監修 司法書士 大﨑 麻美(おおさき あさみ)
法人設立ワンストップサービスとは、法人設立に必要な手続きのすべてをインターネット上で行えるサービスです。
本記事では、法人設立ワンストップサービスの概要から利用の流れや注意点まで、初めて会社を設立する人にもわかりやすく解説します。
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目次
- 法人設立ワンストップサービスとは
- 法人設立ワンストップサービスのメリット
- 法人設立にかかる時間や手間を削減できる
- 印鑑届出の負担が軽減される
- 法人設立ワンストップサービスで可能な手続きの種類
- 国税に関する届出
- 雇用に関する届出など
- 法人設立ワンストップサービスの利用の流れ
- 1.事前に必要なものを用意する
- 2.法人設立ワンストップサービス内の「かんたん問診」を行う
- 3.必要な手続きの項目を入力して申請する
- 法人設立ワンストップサービス利用時に知っておきたいポイント
- 会社を設立する代表者のマイナンバーカードを取得しておく
- マイナポータルアプリをインストールしておく
- メンテナンス期間中はサービスを利用できない
- まとめ
- 自分でかんたん・あんしんに会社設立する方法
- よくある質問
法人設立ワンストップサービスとは
法人設立ワンストップサービスとは、定款認証をはじめ、法人設立登記の申請や法人設立後の手続きまでマイナポータル(※)上でワンストップで行えるサービスです。
2020年1月からサービスの提供が開始され、2021年2月には定款認証や登記手続きも追加されました。これによって、法人設立に必要なすべての手続きをオンラインで完結できるようになっています。
※子育てや介護などの行政サービスの検索やオンライン申請、行政からのお知らせの受領などができる政府運営のオンラインサービスです。
出典:マイナポータル「マイナポータルとは?」
従来、会社を設立する際には法人設立における各種手続きのために、以下のようなさまざまな関係機関へ直接訪問しなければなりませんでした。
会社設立時に訪問が必要な箇所
- 法務局
- 税務署
- 都道府県税事務所
- 年金事務所
- 労働基準監督署
- ハローワーク
- 各行政機関
また、法人設立ワンストップサービスが登場する前もオンライン申請は利用可能でしたが、複数のシステム(登記ねっと、e-Tax、eLTAX、e-Gov)を使い分ける必要があり、手間のかかるものでした。
法人設立ワンストップサービスの提供開始によって、複数システムを使い分けることなくオンライン上で手続きを進められるため、従来に比べて手間や時間を削減できるようになったのです。
【関連記事】
法人登記のオンライン申請とは? 申請方法やメリットについて解説
法人設立ワンストップサービスのメリット
法人設立に際してはさまざまな手続きが必要ですが、それぞれの手続きにおいてはこれまで煩雑なフローを経なければなりませんでした。
法人設立ワンストップサービスの登場により、法人設立時に必要な手続きをよりスムーズに手軽に進めることができるようになりました。
法人設立ワンストップサービスの具体的なメリットは、以下のとおりです。
- 法人設立にかかる時間や手間を削減できる
- 印鑑届出の負担が軽減される
法人設立にかかる時間や手間を削減できる
すでに説明したように、法人設立ワンストップサービスはオンライン上で法人設立に必要なさまざまな手続きをまとめて行えるため、時間や手間を削減できます。
24時間365日オンラインで申請できるので、都合のよいタイミングで法人設立の手続きを進められることもメリットのひとつです。
なお、以前は法人設立登記が完了するのに7日程度かかるのが一般的でした。この所要期間をオンライン・ワンストップ化で改善し、原則3日以内、最短で24時間以内の処理完了を実現しています。
印鑑届出の負担が軽減される
オンライン申請ではなく紙媒体で法人登記する際には、印鑑届出(代表印登録)は任意になりました。印鑑届出をする場合でも、代表の印鑑証明書をオンライン上で送信することが可能です。
一方、窓口申請や郵送申請では印鑑届出が必須であり、印鑑証明書の原本提出が必要です。
なお、法人設立時に必要な取締役や代表取締役の就任承諾書にかかる個人の印鑑証明書に関しても、オンライン申請であれば電子証明書を利用するため提出不要です。
法人設立ワンストップサービスで可能な手続きの種類
法人設立ワンストップサービスで可能な手続きは、以下の4種類です。
- 国税に関する届出
- 雇用に関する届出
- 定款認証・設立登記
- GビズIDの発行
サービスの提供が開始された段階では会社設立後の手続きのみしか行えませんでしたが、2021年2月26日からは定款認証や設立登記、GビズIDの発行もできるようになっています。
なおGビズIDとは、さまざまな行政サービスにログインできる認証システムのことです。
国税に関する届出
法人設立ワンストップサービスでは、以下のような国税に関する手続きが行えます。
税目 | 手続名 |
法人税 | 法人設立届出 |
定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請 | |
青色申告の承認申請 | |
事前確定届出給与に関する届出 | |
棚卸資産の評価方法の届出 | |
有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出 | |
減価償却資産の償却方法の届出 | |
消費税 | 消費税課税事業者選択届出 |
消費税の新設法人に該当する旨の届出 | |
消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出 | |
消費税課税期間特例選択・変更届出 | |
消費税簡易課税制度選択届出 | |
消費税申告期限延長届出 | |
適格請求書発行事業者の登録申請 | |
源泉所得税 | 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請 | |
- | 電子申告・納税等開始届出 |
雇用に関する届出など
法人設立ワンストップサービスでは、雇用に関する届出(年金事務所・ハローワーク)など、法人設立後に必要なすべての行政手続きを行えます。
届出 | 申請先機関 |
健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 年金事務所 |
保険関係成立届(継続)(一元適用) | 労働基準監督署 |
保険関係成立届(継続)(二元適用労災保険分) | 労働基準監督署 |
雇用保険の事業所設置の届出 | 公共職業安定所 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 公共職業安定所 |
2021年2月26日からは、定款認証・設立登記・GビズIDの発行なども対象となりました。
出典:国税庁「法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大されました」
法人設立ワンストップサービスの利用の流れ
法人設立ワンストップサービスを利用する手順は以下のとおりです。
- 事前に必要なものを用意する
- 法人設立ワンストップサービス内の「かんたん問診」を行う
- 必要な手続きの項目を入力して申請する
順番に見ていきましょう。
1.事前に必要なものを用意する
法人設立ワンストップサービスを利用する際に準備するものは以下のとおりです。
事前準備で必要なもの
- 設立会社代表者のマイナンバーカード
- インターネットアクセス端末(パソコン、NFC対応スマートフォン・タブレット)
- インターネットアクセス環境
- IC カードリーダー(パソコン・タブレットから利用する場合)
- マイナポータルアプリ
ここで注意したいのが、マイナンバー(番号)だけや個人番号通知書やマイナンバーが記載されている他書類などではなく、ICチップがあるマイナンバーカードそのものが必要になる点です。
また、NFC(非接触ICチップをかざすだけで通信できる通信規格)対応スマートフォンではなくパソコン・タブレットから申請を行う場合は、公的個人認証サービスに対応したIC カードリーダーが必要です。
2.法人設立ワンストップサービス内の「かんたん問診」を行う
必要なものの用意ができたら、インターネットアクセス端末から法人設立ワンストップサービスページへアクセスしましょう。
ページにアクセスしたら、画面中央に表示されている、「かんたん問診・申請」ボタンをクリックします。「法人設立関連手続かんたん問診」に対して、はい・いいえ・わからないで答えていくことで「問診結果」に必要な手続きが表示されます。
リストアップされた結果を基に申請・届出を行う手続きを選択し、「申請する」ボタンをクリックします。
3.必要な手続きの項目を入力して申請する
サービス利用規約に同意したら、利用者登録情報の読み取りを行い、氏名や住所、性別、生年月日を自動で入力します。
選択した手続きの申請情報を入力したら、マイナンバーカードで電子署名を行い、申請先機関への提出に進みます。
具体的な操作については法人設立ワンストップサービスのマニュアルで詳しく解説されているので、参考にしてください。
出典:マイナポータル「法人設立ワンストップサービス 詳細マニュアル」
法人設立ワンストップサービス利用時に知っておきたいポイント
法人設立ワンストップサービスを利用する際には、事前に準備をしておくことで一気にまとめて必要な申請を終わらせることができます。
サービス利用時に必要な準備や、サービス利用時に知っておきたい以下のポイントを紹介します。
- 会社を設立する代表者のマイナンバーカードを取得しておく
- マイナポータルアプリをインストールしておく
- メンテナンス期間中はサービスを利用できない
会社を設立する代表者のマイナンバーカードを取得しておく
法人設立ワンストップサービスを利用する際には、会社を設立する代表者本人の「マイナンバーカード」が必須です。家族や友人、従業員など、代表者以外のマイナンバーカードを使うと、別の人が会社の代表者となってしまいます。
また、「1.事前に必要なものを用意する」でも説明したように、マイナンバーを申請書に記入するなどというわけではなく、マイナンバーカードに搭載されたICチップを読み取って使うためマイナンバーカードそのものが必要となります。
マイナンバーカードの取得は時間がかかることもあるため、余裕を持って取得しておくことをおすすめします。
マイナンバーカードを取得する方法は以下のとおりです。
マイナポータルアプリをインストールしておく
法人設立ワンストップサービスを利用する際には、システムに接続するためにマイナポータルアプリをインストールする必要があります。
マイナポータルアプリをインストールできるページは以下のとおりです。
マイナポータルアプリをインストールできるページ
古いOSの端末やブラウザによっては利用できないケースがあるため、以下の推奨動作環境に対応しているOS・ブラウザを利用するとトラブルが起きにくいでしょう。
また、OSやブラウザで新しいバージョンがリリースされると、マイナポータルアプリが対応するまでに時間がかかる場合があります。公式サイトで最新の推奨動作環境を確認し、推奨環境内で作業するのがよいでしょう。
動作環境(2023年11月10日時点)
端末 | OS | ブラウザ |
Windows |
・Microsoft Windows 11 ・Microsoft Windows 10 ・Microsoft Windows 8.1 |
・Microsoft Internet Explorer 11 ※Windows11では利用不可 ・Microsoft Chromium版Edge 79.0.309.65以上 ・Chrome 69以上 ・Firefox 68以上 |
Macintosh |
・macOS Monterey(バージョン12.0以上) ・macOS Big Sur(バージョン11.0以上) ・macOS Catalina(バージョン10.15以上) |
・Safari ・Chrome 69以上 ・Firefox 68以上 |
Android | ・Android 6.0以上 | ・Chrome 69以上 |
iOS | ・iOS 13.1以上 | ・Safari 13以上 |
メンテナンス期間中はサービスを利用できない
法人設立ワンストップサービスは、メンテナンス期間中を除き、24時間365日利用できます。
ただし、メンテナンス期間中でも利用できる場合や、利用できても「申請状況の確認」の更新に時間がかかる場合があります。
メンテナンスの日時は、公式ホームページ上に記載されるので、随時確認しましょう。
なお、メンテナンスの終了は予定日時より長引く可能性もあるため、期限が定められている手続きについては時間に余裕を持って申請することをおすすめします。
まとめ
法人設立ワンストップサービスを利用すれば、定款認証から法人設立登記の申請、法人設立後の手続きまでをワンストップで行えます。
ただし、法人設立ワンストップサービスで行えるのは、会社設立における最後の手続きの部分だけです。
以下のような、会社設立の手続きまでに必要なステップは自分で行わなければなりません。
会社設立の手続き前に済ませる事項
- 会社設立に必要な基礎情報を決める
- 会社用の印鑑(実印)を作成する
- 定款を作成する
- 公証役場で定款の認証を受ける
- 資本金の払い込みを行う
- 登記申請書類を用意し登記申請する
- 会社を設立した後に必要な手続きをする
登録無料のfreee会社設立では会社設立に必要な書類を無料で作成・出力できるため、設立にかかるコストや手間を削減できます。
また、法人設立ワンストップサービスでは質問に答えることでどのような届出が必要なのかを教えてもらうことができますが、質問や専門用語の意味がわからないこともあるでしょう。起業ダンドリコーディネーターを利用すれば、専任パートナーが設立準備から登記後に必要な手続きまでを完全無料でサポートします。
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- 設立会社の代表者のマイナンバーカード
- インターネットアクセス端末(パソコン、NFC対応スマートフォン・タブレット)
- インターネットアクセス環境
- IC カードリーダー(パソコン・タブレットから利用する場合)
- マイナポータルアプリ
詳しくは記事内「1.事前に必要なものを用意する」をご覧ください。
監修 司法書士 大﨑 麻美(おおさき あさみ)
日系エアラインのCAを経て、33歳で司法書士資格を取得。2012年にあさみ司法書士事務所を設立、不動産登記、商業登記をメインとし司法書士として10年のキャリアを積む。2022年末より海外に移住し、法律・不動産専門のライターとして活動。