「古物商」とは、古物営業法に規定される古物を売買または交換する個人や法人のことです。
古物商として営業を行うには、営業所を管轄する都道府県公安委員会(窓口は警察署)に古物商許可を申請する必要があります。
本記事では、古物商許可の申請における流れや期間の目安、必要書類について解説します。古物商許可の申請が必要な品目や注意点などを知りたい方は、別記事「中古品販売に必要な「古物商許可」とは?対象となる品目や注意点を解説」を参照してください。
目次
古物商許可の申請は営業所の用意から
古物商許可の申請書類には、営業所の名称・所在地・営業所に選任された管理者を記載する必要があり、記載がない場合は許可が下りません。
そのため申請を行うにあたっては、まず古物商を営むための営業所を1ヶ所以上用意する必要があります。インターネット上のみで古物商を営む場合にも、営業所は必須です。
営業所とする物件は、自身が所有する物件、もしくは借りている物件でなければなりません。営業所の名称は屋号と一致しなくても問題なく、営業所に選任された管理者は事業主が兼ねることも可能です。
自宅を営業所として使用することも可能ですが、賃貸物件の場合、賃貸借契約書の写しや貸主が署名・押印した使用承諾書の提出を求められる場合があります。申請を行う前に、あらかじめ貸主に相談し、古物商許可の申請に関して内諾を得ておくと安心です。
なお、営業所には所轄警察署の警察官が盗品の調査のために立ち入り検査をするケースがあることも覚えておきましょう。
古物商申請の流れと期間の目安
申請から古物商許可証の交付までは土日を除き、およそ40日程度かかります。
また、申請には19,000円の手数料が必要です。手数料を納付するタイミングは管轄の警察署によって異なるため、心配な場合はあらかじめ問い合わせておきましょう。また、申請手数料のほかに、住民票や営業所として使用する建物の登記事項証明書などの添付書類を発行する際にも手数料がかかります。
上記の申請の流れに沿って、それぞれの手順を以下で詳しく解説します。
STEP1:申請書類を準備する
古物商申請を行うにあたって、所定の申請書のほかに、別途提出を求められる添付書類があります。また、個人による申請か、法人による申請かによって必要書類が異なります。
必要書類リストを配布している警察署もあるので、その場合はリストを参照することをおすすめします。
法人で古物商申請を行う場合は、法人の役員全員分と営業所の管理者の「住民票」や「身分証明書」が必要です。構成員の多い法人の場合は、書類の準備に時間がかかることが想定されるため、早めに行動することを心がけましょう。
個人と法人、それぞれ申請を行う場合に必要な書類は下図の通りです。それぞれの書類の書き方については、本記事の後半で詳しく解説します。
必要書類 | 個人で申請する場合 | 法人で申請する場合 |
古物用許可申請書一式 | 必要 | 必要 |
誓約書 | 要本人・管理者 | 役員全員・管理者 |
略歴書 | 本人・管理者 | 役員全員・管理者 |
住民票 | 本人・管理者 | 役員全員・管理者 |
身分証明書 | 本人・管理者 | 役員全員・管理者 |
登記事項証明書 | 土地・建物の登記簿謄本 | 履歴事項全部証明書 |
定款の写し | 不要 | 奥書きしたもの |
STEP2:管轄の警察署で申請手続きを行う
申請書類の一式が揃ったら、営業所を管轄する警察署で申請手続きを行います。事前連絡なしでも申請はできますが、提出書類の不足や記入内容の不備が発生したり、担当者が不在にしていたりする可能性を考慮し、事前に問い合わせて提出の予約をしておくほうが安心です。
土日祝日は閉庁日なので申請ができません。平日に行けない場合は、家族に持って行ってもらうか、行政書士に依頼をしましょう。
提出書類は、作成日付が申請日から3ヶ月以内でなければいけません。せっかく用意した申請書が無効とされないように、書類一式が揃った段階で、早めに手続きを行うことをおすすめします。
そのほかの持ち物についても、念のため申請前に確認してください。都道府県によっては、追加の添付書類が必要になるケースがあります。
また、提出書類は、原本と二通の写しを用意しておきましょう。原本と写し一通は提出用、もう一通の写しは自分で保管しておくためのものです。許可証には申請品目が記載されないため、申請書の控えを持っていると、後々確認がしやすくなります。
提出書類に不備があった場合は、窓口で訂正を求められる場合があります。本人もしくは代理人の行政書士が行く場合は問題ありませんが、家族などが行く場合はその場での訂正ができないことがあるため要注意です。
また、管轄する警察署によっては、申請のタイミングで手数料19,000円の納付を求められる場合があります。納付形式についても、現金もしくは県の証紙を購入するケースがあるため、事前に確認しておくとスムーズです。
STEP3:都道府県公安委員会による審査
申請書が受理されたあと、審査期間は土日を除く40日程度です。場合によっては2ヶ月ほどかかる可能性があるため、余裕をもって申請してください。
STEP4:古物商許可証の交付
審査が完了したら、警察署から連絡があり、古物商許可証が交付されます。許可証は管轄の警察署まで受け取りに行く必要があります。
受け取りの際には、以下のものを持参しましょう。
古物商許可証の受け取り時に持参するもの
- 法人代表者印(法人代表者が受け取る場合に必要)
- 認印
- 運転免許証や保険証などの身分証
- 委任状(法人代表者以外が受け取る場合に必要)
古物商許可の申請に必要な書類の書き方
古物商許可の申請時に必要な書類の書き方について解説します。書類に不備があると、手戻りが発生し、申請の許可がおりるまでに時間がかかる可能性がありますので、記入ミスがないよう注意して必要事項を埋めていくことが大切です。
古物商許可申請書一式
古物商許可申請書の様式は、各都道府県警察のホームページからダウンロードが可能です。警察署の生活安全課などでの配布も行っています。
警察署で配布されている申請書様式を使う場合、記入ミスがあった場合を想定して、入手した申請書はあらかじめコピーを取るなど、予備を用意することをおすすめします。
古物商許可申請書は個人・法人の申請にかかわらず提出が必要な書類です。個人申請の場合は3枚、法人申請の場合は4枚から構成されます。
対象 | 必要な古物商許可申請書 | |
個人・法人 | 全員 |
・別記様式第1号その1(ア)(第1条の3関係)
・別記様式第1号その2(第1条の3関係) |
営業所が複数ある場合 | ・別記様式第1号その3(第1条関係) | |
ホームページ上で古物の買い取りや販売等を行う場合 | ・別記様式第1号その4(第1条の3関係) | |
法人のみ | 別記様式第1号その1(イ)(第1条の3関係) |
別記様式第1号その1(ア)(第1条関係)に「行商をしようとする者であるかどうかの別」という記載項目がありますが、基本的には「する」を選択することをおすすめします。
「行商をしない」を選択してしまうと、営業所以外での古物の買取・販売が一切できなくなります。「行商をする」を選択しても、何らかの義務やデメリットが生じることはないので、インターネットでのみ古物商を行うというケースでも基本的には「行商をする」を選択しましょう。
法人のみ提出が必要な「別記様式第1号その1(イ)」は、法人役員に関する情報を記載する書類です。役員全員の役職や名前・住所などを記載します。1枚につき3名までの記入欄が用意されているため、役員が4名以上存在する場合は複数枚の提出が必要になります。
誓約書
誓約書も、個人・法人にかかわらず申請時に必要な書類です。各都道府県警察のホームページからPDF形式でダウンロードが可能です。個人申請と法人申請の場合で書類のフォーマットが異なるため、間違えないように注意してください。
誓約書には、個人用・法人用・管理者用の3種類があります。個人事業主で、事業主と営業所の管理者を同じ人物が兼ねる場合は、1人の名前で「個人用」と「管理者用」の2種類にそれぞれ記入します。
誓約書は古物商許可を申請できない要件(=欠格要件)に当てはまらないことを証明する書類であり、万が一欠格要件に1つでも当てはまる場合はそもそも申請することができません。
欠格要件は古物営業法第四条に定められています。これらの要件に当てはまることはないか、よく誓約書の文面を読み、問題がなければ最下部の署名欄に必要事項を記入しましょう。
自分以外が管理者になる場合においても、万が一欠格要件に当てはまると申請が通らないため、誓約書をしっかり読み込んでもらい、該当する項目がないか念入りに確認するようにしてください。
略歴書
略歴書は、いわゆる履歴書のようなもので、過去5年間の経歴について記載する書類です。いつからいつまで、どこで働いていたか、何をしていたかなどを記入し、個人・法人にかかわらず申請時に提出が求められます。
個人申請の場合は「本人と管理者」、法人申請の場合は「役員全員と管理者」の分を用意する必要があります。なお、個人申請においては、本人と管理者が同一である場合は一枚提出すれば問題ありません。
略歴書の書式については、警察署によってホームページからデータをダウンロードできる場合もありますが、書式に指定があるかどうかは事前に問い合わせておくことをおすすめします。
住民票
住民票は、個人・法人にかかわらず、古物商許可の申請時に必要な書類です。本籍地が記載されたものでなければならないため、発行する際に間違わないようにしましょう。
住民票は、居住地の市区町村役場で申請・発行できます。マイナンバーカードがあれば、自分自身や家族の住民票はコンビニなどでも発行できるため、市区町村役場が閉じている時間帯でもすぐに入手できます。
個人申請の場合は「本人と管理者」、法人申請の場合は「役員全員と管理者」の分を用意する必要があります。なお、個人申請においては、本人と管理者が同一である場合は一枚提出すれば問題ありません。
身分証明書
身分証明書は、一般的にいわれる「身分証」として使われるパスポートや運転免許証などではなく、本籍地の市区町村にて申請・発行できる書類のことを指します。
住民票のある市区町村ではなく、本籍地の市区町村での発行されるものですので、遠隔地の場合は郵送申請になります。郵送申請の場合は、発行までに時間がかかることを想定しておきましょう。
身分証明書は破産者ではないことを証明する書類であり、個人申請・法人申請にかかわらず提出が必要です。個人申請の場合は「本人と管理者」、法人申請の場合は「役員全員と管理者」の分を用意する必要があります。なお、個人申請においては、本人と管理者が同一である場合は一枚提出すれば問題ありません。
登記事項証明書
登記事項証明書とは、登記事項が記載された帳簿データである登記記録の写しのことです。個人・法人にかかわらず申請時に必要な書類であり、3ヶ月以内に発行したものを提出しなければなりません。
個人の場合は土地や建物の所在地や面積などが記載された「土地・建物の登記簿謄本」、法人の場合は代表者や役員の情報、資本金、設立年月日などが記載された「履歴事項全部証明書」が必要です。
登記事項証明書は法務局もしくは出張所で申請すれば、発行できます。郵送やインターネット上での交付申請も可能です。
インターネット上で交付申請する場合は、法務省のホームページ上の「かんたん証明書請求」が便利です。
ネットバンキングでの支払いも可能なので、申請後に支払いをすれば待ち時間なく証明書を受け取ることができ、自宅などへの郵送も可能です。窓口で直接請求するよりも、インターネット上で交付請求をした方が安く済みます。
なお、役員の変更などがあり、記載内容の更新が必要な場合は、法務局での変更手続きが完了し、登記事項証明書が発行されるまでは古物商許可の申請はできません。
通常、登記が完了するまでには一定の日数がかかります。法務局や出張所、それぞれ業務にかかる日数は異なるので、急いでいる場合はあらかじめ完了目安を確認することをおすすめします。
定款の写し(法人のみ)
定款(ていかん)とは、設立会社の根本規則を定めた書類です。定款を見れば、どのような目的のもと成り立っている法人なのかがわかります。
定款は、その法人が古物の売買を事業として行う意思があることを示すために、提出が求められます。定款の目的に入っていない活動は行うことができないため、定款の目的の中に「古物商」などの文言が含まれている必要があります。
定款はコピーを提出すれば問題ありません。ただし、法人の代表者による原本証明として、「このコピーは原本の内容に間違いない」という旨の文言(奥書)を最終ページに赤字で記載しなくてはなりません。
奥書の記載方法に特に決まりはありませんが、以下を参考にしてください。
以上、原本に相違ありません。
令和 〇 年 〇 月 〇 日
株式会社□□□□
代表取締役 △△ △△ 印
定款を変更している場合は、設立時の定款ではなく、現行定款(現在の定款)の写しを提出します。その場合は、次のように記載してもよいでしょう。
以上、当社の現行定款に相違ないことを証明いたします。
令和 〇 年 〇 月 〇 日
株式会社□□□□
代表取締役 △△ △△ 印
まとめ
古物商許可を申請する場合は、申請書や添付書類の用意が必要であり、申請後も審査・許可証の交付までに一定の期間がかかります。古物商許可なしで中古品の売買やレンタルを行うことはできないため、個人・法人にかかわらず、スケジュールに余裕を持って準備をするようにしましょう。
また、無用な手戻りを防ぐために、あらかじめ管轄の警察署に問い合わせるなどして、必要な書類や流れを確認しておくことをおすすめします。
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