監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
資本金払込とは、定款で定めた金額の資本金を発起人の口座に払い込むことであり、会社設立時に必要な手続きのひとつです。
資本金払込を実施するタイミングは設立する会社形態によって異なります。また、資本金払込の方法にはいくつかの手段があるため、具体的な払い込みの方法を理解しておくことが大切です。
本記事では、資本金払込のタイミングや手続きの流れ、注意点についてわかりやすくまとめました。
目次
資本金払込とは
資本金払込とは、会社設立時に、事前に定めた金額の資本金を発起人の口座に払い込むことです。
資本金払込をしないと法人登記ができず、また、法人登記が完了しないと法人口座を開設できないため、会社設立時に欠かせない手続きのひとつといえます。
会社設立時の資本金払込のタイミング
資本金払込は会社設立時に行いますが、実施するタイミングは設立する会社が株式会社なのか合同会社なのかによって異なります。
以下では、それぞれのケースで会社設立の流れとともに資本金払込のタイミングを解説します。
株式会社は定款の認証後
株式会社を設立するときは、基本的に公証役場で定款の認証を受けたあとに、資本金払込を実施します。株式会社の設立の流れと資本金払込のタイミングは以下のとおりです。
株式会社設立時の資本金払込のタイミング
- 定款を作成する
- 公証役場にて定款の認証を受ける
- 金融機関で資本金を払い込む
- 法務局にて登記申請の手続きをする
- 自治体や税務署に法人設立届などの書類を提出する
資本金払込の際には、定款に記載した金額の資本金を払い込みましょう。
合同会社は定款の作成後
合同会社であれば、以下のタイミングで資本金払込を行います。
合同会社設立時の資本金払込のタイミング
- 定款を作成する
- 金融機関で資本金を払い込む
- 法務局にて登記申請の手続きをする
- 自治体や税務署に法人設立届などの書類を提出する
合同会社では公証役場で定款の認証を受ける必要はありません。定款に資本金の金額を記載したあと、金融機関で資本金払込をします。
会社設立時の資本金払込の流れ
資本金払込は、以下の手順で実施します。
資本金払込の流れ
- 発起人名義の口座を開設する
- 口座に資本金を払い込む
- 払込資本金を示すコピーと払込証明書を作成する
資本金払込の方法は、預入と振込の2つから選択します。どちらの方法でも問題ありませんが、預入を選択すると入金者の名前が残らないため、発起人が複数いるときは振込を選ぶとよいでしょう。
1.発起人名義の口座を用意する
資本金は会社名義の銀行口座に振り込むのではなく、発起人の銀行口座に払い込みます。登記が完了するまでは、会社の口座は作れないためです。
払い込み口座にネット銀行は使える?
資本金払込先の口座は、店舗型銀行でもネット銀行でも問題ありません。
資本金払込後は、振り込み記録がされた通帳のコピーをとるなど、資本金が確実に振り込まれたことを証明する書類を手元に残しておく必要があります。しかし、Web通帳しか発行できないネット銀行や店舗型銀行は、通帳のコピーをとることができません。
Web通帳を利用している場合は、振込履歴を印刷して払込証明書の代わりとして提出します。その際には、以下の要素全てが含まれるように印刷が必要です。振込履歴とWeb通帳を利用している銀行のマイページを確認し、網羅しているか確認してください。
印刷時に必要な要素
- 金融機関名
- 口座名義人
- 口座種別、口座番号
- 振込日
- 振込金額
複数のページにまたがるときは、全てをホチキスでまとめて提出しましょう。
発起人が複数いる場合
発起人であれば誰の口座に資本金を払い込んでも問題ありませんが、発起人が複数いる場合は、代表取締役になる発起人の口座に払い込むことが一般的です。トラブルを回避するためにも、発起人全員による同意を得てから払込を行いましょう。
金融機関の選び方
日本の金融機関であれば、どの金融機関の口座でも問題ありません。内国銀行の現地支店も含むため、海外の口座に払い込むことも可能です。
また、外国銀行の日本国内支店に払い込むことは可能ですが、外国銀行の海外本支店に払い込むことはできません。
2.口座に資本金を払い込む
該当口座に資本金を払い込みます。既存の口座を用いるのであれば、すでに口座に入っている金額で資本金がまかなえることがあります。しかし、口座に入金されている資金が資本金であることを示すためにも、一度引き出してから、新しく払い込むようにしてください。
資本金の払い込みは、以下の3つのいずれかで行います。
資本金の払込方法
- 金融機関の窓口
- ATM
- インターネットバンキング
それぞれの流れや注意点は以下のとおりです。
窓口で通帳を提示して払い込む
定款の認証が終わったら、銀行の窓口で資本金払込をします。窓口で払い込む場合は、払込額の上限額はありません。巨額の資本金を振り込むのであれば、直接窓口で払い込むほうがスムーズです。
ただし、銀行の窓口で振込金額が10万円を超えると、本人であることや振込目的なども確認されることがあります。通帳とキャッシュカードのほかに、運転免許証などの本人確認書類や印鑑も持参しましょう。
ATMで払い込む
ATMで払い込む場合は、1日に入金できる金額を確認しておきましょう。銀行やキャッシュカードの種類によって1日の振込限度額が異なります。限度額は100〜200万程度に設定されていることが多く、1日で資本金を全額入金できないときは、何日かに分けて計画的に入金しましょう。
ATMで現金を振り込むときは大金を持ち歩くことになりかねません。安全面も考慮して、払い込み方法を選ぶようにしてください。
インターネットバンキングで払い込む
インターネットバンキングも1日の入金可能額が制限されていることがあるため、事前に確認しておきましょう。
また、ネット銀行のように窓口のない金融機関では、ATMかインターネットバンキングのいずれかしか入金方法がありません。どちらの方法で払い込むか迷ったときは、インターネットバンキングを検討してみてください。場所や時間を問わず利用できるだけでなく、ATMと比べて手数料が低めの傾向にあります。
3.払込資本金を示すコピーと払込証明書を作成する
資本金の払込が終わったら記帳をして、その通帳のコピーをとります。その後に支払証明書を作成し通帳のコピーを貼り、資本金払込の手続きは終了します。
紙の通帳であってもWeb通帳であっても、下記の3ヶ所が含まれるようにコピーまたは印刷します。
コピーする欄
- 記帳欄
- 表紙
- 個人情報欄※
※表紙を開いた裏にある住所や名前などが掲載されている欄。Web通帳の場合は口座名義人・口座種別・口座番号が記載されているマイページを印刷。
支払証明書には資本金額のほかに、株数や1株あたりの金額を書く必要があります。この最初に決める1株あたりの金額は、高すぎても低すぎてもいけません。後々、融資を受けづらくなってしまったり、金額を下げづらくなってしまったりするため、慎重に決めましょう。
払込証明書の作成方法
次に払込証明書を作成します。手書きでもパソコンでも問題ありませんが、次の事項を忘れずに含めるようにしてください。
払込証明書に記入する項目
- 払込金額の総額
- 払込株数と1株あたりの金額
- 払込年月日
- 設立する企業の本店所在地、商号
- 代表取締役の氏名
- 代表者印
すべて現金で払い込む場合は、払込株数に関する記載は不要です。
資本金払込関連書類のまとめ方
資本金払込に関する書類は、見やすいように順番に並べてホチキスでまとめてください。次の順に綴じると登記申請時にそのまま提出できます。
登記申請手続きを発起人が実施するときは、委任状は不要です。
まとめ
資本金払込とは、会社設立時に実施する手続きのひとつです。特に株式会社設立時には必須のため、あらかじめ手順や方法を知っておくことが大切です。払い込みをしたことを示す払込証明書は法人登記の際に必要となるため、漏れなく作成しておきましょう。
近年はWeb通帳が増えているため、従来のように紙の通帳をコピーする方法では払込証明書を作成できないことがあります。Web通帳の場合は、マイページから金融機関名と口座名義人、口座種別、口座番号を印刷し、振込日と振込金額については振込履歴を印刷してください。全てをホチキスでまとめて提出しましょう。
自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
会社設立の準備から事業開始までには、多くの書類や手続きが必要になります。書類の転記をするだけでもかなりの時間がかかってしまいます。
freee会社設立は株式会社だけでなく、合同会社の設立にも対応しています。設立件数30,000社以上の実績をもつfreee会社設立なら、初めての方もあんしんしてご利用いただけます。
起業ダンドリコーディネーターが完了までサポートしてくれるからあんしん!
初めての会社設立では、書類の書き方や提出先、設立後の手続きなどさまざまな場面で不安を抱えてしまうこともあるでしょう。
freee会社設立では、会社設立に詳しい起業ダンドリコーディネーターが常駐しており、設立準備から登記後に必要な手続きまでを完全無料で並走・サポートします。
相談方法はオンライン面談、LINE相談、電話、メールなどから選べます。まずお気軽に問い合わせフォームからおためし相談(最大30分)の予約をして、ご自身のスケジュールや設立手続きに関する疑問や不安を解消しましょう。
入力項目・次にやること、すべて画面上で把握できる
freee会社設立では、必要項目を記入していくだけで会社設立に必要な書類を作成することができます。また、登記の際に必要となる会社印も同時に購入が可能です。
freee会社設立は株式会社だけでなく、合同会社の設立にも対応しています。
会社名や資本金額など必要項目を入力すると、定款(ていかん)をはじめとする会社設立に必要な約10種類の書類を自動で作成します。
<freee会社設立で出力できる書類の一例>
- 定款
- 登記申請書
- 印鑑届出書 など
設立にかかるコストを削減できる
設立費用を削減したい方には電子定款がおすすめです。紙の定款では、収入印紙代40,000円がかかりますが、電子定款ではこれが不要となります。
freee会社設立は電子定款にも対応しており、電子定款作成に必要な機器やソフトの準備なども必要がないため、自分で作成するよりもコストを抑えることができます。
<設立にかかる費用の比較例>
(1)freee会計を年間契約すると、無料になります。
(2)紙定款の印紙代(40,000円)
会社設立の準備を進めながら、バーチャルオフィスの申し込みが可能!
会社設立するためにオフィスの住所が必要になります。
自宅をオフィス代わりにしている場合は、自宅の住所でも問題ありませんが、公開情報となってしまうので注意が必要です。
自宅兼オフィスのように実際の住所を公開したくない場合や、管理者や所有者に物件の法人登記が認められていない場合は、バーチャルオフィスを利用するのがおすすめです。
freee会社設立では、会社設立に必要な書類を無料で作りながら、バーチャルオフィスの申し込みもできます!
まずはこちらからfreee会社設立に無料で登録してみてください!
自分で手続きする時間のない方には「登記おまかせプラン」がおすすめ!
「初めての会社設立で不安」、「自分で手続きする時間がない」という方には、司法書士が手続きまで代行してくれる登記おまかせプランがおすすめです。
設立代行の費用相場は10万円前後ですが、freeeの登記おまかせプランは一律5万円で利用できます。※海外在留者が出資者・役員の場合等の特殊ケースを除く
登記おまかせプランの利用方法等の詳細は、freee会社設立の無料登録が完了後にメールにてご案内します。
会社設立の準備をお考えの方は、ぜひ登録無料のfreee会社設立をお試しください。
よくある質問
資本金は預入と振込のどちらで払うべき?
資本金を払い込む方法は預入・振込のどちらでも問題ありません。ただし、預入を選択すると入金者の名前が残らないため、発起人が複数いるときは振込のほうがよいでしょう。
詳しくは記事内「会社設立時の資本金払込の流れ」をご覧ください。
ネット銀行を利用するときの注意点は?
ネット銀行の口座に資本金を払い込むときも、店舗型口座と同じく、発起人が複数いるときは入金者の名前がわかるようにする必要があります。また、払込証明書として、振込日と振込金額が記載された振込履歴と、金融機関名・口座名義人・口座種別・口座番号が記載されたマイページを印刷してください。
詳しくは記事内「インターネットバンキングで払い込む」をご覧ください。
すでに資本金が入金されている口座は利用できる?
すでに資本金をまかなえるだけの金額が入っている口座も利用できますが、入金されているお金が資本金であることがわかるように、一度払い戻してから新しく入金しましょう。
詳しくは記事内「口座に資本金を払い込む」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。