黒ナンバーとは、黒地に黄色い文字でナンバーが書かれているナンバープレートのことです。軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)を行う事業者は、この黒ナンバーを付けて事業を運営しなければなりません。
本記事では、これから貨物軽自動車運送事業を始める事業主のために、黒ナンバーの取得方法や要件、発生する費用・保険料について解説します。
目次
黒ナンバーとは
黒ナンバーとは、軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)を行う車両に取り付けるナンバープレートのことを指します。黒ナンバーを取得しなければ軽貨物運送事業を営むことはできません。
なお、黒ナンバーを取得できる車種は、軽自動車の中でも軽貨物車(=4ナンバー)に限られます。いわゆる「軽バン」と呼ばれる車両や、軽トラックが軽貨物車にあたります。
軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)とは
軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)とは、軽貨物車を使用する運送業を指します。
「貨物軽自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業をいう。
中型トラックや大型トラック、自動二輪車などで運送業を営む場合は「一般貨物自動車運送事業」となり、緑ナンバーの取得が必要です。
ほかにも、特定企業のみの運送を行う事業として「特定貨物自動車運送事業」があります。特定貨物自動車運送事業の場合は、その特定企業の系列会社がこの許可を取得することが多いです。
軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)は許可制ではなく届出制なので、許可を待たずに始められるメリットがあります。自分1人・車1台でできるため、個人事業主が運送業を始めやすい形態といえます。
軽自動車を利用した場合の積載重量の計算例
定員数が大人4人の軽自動車を利用、運転手1人で荷物を運ぶ場合の積載できる貨物重量
・3(人) × 55 = 165kg(まで)
黒ナンバーを取得する要件
黒ナンバーを取得するための要件は以下のとおりです。
黒ナンバーを取得する要件
- 軽貨物車を1台以上保有する
- 営業所・休憩施設・車庫を保有する
- 運送約款を用意する
- 運行管理等の管理体制を整えている
- 損害賠償能力がある
これらの要件を満たしていることを運輸支局と軽自動車協会へ書類で提出すると黒ナンバーを取得できます。ここでは、各要件の詳細について解説します。
軽貨物車を1台以上保有する
車検証での用途が「貨物」となっている軽トラックや軽バンなどの軽貨物車を1台以上確保し事業を運営する必要があります。
営業所・休憩施設・車庫を保有する
営業所・休憩施設・車庫を保有する必要があります。自己所有または賃貸の自宅内に営業所と・休憩施設を設置することも可能です。
なお、車庫は原則として営業所に併設しなければなりません。併設できない場合は営業所から半径2km以内に設置する必要があります。
運送約款を用意する
運送約款(うんそうやっかん)とは、運送人と荷主との間で運送契約の内容を定めた文書のことです。運送約款がないと事業を開始できません。
運送約款は国土交通省があらかじめ用意したものがあるので、それを使うのが一般的です。もちろん、自分で作成したものを使用しても問題ありません。
出典:
運行管理等の管理体制を整えている
過積載・過労運転の防止・乗務前後の点呼・乗務員に対する指導監督等を管理する人が必要になります。事業を行う本人が管理者でも問題ありません。
ただし、10台以上黒ナンバーの車両を所有する場合は、本人とは別にもう1人必要になるので注意してください。
損害賠償能力がある
自賠責保険・任意保険へ加入し、賠償能力を保有する必要があります。
出典:
黒ナンバーを新規取得する方法
ここからは、黒ナンバーを新規取得するための要件や手続きについて解説します。
運輸支局に書類を提出する
まずは、各都道府県の運輸支局に以下の書類を提出します。
運輸支局に提出が必要な書類
- 貨物軽自動車運送事業経営届出書
- 事業用自動車等連絡書
- 貨物軽自動車運送事業運賃設定届出書
- 運賃料金表
- 車検証のコピー
各都道府県の運輸支局の場所は国土交通省のホームページから確認できるので、最寄りの運輸支局に上記の書類を提出しましょう。
貨物軽自動車運送事業経営届出書の書き方
貨物軽自動車運送事業経営届出書は、軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)の経営を行うために出す書類です。2部同じものを用意し、1部を運輸局に提出します。運輸支局によって書式が異なる場合があるので、各運輸支局の記入例を参考にするようにしてください。もう1部は自分で保管します。
出典:東京運輸支局「貨物軽自動車運送事業経営届出書様式」
貨物軽自動車運送事業経営届出の記載項目
- 開始予定日:開業した日、もしくは届けを出す日
- 氏名又は名称、代表者氏名、住所、電話番号:事業を始める本人の情報
- 営業所の名称及び位置:開業届を出した際の屋号と住所
(開業届を出していない場合は予定のものを記入する) - 事業用自動車の種別ごとの数:該当の車種の欄にその数
- 自動車車庫の位置及び収容能力:
事業で使用する自動車の車庫の住所、営業所からの距離、車庫の面積
※収容能力がわからない場合は、15〜20㎡の範囲で記載しておけば問題ありません。 - 乗務員の休憩又は睡眠のための施設の位置及び収容能力:
自宅の住所と同じでOK - 運送約款:
国土交通省が用意している運送約款を使用するかどうかの確認項目(上の標準貨物軽自動車運送約款にチェックを入れる)
・標準貨物軽自動車引越運送約款は引っ越し業務用の約款
・自前で運送約款を用意する場合は、その他にチェックを入れ、作成した運送約款を添付して提出する
事業用自動車等連絡書の書き方
事業用自動車等連絡書は、運送事業者の使用する軽貨物車運輸支局に対して申請が完了していることを証明する書類です。あとで軽自動車検査協会に書類を提出する際に、運輸局が押印した事業用自動車等連絡書が必要になります。
貨物軽自動車運送事業経営届出書と同じく、2部同じものを用意し1部を提出します。また、運輸支局によって書式が異なる場合があるので、各運輸支局の記入例を参考にしてください。こちらも1部は自分で保管します。
出典:東京運輸支局「事業用自動車連絡書様式」
事業用自動車等連絡書の記載項目
- 事業等の種別:貨物の「軽」を○で囲む
- 使用者の名称・住所:開業する本人の名前
- 所属営業所名、使用の本拠の位置:
貨物軽自動車運送事業経営届出書に記載したものと同じものを記入 - 使用しようとする自動車:
新車は型式、中古車は車検証を確認し車体番号を記入する
①自動車の年式:車検証を確認し自動車の年式、乗車定員
②旅客自動車:空欄でOK
③貨物自動車:「軽」を○で囲み、最大積載量を車検証で確認し記入 - 廃止(減車・まつ消等)する自動車:空欄のままで問題なし
- 事案発生理由:「新規届出」を○で囲む
貨物軽自動車運送事業運賃料金表の書き方
出典:東京運輸支局「貨物軽自動車運送事業運賃料金表」
貨物軽自動車運送事業運賃料金表は、軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)を開始するにあたり、設定した運賃料金を示すものです。提出用に1部作成します。
運賃は自由に設定可能ですが、相場を記入したい場合は、各運輸支局が標準料金を記入した記入例を用意していることが多いので、そちらを参考にするようにしてください。
こちらの書類も、運輸支局によって書式が異なる場合があるので、各運輸支局の記入例を参考にするようにしてください。運輸局に記入例がない場合は、千葉運輸支局が標準的な運賃を例として掲載しているので、参考にするとよいでしょう。
運賃料金設定届出書の書き方
運賃料金設定届出書は、貨物軽自動車運送事業運賃料金表で設定した運賃料金を運輸局に届け出るための書類です。運賃料金設定届出書は運輸支局と運輸局に提出用と控え用で計3部必要です。
出典:東京運輸支局「貨物軽自動車運送事業経営届出書様式」
運賃料金設定届出書の記載項目
- 日付:提出日
- 宛名:提出する運輸支局の支局長の名前
- 住所・氏名又は名称:本人の情報
- 代表社名・電話番号:個人事業主であれば屋号と事業所の電話番号
- 氏名または名称・住所・代表者名:上記と同じ内容でOK
- 実施年月日:設定した運賃で事業を開始する日付
軽自動車検査協会に書類を提出する
運輸支局に申請書類を提出したら、当日中に運輸局から押印された事業用自動車等連絡書を受け取ることができます。
事業用自動車等連絡書を受け取ったら、続いて軽自動車検査協会に書類を提出する流れになります。軽自動車検査協会のホームページから各地域の軽自動車検査協会の場所を確認できます。
自動車検査協会に提出する書類
- 車検証の原本
- 申請依頼書
- 事業用自動車等連絡書(押印済みもの)
- ナンバープレート(軽自動車検査協会で購入する)
- 住民票(個人事業主で、車検証の所有者が自分以外の場合)
- 履歴事項全部証明書(法人で、車検証の所有者が自分以外の場合)
軽自動車検査協会での手続きを終えたら、当日から事業を開始できます。ただし、自賠責保険や任意保険に未加入の場合は各保険会社で加入してから事業を行うようにしましょう。
ちなみに、黒ナンバーのナンバープレートでは希望ナンバーを取得することはできませんが、字光式にすることは可能です。その場合は、別途「字光式車両番号指示願」を提出してください。
出典:
黒ナンバーの取得にかかる費用・時間
黒ナンバー取得にかかる費用は、ナンバープレートの購入金額の1,500円程度です。申請手続きは1日ですべてまとめて行うことも可能ですが、運輸局は各都道府県に1つしかないので、移動に時間がかかる場合もあります。余裕をもって申請するようにしましょう。
また、黒ナンバーの取得代行を行っている行政書士や業者もいるので、自分で申請するのが不安な人は代行もおすすめです。取得代行の相場は、一般的に2〜4万円程度です。
黒ナンバーの税金・保険料
黒ナンバーは、自家用車と比較して税金や保険料に違いがあります。税金は安くなりますが、保険料は高くなってしまうので、それぞれどの程度金額が変わるのか解説します。
黒ナンバーの税金
黒ナンバーを取得した場合、車検時にかかる重量税は安くなります。自家用軽自動車の場合は6,600円ですが、黒ナンバーは5,200円です(いずれも2年分、かつ新規登録から13年が経過していない場合の金額)。
出典:
また、自動車税も安くなります。自家用軽貨物車の場合は年額5,000円ですが、黒ナンバーは年額3,800円です(いずれも初度検査年月が平成27年4月以後の車両の場合)。
出典:
黒ナンバーの保険料
自賠責保険料は黒ナンバーの方が高く、24カ月契約で自家用軽自動車が23,150円に対し、黒ナンバーは30,840円です。
出典:
任意保険に関しても、黒ナンバーで契約できる保険会社が限られるだけでなく、保険料も高くなる傾向にあります。
黒ナンバーの任意保険を取り扱っている保険会社は、大手企業を中心に6〜7社程度です。それらの企業が提供している黒ナンバー用の保険は、運転者年齢条件などの特約が効かず、自家用車と比べて割高な商品が多くなっています。
保険料を抑える手段としては、すでに任意保険に加入している自家用軽貨物車を黒ナンバーにすることで、等級を引き継ぎ割引率を担保できます。黒ナンバーで任意保険を新規契約するより保険料を抑えることが可能です。
まとめ
軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)を始めるなら黒ナンバーの取得は必須です。必要な手続きを理解し、速やかに申請しましょう。
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スムーズに軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)を開始できるように準備を効率的に行いましょう。
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