人事管理の基礎知識

ハラスメントとは?職場での適切な対応方法をわかりやすく解説

ハラスメントとは?職場での適切な対応方法をわかりやすく解説

「ハラスメント」とは、職場における不適切な行動や発言を指します。

本記事では、ハラスメントの定義から具体的な種類、そして問題発生時の対処法まで詳しく解説していきます。

経営者や人事担当者は、社内教育や指導計画を立てる際に、ぜひ当記事を参考にしてください。

目次

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ハラスメントの定義とは

ハラスメント(Harassment)とは、何らかの行動や言葉によって、相手に不快感を与えることです。無視したり、脅したり、人格を否定したりするなど、いじめや嫌がらせにあたる行為全般を指します。

本人に悪意がなくても、受け取る側である相手が不快な思いをすれば、ハラスメントに該当します。

厚生労働省もハラスメント対策は事業主の義務としており、働きやすい環境づくりが大切です。

出典:厚生労働省「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です︕」

【代表的な18種】ハラスメントの種類

ハラスメントにはさまざまな種類があります。ここでは、職場で起こりやすい代表的なハラスメントを解説します。


ハラスメントの種類ハラスメントの概要
1パワーハラスメント職場での立場を利用した嫌がらせ
2セクシュアルハラスメント性的な嫌がらせ
3マタニティハラスメント
パタニティハラスメント
妊娠・出産・育児などに関して女性が受ける嫌がらせ
育児などに関して男性が受ける嫌がらせ
4ケアハラスメント介護をしている人に対する嫌がらせ
5モラルハラスメント態度や言葉で精神的な苦痛を与える行為
6ロジカルハラスメント正論を突きつけて追い詰める行為
7ジェンダーハラスメント性別を理由とした差別や嫌がらせ
8エイジハラスメント年齢や世代に関する嫌がらせ
9アルコールハラスメント飲酒に関する嫌がらせ
10時短ハラスメント労働時間の短縮を強要する行為
11リストラハラスメントリストラ対象者への嫌がらせ
12リモートハラスメントリモートワーク時に行われる嫌がらせ
13テクノロジーハラスメントIT機器に不慣れな人への嫌がらせ
14スメルハラスメントにおいによって不快感を与える行為
15スモークハラスメントタバコに関連した嫌がらせ
16音ハラスメント音によって不快感を与える行為
17ハラスメントハラスメント過剰にハラスメントだと騒ぎ立てる行為
18カスタマーハラスメント顧客や取引先といった立場を利用した嫌がらせ

パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメントは、ミスに対して人格を否定する言葉を浴びせたり、過剰な残業を求めたりするなど、労働環境を害する行為のことです。

上司から部下だけでなく、組織のなかで不利な立場にある人への言動も、パワーハラスメントに該当します。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクシュアルハラスメントは男女問わず、性的な行動や言葉が原因で、労働環境や労働条件が悪くなることです。

体に触れる・性的な話を振る・部下に交際を断られたので減給処分にする、といったことが挙げられます。

また、近年では同性間や女性から、男性へのセクシュアルハラスメントも問題視されています。

マタニティハラスメント(マタハラ)・パタニティハラスメント(パタハラ)

マタニティハラスメントは、女性社員が妊娠したことを非難したり、産前産後休業を取得せずに退職するよう促されたりすることです。

パタニティハラスメントは、男性社員の育児休業の申請を拒否したり、取得した人に嫌味を言ったりすることが挙げられます。

ケアハラスメント(ケアハラ)

介護や通院のために休みを取ることに対して嫌味を言ったり、介護休業や介護のための時短勤務を拒否したりするのがケアハラスメントです。

残業ができないといった理由で、異動や雇用形態を変更させることも該当します。

モラルハラスメント(モラハラ)

モラルハラスメントは、態度や言葉による精神的な暴力のことです。相手の人格を否定したり、無視したりといったことが該当します。

また、業務の妨害や過度なプライベートの詮索も、モラルハラスメントにあたる可能性があります。

ロジカルハラスメント(ロジハラ)

過剰に正論を振りかざして相手を言い負かし、追い詰めるのがロジカルハラスメントです。

正論であったとしても、自分が正しいと思い込んで「それは正しくない」と言ったり、相手を侮辱したりすると、ロジカルハラスメントにあたります。

ジェンダーハラスメント

ジェンダーハラスメントは「男性だから」「女性だから」などと、性別を理由に行動を制限したり押しつけたりすることです。

特定の役割や業務を男女のどちらかに対応させる、LGBTQに関連した嫌がらせをするといったことも該当します。

エイジハラスメント(エイハラ)

エイジハラスメントは若い社員に「仕事ができない」と言ったり、役職についていない中高年の社員に嫌味を言ったりすることです。

また、年齢を理由に特定の業務を割り振るのも、エイジハラスメントに該当する可能性があります。

アルコールハラスメント(アルハラ)

職場の飲み会で無理に飲酒させようとしたり、一気飲みさせようとしたりする行為はアルコールハラスメントです。

自分が酔った状態で必要以上に絡んだり説教したりするのも、アルコールハラスメントとみなされる可能性があります。

時短ハラスメント(ジタハラ)

業務量の調整といった具体的な対策を講じないまま、一方的に社員に定時で帰るよう強要したり、残業を禁止したりすると時短ハラスメントになります。

人手が足りずに残業している社員に嫌味を言うのも該当します。

リストラハラスメント(リスハラ)

リストラの対象者となった社員に仕事を与えない、膨大な量の業務を押しつける、不当な異動をさせるなどして、自主退職に追い込む行為はリストラハラスメントです。

リストラ対象者へのパワハラ・モラハラであるともいえます。

リモートハラスメント(リモハラ)

リモートハラスメントは、リモートワーク(在宅勤務)時のオンライン会議やチャット上でのやりとりなどで、相手を不快にさせることです。

バーチャル背景の利用禁止、業務時間外の必要以上な連絡、しつこくオンライン飲み会に誘うといった行為が該当します。

テクノロジーハラスメント(テクハラ)

PCやタブレット、スマートフォンなどのIT機器の操作が不慣れ・苦手な人に対する嫌がらせを、テクノロジーハラスメントといいます。

作業が遅いことに対する嫌味や、あえてITに関する専門用語を使って混乱させるような行為も該当します。

スメルハラスメント(スメハラ)

スメルハラスメントは香水や柔軟剤の強い香り、タバコのにおい、体臭・口臭などで相手を不快にさせる行為のことを指します。

スメルハラスメントは、本人が自覚していないケースも多いのが特徴です。

スモークハラスメント(スモハラ)

スモークハラスメントは、喫煙しない人の前でタバコを吸ったり、無理にタバコを吸わせようとしたりすることです。

タバコくさい場所や、喫煙者の多い環境に連れて行くなど、喫煙者が非喫煙者を不快にさせる行為全般が該当します。

音ハラスメント(音ハラ)

話し声が大きい・舌打ちをする・くちゃくちゃ音を出して食べるなど、音によって不快にさせる行為が音ハラスメントです。

周囲に迷惑をかけていることに気づいていないケースも多いようです。

ハラスメントハラスメント(ハラハラ)

自分が不快だと感じたことに対して、過剰にハラスメントだと主張して騒ぎ立てる行為がハラスメントハラスメントです。

業務上必要で適切な助言に対してパワハラだと言ったり、職場の飲み会に誘ったことに対してセクハラだと言ったりすることが挙げられます。

カスタマーハラスメント(カスハラ)

カスタマーハラスメントは、顧客や取引先などからの理不尽なクレーム、不当な言いがかりといった行為です。

商品やサービスに問題がなかったにもかかわらず、クレームをつけて金銭を要求することなどが挙げられます。

カスタマーハラスメントの詳細については、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」も参照してください。

企業では特に気をつけたい「パワハラ」に関する知識

厚生労働省が令和2年に実施した調査によると、過去3年以内にパワハラを受けたことがあると回答した人は31.4%にのぼります。さまざまなハラスメントのなかでも、特にパワハラ対策が重要だといえるでしょう。

出典:厚生労働省「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です︕」

パワハラと認定される3つの要素

厚生労働省は、職場でのパワーハラスメントについて以下のように定義しています。

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。

出典:厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」

なお、同指針では「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」ともしています。

令和2年6月1日より、「パワーハラスメント防止措置」が事業主の義務となりました(中小事業主は令和4年4月1日から)。

上記の3つの要素について、事業主も労働者も関心と理解を持つことが重要です。

パワハラの相談件数・SNSでの告発件数は年々増加している

「パワーハラスメント防止措置」が義務化されたものの、パワハラの相談件数は年々増加しています。厚生労働省の調査によると、令和4年度の相談件数は、前年度より2万7,474件増の5万840件でした。

出典:厚生労働省「「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します」

近年、SNSの普及により、職場でのハラスメントをSNSで告発するケースも増えています。SNSは広く拡散できることから、内容によっては社会的に注目を集める可能性もあります。

企業の評判や株価・業績に大きなダメージを与える可能性もあるため、社員に信頼される相談窓口の設置や、体制の強化が必要でしょう。

企業がハラスメント対策をするべき理由

企業がハラスメント対策をすべき背景には、どのようなものがあるのでしょうか。

理由を2つ紹介します。

法改正によりパワハラ防止の措置を講じることが事業主の義務となったから

パワーハラスメント防止措置が法制化され、令和2年6月1日より雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。

具体的には、以下の措置を必ず講じなければならないとしています。

パワハラ防止の措置

  • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

また、そのほか併せて講ずべき措置として、相談者・行為者のプライバシーを保護する、相談したことを理由に不利益な扱いをされないといった内容を挙げています。

法改正の詳細については、厚生労働省の以下の資料を参照してください。

出典:厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年6月5日公布)の概要」
出典:厚生労働省「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」

企業経営に悪影響が出るから

ハラスメントは、企業経営にも大きな影響を及ぼします。社員が企業へ不信感を抱くだけでなく、以下のような悪影響が考えられるためです。

  • メンタル面の不調につながる
  • 業務の効率が低下する
  • 退職者が増える
  • 企業のイメージや信頼が低下する

また、前述したように、SNSでのパワハラ告発も増加傾向にあります。

告発者の発信内容が社会的に注目を集めると、企業への悪影響は避けられないでしょう。

企業が取り組むべきハラスメントを防ぐための3つの施策

ハラスメントを防ぐために、企業は具体的にどのような対策をすればよいのでしょうか。

企業が取り組むべき3つの施策は以下の通りです。

ハラスメントを防ぐための3つの施策

  • ハラスメントの相談窓口を用意する
  • 会社としてのハラスメントへの対応を周知させる
  • ハラスメントに関する教育・研修を取り入れる

それぞれ解説します。

ハラスメントの相談窓口を用意する

ハラスメントに関する相談窓口の設置を検討しましょう。社内で問題が生じたときに、すぐに相談できる体制づくりが重要です。

また、相談窓口を用意して終わりではなく、利用方法もきちんとアナウンスしておきましょう。

会社としてのハラスメントへの対応を周知させる

会社としてどのようにハラスメントに対応するのかを、社内へ周知させることも重要です。

ポスターの掲示や朝礼での注意喚起など、全社員に周知できるような工夫も必要でしょう。

ハラスメントに関する教育・研修を取り入れる

ハラスメントを防ぐには、ハラスメントの定義や具体例を伝えるなど、ハラスメントについての教育も必要です。ハラスメントに関する研修を実施し、社内の方針も発信すると有効でしょう。

一方で「今のはハラスメントかもしれない」と、社員が必要以上にハラスメントを意識してしまう可能性もあります。社員同士の信頼関係を築けるような工夫も大切です。

ハラスメントが起きてしまった場合の対処法

社内でハラスメントが起きてしまったときの対処法は、主に以下の5つです。

ハラスメントが起きてしまった場合の対処法

  • 被害者の話を十分に聞く
  • 加害者とされる人の話を聞く
  • 懲戒処分が必要かどうかを検討する
  • 解雇処分が必要かどうかを検討する
  • 再発防止に向けた施策を考える・実施する

ひとつずつ見ていきましょう。

被害者の話を十分に聞く

ハラスメントが起きてしまった場合、事実確認が必要です。まずは被害者の話を十分に聞きましょう。

被害者への聞き取り内容は、以下のようなことが挙げられます。

被害者への聞き取り内容

  • ハラスメントの詳細(加害者・日時・場所など)
  • 被害の状況(心身への影響・仕事への影響など)
  • 職場の状況(普段の雰囲気など)
  • 証拠の有無(目撃者や物的証拠など)

また、加害者とされる人への聞き取り、被害者が望む解決策も確認しておきましょう。

被害者には真摯に耳を傾けて対応する必要がありますが、訴えられた行為が業務上必要な範囲での指導の可能性もあるため、客観的に捉えることが大切です。

加害者とされる人の話を聞く

被害者への了承を得たら、加害者とされる人からも話を聞きます。

以下の手順で対話しましょう。

  • 被害者からの相談内容を伝える
  • 事実関係を確認する
  • 被害者への報復、当事者間での話し合いを禁止する
  • 会社としての方針を明らかにする

加害者とされる人への聞き取りは、一方的に決めつけないことが大切です。あくまで調査の段階であり、客観的に双方から事実を確認するという意識を持ちましょう。

懲戒処分が必要かどうかを検討する

事実確認に基づいて調査し、ハラスメントが認められた場合は、加害者に対して処分が必要かを検討します。

懲戒処分には、戒告・減給・出勤停止・降格・懲戒解雇などがあります。

安易に処分せず、ハラスメントの内容や回数・被害者が受けた被害の程度・業務への影響・加害者の反省の有無などを総合的に判断し、検討しましょう。

解雇処分が必要かどうかを検討する

解雇処分が必要かどうかも十分な検討が必要です。加害者が反省しているにもかかわらず、安易に重い処分をくだすと、不当解雇となる可能性もあります。

トラブルを防ぐため、弁護士に相談するのもひとつの方法です。

再発防止に向けた施策を考える・実施する

ハラスメントが起きてしまったら、当事者への対応とともに、再発防止のための取り組みが必要です。当事者間だけでなく、社内全体の問題としてとらえなければなりません。

具体的には、ハラスメントの事実を周知する、再発防止の目的で研修を行うといったことが挙げられます。

すべての社員が「ハラスメントを二度と起こさない」と、自分ごととしてとらえられるような施策を考え、実施しましょう。

まとめ

ハラスメントは、何らかの行動や言葉によって相手に不快感を与えることです。いじめや嫌がらせにあたる行為全般を指し、本人に悪意がなくても相手が不快な思いをすれば、ハラスメントに該当します。

現在はハラスメント対策が事業主の義務となっていますが、いまだパワハラの相談件数は増加傾向です。

事業主も社員もハラスメントについてきちんと理解し、働く人々の能力が十分に発揮されるような環境をつくることが重要だといえるでしょう。

よくある質問

ロジハラとはどういうもの?

ロジハラとはロジカルハラスメントのことで、正論を振りかざして相手を追い詰める行為を指します。

実際に正論であったとしても、相手に「それは正しくない」と言ったり、侮辱したりするような発言はロジハラに該当します。

精神的に追い詰めるハラスメントとは?

精神的に追い詰める行為は、モラルハラスメント(モラハラ)にあたります。

相手の人格を否定したり無視したりするなど、態度や言葉で追い詰めるため、「精神的な暴力」ともいわれます。

精神的に追い詰めるハラスメントとは?

精神的に追い詰める行為は、モラルハラスメント(モラハラ)にあたります。

相手の人格を否定したり無視したりするなど、態度や言葉で追い詰めるため、「精神的な暴力」ともいわれます。

カスハラと判断する基準は?

カスハラと判断する基準に明確な定義はありません。業界や企業によって、その基準は異なるためです。

一般的には、商品やサービスへの不当な言いがかりや、過剰な要求といった迷惑行為がカスハラに該当します。