会社設立の基礎知識

資金調達とは? 企業の資金調達方法やメリット・デメリットを簡単に解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

資金調達とは? 企業の資金調達方法やメリット・デメリットを簡単に解説

資金調達とは、企業を経営するために必要な運転資金を集める行為です。

資金調達は企業設立時だけでなく、債務の支払いや従業員への給与支払いなど日常的な営業活動にも関わるため、資金調達の有無によって事業の成長度にも影響を及ぼします。

資金調達には、デットファイナンス(負債)・エクイティファイナンス(出資)・アセットファイナンス(資産売却)・助成金・補助金などの種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。本記事では、資金調達について詳しく解説します。

目次

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資金調達とは

資金調達とは、企業を経営する際に外部から必要な資金を調達する行為ことです。

資金調達は、企業の設立時以外にも、経営維持・新規事業の立ち上げや設備投資・企業買収などをしたい際にも必要とされます。

資金調達の必要性

資金調達は、企業が事業活動を行うために必要で、事業の存続や発展にも関わる重要な行為です。

企業を経営していくためには、債務の支払いやオフィスの賃料・光熱費・従業員への給与・広告宣伝費など、日々さまざまな支出が発生します。

また、商品やサービスを販売し収益が得られた場合には、現金以外の手形や小切手を使用した入金も発生します。一般的に入金と支払いの時期にはタイムラグが生じるため、その期間の事業活動を維持する運転資金として資金調達は欠かせません。

さらに、事業の拡大や設備投資をする際にも資金は必要です。十分な資金調達が実施されないと、企業の資金が減少し収支のバランスが崩れ、資金ショート(資金不足)のリスクが生じてしまいます。

資金不足によって社外への支払いが遅延すると、倒産の危機に陥るケースも発生します。

そのため、企業が健全に事業を行い、適切な事業拡大や設備投資を行うには、安定した資金調達が必要です。

資金調達の種類とそれぞれのメリット・デメリット

資金調達には、デットファイナンス(負債)・エクイティファイナンス(出資)・アセットファイナンス(資産売却)・補助金・助成金などいくつかの種類が存在します。

資金調達の種類

  • デットファイナンス(負債)
  • エクイティファイナンス(出資)
  • アセットファイナンス(資産売却)
  • 補助金・助成金

それぞれの資金調達の種類や特徴、メリット・デメリットについて詳しく紹介します。

デットファイナンス(負債)

デットファイナンスは、負債を増やして資金調達する方法です。代表的な手法には、金融機関・公的機関からの融資や社債の発行が挙げられます。買掛金や支払手形などの仕入債務を増やす手法も一般的です。

デットファイナンスのメリットは、資金の借り手が経営に介入しない、支払利息を損金に計上できる、レバレッジ効果がある点などが挙げられます。

レバレッジ効果とは、自己資本の利益率を高める効果をいいます。たとえば、自己資本金2,000万円の企業で設備投資にかけられるお金が1,500万円だった場合、1,000万円の借入をすれば2,500万円の設備投資が可能です。

1,500万円の設備投資で得られる利益が500万円で、2,500万円の設備投資で得られる利益が750万円だとすれば、借り入れにより、自己資本はそのままで利益を大きくできます。

デットファイナンスのデメリットには、担保や保証人が必要である点や、元本と利息を返済する義務がある点、支払いのためキャッシュ・フローが圧迫される点などが挙げられます。

返済期日までに支払いが滞ってしまうと倒産するリスクもあるため、自己資本と借り入れのバランスが重要です。

エクイティファイナンス(出資)

エクイティファイナンスは、自社に出資してくれる人や企業を募って投資をしてもらう方法です。

第三者割当による増資・エンジェル投資家・ベンチャーキャピタルからの調達・クラウドファンディングなどが挙げられます。

第三者割当増資

第三者割当増資は、新しい株式を第三者に発行して資金を調達する方法です。返済義務がなく、集まった資金で自己資本を強化できる点がメリットです。

ただし、株式を発行すると、株主に対しての配当金の支払義務が生じます。株主が増えると合併や買収のリスクが高まり、経営権を奪われる可能性があることにも注意が必要です。

エンジェル投資家

エンジェル投資家は、創業間もない新興企業やスタートアップ、起業前の企業に対して出資する投資家を指します。エンジェル投資家は、資金提供以外にも経験やネットワークを活用して事業の成長を支援し、企業は成長に応じて配当や株式を提供します。

近年では、起業を考えている人とエンジェル投資家をつなぐためのマッチングビジネスも主流です。

ベンチャーキャピタルからの資金調達

ベンチャーキャピタルは、機関投資家から資金を集めてファンドを立ち上げ、まだ上場していない企業に投資する企業をいいます。

ベンチャーキャピタルは、投資先の企業が新規株式を公開したり、他社に買収されたりするタイミングで株を売り利益を得ています。将来的に上場する可能性がある成長企業であれば、ベンチャーキャピタルからの資金調達を狙うことも可能です。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、企業がインターネット上で個人投資家から資金を集める資金調達の方法です。事業計画に賛同する出資者から、投資により資金調達が可能となります。

クラウドファンディングは、世の中に出ていないサービスや商品に対して出資するケースが多い傾向です。対象となるサービス・商品が世の中に出たときに、事前にファンを抱えた状態でビジネスをスタートできるというメリットも存在します。

アセットファイナンス(資産売却)

アセットファイナンスは、現在保有している資産を現金化して資金調達する方法です。使っていない資産を売却できれば、借入や増資よりもコストがかからず迅速に資金調達が可能です。

不動産などの固定資産以外にも、受取手形の裏書・売掛金の売却をするファクタリング・リースバックなどもアセットファイナンスにあたります。

リースバックとは、事業活動に必要な資産をリース企業に売却して資金調達する方法です。営業車や工場設備などをいったんリース企業へ売却し、リース企業から賃貸して事業を継続します。

アセットファイナンスは素早い資金調達だけではなく、企業の信用度に関係なく資金調達ができる点がメリットです。しかし、現金化する資産を保有していないと資金調達ができない・資産を持っていても価値がない場合は売却できないなどのデメリットがあります。

補助金・助成金

補助金・助成金を活用して資金調達をする方法も有効です。補助金・助成金は、国や地方自治体、民間団体などが設けており、一定の条件を満たし審査に通れば資金調達が可能です。

補助金・助成金を受け取る条件を満たしていれば、事前に準備した申請書や必要書類で申請できます。また、補助金・助成金は、業種や業態によって利用できる内容が異なります。

原則として、補助金・助成金は支給されても返済する必要はありません。支給される期間が限られている補助金・助成金もあるので、自治体や民間団体などの公式サイトを確認しましょう。

パターン別おすすめの資金調達方法

資金調達には、多種多様な方法が存在します。資金調達は、企業の規模や事業の成長具合によって適した方法が異なります。

企業の規模や経営状況などを把握し、最適な資金調達の方法を選択することが、経営において重要です。ここからは、パターン別におすすめの資金調達方法を紹介します。

起業する際の資金調達

これから事業を始める際の資金調達であれば、自己資金を集めたり、補助金・助成金を利用したりすることがおすすめです。

また、政府系金融機関への融資申請や、クラウドファンディングなども有効な選択肢になります。すでに、明確な商品やサービスがある場合や、事業計画が用意できているケースではクラウドファンディングを利用しましょう。

なお、起業して間もない頃は、将来性や信頼度が不透明なため、ベンチャーキャピタルや個人投資家からの出資を受けるのは難しい可能性があります。あらかじめ自己資金を集めておき、起業する業種によっては補助金・助成金を受給できる可能性があるため調べてみましょう。

たとえば、東京都には創業を予定している、または創業して数年以内の企業を対象とした中小企業振興公社の創業助成金が設けられています。

また、日本政策金融公庫が設けている新創業融資制度は新たに事業を始める企業や、起業して数年の企業に無担保・無保証人で融資をしてくれます。主な対象はスモールビジネスです。

非上場企業や中小企業の資金調達

非上場企業や中小企業が資金調達を行う場合には、金融機関からの融資が適しています。具体的には、日本政策金融公庫の融資・ベンチャーキャピタルや投資家からの出資・ビジネスローンなどが挙げられます。

日本政策金融公庫は、経済や産業の発展、国民生活の安定を目的としており、リスクのある資金調達ができない中小企業にとって便利です。

また、ビジネスローンの金利は高く設定されていますが、審査に通りやすいという特徴があります。少額の資金調達であれば、リスクを抑えながら利用できる点も魅力です。

株式上場やM&Aを視野に入れている場合は、ベンチャーキャピタルや個人投資家からの出資を検討しましょう。これにより、資金調達だけではなく、経営のアドバイスをもらえるなどのメリットが受けられます。

業績が悪化している際の法人企業の資金調達

経営難で資金調達を行いたいときには、アセットファイナンスや補助金・助成金の受給、政府系金融機関からの融資などが有効な選択肢です。業績が悪化していて赤字補填の資金調達と判断された場合は、民間金融機関からの融資を検討しましょう。

企業が保有している資産を売却すれば、業績に関係なく迅速に資金を調達できます。売掛金の売却を行うファクタリングを通じて、売掛金の現金化も可能です。

また、政府や自治体から受給できる補助金・助成金を利用する方法も有効です。企業の業績に関係なく、補助金・助成金の支給条件を満たせば受給できます。

さらに、社会的・経済的な要因により一時的に売上が減少している事業を対象とした、政府系金融機関からの融資も受けられる可能性があります。経営環境の変化に対応するための資金調達として有効な方法です。

M&Aの際の資金調達

M&A(企業買収)を目的として資金調達する際は、公募増資や金融機関からの融資など、多額の資金を調達しやすい方法が適切です。

公募増資は上場企業の場合、広範な株主への募集が可能であり、多くの資金を調達しやすい方法です。

また、金融機関からの融資には、日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金が挙げられます。これは、事業または株式の譲渡、合併などを目的とした融資でM&Aを実行するための資金調達に適しています。

ほかにもレバレッジド・バイアウト(LBO)を使って融資を受ける方法もおすすめです。

レバレッジド・バイアウトとは、譲受企業が譲渡する企業の資産や将来的なキャッシュ・フローを担保に資金調達する買収方法です。自己資金が少ない企業でもM&Aに必要な資金を調達できます。

資金調達時の注意点

資金調達にはデットファイナンスやエクイティファイナンスなど複数の方法があり、それにより資金を得られます。実際に資金調達を実施するときには、以下の点に注意しましょう。

資金調達の目的や金額をクリアにする

資金調達では、創業や設備投資、運転資金などの目的を明確にし、そのためにどれだけの資金が必要かを把握する点が重要です。

たとえば、新規店舗の資金を調達するなら、必要な不動産や設備の購入費用、内装・外装費などを算出するプロセスが求められます。

資金調達の目的や金額が明確でないと、資金の出資先や融資先が納得できる根拠を示せません。場合によっては、金融機関からの借り入れや増資が難しくなるため、注意しましょう。

キャッシュ・フローへの影響を把握する

資金調達、特にデットファイナンスを活用する際は、元本の返済や利息の支払いが生じます。キャッシュ・フローへ悪影響を及ぼさないように、現在のキャッシュ・フローの把握や将来的な予測が必要です。

たとえば、キャッシュ・フロー計算書は、営業活動・投資活動・財務活動に分けて分析ができます。資金発生を伴わない費用を含む損益計算書と異なり、現在のキャッシュ(現金や預金など)の流れを把握可能です。

また、資金繰り表を作成し、入金や支払いを定期的に確認するプロセスも重要です。

株主構成や議決権割合に配慮する

エクイティファイナンスでは新規株式を発行するため、発行した株式の分だけ、既存の株主の持ち分が薄まります。

たとえば、経営者が発行済株式1,000株をすべて保有しているならば、経営者の議決権割合は100%です。資金調達で3,000株を新たに発行すると、経営者の議決権割合は25%に低下し、新規株主の議決権割合は75%へ変化します。

新規株主の議決権割合が過半数を超えると、経営に影響が出るケースもあるため、注意が必要です。場合によっては、議決権の制限や譲渡制限のある種類株式の活用も検討しましょう。

出典:経済産業省「エクイティファイナンスに関する基礎知識」

まとめ

資金調達は、起業するときだけではなく企業が安定して継続した事業活動を行ううえで必要となる行為で、資金調達方法の確保は経営者にとって重要な業務です。

資金調達の方法は、負債を増やすデットファイナンス・出資を増やすエクイティファイナンス・資産を処分するアセットファイナンス・補助金・助成金などが挙げられます。

それぞれメリット・デメリットがあるため、自社の状況や目的に合わせたものを選びましょう。

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詳しくは記事内「資金調達の種類とそれぞれのメリット・デメリット」をご覧ください。

返済不要な資金調達方法とは?

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監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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