投資会社の設立を考えた場合、設立に必要な手続きだけではなく、設立によって起こるメリットとデメリットの把握が必要です。たとえば、節税効果や社会的信用度などが上がる反面、費用や事務処理などの負担が増えます。
本記事では、会社設立では何が必要となり、投資会社を設立することでどのような変化が生じるのか、そして会社設立のタイミングや会社設立の手順も含めて詳しく解説していきます。
目次
投資会社とは
投資会社とは、投資家(資金提供者)から資金を集め、利益を上げる会社のことを指し「ベンチャーキャピタル」ともいわれます。ただし、株式会社などを法律で規定している会社法には投資会社という会社形態は存在せず、厳密な定義が難しいのも事実です。
投資会社とは、もともと、投資信託を発行している会社を指します。投資信託とは、多くの投資家(資金提供者)から集めた資金を専門家が運用し、得た利益を投資家(資金提供者)に分配する金融商品です。投資信託は証券会社だけではなく、銀行や郵便局などの金融機関による「販売会社」で購入できます。
また、投資においてよく耳にする用語の中に、投資ファンドがあります。投資ファンドとは「投資家(資金提供者)から集めた資金を投資や事業の運用によって収益化し、利益還元する仕組み」です。
そのため「資産運用のための投資を投資のプロに任せて利益を得ることを目的」とする投資信託は、ファンドの一種と解釈しても問題ないでしょう。
個人投資家が投資会社を設立するメリット
個人投資家が投資会社を設立することで、社会的信用度が向上し取引などが円滑に進行するなどのメリットがあります。しかし最も大きなメリットは、節税です。
経費計上や所得の分散などを含め、主に5つのメリットがあるので各メリットについて解説します。
節税効果が期待できる
上述したとおり、個人投資家が投資会社を設立する大きなメリットのひとつは、節税です。
個人投資家は所得税法に基づき税金を計算しますが、投資会社は法人税法に基づいて計算するため、 所得の金額が増えると法人税は所得税よりも税率が低くなる仕組みです。
ただし、投資会社を設立することで税金が安くなるなどのメリットがなければ投資会社を設立する意味がなくなります。 そのため、個人投資家として負担する所得税と、会社として負担する法人税を比較することは大切です。
また、事業の利益の大きさによって、適用される税率は変わります。たとえば、所得税は会社の利益が上がれば税率もあがる超過累進課税率を適用していますが、法人税は利益の大きさに関わらず、一定の税率である比例税率です。
そのため、利益が少ないうちは、個人投資家として所得税を支払うほうが税金の負担は少なくて済みます。税金面だけで考えると、利益が十分でていないうちは法人化しないほうがよいでしょう。
経費として計上できる範囲が広がる
経費が増えることで、会社が納める税金の金額が少なくなります。そのため、経費として計上できる範囲の把握は把握することが重要です。
投資会社の設立により、社会保険料や生命保険料、ほかにも出張日当や一定の家賃、役員報酬や退職金なども経費として計上できます。
いくら会社に着ていくものであるからといって、会社の売上に繋がらないスーツ購入などの個人的な費用は、経費に計上できません。不正に経費として計上すると罰則が与えられるため、注意しましょう。
起業の準備から会社設立までにかかった登録免許税や発起人の報酬費用は、創立費として経費に計上できます。また、会社の設立から営業開始までにかかった印鑑や名刺、広告宣伝費用も、開業費として経費に計上できます。
さらに、個人投資家は確定申告の際、支払った社会保険料を社会保険料控除として計算しますが、会社においては会社が負担する保険料の2分の1は会社経費です。
そして、残りの個人負担分を社会保険料控除として計算する仕組みから、厚生年金に加入させてもらえるだけでなく、社会保険料の個人負担まで安くなるメリットがあります。
所得の分散が可能になる
個人投資家として個人事業で得る所得は、収入から経費を引いた額です。しかし、会社を設立して法人化すると、会社の所得から役員報酬として受け取ることで、給与所得控除が受けられます。
法人で得た収入から法人による経費を引いた額に対して、さらに給与所得控除を受けられるため、所得にかかる税金を抑えられるでしょう。投資会社の設立により、投資家本人の役員報酬だけでなく、家族に支払う給与も経費として処理が可能です。
個人事業主である個人投資家が家族に対して、専従者給与を家族に支払う際には、多くの制約がある中で経費として計上します。
しかし、投資会社からの給与支給に関しては、業務内容に不釣り合いな高額な場合を除き、基本的には経費として処理が可能です。そのため、投資家本人と家族による所得の分散が実現できます。
家族が一定の労働を行っている場合、投資家本人の給与の一部を家族に分散することで、全体の所得税率を下げられるでしょう。
赤字繰り越しができる
個人投資家が青色申告をしていれば、たとえ損失が発生したとしても、翌年以降の3年間は繰り越せます。白色申告については、赤字の繰り越しはできません。
法人であれば、青色申告をした個人投資家より、長い期間にわたり損失を繰り越せるメリットがあります。赤字が出た翌年度以降、10年間繰越すことが可能となるからです。ただし、平成30年4月1日前に始めた事業に生じた赤字については、10年ではなく9年となるため注意しましょう。
また、法人化する前の個人投資家時代による赤字繰り越しについては、法人化して引き継ぐことはできません。しかし、役員報酬の給与所得からは控除ができます。個人としての確定申告を行うことで、個人投資家時代の赤字を法人化して得た利益からの相殺が可能です。
ただし、個人投資家時代の繰り越しは、あくまでも3年間との点にご注意ください。
社会的信用度が上がる
投資会社の設立により、個人投資家よりも相対的な信用度を高められることもメリットのひとつです。
会社の基本的な概要が登記によって公示され、登記簿謄本で会社の証明ができることでも、社会的信用度は上がります。
会社としての経理会計処理は、個人事業主よりも厳格な規定に基づいた処理が実行されているので、法人の財務内容は決算書を通じて明確に確認することが可能です。
また財務内容が明確に提示されることで、社会的信用度の向上に繋がります。法人は個人より信用度が高いと判断されやすいため、取引や金融機関の借入などもスムーズに運べる傾向です。
しかし、投資家としてのスキルや成績が法人化をするレベルに達していなければ、逆に投資会社としての社会的信用度は低下する可能性があるので、注意しましょう。
個人投資家が投資会社を設立するデメリット
投資会社を設立するメリットは多くありますが、それと同時に今まで存在しなかったコストや支払いが発生したり、遵守しなければならない手続きが増えたりなど、デメリットも必然的に生まれてしまいます。
具体的にどのようなデメリットの可能性があるかについて、それぞれ解説します。
会社の設立や維持費用が発生する
投資会社を設立すると、個人投資家のときにはなかった支払いが発生します。たとえば、法人事業税は所得(利益)がない年には発生しません。
しかし、均等な負担を求められる均等割で構成されている法人住民税は、一定の所得があることで前年の所得の増減に関わらず、赤字であっても支払いを求められます。
また、地域によっては事業者税が課せられる可能性もあるため、会社をどの地域に置くかも大切な要素です。
このように会社設立時や運営期間中には、様々な経費が発生します。また会社の廃業する際にも、会社設立時に登記した内容を削除するための登記費用が発生します。
社会保険料の負担が必須になる
個人事業主の場合は、従業員が5人に満たなければ社会保険の加入をする必要はありません。
しかし投資会社を設立すると、たとえ代表者が1名であったとしても社会保険に強制的に加入しなければなりません。これは利益が出ていないときにも負担する必要があるため、デメリットのひとつとなるでしょう。
また、社会保険に加入する場合の手続きや給与と保険料の算出が必要となるため、時間と手間も必要です。社会保険料を少しでも抑えたいと考えた場合、役員報酬を支払わないことによって社会保険料の負担を抑えることは可能です。
ただし、支払われなかった役員報酬は会社の利益として計上しなければなりません。そして、計上された利益には法人税などが課税されますが、役員報酬にかかる社会保険料よりも少ない支払額で済みます。
決算申告など事務処理が増える
個人投資家であれば個人で確定申告を作成し、税務署に提出するだけで済みますが、法人になると貸借対照表や損益計算書といった決算書類を作成して提出する必要があります。
決算は、領収書や請求書を元に会計ソフトにデータを入力し、その後決算書や確定申告者の作成をするのが一般的な流れです。
また、会社の税金申告と納税については、決算日の翌月から2ヶ月以内の申請が必要となります。期限を過ぎてしまうと、延滞金などの罰則があるため注意しましょう。
会社の設立によって課税される主な税金は次の5つです。
会社の設立によって課税される主な税金
- 法人税
- 消費税
- 法人事業税
- 都道府県民勢
- 市町村民税
投資会社においては、支払う税金によって提出する先が税務署以外にあるなど、手続きにおいて複雑な面がでてきます。そのため、手続きの把握が難しければ、税理士など専門家の力を借りましょう。
個人投資家が投資会社を設立する目安
税金面での優遇や社会的信用の確保などの理由で、利益が一定額を超えた個人投資家の多くは、投資会社の設立を考え始めます。
起業したほうがよいかどうかは、単純に税率だけで決めることはできません。会社設立を検討するには、所得が700万円〜900万円になった段階がベストであり、投資会社を設立するタイミングとしても良いとされています。
また、法人を設立すると登録免許税などの費用がかかるだけではなく、今までは課せられていなかった税金が課せられるでしょう。
一方で、法人として経費が認められやすくなることから節税に繋がるケースもあります。
投資会社を設立する手順
投資会社を設立するまでには、さまざまな手順を踏まなければなりません。本記事では一般的な株式会社の設立方法について解説します。
会社の基本情報を決める
会社設立において、主に次の基本的な7つの事項を決定し、企業の根本原則を記載する定款(ていかん)を定める必要があります。
- 会社形態
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 会社設立日
- 会計年度
会社の基本的な事項を決めるにあたって、それぞれに注意すべきことがあります。
たとえば、商号(会社名)については設立後に変更が可能ではありますが、商業権を侵害しないように注意する必要があります。
また、事業目的については、定款に書かれている事業以外は行えない点に注意して記載してください。ただし、事業目的をみたときに、どのような会社であるかわかりにくいと社会的な信用度が低くなる可能性があるため、注意が必要です。
本店所在地は、バーチャルオフィスでも可能ですが設定後に変更すると再登録をしなければならないため、登録どきにしっかりと検討しましょう。
資本金は1円から可能とはなっていますが、事業の安定性や社会的信用度について不安を感じさせてしまう可能性があります。
それぞれの注意するべき点や手続きの仕方については、下記関連記事で詳しく解説しているため、ぜひご確認ください。
【関連記事】
会社設立の手続きがわかる!株式会社の作り方を流れに沿って解説
定款を作成し公証役場で認証を受ける
会社を設立するためには、定款(ていかん)の作成が必要です。定款(ていかん)とは、会社の目的や事業内容、役員の任期などについて規定した書類です
また、株式会社を設立するのであれば、作成した定款を公証役場に提出し、認証を受けなければなりません。
定款を認証して公的に証明することは、定款の改ざんや紛失、社内紛争の抑止となります。また、定款に記載すべき事項は法律によって決まっています。そのため、記入漏れがあると受理してもらえないため、提出前にしっかり確認しましょう。
認証には、謄本手数料や印紙代などの手数料がかかります。設立する会社の資本金によって違いがあるため、事前に調べることが大切です。
定款は「会社の憲法」とも呼ばれるほどの重要な書類となります。定款の詳しい解説や認証方法については、下記の関連記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項について詳しく解説
必要書類を用意し登記申請する
登記申請には、主に10種類の書類が必要です。
登記申請に必要な書類
- 登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙を貼り付けた納付用台紙
- 定款
- 発起人の決定書
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑登録証明書
- 資本金の払込があったことを証する書面
- 印鑑届出書
- 「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R
それぞれの書き方や入手方法について詳しく知りたい方は、別記事「会社設立に必要な書類は全部で10種類! 書き方や提出方法についてわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
まとめ
会社設立により、節税効果を狙ったとしても、赤字であっても支払わなければならない税金を背負うことにもなります。会社を設立するにあたって、デメリットを上回るほどのメリットがあるかを考えましょう。
また、会社設立のタイミングも大切です。十分な利益が出ていない段階では、節税どころか課税された税金に苦しめられたり、社会的信用度の低下に繋がったりする可能性があります。事業の現状を把握したうえで、会社設立を検討しましょう。
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