2006年に最低資本金制度が撤廃されて以来、資本金が1円であっても会社を設立することが可能になりました。その一方で、資本金は会社の運転資金であり、会社の社会的信用度にも関わる重要な事項のひとつです。
本記事では、資本金についての基礎情報や資本金額を決める際に知っておくべきポイントを解説します。資本金額をすでに決定している方も払込方法などを確認しておきましょう。
目次
- 資本金とは
- 会社設立における資本金の重要性
- 取引をする時の与信調査に使われる
- 銀行からの借り入れ限度額が決まる
- 資本金は会社の規模を表すことになる
- 資本金の決め方(設定)と注意点
- 3ヶ月から半年までの運転資金をベースに金額を決める
- 取引先からの見え方を考慮して金額を決める
- 消費税の納税義務が発生しない金額で決める
- 許認可を得るための最低資本金額で決める
- 他社の資本金設定額の平均をベースに金額を決める
- 資本金と税金の関係
- 消費税
- 法人税
- 地方税
- 登録免許税
- 会社設立時の資本金の払込み
- 発起人の銀行口座を用意する
- 通帳のコピーを作成する
- 払込証明書を作成する
- 資本金を増資・減資するメリットとデメリット
- 資本金を増資する
- 資本金を減資する
- まとめ
- 会社設立にかかるコストを削減する方法
- よくある質問
- 資本金とはなにか?
- 会社設立時の資本金額はいくらに設定するべき?
資本金とは
資本金とは、会社設立あるいは増資によって出資者から払い込まれたお金を指し、事業を円滑に進めるために株主が会社に出資した金額のことです。
創業当初においては、「会社の体力」として運転資金の基礎となり、銀行から借入しなくても事業を運営することが可能となります。
株式会社の場合、貸借対照表上で見ると、資本金は「資産の部」から借り入れなどの「負債の部」を除いた「純資産の部」の「株主資本」に含まれます。
負債とは異なり、誰にも返済する義務のない資金であることから、資本金の金額が大きければ大きいほど、会社に財務上の余力があるといえます。
出資者からの払込金が資本金となるので、たとえば、株式会社設立時に1株500円で1万株発行し、すべて払い込みがなされた場合、資本金は500万円(=500円×1万株)となります。
また、創業時と同時に第三者から出資を受けることは稀なため、創業者が用意した自己資金がそのまま資本金となるのが一般的です。
会社設立における資本金の重要性
会社設立における資本金の重要性として以下の項目が挙げられます。
会社設立における資本金の重要性
- 取引をする時の与信調査に使われる
- 銀行からの借り入れ限度額が決まる
- 資本金は会社の規模を表すことになる
取引をする時の与信調査に使われる
会社がはじめて取引を行う際には、与信調査が行われることがほとんどです。
しっかりと商品代金を支払ってくれる・商品を納めてくれるといった信用がなければ取引をしてもらえません。その信用があるかないかを判断する一つの指標として、資本金をチェックします。
想定される取引先・仕入先・競合相手の企業規模や資本金も調査して検討していくとよいです。
銀行からの借り入れ限度額が決まる
銀行から融資を受ける際にも、資本金額が重要になってきます。
一般的に、銀行から融資してもらえる額は資本金額と同等から2倍までが相場とされています。融資を得て創業直後から一気に事業を成長させたいと考えている場合は、ある程度の資本金が必要です。
また銀行の一般的な融資制度を利用する場合にも、売上高や未払い金額などの他にも資本金がチェックされます。あまりにも資本金が少ない場合には、融資自体が受けられないということも。
ちなみに創業や増資時など資本金にあてる目的での融資は受けることができません。資本金はあくまでも「出資金」であり、融資とはまったく異なるものなので注意が必要です。
資本金は会社の規模を表す指標になる
資本金は会社設立時の運転資金のため、「会社の体力」として見られる指標となります。つまり資本金が少ない会社には融資が集まりにくい性質があります。
資本金の多さは、会社の信用と大きく関わります。特に会社設立をしたばかりの企業は、資本金の額が外的な会社の信用や事業の規模を表す指標としてうつります。
資本金の決め方(設定)と注意点
1円からでも株式会社の設立は可能ですが、以下の項目を踏まえた資本金の決め方(設定)や注意点を理解する必要があります。
資本金の決め方
- 3ヶ月から半年までの運転資金をベースに金額を決める
- 取引先からの見え方を考慮して金額を決める
- 消費税の納税義務が発生しない金額で決める
- 許認可を得るための最低資本金額で決める
- 他社の資本金設定額の平均をベースに金額を決める
3ヶ月から半年までの運転資金をベースに金額を決める
会社設立当初は事業経営が軌道に乗らず、売上が発生しないケースが想定されます。
事業がうまく軌道に乗らないことを想定し、3ヶ月から半年間の会社運営に必要な運転資金を資本金にしておくとよいでしょう。
取引先からの見え方を考慮して金額を決める
資本金は会社の体力であり、信用でもありますので、取引先などがある場合にはそれなりの金額が必要な場合があります。
たとえば、個人事業主とは取引をしないと決めているような企業などは、資本金の額で取引先を選定する可能性があるということを考慮にいれておきましょう。
上記のようなことが起こりやすいのは対企業で取引を行うBtoBビジネスです。対照的にBtoCビジネスなど、取引先が少なく、個人との取引が多い場合などは資本金が少なくても問題が起きにくいといえるでしょう。
消費税の納税義務が発生しない金額を定める
会社設立をすると、消費税の免税を受けることができる場合があります。その条件として、資本金が1,000万円以下であることが必要になります。また消費税が、1,000万円を超えてしまうと初年度から課税されることになってしまいます。
1,000万円を超えてしまうと消費税の免税が受けられなくなるだけでなく、決算時の法人住民税が高額になるデメリットも存在します。
許認可を得るための最低資本金額で決める
許認可が必要な業種の中には、最低限必要な資本金の額が決まっている場合があります。たとえば、有料職業紹介事業(500万円)、一般労働者派遣事業(2,000万円)などが該当します。
他社の資本金設定額の平均をベースに金額を決める
日本は資本金が300万円〜3,000万円の企業が8割強の割合を占めているため、平均的な資本金の金額は1,000万円程度であるとされています。
平成28年に総務省統計局によって行われた「平成28年経済センサス」の調査結果によると、資本金の割合としては300万円以上~500万円未満の企業が34.6%でもっとも多く、1,000万円以上~3,000万円未満が33.0%、500万円以上~1,000万円未満が12.9%となっています。
資本金と税金の関係
税金は資本金の設定金額によって異なるため、資本金の設定金額により税金がどの程度抑えられるのか、税金の種類ごとに関係を確認する必要があります。
税金の種類は以下のとおりです。
税金の種類
- 消費税
- 法人税
- 地方税
- 登録免許税
法人にかかる税金についてより詳しく知りたい方は、別記事「法人にかかる税金の種類は?税率や計算方法を個人事業主と比較」をあわせてご確認ください。
消費税
消費税は資本金が1,000万円以上の場合に課税事業者として認定されるため、初年度から納税しなければなりません。
2年目については、前年度の期首から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円以下または給料の支払い合計額が1,000万円以上の場合に消費税が免除となります。
よって、1,000万円を境にした資本金額の設定と消費税については十分な検討が必要です。
法人税
法人税は、資本金が1億円以下であれば「中小企業」とみなされ、法人税率の一部軽減も認められるため、有利にビジネスを継続することが可能です。
2022年4月時点では、資本金1億円以下かつ年間所得800万円以下の企業にかかる法人税率は15%です。各資本金ごとの法人税率は国税庁のホームページをご確認ください。
地方税
地方税は、資本金額によって地方税率が調整される仕組みとなっており、資本金が少ない場合に軽減措置を受けることができます。
資本金額が1,000万円以下の会社であれば最低限の税負担で済むことから、1,000万円以上1億円以下であれば一定の軽減税率が適用されます。
よって、1,000万円を境にした資本金額の設定と地方税については十分な検討が必要です。
登録免許税
登録免許税は、会社設立の登録において必要な税金であり、資本金額によって納税する金額が変わるため、資本金額の設定と登録免許税については十分な検討が必要です。
また、株式会社か合同会社によって下限が変わるので、あわせて覚えておきましょう。
株式会社の登録免許税
-
【15万円】もしくは【資本金額 × 0.7%】のどちらか高いほうの額
資本金額が2,140万円以下の場合は、一律15万円
合同会社の登録免許税
-
【6万円】もしくは【資本金額 × 0.7%】のどちらか高いほうの額
資本金額が857万円以下の場合は、一律6万円
会社設立時の資本金の払込み
会社設立時の資本金の払込みには、いくつかの手続きがあります。
主な振込方法は以下の3つです。
- 銀行口座を用意する
- 通帳のコピーを作成する
- 払込証明書を作成する
それぞれの払込みについて、解説します。
発起人の銀行口座を用意する
まず、個人の銀行口座を用意する必要があります。会社設立時はまだ法人がないため、個人の銀行口座を用意します。
新しく用意する必要はなく、普段利用している銀行口座でもOKです。また、発起人が複数人いる場合は発起人総代の銀行口座でかまいません。
通帳のコピーを作成する
振込の際に注意すべきなのが、通帳のコピーを用意する必要があることです。
通帳の中でコピーすべきなのは、表紙の裏表(銀行名と支店名、銀行印が判別できる場所)と振込内容が記載されたページになります。
インターネットバンキングなどを通じて資本金を振り込む場合は、通帳に記載される内容(振込日・口座名義人・口座番号・取引銀行情報・振込金額・振込人名義)が記載されたページを印刷する必要があります。
払込証明書を作成する
払込証明書とは、発起人から会社に対する払込みがなされたことを証明する書類となります。払込証明書に必要な項目は以下のとおりです。
払込証明書に必要な項目
- 払込みの総額
- 払込みがあった株式数
- 1株あたりの払込金額
- 払込みがあった日付
- 会社の所在地
- 会社名
- 代表取締役の名前
払込総額と株式数に関しては定款に記載した内容と同じもの、1株あたりの払込額は総額を株式数で割ったものを利用します。
払込証明書には、会社の代表印の捺印が必要です。具体的には払込証明書の左上と代表取締役の名前の右横に押印する必要があります。
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自分で合同会社を設立するには?用意する書類から必要手続きまで解説
資本金を増資・減資するメリットとデメリット
資本金は会社の経費として利用することが可能です。資本金を増やすことで会社の資金調達ができるだけではなく、会社の信用度が上がり支援者が増える可能性もあります。
資本金の増資・減資におけるメリットとデメリットについて具体的に解説します。
資本金を増資する
資本金は、取引先として信用度を判断する材料の1つであり、増資をして資本金を増やすことで会社の信用度が増し、新規開拓しやすくなります。
しかし、中小企業向けの軽減税率が適用されなくなることもありますので注意が必要です。
資本金を減資する
減資をすることで、法人税や法人住民税の均等割額が減ることがある一方で、有償減資を実施すると会社の資産が減るというデメリットもあります。
会社の資産が減ることは取引先としての信用度が低下するため、取引先から不安に感じられ経営に影響を与える可能性があります。
まとめ
会社設立における資本金の設定は、取引する時の与信調査や銀行からの借入限度額が決まるなどとても重要です。
1円からでも株式会社の設立は可能ですが、資本金の設定金額により各種税金の納税額は変わるため、税金の種類ごとに資本金と税金の関係を確認する必要があります。
また、増資・減資をする場合は、経営に与えるさまざまな影響がありますので、メリット・デメリットを理解し資本金を設定しましょう。
会社設立にかかるコストを削減する方法
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よくある質問
資本金とはなにか?
資本金とは、会社設立あるいは増資によって出資者から払い込まれたお金を指し、事業を円滑に進めるために株主が会社に出資した金額のことをいいます。
詳しくは記事内「資本金とは」で解説しています。
会社設立時の資本金額はいくらに設定するべき?
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- 許認可を得るための最低資本金額で決める
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