監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
印鑑証明書とは、書類に押印された実印が本人のものであることを証明する書類です。
会社設立時には、発起人や取締役の印鑑証明書を公証役場と法務局へ提出する必要があります。株式会社を設立するのであれば公証役場と法務局への2通分、合同会社であれば法務局への1通分の印鑑証明書を発行しなくてはなりません。個人の印鑑の印鑑証明書をするには、居住地の自治体の役場で印鑑登録を行う必要があります。
本記事では、印鑑登録から印鑑証明書を取得するまでの方法のほか、会社設立の際に必要な証明書の取得枚数についても解説します。
目次
新しい会社を作るときに必要な印鑑証明書とは?
印鑑証明書とは、書類に押印された実印が本人のもので相違ないと証明する書類です。
会社設立にあたって発起人や取締役が「自分の意思で会社設立の手続きをしている」ということを証明するために、印鑑証明書は欠かせません。
正式には、個人の印鑑の証明書を「印鑑登録証明書」、法人の印鑑の証明書を「印鑑証明書」と呼び区分します。本記事ではこのうち個人印鑑の証明書である「印鑑登録証明書」について解説をします。
印鑑証明書は、会社設立のフローの中で、公証役場で定款を認証してもらうときや、法務局で登記申請をするときに使用します。
このほか、会社設立時には定款や発起人全員の同意またはある発起人の一致があったことを証する書面なども必要です。会社設立の流れについて詳しく知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について」をご覧ください。
個人実印と会社実印(代表者印)の違い
本記事で解説する「発起人や代表者の印鑑」は、「個人実印」にあたります。
会社設立時や設立後に使用する印鑑には、個人実印と会社実印(代表者印)があり、両者は全くの別物です。具体的には、以下のような違いがあります。
役割 | 使用する場面 | 申請・登録場所 | |
---|---|---|---|
個人実印 | 登記される会社の代表者が本人であることを示す印鑑 | 会社を設立するとき | 市区町村の役所や出張所 |
会社実印(代表者印) | ・法務局に登録する印鑑であり会社の代表者であることを示す印鑑 ・会社における実印となり、法的な拘束力をもつ | 会社を代表する重要な取引や登記申請、株を発行するときなど | 本社所在地を管轄する法務局 |
個人実印は、会社の設立時のみに使用します。代表者本人の個人実印が、会社設立の本人意思の証明となります。
一方、会社を設立した後に会社として重要な契約を交わす際には、会社実印を用意しなければなりません。会社実印は、本社所在地を管轄する法務局で印鑑登録の手続きをすれば、「実印」としての法的な効力を持ちます。個人実印と同じように、第三者が会社に代わって契約を行わないよう、実印を公式に登録しておく制度が法人向けにも用意されているのです。
契約や取引などの書面に押印する際には、会社実印が求められることがあります。会社の意思表示を明確にするためにも、会社設立後は個人実印とは別に、会社実印も印鑑登録しておきましょう。
印鑑登録から印鑑証明書の取得までの流れ
個人実印の印鑑証明書を取得するには、まず印鑑登録が必要です。ここでは、印鑑登録から印鑑証明書取得までの流れを解説します。
なお、設立する会社の登記簿に記載する予定の代表者住所と印鑑証明書の住所が同じでなければ、せっかく取得した印鑑証明書が無効とみなされる可能性があります。印鑑登録の前に代表者本人の住民票を確認し、住所変更手続きは必要ないか確認しておきましょう。
変更が必要であれば、まず住民票の住所変更を行った後、次に説明する印鑑登録の変更手続きを行ってください。
①印鑑を登録する
印鑑証明書を取得するには、代表者の住民票がある自治体で該当の印鑑を登録しなければなりません。手続きは、居住する地域の自治体の役所の窓口で行います。
このとき、安価な三文判を印鑑登録することも可能です。ただし、偽造されてしまうリスクがあり、自治体によっては印鑑登録用の印鑑として適切ではないとし、登録を拒否される可能性があります。
役所へ足を運ぶ回数が、1回で済むケースと2回必要なケースがあります。市区町村により異なるため、自治体のサイトや役所の窓口で確認してください。
窓口手続きの回数 | ケース | 持ち物 |
---|---|---|
1回 | 本人が直接窓口に行き、官公署発行の顔写真付き本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)を提示できる場合 | ・登録する印鑑 ・官公署発行の顔写真付きの本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード など) ・印鑑登録申請書 |
2回 | ・本人確認が即日できない場合 ・代理人が申請する場合 | 【申請時】 ・登録する印鑑 ・窓口に来る人の本人確認書類 ・印鑑登録申請書 ・代理人の場合は、代理権授与通知書 【登録時】 ・回答書 ・登録する印鑑 ・登録者の本人確認書類 ・窓口に来る人が代理人の場合は、代理人の本人確認書類・代理権授与通知書 |
②印鑑証明書を取得する
登録手続きが完了したら、次に印鑑証明書の発行手続きを行います。
印鑑登録した実印の印鑑証明書も、役所の窓口で発行・取得できます。印鑑登録が完了した同日に、印鑑証明書の発行まで行えます。
役所の窓口で印鑑証明書を取得するときの流れは、以下のとおりです。
印鑑証明書の発行を申請するときの流れ
- 印鑑登録手続きを完了する
- 印鑑登録証(印鑑登録カード)を受け取る
- 印鑑証明書の発行を申請する
マイナンバーカードがあれば、コンビニのマルチコピー機からでも取得が可能です。
役所で印鑑証明書を発行するのであれば役所の開庁時間中に足を運ぶ必要がありますが、コンビニで取得する場合は毎日6:30から23:00まで利用できます。印鑑証明書の発行手数料は、窓口発行でもコンビニ発行でも、1枚150〜300円です。
コンビニで発行する際には、マイナンバーカードの「利用者証明用電子証明書」が有効でなければなりません。マイナンバーカードを発行していない方や「利用者証明用電子証明書」が有効でない方は、コンビニでの発行ができない点に注意しましょう。
利用者証明用電子証明書の有効期間は、マイナンバーカード交付から5回目の誕生日までです。有効期間を過ぎている場合は、お住まいの市区町村の窓口で更新手続きを行いましょう。
出典:地方公共団体情報システム機構「コンビニ交付」
出典:マイナンバーカード総合サイト「電子証明書の更新手続」
会社設立に必要な印鑑証明書の枚数
会社を設立する際には、印鑑証明書が2通必要です。印鑑証明書は、公証役場と法務局の2ヶ所に提出する必要があるためです。
提出先 | 概要 | 必要枚数 |
---|---|---|
公証役場 | 会社設立時の定款を認証してもらう | 各発起人の印鑑証明書が必要 |
法務局 | 会社の登記申請を行う | 【取締役会を置かない場合】 取締役全員の印鑑証明書が1通ずつ必要 【取締役会を置く場合】 代表取締役の印鑑証明書jのみ1通必要 |
ただし、設立する会社が株式会社か合同会社かによって必要な印鑑証明書の枚数は異なります。
株式会社を設立するとき
株式会社を設立する場合、定款には発起人全員の実印を押印し、公証役場へ発起人全員の印鑑証明書を提出します。
会社設立の際には、会社の基本的なルールを記載した書類である定款の作成が必要です。会社設立時の定款を認証してもらう公証役場では、発起人の個人実印の印鑑証明書を用意しましょう。発起人が複数いる場合は各発起人の印鑑証明書を用意しなければなりません。
法務局で登記をするときも、個人実印の印鑑証明書が必要です。法務局で必要となる印鑑証明書の枚数は、取締役会の有無によって決まります。取締役会を置かないのであれば、取締役全員の印鑑証明書が1通ずつ必要です。取締役会を置くなら、代表取締役の印鑑証明書が1通必要です。
このように、発起人と取締役の人数次第で、必要となる印鑑証明書の枚数が異なります。
例 | 必要な印鑑証明書の枚数 |
---|---|
発起人と取締役が1人の会社の場合 | 公証役場と法務局にそれぞれ発起人の印鑑証明書を1通ずつ提出する |
発起人2人と取締役4人がいる場合 | 公証役場に発起人2人分の印鑑証明書と、法務局に取締役4人分の印鑑証明書を提出する |
合同会社を設立するとき
合同会社を設立するのであれば、法務局へ代表社員の印鑑証明書を1通提出します。
合同会社でも定款の作成は必要ですが、認証が不要なため、公証役場へ印鑑証明書を提出する必要はありません。
法務局への登記申請時に、印鑑証明書が必要となります。合同会社の場合は社員の人数に関係なく、代表社員の印鑑証明書1通のみを提出します。
提出する印鑑証明書の有効期限は「作成後3ヶ月以内」
商業登記規則第9条により、会社設立時に必要となる印鑑証明書は作成後3ヶ月以内のものでなければなりません。期限が切れてしまったら、再度、印鑑証明書を取得し直す必要があります。
印鑑証明書を発行した場合、3ヶ月以内に法務局へ提出するように手続きを進めてください。
出典:e-Gov法令検索「商業登記規則|第九条」
まとめ
会社設立の手続きを進める際には、発起人や取締役の印鑑証明書が必須です。印鑑証明書を発行する準備として、市区町村の役所で実印の登録を行う必要があります。
株式会社を設立する際には、公証役場と法務局に印鑑証明書を提出する必要があるため、2通用意しましょう(発起人と取締役が複数の場合、人数分が必要)。合同会社を設立する際には、法務局へ提出するための代表社員分の印鑑証明書1通のみが必要です。
印鑑証明書を取得する際には、必要な枚数や記載されている住所、申請先等、提出書類や申請方法を事前に確認しましょう。
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監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。