会社設立の基礎知識

会社設立時の資金調達方法は?立ち上げに必要な金額も紹介

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

会社設立時の資金調達方法は?立ち上げに必要な金額も紹介

会社設立時には、会社を運営していくための資金調達方法を検討しなければなりません。融資などを受けずに自己資金で賄うことができればベストですが、さまざまな選択肢があることも考慮に入れておきましょう。

資金調達の手段を多く持ち、創業時の経営にかかる負担を減らしていきましょう。本記事では、創業時の資金集めに関する情報をまとめます。

目次

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会社設立に必要な資金は平均1,027万円

日本政策金融公庫が、2022年4月~9月に融資した企業のうち、融資時点で開業後1年以内の企業(不動産賃貸業を除く)を対象に実施した新規開業実態調査によると、開業費用は平均1,027万円であることが分かりました。

ただし、多くは1,000万円程度の資金を必要としたわけではありません。中央値が550万円であることからも、実際に必要な資金は業種や規模、ビジネスモデルなどによって大きく異なることがわかります。

インターネットの発達により店舗や事務所なしに開業しやすくなったことや、会社法改正により1円の資本金でも会社設立が可能になったことで、必要資金は以前に比べて減少傾向にあります。

出典:日本政策金融公庫 総合研究所「『2023年度新規開業実態調査』~アンケート結果の概要~」

【関連記事】
1円株式会社の作り方は?資本金1円以外にかかる費用やメリット・デメリットについて解説

会社設立時の資金調達方法

会社設立時の資金調達方法には、次のものが挙げられます。

会社設立時の資金調達方法

  • 融資
  • 出資
  • クラウドファンディング
  • 国や自治体の助成金・補助金

各方法の特徴やメリット、利用時の注意点などを解説します。

融資

融資とは金融機関から資金を借りることで、創業時の資金調達方法としてもっともポピュラーです。融資にはさまざまありますが、創業時に活用されるものは主に以下です。

融資の種類

  • 日本政策金融公庫の「新創業融資制度」
  • 民間金融機関の法人向け融資
  • 制度融資

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」

創業時は会社としての信用が少ないことなどから、銀行から融資を受けることが難しいことがあります。公的創業融資は、創業時の人に限定して融資をしているため、そのような心配を最初からしなくてもよいメリットがあります。

そのような公的創業融資の中でも、新設会社に選ばれることが多いのが日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。日本政策金融公庫は、出資金の一部または全額を政府が出資する金融機関で、会社設立をサポートする融資制度を多く持っています。借り入れまでに1ヶ月ほどかかるため、必要な時期から逆算して、早めに申し込むようにしてください。

出典:日本政策金融公庫「政策金融機関の業務の概要」

【日本政策金融公庫の融資を利用するメリット・デメリット】


メリットデメリット
・無担保・無保証人で借りられる
・金利が低め
・借り入れまでに1ヶ月ほどかかる
・申込時に提出する書類の種類が多い

新創業融資制度のメリットとして、リスクの少なさと金利の低さの2つが挙げられます。基本的には、新創業融資制度は無担保かつ無保証人で借りることが可能です。また、日本政策金融公庫による融資制度は、民間金融機関と比べると金利が低めに設定されている点も特徴です。

融資を受けるためには、以下のものを用意する必要があります。

融資を受けるために必要なもの

  • 創業計画書
  • 資金繰り表
  • 履歴事項全部証明書

この3つ以外に、設備投資の融資の場合は見積書の提出を求められるなど、資金の用途によっても必要なものが変わります。詳しくは、日本政策金融公庫のホームページで確認してください。

民間金融機関の法人向け融資

民間金融機関の法人向け融資も検討できます。利用限度額の範囲内で何度でも借りられるカードローンや、不動産を担保に借りる不動産担保ローンなど、種類が豊富な点も民間金融機関の法人向け融資の特徴です。

ただし、無担保・無保証人で借りられるものは金利が高い傾向にあるため、高額を借りるときや返済期間が長引きそうなときは担保や保証人を検討するほうがよいかもしれません。

【民間金融機関の法人向け融資を利用するメリット・デメリット】


メリットデメリット
・融資までの時間が短く、即日に借りられるものもある
・無担保・無保証人で借りられる
・金利が高い傾向にある
・経営実績がない状態では借りられないことがある

制度融資

制度融資とは、民間金融機関と自治体、信用保証協会が連携して実施する融資制度です。実際に貸付を行うのは民間金融機関ですが、自治体や信用保証協会が保証料の一部を負担するため、直接民間金融機関から借りるよりも低金利で借りられることがあります。

また、創業時向けに提供している融資制度なら、事業の実績がない状態でも利用しやすい点もメリットです。ただし、借り入れまでに1ヶ月ほどかかること、日本政策金融公庫の融資と比べると借り入れ可能な金額が低めの傾向にあることには注意が必要です。

【制度融資を利用するメリット・デメリット】


メリットデメリット
・低金利で借りられる
・無担保・無保証人で借りられる
・借り入れまでに1ヶ月ほどかかる
・借り入れ可能な金額が低め

出資

創業時の資金調達方法として、出資も検討できます。創業者や社員による出資だけでなく、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家といった第三者による出資も視野に入れましょう。

創業者・社員による出資

創業者自身の資産を会社設立の資金として活用する方法もあります。融資とは異なり審査不要で利用できるだけでなく、返済も不要な点はメリットです。

また、社員が資本金を出資する従業員持株会を設立する方法もあります。会社の成長が社員の資産形成にもつながるため、社員のモチベーションアップも期待できます。

【創業者・社員による出資を利用するメリット・デメリット】


メリットデメリット
・利息が発生しない
・社員のモチベーションアップにつながる
・必要な資金が集まるとは限らない
・資産を失う可能性がある

ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家といった第三者による出資も検討できます。出資までのスピードが速い傾向にありますが、これらの第三者は、経営にも積極的に関わってくるケースが多くあります。

また、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家は事業の成長性に注目して出資可否を判断するため、事業内容やビジネスモデルに目新しさがないときや上場を期待しがたいときは出資を受けられる可能性が低くなります。

そして、出資を受けたとしても、出資者と良好な関係を築けなかったり、将来性がないと判断されたりした場合などには突然資金回収を受け、経営自体が危うくなるリスクがある点には注意しなくてはなりません。加えて、配当など間接的なコストが高額になりやすく、契約内容に十分気を配る必要もあります。

【ベンチャーキャピタル・エンジェル投資家を利用するメリット・デメリット】


メリットデメリット
・出資者の判断により短時間で出資を受けられることがある
・経営に関するアドバイスを得られる
・経営の自由度が下がる可能性がある
・成長性が低いと判断されると出資を受けられない

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、インターネットなどを通じて消費者を含む第三者から出資を呼びかける方法です。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家と同様、第三者による出資のひとつですが、経営の自由度を保ちながら出資を受けられる点が異なります。

目標とする金額を集めるには、大勢から共感を得られるようなストーリーや魅力的な商品などが欠かせません。また、クラウドファンディングは、出資者に対する見返り(リターン)も用意しなければなりません。たとえば、商品開発の資金をクラウドファンディングで集めるなら、開発した商品を返礼品として提供したり、販売によって得られた利益の一部を還元したりするなどが考えられます。

リターンを適切に行わなければ、表だってのバッシングや訴訟につながるリスクがあります。

【クラウドファンディングを利用するメリット・デメリット】


メリットデメリット
・経営の自由度を保てる
・大勢に出資を呼びかけられる
・目標金額を集められるとは限らない
・出資者へのリターンを用意しなければならない
出典:経済産業省「不特定多数の人から資金を調達「クラウドファンディング」」

国や自治体の助成金・補助金

融資による資金調達のほかに、助成金や補助金などを利用して資金調達する方法があります。返済が必要な融資とは違い、助成金や補助金は返済が不要です。

一般的に、助成金は要件を満たせば受けられるもの、補助金は予算上限に達すると申し込みが打ち切られるものを指します。助成金は厚生労働省の管轄、補助金は経済産業省の管轄になっていることも多いです。いずれも、要件を満たしてもその後審査があるため受けることができない可能性があるものと覚えておきましょう。

創業時に受けられる助成金や補助金には、経済産業省や厚生労働省が募集するものが多くあります。

経済産業省による助成金や補助金は、起業の促進や地域の活性化、女性の活躍に特化したものなどが挙げられます。厚生労働省によるものは、キャリアアップや人材登用、採用などに特化した助成金や補助金が多いです。

そのほか、地区町村などによる町おこしや地域の活性化を目的とした助成金や補助金もあります。会社を設立した地域などによって受けられる補助金や助成金の種類も異なるため、各自治体のホームページなどで確認してください。

助成金

創業時に活用できる助成金制度としては、次のものが挙げられます。

助成金制度

  • 地域中小企業応援ファンド
  • キャリアアップ助成金

地域中小企業応援ファンドとは、中小機構や地方自治体などが協力して実施している助成金制度です。主に地域の農林水産物や伝統技術を活用した商品開発や販路開拓などの取り組みに対して、資金が提供されます。

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に活用できる助成金制度です。一定の条件を満たす従業員の賃金の一部に相当する金額を受給できます。

【助成金を利用するメリット・デメリット】


メリットデメリット
・返済不要
・要件さえ満たせば受給できる
・実施期間が限られる
・申請前・後に提出する書類が多い
・資金調達までに時間がかかる
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「地域中小企業応援ファンド」
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金」

補助金

創業時に活用できる補助金制度としては、次のものが挙げられます。

補助金

  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金
  • IT導入補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

ものづくり補助金とは、サービスや試作品の開発に活用できる補助金制度です。交付後発注し、一定期間内に支払いを完了することが求められます。事前にスケジュールを確認し、利用可能か調べておきましょう。

事業再構築補助金は、業種や業態の変換、事業再編などに活用できる補助金制度です。補助金の種類によっては複数回申請できるため、追加費用が発生したときにも活用できます。

IT導入補助金とは、生産性向上の目的でIT化を図る際に活用できる補助金制度です。創業時のデジタル化導入にも活用できます。

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が販路開拓時に活用できる補助金制度です。商工会議所によって申請条件や補助金額などが異なるため、管轄の商工会議所に相談してみてください。

【補助金を利用するメリット・デメリット】


メリットデメリット
・返済不要・実施期間が限られる
・申請前・後に提出する書類が多い
・倍率が高い制度は、利用できる可能性が低い
・審査があるため、資金調達までに数ヶ月以上かかることもある

まとめ

創業時にはさまざまな資金の調達方法を利用できます。それぞれの資金調達方法にはメリット・デメリットのほか、使用用途が定められていたり、融資を受けるには条件があったりと細かい規定もあります。まずは自身がどういった使用用途で、どのくらいの資金が必要なのかを確認したうえで、適した資金調達方法を選択しましょう。

また、民間・公的金融機関の融資を活用して資金を調達した場合は、返済が必要です。無理なく返済できるように計画を立ててから申し込むことが大切です。

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よくある質問

会社立ち上げにはいくらの資金調達が必要?

会社設立時に必要な資金は、日本政策金融公庫の2023年度調査によれば平均1,027万円です。しかし、中央値が550万円であることから、1,000万円未満でも起業することは可能だと考えられます。

詳しくは記事内「会社立ち上げに必要な資金は平均1,027万円」をご覧ください。

起業時の資金調達方法にはどんな種類がある?

起業時の資金調達方法としては、融資や出資、助成金・補助金などを検討できます。一般的に活用される方法としては融資が挙げられますが、返済が必要なため、返済計画を綿密に立ててから利用するようにしてください。

詳しくは記事内「会社設立時の資金調達方法」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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