが明確になります。
フィードバックや自身の問題点・改善点が理解しやすくなるだけでなく、MBOを評価基準に組み込むことで人事評価がしやすくなります。
MBOの4つの注意点
MBOを導入して運用する際には、注意すべきことがあります。
MBOの4つの注意点
- 結果だけを追い求めると社員のモチベーションが下がることがある
- 成果を数値化しにくいケースがある
- 極端な目標設定は逆効果になる
- 管理職の負担が大きくなる
それぞれの注意点について詳しく説明します。
結果だけを追い求めると社員のモチベーションが下がることがある
MBOは目標達成に重点を置く傾向があるため、結果だけを追い求めると社員のモチベーションが下がる恐れがあります。
社員のスキルや自主性はもちろん大切ですが、結果だけにとらわれず、社員一人ひとりの問題点や改善点を早期に見つけてフィードバックを定期的に行うことが大切です。
成果を数値化しにくいケースがある
職種によっては目標設定が難しいため注意が必要です。たとえば、総務や人事事務などの職種は成果が数値化しにくい傾向があるため、曖昧な目標を設定すれば上司と社員の間で目標達成にズレが生じやすくなります。
成果を数値化しにくい職種だとしても、目標達成はより具体性のある定量的な数値で掲げるように工夫しましょう。
極端な目標設定は逆効果になる
MBOは、目標を達成するための行動や過程が人事評価に反映しやすいメリットがある一方、目標達成を意識しすぎて社員が自ら低い目標を設定してしまうデメリットもあります。
また、明らかに達成が難しい目標を設定し達成できなかった場合、評価の際に社員のモチベーションが著しく下がってしまう可能性もあるでしょう。
社員の成長を促す難易度かつ達成しやすい目標かどうか、上司やチームリーダーが見極めてアドバイスをすることもMBOにおいては非常に重要です。
管理職の負担が大きくなる
社員の処遇にMBOを取り入れることで人事評価は容易になりますが、一方で管理職の負担が大きくなる可能性もあります。
MBOは、管理職が個々の社員を評価してフィードバックするため、多くのチームメンバーをもつ組織であるほど管理職の負担が増えるでしょう。
また、社員のやる気を損ねないように配慮する必要もあるため、評価者である管理職には精神的なプレッシャーがかかります。
管理職の負担を軽減するためにも、フィードバックの作業を分担したり、社員が自己評価を行う機会を設けて共有したりすることが大切です。
【4ステップで解説】MBO運用の流れ
MBOを導入し運用するための大まかな流れを、下記にまとめました。
MBO運用の流れ
- STEP1:会社全体の目標を決める
- STEP2:社員個人の目標と行動プランを決める
- STEP3:プランを実行する
- STEP4:振り返りと評価を実施する
各ステップについて詳しく説明します。
STEP1:会社全体の目標を決める
最初に、会社全体の目標を決めます。
会社全体の目標を決める際は、企業理念や利益に沿ったわかりやすい内容にすることが重要なポイントです。そして、決定した会社の目標を管理職研修や目標設定研修などで社員へ共有し、理解を得る必要があります。
STEP2:社員個人の目標と行動プランを決める
次に、会社全体の目標に沿った社員個人の目標と行動プランを決めます。ポイントは、社員自身だけで目標を定めないことです。
上司やチームリーダーなど、客観的な視点から達成が容易な低すぎる目標になっていないか、内容が具体的かつ定量的かという判断も必要です。
STEP3:プランを実行する
社員個人が掲げた目標を達成するためのプランを実行します。
具体的に決めた行動プランでどのような成果を上げているのか、進捗具合などを管理職や上司と相談しながら修正したり、助け合ったりすることがポイントです。
STEP4:振り返りと評価を実施する
評価期間に入ると、上司と社員が一緒に目標や行動プランを振り返ります。上司は客観的な視点から結果を評価し、そのフィードバックをしっかりと社員へ伝えなければなりません。
フィードバックする際は評価の理由だけでなく、本人の努力に対する労いの言葉をかけることも重要です。
MBOをうまく導入するための5つのポイント
MBOをうまく導入するために、以下の5つのポイントに注目しましょう。
MBOを導入するための5つのポイント
- 目標設定はトップダウンで行わない
- 達成確率が50%ほどの目標を設定する
- 具体的な指標を定める
- 目標達成基準を明確にする
- プロセスも評価に組み込む
それぞれのポイントについて詳しく説明します。
目標設定はトップダウンで行わない
MBOは社員の自主性が重要であるため、トップダウンだけで目標設定を行ってはいけません。
社員が理解できない・納得できない目標を設定すると、モチベーションやパフォーマンスの低下につながるため注意が必要です。社員の自主性を尊重した上で、会社全体の目標を設定しましょう。
達成確率が50%ほどの目標を設定する
低すぎる目標設定は社員のモチベーションが上がらず、高すぎる目標設定は社員のモチベーションが下がる可能性があります。
社員にとって達成可能な目標でありつつも、成長が期待できる目標を設定しましょう。
達成できる確率が50%の難易度の目標を設定し、達成率100%を目指すのが理想です。
具体的な指標を定める
いつまでにどの程度達成するのか、設定する目標に具体的な指標を示すのも大切なポイントです。
たとえば、「新商品の売上を上げる」という目標を設定する場合、「新商品の売上を○月までに○%上げる」など、具体的な数値を定めます。具体的かつ定量的な目標であるほど、社員も個々の目標を設定しやすくなるでしょう。
目標達成基準を明確にする
数値化しにくい職種でも、目標達成基準を明確にすることが大切です。曖昧な達成基準だと、どのラインで目標達成といえるのか、客観的な判断ができなくなってしまいます。
数値化が難しい場合には、「ミスを5個から2個に減らす」「納期を中4日から3日に短縮する」といったように設定しましょう。
プロセスも評価に組み込む
MBOは結果に重点を置く傾向があるため、目標達成に向けた過程(プロセス)も評価に組み込む必要があります。業績的には目標に届かなかったとしても、その目標に届くための努力を認めてあげることも上司の役割です。
なぜその評価に至ったのか、丁寧で親身なフィードバックを心がけましょう。
MBOと混同しやすい用語
MBOと混同しやすい用語として、OKR(目的と主要な成果)とKPI(重要業績評価指標)があります。それぞれの違いを理解するために、目的・共有対象範囲・目標達成率の設定を以下の表にまとめました。
MBO | OKR | KPI | |
---|---|---|---|
目的 | 明確な目標を設定し、パフォーマンやモチベーションを向上させる | 挑戦的な目標とその目標に必要な成果を設定することで、業務を効率化させる | 各プロジェクトごとの数値目標を設定することで、進捗状況や改善策が把握しやすくなる |
共有対象範囲 | 部下と上司で共有 | すべての社員で共有 | プロジェクトやチームごとに共有 |
目標達成率の設定 | 100% | 60〜70%程度 | 100% |
まとめ
MBO(管理目標制度)は組織や個人が目標を設定し、その達成度を定量的に評価する経営管理手法です。
目標設定や進捗管理を通じて成果を最大化し、社員のモチベーション向上と組織の効率化を促進できる特徴があります。一方で、形式的な業務になるリスクや、評価者の負担増大などのデメリットもあるため運用には注意が必要です。
MBOを効果的に活用し、組織の成果を最大化するためにもMBOへの深い理解が不可欠です。
よくある質問
MBOとはどういう意味?
MBOは「Management by Objectives」の略称で、経営管理手法のひとつです。
組織や個人が目標を設定し、その達成度合いを定量的に評価します。
MBOの弱点は?
目標設定が形式的になり、本来の目的が失われる可能性があることです。
目標管理そのものが目的になってしまうと、行動自体が形ばかりで中身のないものになってしまいます。