監修 行政書士・社会福祉士 亀山 健悦 かめやま行政書士・社会福祉士事務所
デイサービス事業を開業するには、法人格を取得し、人員基準・設備基準・運営基準などをクリアする必要があります。
初期費用を用意する際は、自己資金に加えて融資や補助金などの活用も検討しましょう。
本記事では、デイサービス開業の条件や資格、デイサービス開業の流れ・費用・資金調達手段について詳しく解説します。
目次
- デイサービスは法人でないと開業できない?
- 「介護報酬なし」なら運営可能?
- デイサービスを開業するための「3つの基準」
- 人員基準
- 設備基準
- 運営基準
- デイサービス開業の流れ
- コンセプト(方針)やサービス内容を決める
- 必要書類を用意する
- 法人設立を行う
- 自治体と事前協議を実施する
- サービスを提供する物件を契約する
- 設備基準を満たす内装工事を行う
- 自治体へ指定申請を行う
- デイサービスの開業にかかる費用
- 法人設立費
- 改修費
- 人件費
- 車両費
- 運転資金
- 資金調達の選択肢
- 自己資金を用意する
- 金融機関から融資を受ける
- 中小企業労働環境向上奨励金を利用する
- 各種助成金・補助金を申請する
- まとめ
- 自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
- よくある質問
デイサービスは法人でないと開業できない?
デイサービス事業を始めるには、法律で定められた基準をクリアした状態で都道府県(または政令指定都市・中核市)へ指定申請を行い、知事(または市長)から事業所の指定を受ける必要があります。
デイサービスをはじめとする各種介護サービスは、原則として指定を受けないと事業として営むことができません。この指定の条件のひとつに「法人格を持つこと」があるため、法人格を持たない個人事業主やフリーランスでは、デイサービスを開業できません。
ここでいう介護事業とは、介護保険の適用を受けるビジネスのことです。介護に関わるビジネスのなかには、配食サービスや一部の福祉タクシーといった介護保険適用外のものもありますが、介護保険適用外のビジネスなら個人事業主やフリーランスでも開業できます。
「介護報酬なし」なら運営可能?
「デイサービスに似たビジネスなら、介護保険が適用できない代わりに法人格はいらないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、介護保険が適用されない“疑似デイサービス”の場合は「介護報酬なし」で運営する必要があります。
介護報酬とは、介護保険法における要介護者・要支援者が利用したサービスの料金のうち、サービス利用者の負担分の残額を保険者である市町村に請求し受け取れる制度です。
介護保険の適用を受ける人へ介護サービスを提供したとき、利用者は医療保険のようにサービス料金の1割から3割を支払うだけで済みます。その後、残額の7割から9割を代わりに負担していたデイサービス事業者が、その負担分を市町村へ請求し、介護報酬として受け取るという仕組みです。
デイサービス事業にとって介護報酬は、事業運営の生命線ともいえる収入源です。介護報酬が発生しない「介護保険適用外のビジネスモデル」だと、利用者から相応の金額を全額徴収しなければ採算が取れない可能性があります。
そして利用者側から見ても、ほかのデイサービスが1割から3割負担で使えるなか、わざわざ全額負担のサービスを選ぶかといわれると難しいでしょう。
以上のことから、介護保険を適用するためにも指定を受ける必要があり、その指定を受けるには法人格が必須になる、といえます。
デイサービス開業に必要な法人格としては、医療法人・社会福祉法人といった非営利法人だけでなく、株式会社や合同会社といった営利法人も認められています。設立する法人によって特徴があるので、事業計画に合う法人格を選びましょう。
それぞれの特徴は記事後半の「デイサービス開業の流れ」にて解説します。
デイサービスを開業するための「3つの基準」
デイサービスを開業するためには、法人格を得ることに加えて「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の第7章に定められた、通所介護における3つの基準を満たす必要があります。
出典:e-Gov法令検索「介護保険法 第七十七条」
具体的には、「人員基準」「設備基準」「運営基準」の3点です。これらの基準はほかの介護サービスにも設けられていますが、介護サービスの種類によって内容が異なっています。
もし基準に違反した状態でデイサービスを運営すると、介護保険法第77条に則り、指定の取消や全部または一部の効力停止の処分が下されます。以下、それぞれの基準の詳細を見ていきましょう。
人員基準
人員基準とは、デイサービス事業においてサービス利用者とその家族が安心して利用するために必要な職種・資格および人員数を定めたものです。
デイサービスの場合、管理者・生活相談員・看護職員・介護職員・機能訓練指導員の5職種の人数と資格要件が決められています。
職種名 | 配置基準 | 資格要件 |
管理者 | 1人 | 特になし |
生活相談員 | 1人以上 |
社会福祉士 精神保健福祉士 社会福祉主事任用資格 など |
看護職員 | 1人以上 |
看護師 准看護師 |
介護職員 |
利用者数が15人までは1人以上 利用者数が16人以上は「(利用者数-15人) ÷ 5 + 1」以上 | 特になし |
機能訓練指導員 | 1人以上 |
理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 看護師 准看護師 柔道整復師 あん摩マッサージ指圧師 はり師・きゅう師 (※実務経験の要件あり) |
◆管理者
管理者は管理上支障のない範囲なら、施設内または同一敷地内にある事業所・設備にて管理業務以外の仕事を兼務できます。
◆生活相談員
ソーシャルワーカーともいい、デイサービス運営における各所の連携・調整を行う人です。
「介護現場の何でも屋」といわれることも多く、サービス利用者やその家族への相談・契約業務、ケアプランに関する書類作成、施設の窓口、介護現場の仕事、そのほか裏方業務全般を担当するケースが多くあります。
◆看護職員
サービス利用者の健康チェック、機能訓練の指導、看護業務などを行います。
◆介護職員
デイサービスのメイン業務である介護を担当するスタッフです。
◆機能訓練指導員
日常生活を送るのに必要な身体機能の減退を防止するための訓練を行うスタッフです。原則として、有資格者のみが機能訓練指導員として認められます。
出典:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
設備基準
設備基準とは、デイサービス事業を営むうえで必要な設備・備品の最低限の水準を確保するためのものです。デイサービスの設備基準としては、食堂・機能訓練室と相談室について指定があります。
また食堂・機能訓練室・静養室・相談室・事務室、消火設備、そのほか非常災害に際して必要な設備をそろえる必要があります。トイレや浴室といったデイサービスの提供に必要な設備・備品の設置も、設備基準のひとつです。
設備 | 基準・条件 |
食堂 |
・機能訓練室と兼用できる ・機能訓練室と合計した面積が3㎡に利用定員を乗じて得た面積以上にすること |
機能訓練室 |
・食堂と兼用できる ・食堂と合計した面積が3㎡に利用定員を乗じて得た面積以上にすること |
消火設備 | ・消防法に基づいて設置すること |
静養室 |
・広さや備品関係の設備基準はない ・利用者が問題なく静養できる環境を整えること |
事務室 | ・事務作業を行うのに適した広さを確保すること |
浴室 | ・入浴介助時に利用者が安全に使える設備にすること |
トイレ |
・トイレでの介護活動に支障が出ない広さを確保すること ・緊急時のブザー・呼び鈴などの通報装置を設置しておくこと |
相談室 | ・遮蔽物を設置するなど、相談内容が漏洩しない配慮がされていること(個室にするなど) |
その他 | ・サービス利用者の安全性や衛生性に配慮すること |
運営基準
運営基準とは、デイサービスの運営に関するさまざまな要件をまとめたものです。「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の第96条から第105条に定められています。
基準では主にサービス提供のこと、サービス利用料のこと、職員の勤務体制のこと、書類のことなどが細かく明示されています。
【運営基準】
- 利用料等の受領
- 利用者の要介護状態の軽減または悪化の防止に資する指定通所介護の基本取扱方針
- 指定通所介護の具体的取扱方針
- 機能訓練等の目標や目標達成のための具体的なサービス内容を記した通所介護計画の作成
- 運営規程の重要項目(事業目的、従業者の職種や員数、職務内容、営業日など)
- 適切なデイサービス提供を可能とする勤務体制の確保等
- 施設の定員の遵守
- 非常災害に対する具体的計画や、関係機関への通報や連携体制の整備や周知
- 施設、食器、設備、飲用水などの衛生管理面
- 地域住民との交流等
- 利用者の事故が発生したときの連絡体制や講じるべき措置、その措置や賠償等
- 従業員、設備、備品、会計に関する記録
出典:e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
都道府県や自治体独自の条例などとも照らし合わせて確認しておきましょう。
デイサービス開業の流れ
デイサービスを開業する際は、ほかの事業と同じく事業計画の作成や手続きに必要な書類の準備などを行います。デイサービスは利用者の生活に関わるものなので、選ぶ物件や必要な備品もそれに合わせて考える必要があるでしょう。
デイサービス開業の流れ
- コンセプト(方針)やサービス内容を決める
- 必要書類を用意する
- 法人設立を行う
- 自治体と事前協議を実施する
- サービスを提供する物件を契約する
- 設備基準を満たす内装工事を行う
- 必要な備品をそろえる
- 自治体へ指定申請を行う
コンセプト(方針)やサービス内容を決める
はじめに「どのようなデイサービスを新設したいか」といった軸で、コンセプトやサービス内容を決めていきます。
原則として、ここで設定したコンセプトやサービス内容に合わせて人材の確保や物件選びを進めることになります。市場調査から予算・自身の能力・求める将来像などをしっかり洗い出しておくと、「方針がブレない一貫したデイサービス」を実現しやすくなるでしょう。
デイサービスは利用者の目的によって「認知症対応型デイサービス」「機能訓練型デイサービス」などに分けられます。また、利用定員が19人未満の地域密着型通所介護(小規模デイサービス)として開業するのもひとつの選択肢です。
コンセプトやサービスがなかなか決まらないときは、モデルとなるデイサービス施設を参考にしたり、地元のデイサービスを訪問して話を聞いたりしながらアイデアを模索してみてください。
必要書類を用意する
デイサービス開業は法人設立の手続きになるため、登記や定款の対応を含めたさまざまな書類が必要になります。必要な書類名や提出物は自治体によっても異なるので、詳細は事業を行う都道府県や地域を管轄する市町村へ確認しておくと安心です。
書類 | 概要 |
事業申請書類 | 事業の所在地や事業内容を申請するための書類 |
申請者の定款、寄付行為などの写しおよび登記簿謄本 | 会社設立に必要な書類 |
従業者の勤務体制および勤務形態一覧表 | 事業所で働く従業員の職種、資格、シフト、氏名、勤務時間などを記載した書類 |
管理者の経歴を記載した書類 | 介護関係以外の経歴を含め、管理者のこれまでの勤務先や職務内容、勤務期間などを記載した書類 |
事業所の平面図並びに設備の概要を記載した書類 | 事業所となる建物の間取り、広さ(面積)、設置施設などを記載した書類 |
運営規程 | 事業目的、運営方針、事業所の名称、従業員の職種や員数、職務内容、営業日、営業時間、利用定員などを記載した書類 |
利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要を記載した書類 | 利用者の苦情に対する処理体制、対応方針、相談窓口の連絡先などを記載した書類 |
事業に係る資産状況を記載した書類 | 決算報告書(貸借対照表、損益計算書)、財産目録など |
法人設立を行う
デイサービス開業において必須となる、法人設立を行います。デイサービス事業で設立できる法人は、株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人などです。
それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、自社のデイサービスに合ったものを選びましょう。
以下では、それぞれの法人の特徴を解説します。
株式会社
株式会社を設立するメリットは、法人の中でも知名度が高い点です。また、株式発行による資金調達が可能な点にも強みがあります。ただし設立には20万円から25万円程度の資金と別途資本金が必要になるので、コストがかかる点がデメリットです。
株式会社は、2週間程度で設立できます。
合同会社
設立手続きが簡単なこと、10万円前後で設立できることなどが合同会社のメリットです。小規模な介護事業から始めたい場合に向いていますが、事業の拡大には不向きな形態といえます。
定款の作成は必要であるものの認証がない分、株式会社より素早く設立できるのも合同会社の特徴です。
NPO法人
NPO法人のメリットは、非営利と公益性重視の会社形態が介護事業とマッチしやすく、利用者から信頼を得やすい点です。
設立費用が不要な点もNPO法人の特徴ですが、設立には10人以上の社員が必要であること、都道府県の認可が下りるまで6ヶ月ほどかかることなどがデメリットといえます。
一般社団法人
一般社団法人のメリットは、株式会社と比較して設立が簡単、かつ設立コストが15万円程度と安い点です。NPO法人と比較して事業の制限が少なく、収益事業も実施できます。
一方で、株式会社より知名度が低いこと、NPO法人より信用面では劣ることなどがデメリットとして挙げられます。
自治体と事前協議を実施する
デイサービスを開業するときは、自治体によっては届出を行う前に原則として事前協議が必要です。
事前協議とは、事業・サービスに使用する予定の建物が関係法令や設備基準などに適合しているかを確認するためのものです。事前協議が完了しないと申請できない場合があります。自治体のルールを、あらかじめチェックしておきましょう。
なお自治体によっては、事前相談や事前研修の機会を設けているところも存在します。
サービスを提供する物件を契約する
デイサービスを提供する物件を探し、事業所として利用できるかを検討しましょう。
物件を探すにあたっては、まず「用途地域の条件をクリアしているか」の確認が必要です。
都市計画法に基づき、その地域における土地の利用方法は決められています。デイサービスが行える地域に定められていないと、たとえよい物件があってもデイサービス用に使うことができません。
そして、提供するデイサービスによって必要な設備の基準もあります。
たとえば「食堂と機能訓練室の合計が、利用者定員1人あたり3㎡以上の面積であること」「消防法に基づいた必要な設備などを設けていること」などです。基準をクリアできる物件であることも確認しなければなりません。
また、立地条件はデイサービスの利用者数に影響を及ぼします。
アクセスの良さはもちろん、周辺にデイサービスを利用したい高齢者が多いか、高齢者の人口や世帯数はどうか、周辺地域に競合となるデイサービス事業所や介護施設、病院がないかなどはチェックしておきましょう。
自治体の公式サイトでは、周辺の介護サービスの数・場所・事業内容といった統計データを確認できます。自身でマーケティング調査を行ったり、業者に調査を依頼したりなどを行いながら、自社に最適な物件を探して契約します。
設備基準を満たす内装工事を行う
物件を選んだら、先述した設備基準を満たす内装工事を実施します。
内装工事によって設備基準を満たせない場合は、指定事業者として認められません。内装工事を依頼するときは、介護事業所の内装工事の実績がある業者を選ぶと工事をスムーズに進めやすくなります。
自治体へ指定申請を行う
事業計画・物件・内装工事などの準備が整ったら、都道府県または市町村にデイサービスの事業所としての指定申請を行います。各自治体の公式サイトから申請書のフォーマットをダウンロードできるので、自宅でも申請書の作成は可能です。
なお、東京都など指定申請前の事前研修受講が必須になっている自治体もあります。事前研修の有無や申し込み手続きの詳細は、各自治体にご確認ください。
デイサービスの開業にかかる費用
デイサービスの開業には、数百万円から1,000万円程度、事業所の規模や導入設備、従業員数によっては数千万円以上の費用がかかると考えられます。
詳細な金額は事業者や事業計画などによって異なるので、物件の家賃や工事の見積もりなどを都度確認しましょう。
以下では、デイサービス開業にかかる主な費用について解説します。
法人設立費
デイサービス事業を立ち上げるには法人格が必要になるため、法人設立費がかかります。
株式会社なら20万円から25万円にプラスして、別途資本金が必要です。合同会社なら約10万円、一般社団法人なら10万円から15万円、NPO法人の場合は無料です。
改修費
デイサービスとして使える事業所にするには、建物の改修が必要になります。
建物の改修は設備基準にも関わってくるため、十分な金額を準備してハード面の整備を行いましょう。改修費は200万円から500万円ほど、基準を満たしつつ利用者の環境や設備を整えるなら1,000万円から1,500万円ほどを見積もっておくのがよいでしょう。
大規模な施設なら、2,000万円以上かかることも想定されます。
人件費
人の手によるサービスが主流のデイサービスは、スタッフの質が介護サービスの質に直結します。人件費をかけて優秀な人材を確保したり、スタッフのモチベーションを高めたりすることも重要です。
開業してから運営が軌道に乗るまでは、数ヶ月分の人件費を準備しておきましょう。たとえば、月給25万円の従業員を10人雇うなら単純計算で月250万円、1年で3,000万円かかります。
固定費としては高額であるものの、安定した運営のために十分な人件費を準備しておくことをおすすめします。
車両費
サービス利用者を送迎するための車両費もかかります。
車種にもよりますが、1台あたり100万円から300万円ほどを見積もっておきましょう。利用者を乗せる車だと考えると、ある程度質や大きさの面で安心感のある車両を準備しておくべきです。
また、送迎用車両は利用者の身体状況に合わせて改造を施すケースがほとんどであるため、改造にかかる費用も必要です。他にもガソリン代・自動車税・保険料などのランニングコストも想定しておきましょう。
運転資金
デイサービス事業を始めるときは、開業にかかる費用だけでなく、介護報酬が入るまでの運転資金の準備も欠かせません。最低でも3ヶ月分の運転資金を見込んでおきましょう。
とはいえ、利用者がいきなり定員に達するケースを楽観的に想定するのではなく、しばらく定員に達しなくても運転できる資金を確保しておくのを推奨します。半年から1年分を準備しておくのが一般的です。
1ヶ月にどれくらいのコストがかかるかを計算しておき、コストに応じた運転資金を用意しておきましょう。
資金調達の選択肢
デイサービス事業の開業費や運転資金を準備するには、自己資金だけでなく、さまざまな資金調達法を駆使してお金を集めるのが一般的です。
ここからは、デイサービス事業に必要なお金を集めるための資金調達法を紹介します。
資金調達の選択肢
- 自己資金を用意する
- 金融機関から融資を受ける
- 中小企業労働環境向上奨励金を利用する
- 各種助成金・補助金を申請する
自己資金を用意する
デイサービス事業の開業・運転を自己資金でまかなえるなら、リスクや労力を抑えた安全な資金繰りが可能になります。自己資金なら、融資のような返済や補助金のような審査もありません。
とはいえ、自己資金以外の選択肢を取らなければ、生活が圧迫されたり、資金が尽きた際にトラブルの元になったりする恐れがあります。
自己資金をどの程度事業へ回せるかは、事前に確認しておきましょう。
金融機関から融資を受ける
事業者の資金調達手段として一般的なのは、金融機関(銀行、信用金庫など)からの融資です。
融資を受けるには、金融機関から「このデイサービス事業ならお金を貸しても問題ない」と信用してもらうことが大切です。
将来性や実現性のある事業計画書、現在の資産状況(自己資金の金額など)、経営者の経歴などを明示し、融資先として価値があることを伝えましょう。
中小企業労働環境向上奨励金を利用する
「中小企業労働環境向上助成金」とは、特定の事業を営んでおり、かつ雇用管理制度(評価・処遇制度、研修体系制度、健康づくり制度)の導入などを行う事業者を助成するための制度です。
出典:厚生労働省「労働者が働きやすい職場づくりに取り組む中小企業事業主の皆さまへ」
労働環境の向上を図るために雇用管理の改善につながる制度などを導入し、適切に実行したときは30万円または40万円の助成金を受け取れます。この助成を受けるには、雇用管理制度整備計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けなければなりません。
また介護関連事業主なら、介護労働者の身体的負担を軽減する目的で新たに介護福祉機器を導入し、労働環境の改善が見られた場合に助成金を受け取ることが可能です。助成金は介護福祉機器の導入費用の2分の1(上限300万円)です。
この助成を受けるには、導入・運用計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。
各種助成金・補助金を申請する
デイサービス事業の開業時には、さまざまな助成金や補助金を活用できます。
助成金や補助金は毎年内容が変わったり、新しい制度の新設と古い制度の削除が交互になったりなど、常に新しい情報が更新されています。そのときどきの助成金・補助金制度を確認し、活用を検討してみてください。
助成金・補助金は融資と異なり、交付された後も返済する必要がありません。そのため、リスクの低い資金調達手段といえます。
ただし、助成金・補助金は収益扱いになるので、交付を受けた金額には所得税や法人税がかかります。また、要件を満たしたり補助金審査で採択を受けないと交付されなかったりなど、交付を受けるまでのハードルの高さは留意すべきでしょう。
以下では、デイサービス事業で活用しやすい助成金・補助金を紹介します。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金とは、職業経験の不足などから就職に苦戦している求職者などを対象とした制度です。無期雇用契約へ移行することを前提に、一定期間トライアル雇用を行う事業者を助成します。
採用強化を考えているデイサービス事業者に合う助成金制度といえます。
出典:厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」
IT導入補助金
デイサービスの設備にIT関係のツールやシステムを導入したいときは、IT導入補助金が活用しやすいでしょう。業務効率化のためのITツール導入だけでなく、インボイス制度対応のためのITツール導入も補助金の対象になります。
出典:IT導入補助金
ものづくり補助金
介護現場の働き方改革や賃上げなどに対応するために、革新的なサービス開発やプロセス改善を行うための設備投資を行うときは、ものづくり補助金の対象になります。
介護見守りシステム構築、介護事業会計に対応する会計ソフト導入、デイサービスに付随した配食サービスの展開などが、補助対象の例として挙げられます。
なお、保険診療事業に対する補助は「国の公金の二重支給」にあたるため、補助対象外となっています。
出典:ものづくり補助金総合サイト
まとめ
デイサービス事業を開業するには、法人格が必要です。都道府県や市町村から介護報酬を得られるデイサービスを始めたい人は、人員基準・設備基準・運営基準を満たし、指定事業者として認められるようにしましょう。
法人を設立するときは、株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人のうち自社が求める特徴を持つ法人格を選ぶことが大切です。
デイサービス事業の安定化や拡大を目指すなら、金融機関からの融資や助成金・補助金といった資金調達手段の利用も検討してみてください。
会社設立の流れや具体的な手続きについて知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説 | 株式会社を設立するメリットや注意点についてもまとめています」をあわせてご確認ください。
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監修 亀山 健悦
市役所退職後、行政書士として個人開業。相続、遺言作成支援、成年後見制度利用支援、福祉サービス提供のための法人設立、障害福祉サービス事業所指定申請業務など、福祉・介護分野の業務を中心に受注。社会福祉士として障害者支援や医療福祉相談業務のほか、スクールソーシャルワーカーなどにも従事。