個人事業主が法人化するには、個人事業の廃業手続きや会社設立の手続きが必要です。法人化は節税ができたり社会的な信用度が高まったりするなど、さまざまなメリットがあります。
そのため、売上・利益の増加や事業拡大に伴って、個人事業主が法人化するのはよい選択肢といえるでしょう。
本記事では、個人事業主が法人化するために必要な手続きや、法人化した後に必要な手続きを詳しく解説します。法人化にかかる費用や期間も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 個人事業主からの法人化(法人成り)とは
- 法人化(法人成り)のメリット
- 法人化(法人成り)のデメリット
- 法人化(法人成り)の最適なタイミング・判断基準
- 個人事業主が法人化するのに必要な手続きと流れ
- 1. 株式会社や合同会社など会社形態を決める
- 2. 会社の基本事項を決める
- 3. 会社用の印鑑を購入する
- 4. 定款を作成する
- 5. 株式会社の場合は定款の認証を受ける
- 6. 資本金の払い込みを行う
- 7. 登記申請を行う
- 法人化した後に必要な手続き
- 会社の銀行口座を開設する
- 個人事業主の廃業手続きを行う
- 個人事業の資産や負債の移行手続きを行う
- 個人から法人へ名義変更を行う
- 登記事項証明書や印鑑証明書を発行する
- 各機関へ法人設立届出書を提出する
- 労働保険への加入手続きを行う
- 社会保険への加入手続きを行う
- 法人化(法人成り)にかかる費用
- 法人化(法人成り)にかかる期間
- 個人事業主が法人化する際の注意点
- 個人事業廃業後の確定申告を忘れずに行う
- 個人事業廃業後は事業税の支払いが必要になる
- 法人化した後に個人事業主に戻ることは難しい
- まとめ
- freee会社設立なら、法人化の手続きをかんたん・あんしんに!
- よくある質問
個人事業主からの法人化(法人成り)とは
法人化(法人成り)とは、個人事業主として事業を行っていた人が、個人事業を廃業して会社設立を行い、事業を法人に引き継ぐことです。法人になると、所得税が法人税に変わったり、決算申告が必要になったりと、個人事業主とは異なる点が出てきます。
なお、法人化は法人成りと呼ばれ、これは個人事業主が形を変えて法人に成ると考えられていることが理由です。
法人化(法人成り)に関する詳しいメリットやデメリット、タイミングなどについては、別記事「法人化(法人成り)とは?メリットやデメリット、最適なタイミングについて徹底解説」をご確認ください。
法人化(法人成り)のメリット
法人化(法人成り)の主なメリットは、以下のとおりです。
法人化(法人成り)のメリット
- 税制上有利になるケースが多い
- 賠償範囲が有限責任となる
- 決算月を任意で決定できる
- 社会的な信用が高まる
- 経費として計上できる範囲が広がる
- 優秀な人材を確保しやすくなる
具体的な法人化のメリットについて詳しく知りたい方は、別記事「個人事業主が法人化するメリット・デメリットについて解説」をあわせてご確認ください。
法人化(法人成り)のデメリット
法人化(法人成り)の主なデメリットは以下のとおりです。
法人化(法人成り)のデメリット
- 法人化に伴う会社設立には費用がかかる
- 赤字の年度でも税金の支払い義務が生じる
- 社会保険に加入する必要がある
- 会計や事務手続きの負担が増える
- 交際費は全額損金にできない場合がある
具体的な法人化のデメリットについて詳しく知りたい方は、別記事「個人事業主が法人化するメリット・デメリットについて解説」をあわせてご確認ください。
法人化(法人成り)の最適なタイミング・判断基準
個人事業主が法人化(法人成り)する最適なタイミングとして挙げられるのは、以下3つです。
個人事業主が法人化(法人成り)する最適なタイミング
- 個人事業の所得が800万円を超えたとき
- 売上高が1,000万円を超えたとき
- 事業拡大や大幅な資金調達を検討しているとき
また、適切な法人成りのタイミングを見極めるには、税理士や司法書士などの専門家への相談も重要になるでしょう。各ポイントの詳しい解説は、別記事「法人化に適したタイミングとは?売上・利益・節税の3つの観点から解説」をあわせてご確認ください。
個人事業主が法人化するのに必要な手続きと流れ
個人事業主が法人化するにはさまざまな手続きが必要で、具体的な流れは以下のとおりです。
個人事業主が法人化するのに必要な手続きと流れ
- 株式会社や合同会社など会社形態を決める
- 会社の基本事項を決める
- 会社用の印鑑を購入する
- 定款を作成する
- 株式会社の場合は定款の認証を受ける
- 資本金の払い込みを行う
- 登記申請を行う
それぞれの内容について詳しく解説していきます。なお、会社設立の流れについては別記事「会社設立の流れを解説!株式会社の作り方や必要書類、手続きを紹介」でも紹介しているので、あわせてご確認ください。
1. 株式会社や合同会社など会社形態を決める
法人化するには、会社設立を行う必要があります。主な会社形態には株式会社・合同会社・合名会社・合資会社と複数の種類があり、法人化に伴ってまずはどの会社を設立するのか決めなければなりません。
この中でも一般的なのは、株式会社と合同会社です。
直近2024年5月のデータによると、新しく設立された会社が12,909社あるのに対し、株式会社が9,017社、合同会社が3,890社となっています。法人化する際は、各会社形態の特徴を押さえた上で、事業に合わせて選択して設立を決定しましょう。
出典:e-Stat「登記統計 商業・法人 2024年5月」
なお、会社形態について詳しい知りたい方は、別記事「新設できる会社は4種類!会社形態ごとの特徴を10項目で比較」をあわせてご確認ください。
2. 会社の基本事項を決める
まずは、会社の基本事項として以下の内容を決めます。
- 商号(会社名)
- 会社の目的と事業内容
- 本社所在地
- 株主や役員構成と報酬額
- 資本金額
- 決算日
商号(会社名)
商号は会社の名前となるもので、いくつかのルールが定められています。会社の商号として使用できる文字や符号は限られており、有名企業の名前や銀行など、一部の業種を指し示す商号をつけることはできません。
また、他社との区別がつき、商標権を侵害しない社名を選ぶ必要があります。会社設立後でも社名を変更は可能ですが、再度登記を行わなければいけないので注意しましょう。
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会社の目的と事業内容
法人化する際は、どのような事業活動を行うことを目的としているか、明確にする必要があります。これは設立後でも変更可能ですが、今後の事業展開のことも考慮して、過度に狭い範囲に限定しないようにするのがおすすめです。
また、事業内容は会社設立手続きに必須な定款(ていかん)に記載する項目でもあるので、できるだけ簡潔にまとめておくとスムーズに申請が行えます。
なお、事業目的が多すぎると何をしている会社であるのかが分かりにくくなるおそれがあるため、事業内容は10項目以下に抑えましょう。
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定款の事業目的はどう書く?業種別の具体例や書き方のポイント・注意点についてわかりやすく解説
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本店所在地
本店所在地は、登記簿における会社の本拠地のことで、特に制限もなく自由に決められます。起業当初の本店所在地には、自宅や賃貸事務所、レンタルオフィスなどを設定するケースが多く、申請後に本店移転登記をすれば変更することも可能です。
なお、定款で記載する場合は最小行政区画までで記載可能ですが、登記申請の際は具体的に、地番まで記載する必要があります。
また、本店所在地について詳しく知りたい方は、別記事「本店所在地はどこにする?会社設立時の法人登記で定める住所の決め方を解説」をあわせてご確認ください。
株主や役員構成と報酬額
株式会社設立時には、役員数や株主構成を決める必要があります。株式会社の設立には、最低1名の取締役と監査役を立てなければなりません。また、株主には法人や個人が存在します。
なお、議決権は株式数によって異なるため、株の所有状況は運営に重要であり、設立時に株主名簿を添付することが必要です。
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取締役とは何?主な役割や類似役員との違いなどをわかりやすく解説
役員報酬は従業員の給与とは異なり、経費として計上されません。そのため、新設会社における負担や税制面を考慮して、報酬額を検討する必要があります。これも会社設立の際に決定するべき事項のひとつです。
役員報酬について詳しく知りたい方は、別記事「役員報酬とは? 会社設立前に知っておくべきルールや金額の決め方を解説」をあわせてご確認ください。
資本金額
資本金は、会社設立時に必要な最低限の出資額です。株式数・株主の出資比率・信用度を示す要素のひとつとされており、金額は業種や事業内容によって異なります。
法律上、資本金1円でも会社設立はできますが、低額の資本金では社会的信用が低下し、事業を安定して運営し続けることが難しくなってしまうでしょう。そのため、初期費用と3ヶ月分の運転資金を合わせた金額は少なくとも確保しておくことが望ましいでしょう。
さらに、資本金1,000万円未満の会社は消費税の納税義務を最大2年免除できるメリットがあります。このような側面を考慮して、自社にとって有利な資本金を準備しましょう。
資本金の平均額について知りたい方は、別記事「中小企業の資本金の平均額はどのくらい?会社設立時の資本金の目安や決め方について解説」をあわせてご確認ください。
決算日
法人化すると、決算日を自由に決めることが可能になります。個人事業主の場合は決算日が決まっており、1月1日〜12月31日の事業期間を変更できません。
法人の決算日は、前述した消費税の免除期間を考慮すると、会社設立月の前月に設定することが最も有利となりおすすめです。これは、消費税が2年前の事業年度分から納税義務が生じる仕組みであることから、できるだけ1年目の事業年度を長く取ることで免除期間も長く取れるメリットが背景にあります。
しかし、決算日を会社の繁忙期と重ねてしまうと手続きが増えてしまい作業が逼迫してしまうため、税金面や経理面において最も都合のよい日に定めましょう。
3. 会社用の印鑑を購入する
法人化をするにあたって、会社用の印鑑を購入する必要があります。ここで用意するべき法人の印鑑は、以下のとおりです。
- 代表者印(実印)
- 銀行印
- 角印
- ゴム印
代表者印は法人化する際に最も重要な役割を果たす印鑑で、登記申請の際に必要になります。代表者印がなければ法人化手続きは行えないので、早めに用意しましょう。
また、銀行印は法人口座開設時に、角印は請求書や発注書などに用いる印鑑です。それぞれの印鑑の役割や選び方などについて詳しく知りたい方は、別記事「会社設立に必要な印鑑とそれぞれの役割」をあわせてご確認ください。
4. 定款を作成する
定款(ていかん)とは、会社設立時に作成される重要な法定文書です。定款には、会社の基本情報で決定した情報を主に記入します。
なお、定款の書き方に関して、法務局などによるフォーマットは用意されていません。freeeでは、定款の書き方がわかるサンプルと雛形を無料でご提供しています。雛形を利用すれば項目に漏れが発生することもないので、安心して作成が可能です。ぜひこちらからご活用ください。
なお、定款について詳しく知りたい方は、別記事「会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項などの要点を解説」をあわせてご確認ください。
5. 株式会社の場合は定款の認証を受ける
株式会社の場合、作成した定款は公証役場にて公証人からの認証を受ける必要があります。
公証役場の認証手続きは予約制で、本社所在地にある公証役場へ事前に連絡し、公証人と認証の日時を決めなければいけません。また、定款をFAXなどで公証役場に送ると事前に内容に不備がないか確認してもらえるので、はじめての法人化を株式会社で行う際には活用しましょう。
定款の認証手続きには、以下の書類や費用が必要です。
- 定款:3部
- 発起人全員の3ヶ月以内の印鑑登録証明書:各1通
- 発起人全員の実印
- 認証手数料:30,000〜50,000円(資本金額によって異なる)
- 謄本代:250円×定款の枚数(現金)
- 収入印紙:40,000円分
- 委任状(代理人が申請する場合)
なお、定款の認証が必要なのは株式会社・一般社団法人・一般財団法人のみで、合同会社などの会社形態では必要ありません。
定款は、紙だけでなくオンラインで作成する方法もあり、これを電子定款といいます。電子定款の場合は収入印紙代がかかりませんが、ソフトウェア購入などのコストが発生するため、どちらで作成するほうがお得か事前に確認しましょう。
電子定款について詳しく知りたい方は、別記事「電子定款とは?作成方法や認証手続きについてわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
6. 資本金の払い込みを行う
定款の認証が完了したら、資本金を代表者個人の口座に払い込みます。この段階では法人口座を開設できないため、振込先は発起人の個人口座に設定しましょう。払い込みは銀行振込が一般的であるため、手数料が発生することに注意してください。
また、支払いが終わったら、「通帳の表紙と1ページ目」と「資本金の振込内容が記載されたページ」のコピーが必要です。これらは登記申請の際に必要になるため、大切に保管しておきましょう。
7. 登記申請を行う
最後に、法務局で登記申請を行います。登記申請に必要な書類は設立する企業形態によって異なりますが、一般的な株式会社に必要な書類は10種類です。
登記申請に必要な書類
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 定款
- 発起人の決定書
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑証明書
- 資本金の払込みがあったことを証する書面
- 印鑑届出書
- 「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R
申請受付が終われば会社設立完了となり、申請が通ったという連絡は法務局から届きません。万が一登記申請の内容に不備があった場合は、法務局から連絡がくるため、見逃さないように注意してください。
なお、登記申請手続きは郵送や法務局の現地、オンラインの3種類の方法で行えます。会社設立日は、登記申請を行った日となる仕組みです。そのため、特定の日を会社設立日に設定したい場合は、登記申請日をその日にできるよう余裕をもって準備してください。
会社設立における必要書類について詳しく知りたい方は、別記事「会社設立に必要な書類は全部で10種類! 書き方や提出方法についてわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
法人化した後に必要な手続き
法人化した後にも、以下のような手続きが必要になります。
法人化した後に必要な手続き
- 会社の銀行口座を開設する
- 個人事業の廃業手続きを行う
- 個人事業の資産や負債の移行手続きを行う
- 個人から法人へ名義変更を行う
- 登記事項証明書と印鑑証明書を取得する
- 各機関へ法人設立届出書を提出する
- 労働保険への加入手続きを行う
- 社会保険への加入手続きを行う
会社の銀行口座を開設する
前述したように登記申請の時点では会社の銀行口座は開設できませんが、法人化が完了すると会社の銀行口座を開設できるようになります。売上の入金や仕入れの支払いなどに必要になるため、会社用の口座は早めに開設するようにしましょう。
なお、法人口座を開設するためには銀行の審査が必要です。法人口座を開設し個人の資産と明確に分けることで社会的信頼度が高まり、さまざまな取引をスムーズに行うことができます。
たとえば、金融機関からの融資を受けやすくなったり、個人と会社用の口座を分けて税務処理がスムーズになったりするなどのメリットがあるでしょう。
なお、法人口座開設については別記事「法人口座開設の方法まとめ!必要書類や金融機関の選び方を解説」にて詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
個人事業主の廃業手続きを行う
法人化すると個人事業主ではなくなるため、廃業手続きを行わなければいけません。個人事業の廃業届出書の提出は、廃業から1ヶ月以内に税務署にて行う必要があります。
また、個人事業主のときに青色申告を利用していた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を、従業員を雇っていた場合は「給与支払事務所等の廃止届出書」を、それぞれ提出することも覚えておきましょう。
ただし、個人事業主としての事業は残したまま、法人の設立も行うパターンも考えられます。個人事業主としての取引を維持したい場合や、複数のメンバーで会社を作りたい場合などは、個人事業主を継続しつつ法人設立を行うことも可能です。
個人事業の資産や負債の移行手続きを行う
法人化を行ったら、個人事業として所有していた資産や債務は、すべて法人へ移行しなければなりません。資産の移行は売買契約・現物出資・賃貸借契約の3種類の方法によって行えます。
また、債務の移行は重畳的債務引受・免責的債務引受の2種類の方法で手続きできます。さらに、廃業時点の所得を計算して、確定申告を行う必要もあります。廃業時の確定申告は廃業の翌日から3ヶ月以内に行う必要があるため、早めに行うようにしましょう。
ただしこれはあくまでも個人事業主として、事業を行うにあたって所有していた資産・債務が該当し、個人の貯蓄や私用の備品などには影響しません。また、車や機器などをリースしている場合も、移行ではなく法人としての契約のし直しが必要です。
なお、法人化した後の資産引き継ぎについては、別記事「法人成りするときの資産引継ぎはどうする?引き継げない資産や具体的な処理方法を解説」でも詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
個人から法人へ名義変更を行う
事務所や店舗、その他ツールなど、個人事業主の名義で契約しているものは、全て法人名義に変更しなければなりません。廃業した個人事業主の名義の契約が残っていると、不信感を抱かれてしまう恐れもあるため、法人化したらすぐに手続きを行いましょう。
登記事項証明書や印鑑証明書を発行する
登記事項証明書(登記簿謄本)と印鑑証明書は、法人設立を届け出る際に必要な書類です。法人設立の届出は法人設立から2ヶ月以内に提出する必要があるため、早めに取得して準備しましょう。
登記事項証明書は法務局や地方法務局の登記所窓口で、印鑑証明書は市区町村役場の戸籍課または印鑑登録担当窓口で、それぞれ取得可能です。
印鑑証明書の発行については、別記事「会社設立時に必要不可欠!印鑑証明書を発行してもらう方法と必要な枚数について」をあわせてご確認ください。
各機関へ法人設立届出書を提出する
法人設立後は、法人設立届出書を税務署・都道府県税事務所・市区町村役場に提出する必要があります。それぞれに提出する期間が定められており、法人設立届出書以外にも提出が必要な書類があるため、以下の表で確認しましょう。
機関 | 提出書類 | 提出期限 |
---|---|---|
税務署 | ・法人設立届出書 | 設立日から2ヶ月以内 |
・青色申告の承認申請書
※青色申告の承認を受ける場合のみ必要 | 設立日から3ヶ月以内 | |
・給与支払事務所等の開設届出書
※給与支払いがある場合のみ必要 | 1回目の給与支払日まで | |
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
※源泉所得税の納期の特例を受ける場合のみ必要 | 特例を受ける月の前月最終日まで | |
都道府県税事務所 | ・法人設立届出書 | 都道府県による |
市区町村役場 | ・法人設立届出書 | 市区町村による |
労働保険への加入手続きを行う
従業員を1人でも雇う場合は、労働保険への加入義務が発生します。労働保険に関する手続きは労働基準監督署とハローワークの2つの機関にて必要で、必要書類はそれぞれ以下のとおりです。
機関 | 保険の種類 | 必要書類 |
---|---|---|
労働基準監督署 | 労働保険 | 保険関係成立届 |
概算保険料申告書 | ||
ハローワーク | 雇用保険 | 適用事業所設置届 |
被保険者資格取得届 |
社会保険への加入手続きを行う
会社を設立したら、年金事務所で社会保険の加入手続きを行います。社会保険の種類は、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つです。加入手続きでは、以下の3つの書類提出が必要になります。
- 厚生年金保険新規適用届
- 厚生年金保険新規適用届
- 健康保険被扶養者(異動)届
なお、会社設立時の社会保険については、別記事「一人社長も会社設立時には社会保険加入が必須!必要な書類や手続きをわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
法人化(法人成り)にかかる費用
法人化にかかる費用は会社形態によって異なります。具体的にかかる費用は、株式会社と合同会社でそれぞれ以下表のとおりです。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
定款用収入印紙代 | 40,000円 (電子定款では不要) | 40,000円 (電子定款では不要) |
定款の謄本手数料 | 約2,000円 (250円/1ページ) | 0円 |
定款の認証手数料 (公証人に支払う手数料) |
資本金100万円未満:30,000円
資本金100万円以上300万円未満:40,000円 資本金300万円以上:50,000円 | 0円 |
登録免許税 | 150,000円 または 資本金額 × 0.7% どちらか高いほう | 60,000円 または 資本金額 × 0.7% どちらか高いほう |
合計 | 約222,000円〜 | 約100,000円〜 |
上記のほかにも、法人化後に発生する税金やオフィスの家賃、備品代などさまざまな場面で費用は発生します。そのため、株式会社における約22万2,000円、合同会社における約10万円だけではなく、余裕を持った費用を準備しておきましょう。
法人化の手続きは、登記申請を代行できる司法書士に任せるケースが多いです。司法書士への依頼には株式会社で7〜10万円、合同会社で6〜9万円ほどの報酬がかかるので、依頼する場合は設立費用に加えて用意しておきましょう。
なお、法人化にかかる費用については、別記事「法人化(法人成り)にかかる費用はいくら?維持費や節約方法についても解説」でも詳しく解説していますのであわせてご確認ください。
法人化(法人成り)にかかる期間
法人化にかかる期間は、株式会社で最短2〜3週間、合同会社で最短2週間ほどです。株式会社と合同会社で違いがあるのは、約1週間〜10日ほどの時間がかかる定款認証の有無が関係しています。
ただし、これはあくまでも会社設立に伴う手続きをスムーズに行った最短の期間であり、会社の基本情報がなかなか決まらなかったり、申請書類に不備があったりすると、法人化が完了するまで数ヶ月ほどかかるかもしれません。
会社設立にかかる期間については、別記事「会社設立にかかる期間はどれくらい?設立までの流れや期間について解説」をご確認ください。
個人事業主が法人化する際の注意点
個人事業主が法人化するには、以下の注意点があることを覚えておきましょう。
個人事業主が法人化する際の注意点
- 個人事業廃業後の確定申告を忘れずに行う
- 個人事業廃業後は事業税の支払いが必要になる
- 法人化した後に個人事業主に戻ることは難しい
個人事業廃業後の確定申告を忘れずに行う
個人事業の廃業手続きを行ったからといって、その年の確定申告が不要になるわけではありません。1月1日の事業年度開始日から廃業までの期間分は個人事業主として事業を行っていたことになるため、きちんと所得を計算して期限までの確定申告が必要です。
廃業した場合の確定申告は、廃業後から1ヶ月以内に行いましょう。
個人事業廃業後は事業税の支払いが必要になる
個人事業の廃業後は、廃業手続きを行ってから1ヶ月以内に個人事業税の申告が必要です。個人事業税の納税義務はすべての個人事業主にあるわけではなく、課税所得額が290万円を超えた場合に義務が生じます。
例として、東京都の場合は毎年8月末頃に個人事業税の納税に関する通知が届くので、確認した上で忘れずに納めましょう。
なお、個人事業税は確定申告の際に控除ができますが、廃業後は控除ができません。そのため、廃業することが決定したら、廃業手続きを行う前に、見込額で控除が受けられる特例を活用しておきましょう。
出典:東京都主税局「個人事業税」
出典:国税庁「租税公課」
なお、個人事業税について詳しく知りたい方は、別記事「個人事業税とは?業種によって異なる税率や税額の計算方法について解説」をあわせてご確認ください。
法人化した後に個人事業主に戻ることは難しい
法人化した後にもう一度個人事業主に戻るには、個人事業主から法人化する場合とは異なり、多くの手続きが必要になります。法人を個人事業主にするには、まず会社の廃業手続きを行わなければなりません。
また、廃業したことを株主などの利害関係者に報告するため、公告を打つ必要もあります。これらの手続きには、コストがかかるだけではなく期間や手間もかかり、大きな負担となってしまうでしょう。
まとめ
個人事業主が法人化するには、個人事業の廃業手続きを行い、会社設立を行う必要があります。法人化には多くの手続きが発生しますが、所得が多かったり事業拡大を目指したりしている個人事業主にとっては、節税や社会的な信用度などにおけるメリットがあるでしょう。
また、法人化した後にもさまざまな手続きが必要で、社会保険への加入や税務署・自治体への法人設立の届出などを行わなければなりません。法人化して自身の事業をスムーズに進めていくためにも、ぜひ本記事で紹介した内容を参考にしてみてください。
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よくある質問
個人事業主と法人化はどちらが得ですか?
個人事業主と法人は、それぞれメリットとデメリットが異なります。法人には社会的信用が高いことやさまざまな節税効果があるメリットがありますが、赤字でも税金の支払い義務が必要だったり会計や事務処理の手続きが複雑だったりするデメリットもあります。
詳しくは記事内「法人化(法人成り)のメリット」と「法人化(法人成り)のデメリット」をご覧ください。
個人事業主が法人化するべき年収はどれくらいですか?
個人事業主が法人化を検討する基準となる年収(所得)は、800万円です。所得が800万円を超えると所得税よりも法人税の方が税率が低くなるので、法人化した方が節税効果を得られます。
詳しくは記事内「法人化(法人成り)の最適なタイミング・判断基準」をご覧ください。
個人事業主が法人化するのにかかる費用はいくらですか?
法人化にかかる費用は、どの会社形態を選択するかによって異なります。たとえば、株式会社で法人化する場合の費用は約22万2,000円、合同会社で法人化する場合の費用は約10万円です。
詳しくは記事内「法人化(法人成り)にかかる費用」をご覧ください。