起業する際には、経営に必要な資金の確保が課題になることがあります。資金の出資は投資家や金融機関だけではなく、国や自治体から補助金という形で集めることも可能です。
国や自治体は、魅力的なビジネスプランや商品・サービスを提供できる起業家を支援するために「創業補助金」と呼ばれる支援制度を設けています。創業補助金は、中小企業庁が毎年実施していますが、十分に活用されていないのが現状です。
本記事では、創業補助金の詳細と活用できる種類と利用方法について詳しく解説します。
起業の流れや具体的な手続きについて知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説 | 株式会社を設立するメリットや注意点についてもまとめています」をあわせてご確認ください。
目次
- 創業補助金とは
- 創業補助金の概要と目的
- 補助金と助成金の違い
- 創業補助金のメリットとデメリット
- 創業補助金の申請期間
- 創業補助金の種類
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
- その他創業支援制度
- 創業補助金の申請から交付までの流れ
- 事業計画書と各補助金の申請書を提出する
- 資格審査と書面審査を受ける
- 採択されれば約6ヶ月の経費補助期間となる
- 経費補助期間後に報告書を提出する
- 補助金が交付される
- 創業補助金の活用時の注意点
- 補助金の支出時期を把握しておくこと
- 支払の証拠書類は確実に保管しておくこと
- まとめ
- 会社設立にかかるコストを削減する方法
- よくある質問
創業補助金とは
創業補助金とは、起業する人を支援する補助金施策です。創業補助金は、創業時に必要となる必要経費の一部を国や地方自治体が補助することを目的としています。2017年までは「創業補助金」という名称で呼ばれ、2018年以降は「地域創造的起業補助金」という名称に変わっています。
創業補助金の概要と目的
創業補助金の目的は、国や地方自治体の支援により、個人やビジネスが必要とする
さまざまな費用を軽減し補助することで、新たな雇用機会を生み経済を成長させることです。
また創業補助金は、一般的に返済の必要がありません。対象となる経費は、交付決定日から事業期間終了までの間に発生した、対象事業計画上の人件費・事業費です。ただし、対象経費であっても補助事業以外で使用した経費は補助の対象外となります。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金は、いずれも原則として返済する必要がないという点で共通しています。
ただし、補助金は、明確な政策目標に基づいて対象の事業に対して交付されるものであり、あらかじめ予算や件数に上限が設定されています。補助を受けるには申請事業が採択される必要があり、申請すれば必ず交付されるというわけではありません。
一方、助成金は、雇用関連が主な内容であり、要件を満たしていれば原則交付されます。
創業補助金のメリットとデメリット
創業補助金を利用することのメリットとデメリットについて解説します。
創業補助金を利用するメリットは主に以下のとおりです。
創業補助金のメリット
- 融資ではなく交付されるお金のため、返済不要であり事業運営に充てることができる
- 補助金や助成金の種類によっては、大きな金額がもらえる場合も多い
- 助成金の場合、要件を満たし申請すると高確率で受給できる
一方、創業補助金を利用するデメリットは以下のとおりです。
創業補助金のデメリット
- 補助金の場合、申請から交付までに時間や手間がかかる
- 要件が厳しく採択率も低いため、申請しても受給できない可能性がある
- 即効性がない(申請が通ってもすぐにお金をもらえるわけではない)
- 補助金交付後5年間は、事務局に事業状況を報告する必要がある
上記は一般的なメリットとデメリットの例ですが、補助金によっては異なる場合があります。創業補助金の利用を検討する際は、詳細な要件を事前にしっかりと確認し、自身のビジネスに最も適した補助金プログラムを選ぶようにしてください。
創業補助金の申請期間
創業補助金の申請は、常に受け付けているわけではありません。
申請期間は、毎年春頃の1ヶ月程度の期間において受け付けていますが、年度によって期間は異なるため注意が必要です。
中小企業庁のサイトや市区町村の産業振興課などの窓口で、募集状況を確認しましょう。
創業補助金の種類
補助対象者や対象経費、補助事業によって異なる5つの補助金を解説します。
創業補助金の種類
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 事業継承・引継ぎ補助金
1.事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済構造の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築や新たな事業分野(新分野展開・業種転換・事業再編など)に積極的な企業を支援するための補助金です。
出典:事業再構築補助金
2.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が今後直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃金引上げ、インボイス導入など)に対応するための販路開拓・商品開発・業務効率化などの取り組みにかかる経費の一部を負担する補助金です。
出典:小規模事業者持続化補助金(一般型)
3.IT導入補助金
IT導入補助金とは、ITツールを導入したいと考えている中小企業や小規模事業者が利用できる補助金です。 詳しくはこちらの記事で紹介しています。
【関連記事】
IT導入補助金の最新スケジュールや申請方法は?実質75%OFFでfreee製品の導入できる!
IT導入補助金を活用してインボイス制度に対応する方法とは?
4.ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは、中小企業や小規模事業者が取り組む革新的な「サービス開発」・「試作品の開発」・「生産プロセスの改善」を行うための設備投資などを支援する補助金です。
出典:ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト
5.事業承継・引継ぎ補助金
事業継承・引継ぎ補助金とは、事業承継を契機として経営革新などを行う中小企業や、M&Aによる経営資源の引き継ぎを行う中小企業に対して、その取り組みの一部が対象となる補助金です。
出典:事業承継・引継ぎ補助金
その他創業支援制度
企業の設立は、雇用創出や地域雇用の促進につながり地方創生となることから、各自治体ではさまざまな創業支援制度があります。
各自治体の創業支援制度の一例に下記のようなものがあります。
自治体ごとの創業支援制度
- (東京都)商店街起業・承継支援事業
- (名古屋市)名古屋市スタートアップ企業支援補助金
- (大阪市)大阪市イノベーション創出支援補助金
創業補助金の申請から交付までの流れ
創業補助金の申請から交付は、以下の流れとなります。
創業補助金の申請の流れ
- 事業計画書と各補助金の申請書を提出する
- 資格審査と書面審査を受ける
- 採択されれば約6ヶ月の経費補助期間となる
- 経費補助期間後に報告書を提出する
- 補助金が交付される
1.事業計画書と各補助金の申請書を提出する
常に申請を受け付けているわけではないため、毎年春頃の1ヵ月程度の募集期間中に、事業計画書と申請書類を認定市区町村の当該窓口に提出します。
または、地域創造的起業補助金事務局の特設サイトから電子申請することも可能です。
2.資格審査と書面審査を受ける
認定市区町村より、募集対象に適合する企業か資格審査が行われ、資格審査に適合し通過すれば書面審査を受けます。
審査には、およそ1~2ヶ月ほどかかり書面で採択の可否が通知されます。
3.採択されれば約6ヶ月の経費補助期間となる
審査を通過し採択されれば約6ヶ月の経費補助期間となります。
経費補助期間内の経費として計上すべきものについては、領収書や請求書などの証拠書類を保管し、いつでも参照できるよう整理しておきます。
なぜなら、補助金をもらう代わりとして、報告書の作成や支出金額および証拠書類の提出が求められるからです。
4.経費補助期間後に報告書を提出する
約6ヶ月間の経費補助期間終了後、使用した経費に関する報告書と証拠書類を提出します。報告書の審査には数ヶ月を要し、途中で不備が見つかった場合は修正が必要となるため再提出を求められます。
5.補助金が交付される
審査において、経費が目的どおりに使用されたことが確認されると補助金が交付されますが、補助金交付後5年間は、事務局に事業状況を報告する必要があります。
また、一定以上の収益がある場合では、交付した補助金を上限に一部の返納義務が発生することがあります。
創業補助金の活用時の注意点
創業補助金の活用について、いくつかの注意点を確認することが大切です。応募する前に以下の点を確認しておきましょう。
活用時の注意点
- 補助金の支出時期を把握しておくこと
- 支払の証拠書類は確実に保管しておくこと
1.補助金の支出時期を把握しておくこと
補助金が支給される対象期間が設けられていることが多いため、その期間以外の支出については、補助金をもらうことができません。具体的な補助金の支給日に関する条件を把握し、起業するために必要な物品や備品などの購入は期間内に完了できるよう、計画的に実施することが必要です。
2.支払の証拠書類は確実に保管しておくこと
会社設立に関する支出があった際、経費として計上すべきものについては、支払伝票や領収書などの証拠書類を保管し、いつでも参照できるよう整理しておきます。
なぜなら、国などの公的資金を財源とした補助金をもらうためには、その代わりとして、報告書の作成や支出金額および証拠書類の提出が求められるからです。さらに、補助金の支給先となった会社に対しては、将来、会計検査院の調査が入る可能性も考えられます。
まとめ
創業補助金とは、起業する人を支援する施策のひとつであり、創業時に必要になる経費の一部を国や地方自治体が補助する制度として、創業や新たな雇用を促進し経済活性化を図ることが目的です。
補助金を受けることで、事業運営に充てることができるなどのメリットがありますが、申請から交付までに費やす時間や手間がかかり、補助金交付後も事務局に事業状況を報告するなどのデメリットもあるため、申請前には十分な確認が必要です。
創業補助金は、補助対象者や対象経費、補助事業または自治体によってさまざまなものがあるため、創業前に活用を検討されてみてはいかがでしょうか。
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よくある質問
創業補助金はどのような種類がありますか?
補助対象者や対象経費などによって異なる5つの補助金があります。
創業補助金の種類
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 事業継承・引継ぎ補助金
詳しくは記事内「創業補助金の種類」をご覧ください。
創業補助金の申請に必要な書類は何ですか?
事業計画書と申請書類を認定市区町村の当該窓口に提出します。地域創造的起業補助金事務局の特設サイトでは、電子申請することも可能です。
詳しくは記事内「創業補助金の申請から交付までの流れ」をご覧ください。
創業補助金を受けるには、どのような条件がありますか?
対象となる経費は、交付決定日から事業期間終了までの間に発生した対象事業計画上の人件費・事業費ですが、対象経費であっても補助事業以外で使用した経費は補助の対象外となります。
詳しくは以下の記事で解説しています。