会社設立の基礎知識

本店所在地はどこにする?会社設立時の法人登記で定める住所の決め方を解説

監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ

本店所在地はどこにする?会社設立時の法人登記で定める住所の決め方を解説

会社を設立して法人登記するには、本店所在地を決定する必要があります。選択肢は多様で、自社ビルなど固有の事務所だけでなく、賃貸オフィス・レンタルオフィス・バーチャルオフィス・自宅なども選べます。

本記事では、本店所在地として法人登記できる場所について、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

会社設立の流れや具体的な手続きについて知りたい方は、別記事「会社設立の流れを徹底解説 | 株式会社を設立するメリットや注意点についてもまとめています」をあわせてご確認ください。

目次

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本店所在地とは

本店所在地とは会社の住所であり、会社設立時の定款で定めます。法人登記する際の必須項目であるため、どの会社も必ず定めなければなりません。

本店所在地と似た言葉に「本社」がありますが、複数の拠点に本社機能がある企業では、複数の本社を持つこともあります。一方で本店所在地は、1箇所しか定めることができません。

本店所在地に法的な制限はない

商業登記法上は制限が設けられていないため、どこでも本店所在地にすることが可能です。事務所使用が認められていない場所や郵便物を受け取れない場所を本店所在地にすることはできませんが、実際に営業する場所と異なっていても問題ありません。

そのため、下記のような場所を本店所在地にすることも可能です。

本店所在地として登録できる場所の例

  • 自宅
  • バーチャルオフィス
  • 賃貸オフィス
  • レンタルオフィス

テレワークニーズの高まりとともに注目されているコワーキングスペースやシェアオフィスなども、本店所在地として登録できます。

ただし事務所の要件に規定がある業種があったり、レンタル会社自体が法人登記を禁止している場合があったりするので事前に確認しておくことがおすすめです。

本店所在地の定款への記載方法

定款に本店所在地を記載する方法は「最小行政区画まで書く方法」と「地番まで書く方法」に分けられます。

最小行政区画とは、行政機関の権限が及ぶ範囲として細分化された地域のうち、最小の単位を指す言葉です。最小行政区画まで書く方法にしておけば「東京都町田市」「群馬県高崎市」など市区町村までを記載するため、その範囲内で移転する場合は定款を変更する必要がありません。

政令指定都市の場合でも「神奈川県横浜市」「愛知県名古屋市」までの記載で済みます。なお、東京23区の場合は、「東京都千代田区」「東京都新宿区」など区までの記載が必要です。

「東京都新宿区新宿12-12-12」など地番まで書く場合、同じ最小行政区画内で移転した場合であっても、定款の変更手続きが必要です。特に理由がなければ、最小行政区画まで書く方法を選択することをおすすめします。

自宅の住所を本店所在地とする場合

ここからは、本店所在地の種類ごとにメリット・デメリットや、向いている人を紹介します。

まずは、自宅の住所を本店所在地とする場合です。

自宅を本店所在地とする際のメリット

自宅を本店所在地とするメリットは、下記のとおりです。

自宅を本店所在地とするメリット

  • すぐに住所を用意でき、事業が始めやすい
  • 初期費用を抑えられる

今ある生活の場である自宅を本店所在地にすれば、オフィスを別途用意する必要がありません。書類さえ整えばいつでも法人登記でき、ビジネスを開始するまでの期間を短縮できます。

また、本店所在地用に別途物件を借りることがなく賃料などもかからないため、初期費用を抑えやすいのもメリットです。

自宅を本店所在地とする際のデメリット・注意点

自宅を本店所在地とするデメリットは、下記のとおりです。

自宅を本店所在地とするデメリット

  • プライバシーの面でリスクがある
  • 事務所利用不可の物件は使えない

本店所在地はWebサイトや登記簿に掲載されて誰でも閲覧できる状態になるため、自宅住所が広く知れ渡ってしまう恐れがあります。プライバシーを守りたいときは、自宅を本店所在地とすることは避けましょう。

また、賃貸だと「事務所としての利用不可」の場合もあります。会社設立を考える前から入居している物件に関しては、要項を確認し、記載がなければ貸主に確認を取りましょう。

自宅を本店所在地にするのが向いている人

オフィスや店舗を設けなくてよい業種および職種の人は、自宅を本店所在地にするのが向いています。

Web関連の仕事など、基本的な業務がオンラインで済ませられる場合は、オフィスや店舗を借りる必要はありません。その他の業種でも、コストを最小限に抑えながら営業するために、あえてオフィスを借りず自宅の設備とインターネット環境を使って仕事をする人もいます。

バーチャルオフィスの住所を本店所在地とする場合

バーチャルオフィスとは、実在のオフィススペースを借りなくても使える、仮想のオフィス空間のことです。

事業用の住所を貸し出すサービスを利用する手法であり、実際にその住所で仕事はできません。

ここでは、バーチャルオフィスを本店所在地とするメリット・デメリットを解説します。

【関連記事】
バーチャルオフィスとは? 起業時の法人登記と選び方についてわかりやすく解説

バーチャルオフィスを本店所在地とする際のメリット

バーチャルオフィスを本店所在地とするメリットは、下記のとおりです。

バーチャルオフィスを本店所在地とするメリット

  • 個人情報を守りながらオフィス賃料を抑えられる
  • 都心の住所を使用できる

バーチャルオフィスは広いオフィスを借りるときのような多額の初期費用がかからず、毎月の賃料も安めに抑えながら個人情報を守れます。

ほかにも、例えば東京都心の住所を使用するなど、住所のイメージをブランディングにも活用できます。

バーチャルオフィスを本店所在地とする際のデメリット

バーチャルオフィスを本店所在地とするデメリットは、下記のとおりです。

バーチャルオフィスを本店所在地とするデメリット

  • 必ずしも高い信用を得られるとは限らない
  • 郵便物の到着に時間がかかることもある

バーチャルオフィスでは、ひとつの住所を複数の企業が共有することがあります。住所を検索すると複数の企業がヒットし、自社の住所がバーチャルオフィスであると取引先や金融機関に伝わってしまうこともあるでしょう。その場合、不信感を抱かれることはないとは言い切れません。

また、本店所在地にバーチャルオフィスを登録すると、公的書類もバーチャルオフィスに届きます。バーチャルオフィスによっては郵便物を自宅などの希望の場所に転送してもらえますが、転送の頻度は週1回程度になるため、確認に時間がかかってしまうケースもあります。

バーチャルオフィスを本店所在地にするのが向いている人

バーチャルオフィスを本店所在地にするのが向いている人は、下記のとおりです。

バーチャルオフィスを本店所在地とするのに向いている人

  • プライバシーを守りたいけれどオフィスや店舗を持つ必要がない人
  • 最低限本店所在地だけ用意できればよい人

バーチャルオフィスを活用すれば自宅住所を登記簿に載せる必要がなく、プライバシーを守りやすくなります。特別な設備が必要なく、オフィス・店舗を持つ必要がない業態であれば、バーチャルオフィスで十分に仕事ができます。

また、副業として起業する人や、賃貸オフィスを借りるまでのつなぎに活用したい人など、最低限の本店所在地だけ用意できればよい人にも向いています。

賃貸オフィスの住所を本店所在地とする場合

賃貸オフィスとは、賃貸借契約書を締結して借りるオフィスのことです。初期費用が発生するほか、入居時や退去時の細かいルールが定められているなど煩雑な部分もありますが、立地や内装の自由度が高くなります。

ここでは、賃貸オフィスを本店所在地とするメリット・デメリットを解説します。

賃貸オフィスを本店所在地とする際のメリット

賃貸オフィスを本店所在地とするメリットは、下記のとおりです。

賃貸オフィスを本店所在地とするメリット

  • 取引先や金融機関から信用を得やすい
  • 事業規模に応じたオフィスを借りられる
  • 立地や内装の自由度が高い

賃貸オフィスを借りるには不動産会社の審査を通過する必要があります。法人を設立して間もない会社や、まとまった資金がない会社では、賃貸オフィスの審査を通過できません。そのため「賃貸オフィスを借りられている」という事実で取引先や金融機関からの信用を獲得できることもあります。

また、立地・内装・階層・広さなどをある程度自由に決められるのも大きなメリットです。事業規模や予算に合わせて利用するオフィスを変えていけば、コストも最適化できます。

賃貸オフィスを本店所在地とする際のデメリット・注意点

賃貸オフィスを本店所在地とするデメリットは、下記のとおりです。

賃貸オフィスを本店所在地とするデメリット

  • 希望すれば誰でも利用できるとは限らない
  • 初期費用もランニングコストもかかる
  • 物件探しに時間がかかる

賃貸オフィスの場合、審査に通過して借りる必要があるため、希望すれば誰でも利用できるとは限りません。敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用が高額になりやすいほか、バーチャルオフィスやレンタルオフィスと比較して毎月の賃料も高くなる傾向にあります。

理想通りの賃貸オフィスを見つけるには、時間も手間もかかります。法人登記を急ぎたい場合には、契約までの期間に注意しましょう。

賃貸オフィスを本店所在地にするのが向いている人

賃貸オフィスを本店所在地にするのが向いている人は、下記のとおりです。

賃貸オフィスを本店所在地にするのが向いている人

  • 取引先や金融機関からの信用度を高めたい人
  • オフィスの内装を好みに変えたい人

事業規模が大きくなり、取引先や金融機関からの信用を高めたい人にとって、賃貸オフィスは選択肢に入るでしょう。内装にこだわることで、取引先や顧客を招待した時に魅力的な企業である印象を与えられる可能性もあります。

レンタルオフィスの住所を本店所在地とする場合

レンタルオフィスとは、サービス利用契約や施設利用契約を締結して借りるオフィスのことです。オフィススペースを間借りして使うイメージに近く、ほとんどの場合賃貸オフィスより短期間で利用できます。

ここでは、レンタルオフィスを本店所在地とするメリット・デメリットを解説します。

レンタルオフィスを本店所在地とする際のメリット

レンタルオフィスを本店所在地とするメリットは、下記のとおりです。

レンタルオフィスを本店所在地とするメリット

  • 賃貸オフィスよりも費用を抑えられる
  • 最低限必要な設備がすでに整っている
  • 他の事業者とのつながりが生まれやすい

レンタルオフィスは賃貸オフィスより月々の賃料が安価に設定されやすく、ランニングコストを削減できます。デスクやプリンターなど最低限の什器・機材が用意されているレンタルオフィスでは、初期費用を抑えられるのもメリットです。

来客対応可能な会議室なども完備しているレンタルオフィスであれば、取引先の人を招くことも可能です。

また、共用スペースを他事業者とシェアする形態のレンタルオフィスであれば、他事業者とつながりが生まれる場合があります。何気ないコミュニケーションがビジネスチャンスに発展したり、情報交換できたりすることもあるでしょう。

レンタルオフィスを本店所在地とする際のデメリット・注意点

レンタルオフィスを本店所在地とするデメリットは、下記のとおりです。

レンタルオフィスを本店所在地とするデメリット

  • 会社の成長とともにスペースが足りなくなる可能性がある
  • オプション料金によっては高額になる

レンタルオフィスは専有スペースが小規模に作られていることが多く、会社の成長とともにスペースが足りなくなる場合があります。

場合によっては、新たなレンタルオフィスや賃貸オフィスを一から探さなくてはなりません。今後従業員が増える可能性があるときは、成長計画に合わせて契約期間を決めるなど工夫しましょう。

また、レンタルオフィスでは郵便物の管理や什器レンタルなどさまざまなオプションを活用できますが、内容次第では高額になる恐れもあります。

レンタルオフィスを本店所在地にするのが向いている人

レンタルオフィスを本店所在地にするのが向いている人は、下記のとおりです。

レンタルオフィスを本店所在地にするのが向いている人

  • 小規模で事業を始める人
  • 直近の規模拡充予定がない人
  • アクセスのよい場所にオフィスが欲しい人

直近で規模の拡充予定がなく、ある程度決められたスペースさえあればよい人にとっては、レンタルオフィスは適しています。

また、アクセスのよい場所にあるレンタルオフィスを契約すると、通勤や外回りの営業に便利です。外出が多い仕事である人も、レンタルオフィスを検討しましょう。

法人登記後に本店所在地の変更は可能

本店所在地は、法人登記完了後であっても変更できます。株式会社が本店所在地を変更する場合、下記の流れに沿って手続きします。

タ株式会社が本店所在地を変更する方法

  1. (定款の変更が必要な場合)株主総会で本店移転の議事録を作成する
  2. 取締役会で本店移転の場所・日程を決める
  3. 法務局に本店移転登記を提出する
  4. 税務署・年金事務所・労働基準監督署・健康保険組合などに届け出る

「3.法務局に本店移転登記を提出する」の段階で登記の変更手続きは完了しますが、本店所在地が変わった場合は所轄の税務署・年金事務所・労働基準監督署・健康保険組合などへの届け出も必要です。

登記の変更は法務局に足を運んで申請するほか、オンラインで完結させる方法もあります。同じ法務局の管轄内で変更する場合の費用は3万円、他の管轄へ変更する場合は6万円です。

【関連記事】
本店移転の手続き完全ガイド|失敗しないコツと申請方法を徹底解説

まとめ

本店所在地とは、会社設立時の法人登記にて必須となる住所です。自社ビルや賃貸オフィスのほか、バーチャルオフィス、レンタルオフィス、自宅などの選択肢があり、事業の状態や規模感等に合わせて選べます。。

それぞれのメリット・デメリットをよく理解して、自社に適した本店所在地を決めましょう。

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よくある質問

本店所在地とは何ですか?

本店所在地とは、会社設立時に決定する住所のことであり、法人登記する際の必須項目です。

本店所在地について詳しく知りたい人は、記事内「本店所在地とは」をご覧ください。

会社設立時の法人登記の住所(本店所在地)はどこにすればいいですか?

法人登記する住所(本店所在地)について、商業登記法上の制限はなく、実際に営業する場所と異なる場所を指定しても問題ありません。

法人登記の住所(本店所在地)について詳しく知りたい人は、記事内「本店所在地に法的な制限はない」をご覧ください。

監修 税理士・CFP® 宮川真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上に及ぶ。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表としてコンサルティング、税務対応を担当。また、事業会社の財務経理を担当し、複数企業の取締役・監査役にも従事。

税理士・CFP® 宮川真一

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