公開日:2023/06/28
建設業許可とは、軽微な工事を除く建設業を営む場合に取得する必要がある許可のことです。許可の申請には一定の取得要件が定められており、工事の種類などによっても取得すべき許可や申請方法が異なります。
本記事では建設業許可について、取得要件や種類、手続きを含めた知っておくべき基礎知識を解説します。
目次
建設業許可とは
建設業許可とは、建設業を営む事業者が取得しておく必要がある許可のことです。ただし、軽微な建設工事に該当する場合のみ、建設業許可がなくても工事が可能とされています。
大臣許可と知事許可の違い
建設業許可には、大臣許可と知事許可の2種類があり、営業所の置き方の違いによって区別されています。
営業所を一つの都道府県に置く場合は知事許可、営業所を複数の都道府県に置く場合は大臣許可が必要です。複数の営業所があっても、すべて一つの都道府県内に設置するのであれば、知事許可のみの取得で問題ありません。
また、大臣許可と知事許可を問わず、営業する地域についての制限はありません。あくまで、営業所の場所を都道府県をまたいで設置するのかどうかによる違いです。
なお、工事現場の事務所や資材置き場の所在地は問われません。
建設業許可を受けなくてよいケース
許可が不要なケースは以下のとおりです。
軽微な建設工事 |
① 1件の請負代金が 1500万円未満の工事
② 請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延面積が 150 ㎡未満の工事(主要部分が木造で、延面積の1/2以上の居住に供するもの) |
建築一式工事以外の建設工事 | 1件の請負代金が500万円に満たない工事 |
建設業法施行令第1条の2「建設業法第3条第1項ただし書の軽微な建設工事」に規定があり、「軽微な建設工事」は許可が要りません。
「軽微な建設工事」とは、1件の請負代金が1,500万円未満の場合や、延べ面積が150㎡未満の居住用木造住宅のことをいいます。こうした工事は、建設業法施行令の規定により、許可は必要ありません。また、延べ面積が150㎡未満の木造住宅の場合は、請負代金にかかわらず許可不要です。
請負代金の計算方法について、 注文者が材料を提供する場合は、その価格および運送賃を契約の請負代金に加えて判断することになります。
出典:e-gov「建設業法施行令第1条の2」
建設業許可には有効期限がある
建設業許可を維持し続けるためには、更新が必要です。許可日の翌日から5年間の有効期間があります。
建設業許可を維持したい場合は、有効期間が切れる前までに更新する必要があります。有効期間の最終日が土日祝日でも、有効期間は変わりません。
また、更新する場合は、許可期間が満了する日の30日前までに申請が必要です。更新時には改めて許可の取得要件を満たしているかを再確認しましょう。
建設業許可を取得するための要件
建設業許可は「一般建設業」と「特定建設業」に分類され、下請け契約の有無と工事契約の規模によっては、特定建設業の許可が必要になります。
発注者から直接請け負った1件の工事代金について、4,500万円(建築工事業の場合は7,000万円)以上となる下請け契約を締結する場合、「特定建設業」の許可が必要です。
下請け契約の締結における金額は、令和5年1月1日施行の建設業法施行令により、建築工事業の場合は6,000万円だった要件が7,000万円に、それ以外の場合は4,000万円だった要件が4,500万円に引き上げられました。
発注者から直接請け負う請負金額については、一般・特定にかかわらず制限はありません。
つまり、発注者から直接請け負った1件の工事が比較的規模の大きな工事である場合でも、その大半を自社で直接施工する場合など、常時、下請け契約の総額が4,500万円未満であれば、一般建設業の許可で足ります。
また、これらの下請け金額の制限は、発注者から直接請け負う建設工事(建設業者)に対するものです。下請負人として工事を施工する場合には、このような制限を受けることはありません。
建築業許可を取得するためには以下の4つの要件を満たす必要があります。それぞれについて詳しく解説します。
建設業許可を取得するための要件
- 建設業務の管理責任者を設置する必要がある
- 専任技術者を設置する必要がある
- 安定した財産を保有している
- 欠格事由に当てはまらない
経営業務の管理責任者を設置する必要がある
まず、経営業務の管理責任者を常勤で設置することが求められます。管理責任者は誰でもよいわけではなく、任命できる人材の要件が以下のとおり決められています。
管理責任者の要件
- 建設業に関し、管理責任者として5年以上の経験がある
- 建設業に関し、管理責任者に順じる立場で5年以上経営業務の管理を行った経験がある
- 建設業に関し、管理責任者に順じる立場で6年以上管理責任者を補佐する業務を行った経験がある
- 建設業に関し、2年以上役員などの経験があり、かつ、5年以上、役員などの立場で常勤役員などを直接補佐する役割として財務管理や労務管理、運営業務に携わった経験がある
- 5年以上役員などの経験があり、かつ、建設業に関し、2年以上役員などの立場であり、常勤役員などを直接補佐する役割として財務管理や労務管理、運営業務に携わった経験がある
なお、ここでいう「役員」とは、以下を指します。
- 株式会社または有限会社の取締役
- 指名委員会などを設置する会社の執行役
- 持分会社の業務を執行する社員
- 法人格のある各種組合などの理事
なお、管理責任者の設置は許可の要件であるため、選任した管理者が退職などによって不在となった場合は新任者を置かなければなりません。
管理責任者が辞めてしまったために不在となる期間がないように、あらかじめ新任の候補を決めておく必要があります。
専任技術者を設置する必要がある
建設業を営み、建設工事を請け負うにあたっては、請負契約の締結をはじめ、見積もりや入札への適正な対応など、建設業特有の専門的知識が不可欠です。そのため、一定の資格や経験を持つ常勤の専任技術者の設置が求められます。
専任技術者の要件は、許可を取得したい建設業が一般建設業と特定建設業のどちらに該当するか、また建設業の種類によっても異なります。
一般建設業の場合
許可を取得したい建設業の建設工事において、高校卒業後5年以上もしくは大学卒業後3年以上の実務経験があり、在学中に指定学科を修了している人が専任技術者に該当します。
もしくは専門学校で指定学科を修了し、卒業後5年以上、許可を取得したい建設業の建設工事において実務経験がある人も当てはまります。
専門学校卒業後5年経っていない場合は、専門学校で指定学科を修了し、卒業後3年以上、許可を取得したい建設業の建設工事において実務経験があり、専門士または高度専門士を称する人であれば要件を満たします。
そのほか、以下に該当する場合も専任技術者として認められます。
- 許可を取得したい建設業の建設工事において10年以上の実務経験がある人
- 国家資格者
なお、指定学科や複数業種に当てはまるものは「指定学科一覧」、該当する国家資格は「営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧」を参照してください。
特定建設業の場合
一般建設業と同じく、国家資格者であれば特定建設業の専任技術者の要件を満たします。
国家資格を保有していない場合、一般建設業における専任技術者の要件を満たしたうえで、指導監督的な実務経験が2年以上あれば、特定建設業の専任技術者として認められます。
指導監督的な実務経験とは、建設工事の設計や施工の全般にわたって、工事現場主任や現場監督者のような資格で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。
許可を取得したい建設業において発注者から直接4,500万円以上の代金で工事を請け負い、その工事において2年以上の指導監督的な実務経験があることが要件です。
上記のいずれにも当てはまらない場合でも、大臣特別認定者であれば、特定建設業の専任技術者の要件を満たします。
大臣特別認定者とは、指定建設業7業種に関して、過去に特別認定講習を受け、当該講習の効果評定に合格した人、もしくは国土交通大臣が定める考査に合格した人のことです。
ただし、指定建設業の許可を取得したい場合は、国家資格者もしくは大臣特別認定者のいずれかの要件を満たす必要があります。
指定建設業は、建設業法施行令第5条の2において、次の7業種が該当すると定められています。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
安定した財産を保有している
経済的な要件については、取得すべき許可が一般建設業と特定建設業のどちらに該当するかによって異なります。
一般建設業の財産要件
- 自己資本の額が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力を証明できること
- 許可申請直前の5年間、許可を受けて営業していたこと
特定建設業の財産要件
- 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
欠格要件に当てはまらない
欠格要件に該当すると、他の要件を満たしていても建設業許可を得ることはできません。欠格要件は、建設業法第8条、同法第17条に規定されています。
簡単に説明すると、自己破産をして復権していない場合や犯罪歴がある場合、虚偽の内容を申請したり、重要な事項を書かずに申請したりした場合は欠格要件に該当します。
犯罪歴については、建設業許可申請を受けた行政庁が、役員や従業員を含めて調査します。調査対象が従業員にまで及ぶうえに、刑罰が消滅してから5年間経過していない人がいる場合も欠格要件とみなされるため雇用時には十分に確認するようにしましょう。犯罪歴や自己破産歴は、隠しても調査によってすぐに明らかになってしまいます。
建設業許可の対象となる29業種
建設業の許可は、建設工事の種類ごと(業種別)に行います。
建設工事は、土木一式工事と建築一式工事の2つの一式工事と、27の建設工事に分かれており、以下のとおり計29の種類に分類されます。
建設工事の種類 | 工事の内容 |
---|---|
土木一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事 |
建築一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 |
大工工事 | 木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に 木製設備を取付ける工事 |
左官工事 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事 |
とび・土工 ・コンクリート工事 | ・足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物のクレーン 等による運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事 ・くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事 ・土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事 ・コンクリートにより工作物を築造する工事 ・その他基礎的ないしは準備的工事 |
石工事 | 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の 加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取 付ける工事 |
屋根工事 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 |
電気工事 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 |
管工事 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備 を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 |
タイル・れんが ・ブロツク工事 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又ははり付ける工事 |
鋼構造物工事 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 |
鉄筋工事 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 |
舗装工事 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 |
しゆんせつ工事 | 河川、港湾等の水底をしゆんせつする工事 |
板金工事 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製 等の付属物を取付ける工事 |
ガラス工事 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 |
塗装工事 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 |
防水工事 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工 事 |
内装仕上工事 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、 カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 |
機械器具 設置工事 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事 |
熱絶縁工事 | 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 |
電気通信工事 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備等の電気通信設備を設置する工事 |
造園工事 | 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地 等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事 |
さく井工事 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 |
建具工事 | 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 |
水道施設工事 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 |
消防施設工事 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 |
清掃施設工事 | し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事 |
解体工事 | 工作物の解体を行う工事 |
出典:国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方」
許可の取得は、これらの建設工事の種類ごとに行わなければなりません。許可の取得は同時に2つ以上の業種にわたっても可能で、すでに取得している許可業種から追加して取得することもできます。
建設業許可の手続きに必要なこと
許可の手続きには、以下の4つが必要です。それぞれについて解説します。
- 申請先を確認する
- 許可申請区分を確認する
- 許可申請書と必要書類を用意する
- 手数料を納入する
申請先を確認する
申請先は、知事許可を取得するか、大臣許可を取得するかによって異なります。
知事許可の取得は各都道府県庁、大臣許可の取得は国土交通省の各地方整備局へ申請する必要があります。
都道府県ごとの許可行政庁と問い合わせ先については、「許可行政庁一覧表」を参照してください。
許可申請区分を確認する
前述のとおり、建設業許可には「知事許可か大臣許可か」「一般建設業か特定建設業か」「該当する工事の種類はどれか」など、さまざまな区分があります。
申請すべき許可がどの区分に当てはまるかを確認したのち、手続きを進めましょう。
許可申請書と必要書類を用意する
許可申請書の様式と、その他の必要書類については、国土交通省のページから確認ができます。
特に、取得要件を満たしているかを判断するための証明書類は、ケースによって異なり複雑です。申請先の行政庁に一度問い合わせてみることをおすすめします。
手数料を納入する
建設業許可の申請時には、指定の手数料を納付してください。
知事許可と大臣許可のどちらに該当するか、また一般建設業と特定建設業を両方同時に申請するか、どちらか片方のみなのかによって金額に差があります。
知事許可 | 一般か特定のどちらか一方のみ | 手数料9万円 |
一般と特定を両方同時に申請 | 手数料18万円 | |
大臣許可 | 一般か特定のどちらか一方のみ | 登録免許税15万円 |
一般と特定を両方同時に申請 | 登録免許税30万円 |
まとめ
比較的規模の大きな工事を請け負う場合や下請けを発注する場合などは、建設業許可を取得する必要があります。
ただし、取得要件を満たすことが証明できなければ取得が難しいため、要件をよく確認したうえで入念に準備を進めることをおすすめします。
よくある質問
建設業許可とは?
建設業を営み、比較的規模の大きい工事を請け負いたい場合に必要な許可です。建設業法施行令に定められた「軽微な工事」以外の工事を行うには、建設業許可が欠かせません。
詳しくは記事内「建設業許可とは」をご覧ください。
建設業許可を取得する要件は?
経営業務の管理責任者や専任技術者の設置、保有財産、失格事由などの要件があります。これらのうち、どれか1つでも要件を満たさないと判断された場合、建設業許可を取ることはできません。
詳しくは記事内「建設業許可を取得するための要件」をご覧ください。
建設業許可の対象となる建設業の種類は?
建設工事は、土木一式工事と建築一式工事の2つの一式工事を含む、計29の種類に分類されます。建設業の許可は、建設工事の種類ごと(業種別)に行います。
詳細な種類に関しては記事内「建設業許可の対象となる29業種」をご覧ください。