会社設立の基礎知識

商業・法人登記とは? 会社設立登記の必要書類や流れをわかりやすく解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

商業・法人登記とは? 会社設立登記の必要書類や流れをわかりやすく解説

新しい会社の設立時には、定款の作成や発起人の決定書の提出の手続きが必要ですが、その中でも特に重要なものが「商業・法人登記申請」です。

商業・法人登記申請は、設立時取締役などの調査が終了した日、もしくは発起人が定めた日のうち遅い日から2週間以内に法務局に提出しなければなりません。この申請を行わないと、思わぬペナルティを課される可能性があります。

本記事では、商業・法人登記の申請のタイミングや手順、申請をしなかった場合のペナルティなどを解説します。

目次

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商業・法人登記とは

商業・法人登記とは、法人にとって取引上の重要事項(商号や本店所在地、代表者氏名など)を法務局に登録し、一般に公開する制度です。 会社を設立する際には、法務局に商業・法人登記申請をすることが商業登記法によって定められています。法人登記の申請では、登記申請書などの必要書類で、拠点となる住所や事業目的などの記載が必要です。

会社設立時の登記の申請は、設立時取締役などの調査が終了した日、もしくは発起人が定めた日のうち遅い日から2週間以内に行わなければなりません。これを怠ると、取締役や発起人らに対して過料という行政罰を科され、最高で100万円の罰金を納めなければならない場合があります。

会社設立時に作成する定款に記載している事項に変更があった場合、変更登記に加えて定款変更の手続きも必要です。


出典:e-Gov法令検索「商業登記法」

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商業登記(会社登記)と法人登記の違い

商業登記(会社登記)と法人登記は、該当する法人形態がそれぞれ違います。それぞれの登記の対象となる法人形態は、以下のとおりです。

商業登記法人登記
・株式会社
・合同会社
・合資会社
・合名会社
・一般社団法人
・一般財団法人
・NPO法人
・宗教法人
・学校法人
・社会福祉法人 など
出典:法務省「登記-商業・法人登記-」

厳密にはこのように区別されていますが、「商業登記(会社登記)」を「法人登記」に含めて呼称するケースは多く、実務上では同じ意味で使われることも少なくありません。

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株式会社の定款を変更するときに必要な手続きとは?

登記の目的

商業・法人登記は、設立した法人の信頼性を高める目的があります。

たとえば、取引を検討している企業や融資を検討している金融機関などは、登記情報を通して会社の情報を詳細に知ることが可能です。詳細な情報を閲覧すれば、相手企業や金融機関も安心して取引や融資を実施できます。

登記のタイミング

商業・法人登記は次のタイミングで実施します。

  • 会社を含む法人を開設するとき
  • 登記内容に変更があったとき

会社を含む法人の開設時の登記は、資本金の払込みが終わってから実施します。本店所在地で取締役などの調査が終了した日、あるいは発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内の実施が必要です。 登記日が会社・法人設立日となります。

また、登記内容に変更があったときは、変更の事実から2週間以内に登記手続きをしてください。

登記手続きが既定の期間内に実施できなかったとしても、会社設立の要件を満たしているなら申請が受理されないことはありません。しかし、適切な期間内に手続きをしなかったことに対して代表者に100万円以下の罰金が請求される可能性があります。

発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役(中略)は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。

一 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
二 (以下略)

出典:e-Gov法令検索「会社法(平成十七年法律第八十六号)|第九百七十六条」

商業・法人登記をするまでの流れ

登記をするまでの流れは、商業登記・法人登記のいずれも同様です。具体的な流れは、以下の通りです。

商業・法人登記の流れ

  1. 会社の社名などの基本事項を考える
  2. 法人印を作成する
  3. 定款を作成し認証の手続きを行う
  4. 資本金を銀行口座へ払込む
  5. 登記申請書類の作成・法務局への申請を行う

なお、合同会社・合資会社・合名会社の持分会社では、公証役場で定款の認証は不要です。

1.会社の社名などの基本事項を考える

会社の設立を企画し、設立手続きを行う人を発起人といいます。まずは発起人が集まり、社名(商号)や会社の目的、本店所在地、資本金、会計年度などの基本事項を決めます。

これらの基本事項はいずれも定款に記載し、登記手続きを通して公開することになるため、慎重に決めましょう。

2.法人印を作成する

2015年より、法人設立登記をオンライン申請する場合には法人印が不要となりました。しかし、金融機関に融資を申し込むときや契約を締結するときなど、さまざまな場面で法人印が必要になると考えられます。社名決定後、速やかに法人印を作成しましょう。

法人印には、実印と銀行印、角印の3つの種類があります。銀行印は法人口座開設時、角印は請求書や納品書の作成時に必要となるため、3種まとめて作成することをおすすめします。

3.定款を作成し認証の手続きを行う

会社の基本事項と運営ルールをまとめた「定款」を作成します。株式会社の場合は、定款作成後、公証役場で公証人の認証を受けなければなりません。

定款の記載内容や提出書類などに不備がなければ、30分ほどあれば定款認証は完了します。しかし、不備がある可能性もあるため、余裕を持って申請手続きを始めるようにしてください。

【関連記事】
会社設立に必須の定款とは? 認証方法や記載事項について詳しく解説

4.資本金を銀行口座へ払い込む

資本金を発起人の口座に払い込みます。会社法では資本金の最低金額が決められていないため、法律上は、1円以上ならいくらでも問題ありません。

しかし、資本金が少なすぎると、事務所の賃貸契約や備品購入の資金が不足することが想定されます。少なくとも初期費用と数ヶ月分の運転資金程度は資本金として払い込みましょう。

5.登記申請書類の作成・法務局への申請を行う

資本金の払い込み後、登記申請手続きを実施します。必要書類を準備して、法務局に申請しましょう。

また、法人登記完了後、税金や社会保険の手続きも必要です。従業員を雇用する場合は、労災保険や雇用保険の手続きも速やかに行ってください。

商業・法人登記に必要な書類

商業・法人登記に必要な書類は、主に以下の10種類です。株式会社と合同会社、一般社団法人を例に、必要書類を比較します。


株式会社合同会社一般社団法人
登記申請書
登録免許税納付用台紙
定款
発起人の決定書
取締役の就任承諾書
代表取締役の就任承諾書
(代表社員)

(代表理事・監事)
設立時取締役の印鑑証明書
(代表社員)
資本金の払込みがあったことを証する書面
印鑑届出書
「登記すべき事項」を記載した書面または保存したCD-R

出典:法務局「商業・法人登記申請手続」

上記はあくまで一般的に必要な書類であるため、それぞれの法人形態によってはほかにも必要となる書類や、添付書類などが存在する場合があります。

各書類の詳しい内容を知りたい方は、別記事「会社設立に必要な書類は全部で10種類! 書き方や提出方法についてわかりやすく解説」をご覧ください。

株式会社の登記時に必要な書類

株式会社の登記申請に必要な書類は、以下の10種類です。

株式会社の登記時に必要な書類

  • 登記申請書
  • 登録免許税分の収入印紙を貼り付けた納付用台紙
  • 定款
  • 発起人の決定書
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 設立時代表取締役の就任承諾書
  • 設立時取締役の印鑑登録証明書
  • 資本金の払込があったことを証する書面
  • 印鑑届出書
  • 「登記すべき事項」を記載した書面または保存したCD-R

印鑑届出書には法人印と個人印の押印が必要です。そのため、登記申請に必要な書類を準備する前に会社の印鑑を作成しておきましょう。

登記申請は、不備がなければ10日ほどで登記完了となります。不備があった場合は申請した法務局から連絡がきますが、登記完了の連絡はありません。

【関連記事】
会社設立の手続きがわかる!株式会社の作り方を流れに沿って解説

合同会社の登記時に必要な書類

合同会社の登記申請に必要な書類は、以下の9種類です。

合同会社の登記時に必要な書類

  • 定款
  • 印鑑届出書
  • 代表社員の印鑑登録証明書
  • 払込証明書
  • 代表社員、本店所在地及び資本金決定書(定款に記載されていれば不要)
  • 代表社員就任承諾書
  • 登記用紙と同一の用紙(CD-Rも可)
  • 登録免許税納付用台紙
  • 合同会社設立登記申請書

用意した各書類は以下の順番で綴じ、まとめておきましょう。

登記時の書類をとじる順番

  1. 登記申請書(収入印紙貼り付け台紙とあわせた状態)
  2. 定款
  3. 代表社員、本店所在地及び資本金決定書
  4. 代表社員の就任承諾書
  5. 代表社員の印鑑登録証明書
  6. 払込証明書(通帳のコピーをあわせた状態)
登記書類の綴じ方

これらの書類を法務局の窓口に提出すれば登記申請の手続きは完了し、書類に不備がなければ、提出してから1週間前後で登記完了となります。このとき、法務局から連絡がくることはありません。

会社設立日は登記申請をした日になります。そのため、法務局が休みの土日祝は会社設立日にできません。会社設立日を自分で決めた日に合わせたい場合は当日に法務局に提出する必要があります。

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一般社団法人の登記時に必要な書類

一般社団法人の登記申請に必要な書類は、以下の10種類です。

一般社団法人の登記申請時に必要な書類

  • 定款
  • 委任状
  • 設立登記申請書
  • 登記事項を記録したCD-R
  • 設立時代表理事・理事・監事の就任承諾書
  • 印鑑証明書
  • 本人確認書類
  • 設立時代表理事選定書
  • 設立時社員の決議書
  • 印鑑届出書

一般社団法人の設立登記申請は、設立時理事の調査が終了した日もしくは、 設立時社員が定めた日の遅い日から2週間以内に行う必要があります。登記申請を行い設立が完了するまでの期間は、約1週間ほどです。

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一般社団法人の設立方法、費用と必要書類について詳しく解説!

商業・法人登記の申請方法

商業・法人登記の申請方法には、直接提出・郵送・インターネットの3種類があります。いずれの方法でも、申請内容を法務局が審査し、審査が通らなければ修正して再提出もしくは作り直さなければなりません。

書類の不備や申請方法の誤りがないように、事前に確認してから提出しましょう。

法務局で直接申請する

登記申請書を作成し、管轄の法務局に直接提出します。管轄の法務局は、法務局の「管轄のご案内」から調べることが可能です。法務局で申請するのであれば、申請書の不備の有無について職員に直接確認できます。不備があればその場で修正できるという点は、直接提出する最大のメリットです。

提出後に不備が見つかった場合は、法務局から連絡があります。法務局からの連絡に従い「登記申請補正書」に記入のうえ、再度申請書を提出します。

郵送で申請する

郵送での申請は、登記申請書を作成して、本店所在地のある自治体の法務局に送付します。記載事項は以下のとおりです。

法人登記申請書を送付する際の記載事項

  • 商号及び本店ならびに代表者の氏名及び住所
  • 代理人によって申請するときはその氏名及び住所
  • 登記の事由(どのような理由によって登記するかを簡潔に記載する)
  • 登記すべき事項(法令の規定により登記しなければならない具体的事項を記載する)
  • 登記すべき事項について官庁の許可を要するときは許可書の到達した年月日
  • 登記すべき事項が外国において生じた場合の登記の申請であればその通知書到達の年月日
  • 登録免許税の額及びこれについて課税標準の金額があるときはその金額
  • 申請の年月日
  • 登記所の表示

申請内容に不備があったときのために、連絡先となる電話番号も登記申請書に記載します。そのほかの注意事項は、法務局の「商業・法人登記申請手続」を参照してください。

郵送した書類に不備があると連絡がくるため、「登記申請補正書」に補正内容を記入して、再度郵送します。

Webで申請する

場所や時間を選ばずに申請できることが、Webで申請するメリットといえます。

Webからの申請は、法務局の登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと」を用います。その際、申請用総合ソフトが必要となるので事前にダウンロードしておきましょう。

商業・法人登記後に行うべきこと

商業・法人登記の書類提出後、法務局から不備などの連絡が来なければ、無事に設立完了です。商業・法人登記を終えたら、以下の手続きを行います。

商業・法人登記を終えたら行う手続き

  • 社会保険への加入
  • 法人設立届出書を公的機関に提出
  • 法人口座の開設
  • 法人名義のクレジットカードの申し込み

社会保険加入にあたっては、健康保険・厚生年金保険新規適用届のように、設立から5日以内に提出しなければいけない書類もあるため、登記申請と並行して準備しておく必要があります。

また、税務署や都道府県事務所などの各機関への法人設立届出書の提出も必要です。管轄の機関によって提出期限が異なるので、事前にHPなどを確認して準備しておきましょう。

法人登記後にすべきことについて詳しく知りたい方は、別記事「【会社設立後の手続き】法人登記で終わりじゃない!事業開始までにやるべきこととは? 」をご覧ください。

商業・法人登記の内容を変更する場合

商業・法人登記簿に記載された内容を変更する際には、変更登記の手続きが必要です。

具体的には、「役員が新たに就任する」「会社が移転する」「新規事業の立ち上げのために事業目的を追加する」などが発生した場合に、変更登記をしなくてはなりません。

変更登記には、登記申請書と株主総会議事録の2種類の書類が必要で、手続きは管轄の法務局にて申請する方法とオンラインにて申請する方法の2パターンがあります。

変更登記も登記申請と同様に、変更があってから2週間以内に手続きを行う必要があり、これを怠ると過料が課せられるおそれがあります。また、変更登記には登録免許税が課せられることにも注意が必要です。

変更登記について詳しく知りたい方は、別記事「変更登記とは?商業登記・法人登記の違いや手続きを解説」をご覧ください。

まとめ

商業・法人登記は、会社またはそのほか法人を設立する際に必要な手続きです。法人形態にもよりますが申請に必要な書類が多く、正しく用意して手続きを行わなければ不備があるとしてやり直しとなります。

申請方法には法務局で直接申請する方法・郵送で申請する方法・Webで申請する方法の3種類がありますが、オンラインで手軽に完結するWebによる申請がおすすめです。登記申請は提出しなければならない書類も多いため、不備のないよう十分に確認しながら準備を進めましょう。

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詳しくは記事内「商業・法人登記の申請方法」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

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