「KPI」とは、ビジネスの進捗管理や成果を測定するために用いられる「重要業績評価指標」のことです。
本記事では、KPIの基本概念から、その設定方法や日常業務での活用法について、初めて聞く人でも理解しやすいよう解説しています。
営業やマーケティングでKPIを自然に使えるようになるため、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
- KPIとは
- KPIの具体例
- KPIと混同しやすい用語
- KGIとの違い
- KFS(CSF)との違い
- OKRとの違い
- KPIを設定する4つのメリット
- 社員一人一人が取るべき行動が明確になるから
- 会社全体のモチベーションの向上につながるから
- 目標達成までのプロセスが可視化できるから
- 評価基準が統一されわかりやすくなるから
- 【3ステップで解説】KPI設定の流れ
- STEP1:「KGI=最終目標」を設定する
- STEP2:「KFS=成功のために必要な要因」を特定する
- STEP3:「KPI=中間目標」を設定する
- KPIをうまく設定するためのポイント
- 「SMARTモデル」を活用する
- 「KPIツリー」でフローを可視化する
- 複雑に考えない
- KPI設定後のマネジメント方法
- PDCAサイクルを回す
- KPIは必要に応じて修正する
- まとめ
- よくある質問
KPIとは
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、「重要業績評価指標」と訳されます。仕事のさまざまなシーンで設定される目標に対して、業績を評価し管理するための指標のことです。
たとえば、「今年の売上が1千万円以上」という目標があったとします。この目標達成のために「1年間の受注数が500件以上」という中間目標が浮かび上がれば、それをKPIのひとつに設定できるでしょう。
そして、「半年経った時点で受注数のKPIを評価したところ、100件だったので、業績評価としては不調です」といった使い方をします。
長期の目標になればなるほど、一定期間で「今の達成状況はどうか」という確認が重要です。ゴールまでの道のりで、途中に設定された中間目標をわかりやすく数値で表したのがKPIです。
KPIの具体例
KPIの種類は、職種や仕事のチーム次第で非常に多岐に渡ります。
その中でも一般的によく設定される具体例は以下の通りです。
職種 | KPIの具体例 |
---|---|
営業 | 売上・受注数・成約率・リピート率・アポイント獲得率・平均顧客単価・解約数 |
財務 | ROE(自己資本利益率)・ROA(総資産利益率)・固定資産回転率・当座比率・固定比率・負債比率 |
マーケティング | 広告インプレッション数・広告クリック率・SNSエンゲージメント数・メール開封率 |
製造 | 生産量・稼働率・利用効率・事故発生件数・在庫回転率・廃棄率・不良率 |
人事 | 応募者数・採用者数・辞退者数・離職率・非正規雇用比率・女性管理職比率・社員満足度 |
KPIと混同しやすい用語
KPIに似た言葉として「KGI」など、目標達成に関連する用語がいくつかあります。
それぞれ明確に違いがありますので、正しく理解しておきましょう。
KPIと混同しやすい用語
- KGIとの違い
- KFS(CSF)との違い
- OKRとの違い
KGIとの違い
KGIとは「Key Goal Indicator」の略称で、「重要目標達成指標」と訳されます。端的にいえば、「最終目標」を数値化した指標です。
KPIがビジネスにおける中間目標の達成度を示す「プロセス」の指標であるのに対し、KGIは最終的な目標に関する達成度を示す「ゴール」の指標である、という違いがあります。
たとえば「今年の売上が1千万円以上」というKGIに対し、「受注数が500件以上」「平均顧客単価が2万円以上」などの年間KPIを設定します。
KFS(CSF)との違い
KFSとは「Key Success Factor」の略称で、「重要成功要因」と訳されます。
また、CSFは「Critical Success Factor」の略称で、KFSと同じ意味で使われます。いずれもその名の通り、「成功の鍵となった要因」のことを指した言葉です。
KPIが「業績を評価する」定量的な指標であるのに対し、KFS(CSF)は「なぜその業績になったのか」という定性的な要因を意味している、という点で異なります。
たとえば「受注数が500件以上」というKPIに対し、その達成に必要な「相手の心を掴む顧客対応」「受注したくなる商品の品質」などがKFS(CSF)に該当するでしょう。
OKRとの違い
OKRとは「Objectives and Key Results」の略称で、「目標と主要な成果」と訳されます。OKRは「目標」と「その目標の達成に必要な複数の成果」を併せて管理する手法を意味する言葉です。
KPIが「ゴールまでの道のりの途中に設定された中間目標」であるのに対し、OKRは「ゴールはどこか」という目標と「どの道のりが適切か」という手法を示しているという点で異なります。
たとえば「受注数500件超え」などの指標がKPIであり、「売上の増加」という目標に「固定客へのルート営業の割合を20%増やす」「ネットショップでの集客を2倍に伸ばす」など複数の手法を管理するのがOKRです。
KPIを設定する4つのメリット
ビジネスシーンでよくKPIを設定するのは、会社にとって大きなメリットがあるためです。
ここでは以下の4つのメリットを紹介します。
KPIを設定する4つのメリット
- 社員一人一人が取るべき行動が明確になるから
- 会社全体のモチベーションの向上につながるから
- 目標達成までのプロセスが可視化できるから
- 評価基準が統一されわかりやすくなるから
社員一人一人が取るべき行動が明確になるから
KPIの設定には、社員一人ひとりが取るべき行動が明確になるというメリットがあります。
KPIは会社の大きな目標から個人の小さな目標まで、幅広く設定できます。目標自体は「こうなりたい」という曖昧なイメージの場合がありますが、KPIはそれに向かって定量的に設定されるため、具体的に何をすればいいのかが明確です。
「売上を伸ばす」という目標よりも、「来週までに◯件の顧客を訪問する」という指標のほうが行動に移しやすいでしょう。
具体的な指標は各社員の円滑な業務遂行につながり、進捗管理も簡単になるため、会社の生産性向上が期待できます。
会社全体のモチベーションの向上につながるから
多くの場合KPIは、誰がどのくらいの進捗率なのかが一目でわかるように、社員が確認できるよう管理されます。つまりKPIの設定は、社員同士が共通の目標を認識する機会になります。
この共通認識は、会社という組織にとっては非常に重要です。KPIの進捗を見ながら、自分の達成した仕事を誇りに思う人もいるでしょう。また、「あの人はあんなに頑張っているのだから」という理由で、自分を奮い立たせる人もいるかもしれません。
組織の意思統一につながり、会社全体のモチベーション向上に寄与するのが、KPI管理のメリットです。
目標達成までのプロセスが可視化できるから
KPIを設定すると、目標達成までのプロセスが可視化できます。プロセスが見えると、具体的な施策・マネジメント・クリアすべき課題が発見でき、より適切な会社の動きにつながるでしょう。
プロセスを正しく可視化するためにも、KPIは「明確に」「期限を決めて」「計測できる数字を使って」「実現可能な指標」を設定するよう心がけてください。このいずれかが欠けると、実際の行動に移すのが難しくなります。
評価基準が統一されわかりやすくなるから
会社の中でKPIが設定されると、評価基準が統一されます。
たとえ会社全体で目標を掲げ達成しても、社員個人の評価はできません。組織内の評価基準が曖昧で、社員側が本当に納得した評価構造ができていない場合も多いです。
しかしKPIが設定されていると、会社全体の目標に対して各社員がどれくらいの進捗で、いつ達成したのかが明確になります。KPIの定量的で客観的な数値化が、公平でわかりやすい評価基準につながるのです。
【3ステップで解説】KPI設定の流れ
KPIは、目標達成のための具体的な数的指標です。つまり、大まかな目標の設定が必ず先にあり、それに向けて後から設定される存在です。
この性質を踏まえた上で、次の3ステップに分けて解説します。
KPI設定の流れ
- STEP1:「KGI=最終目標」を設定する
- STEP2:「KFS=成功のために必要な要因」を特定する
- STEP3:「KPI=中間目標」を設定する
STEP1:「KGI=最終目標」を設定する
まずは、KGI(最終目標)を設定します。会社やチームの中で何を目指すべきかを議論し、決まったKGIは必ず共有しておきましょう。
KGIは「最終目標」とはいえ、抽象的な概念ではなく、ある程度具体性をもった数値の設定が推奨されています。たとえば、営業職においては一般的に「売上高」「営業利益」「成約率」などを指標とするケースが多いです。
期間はKPIより長めで、年単位で設定するといいでしょう。
STEP2:「KFS=成功のために必要な要因」を特定する
次に、KGIからKFS(成功のために必要な要因)を特定します。KFSを特定するためにはKGI自体をよく見つめ直し、「何をしたら達成できるのか」というプロセスを熟考する必要があります。
KFSは定量的な数値よりも、定性的で具体的な行動を言語化して設定するのが一般的です。たとえば「商品の品質を上げる」「覚えてもらいやすい工夫をする」などが挙げられます。
STEP3:「KPI=中間目標」を設定する
KGIとKFSが決まったら、最後にKPI(中間目標)を設定します。導き出された各KFSの行動を意識しながら、KGI達成のために必要なKPIの数値をそれぞれ決めましょう。
たとえば「顧客訪問数20件」「アポイント30件」など、「自分が今日すべきタスク」につながるような、明確で現実的な数値の設定が求められます。
期間はKGIより短く、内容に応じて週・月・四半期・半年などの単位で設定するといいでしょう。社員が緊張感を持って仕事に取り組めるように、短く定期的に区切ると効果的です。
KPIをうまく設定するためのポイント
せっかくKPIを導入しても、何となく数値を決めてしまうと上手く機能しない可能性があります。
KPIをより有効に活用するためにも、設定する際に大切なポイントを3つ紹介します。
KPIをうまく設定するためのポイント
- 「SMARTモデル」を活用する
- 「KPIツリー」でフローを可視化する
- 複雑に考えない
「SMARTモデル」を活用する
KPIを設定する際には、「SMARTモデル」を活用しましょう。SMARTモデルとは、以下の5単語の頭文字を取った思考法を表す枠組みのことです。
- Specific=明確な
- Measurable=測定可能な
- Achievable =達成可能な
- Related=関連性がある
- Time-bound=期限がある
KPIに設定する項目は、明確かつ数値として測定できる現実的な指標で、目標に関連している必要があります。
また、適切なタイミングで仕事を進めるためにも、期限を忘れずに設定しておきましょう。
「KPIツリー」でフローを可視化する
スムーズにKPIを設定するためのポイントは、「KPIツリー」の活用です。KPIツリーとは、KGI(最終目標)からKPI(中間目標)までをツリー状に図示したものです。
通常仕事は、KGIに向かって複数のKPIが連なり形成されているため、それらを書き出すことで業務フローを可視化できます。業務フローが理解できると「効率的な作業の順番」「注意が必要な箇所」など、より適切な手段や対策が見えてくるでしょう。
KPIツリーでフローを可視化し、会社やチームの中で共有すれば認識のズレも減らせるでしょう。
複雑に考えない
複雑に考えすぎないことも、KPIをうまく設定するための秘訣です。
「確実に目標を達成するためには、あれこれ全部必要だ」と考えてしまい、さまざまな要素をKPIとして設定してしまうケースがあります。
しかし、KPIに含まれる要素が多ければ多いほど、社員は実行しづらく達成率が低下してしまいます。
同時に、KPIを基にした評価基準も複雑になり、会社全体の生産性低下や仕事の曖昧さを引き起こしかねません。KPIは可能な限りシンプルに考え、誰もが簡単に理解できる設計を心がけましょう。
KPI設定後のマネジメント方法
KPIがうまく設定できたら、そこで満足して終了ではありません。むしろ設定後のマネジメントが重要で、運用の仕方次第では現場でのKPIの効果だけでなく、会社の成長具合にも影響を及ぼします。
KPIを設定した時点では「うまく設定できた」と思っていても、実践してみると案外「関係ない指標だった」「もっと良い指標があった」という事態になるかもしれません。
そこで押さえておきたいのが、KPI設定後の適切なマネジメント方法です。
PDCAサイクルを回す
KPIは、KGI・KSFとともにPDCAサイクルを回し、一定期間ごとに改善できるような仕組みにしておきましょう。特に、PDCAの中でも重要な、CheckとActionを意識して行うのが大切です。
たとえば、毎月達成すべきKPIを設定していた場合、1ヶ月経った時点でKPIの進捗を振り返ります。その際に、KPIの指標を達成したかどうかだけでなく「本当に必要だったか」「より良いKPI項目はないか」などのCheckを併せて行います。
そこで問題がなければ来月も同じKPIを利用しますが、「効果的なKPIではなかった」という結論が出れば、KPIの修正というActionを行うべきでしょう。新しいKPIの案が出た場合は、KGI・KSFとの兼ね合いを考慮しながら追加します。
安易に「KPIの指標を全員達成したのだから問題ない」と判断しないように注意しましょう。
最初のKPIはあくまで仮説として考え、PDCAサイクルを回しながら最適化していくのが重要です。
KPIは必要に応じて修正する
KPIはPDCAサイクル内で修正しますが、外部要因で修正が必要になるケースもあります。
たとえば、競合他社の営業が活発化した際には「顧客訪問のKPI」の水準を引き上げたり、「顧客流出率」という新たなKPIを設定し、その数値を抑えるための対策を講じる必要もあるでしょう。
KPIはビジネスの環境変化に応じて、臨機応変に修正するというマネジメントが肝心です。
まとめ
KPIはビジネス目標に対し、業績を評価し管理するための指標です。社員のやるべき仕事の明確化や会社全体のモチベーションアップなどにも繋がるため、企業力を向上させるために欠かせない存在といえます。
これからKPIを導入するという会社は、本記事で紹介したポイントを押さえながら設定してみてください。
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よくある質問
KPIの定義とは?
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、「重要業績評価指標」と訳されます。
KPIは、仕事のさまざまなシーンで設定される目標に対して、業績を評価し管理するための指標のことです。
KGIとKPIの違いは?
KGIとは「Key Goal Indicator」の略称で、「重要目標達成指標」と訳されます。端的にいえば、「最終目標」を数値化した指標です。
KPIがビジネスにおける中間目標の達成度を示す「プロセス」の指標であるのに対し、KGIは最終的な目標に関する達成度を示す「ゴール」の指標である、という違いがあります。
KPIの欠点は?
KPIの欠点は、KGIを分解した要素として細かくなりすぎて、一つひとつが本質的に重要でない議論に陥りやすい点です。
また、KPIは具体的な「数値」を指標にしますが、「数値化できない定性的な要素だが、明らかに重要な項目」をKPI化できないところも欠点といえるでしょう。