会社設立の基礎知識

定款の作り方とは? 起業時に作成する際の記載事項や注意点を解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

定款の作り方とは? 起業時に作成する際の記載事項や注意点を解説

定款(ていかん)とは、会社設立時に必ず作成し、会社の基本的な事項を記載する書類です。

事業の目的や商号、本店の所在地などの事項は定款に必ず記載しなければいけません。記載漏れがあると、定款そのものが無効になる場合があるので注意が必要です。会社を設立する際は、会社法の規定や定款の作り方のポイントを押さえておきましょう。

本記事では、定款の作り方や作成時の注意点について解説します。

目次

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定款は誰がいつ作成する?

株式会社や合同会社などを設立する場合、発起人や社員になろうとする人が定款を作成しなければなりません。定款は、設立時に会社の概要を伝える資料として用いるため、法人登記より前に作成します。

発起人や社員になろうとする人は、会社の目的・業務内容・資本金・取締役の選任方法など、定款に記載すべき事項を検討し、それらを明確に表記する必要があります。

出典:e-Gov法令検索「会社法第二十六条・第五百七十五条」

定款の記載事項には3種類ある

定款作成時に記載するべき内容は会社法によって定められています。定款に記載する項目は大きく分けて以下の3つです。

定款に記載する内容

  • 絶対的記載事項
  • 相対的記載事項
  • 任意的記載事項

各記載事項について詳しく解説していきます。

絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。

定款の絶対的記載事項

〈株式会社〉


  • 事業目的
  • 商号(会社名)
  • 本店の所在地
  • 資本金額(出資財産額)
  • 発起人の氏名・住所

〈合名会社・合資会社・合同会社〉


  • 事業目的
  • 商号(会社名)
  • 本店の所在地
  • 社員の氏名・住所
  • 社員が無限責任社員・有限責任社員のいずれであるか
  • 出資の目的・金額

絶対的記載事項は、ひとつでも記載されていないと定款そのものが無効となります。以下では、株式会社の定款に記載する絶対的記載事項について解説します。

出典:e-Gov法令検索「会社法第二十七条・第五百七十六条」

事業目的

事業目的とは、会社が行う事業の範囲を定めたものです。すぐに行う事業だけでなく、将来的なビジョンも含めて記載します。

事業目的の数に制限はありませんが、あまりにも多くの事業目的を記載していると、何をしている会社なのかがわかりにくくなり、社会的信用度に影響するおそれがあります。

また、事業目的は基本的に自由に決められますが、犯罪行為や公序良俗に反する内容の事業目的は認められません。

【関連記事】
定款の事業目的はどう書く? 業種別の具体例や書き方のポイント・注意点についてわかりやすく解説

商号(会社名)

商号とは、会社名(法人名)のことです。会社名として使用できる文字には一定のルールが設けられているので、事前の確認をおすすめします。たとえば、株式会社であれば商号に「株式会社」という文字を含めなければいけません。

また、有名企業の名前を連想させる社名を付けると、不正競争防止法により損害賠償を求められることもあるので注意が必要です。

【関連記事】
会社名の決め方とルールとは?26社の実例から学ぶネーミングアイデア集

本店の所在地

本店所在地は、会社を登記する際の住所です。事業実態がない場所や、賃貸契約によって商用利用が禁止されている住所は記載できません。本店所在地に指定する物件を契約する際は、貸主と契約内容をしっかりと確認しておきましょう。

住所の書き方は『◯丁目◯番地』など末尾まで記載する場合、ハイフンなどで省略せずに正式表記での記載が必要となります。

また、本店所在地は、最小行政区画(東京23区内なら区、郡なら町・村、それ以外は市)までの記載とすることも可能です。将来、同一区画内での移転や事業の発展にあわせて事務所を拡大する予定がある場合、最小行政区まで記載していると定款の変更手続きをせずに済みます。

近年では、登記住所にバーチャルオフィスの住所を利用する例も見られます。事業所を借りずに起業する人は、バーチャルオフィスの利用を検討しましょう。

【関連記事】
バーチャルオフィスとは?起業時の法人登記と選び方についてわかりやすく解説

資本金額(出資財産額)

会社設立後の資本金に相当する、会社を設立するうえでの出資額(設立に際して出資される財産)の総額を記載します。「◯◯万円以上」と、最低額の記載にしておくことも可能です。

会社法では、資本金の下限が規定されていないため、資本金1円でも会社を設立できます。ただし、資本金額が極端に少ないと社会的信用が得られにくく、創業融資の審査などに影響する可能性があります。

融資による資金調達を検討している場合は、その点を考慮し資本金額を設定しましょう。

【関連記事】
資本金とは?基本情報から会社設立時に必要な金額の設定方法までわかりやすく解説

発起人の氏名・住所

会社を設立するうえで必要となる発起人全員の氏名と住所を記載します。

発起人とは、資本金の出資や定款の作成など、会社設立の手続きを行う人のことを指し、複数の発起人がいる場合は発起人全員が対象となります。

【関連記事】
株式会社設立時の「発起人」とは?意味や役割について解説

相対的記載事項

相対的記載事項とは、法的には記載しなくても問題はないものの、定款に記載がないとその事項について効力が認められない事項です。

定款の相対的記載事項

  • 現物出資
  • 財産引受
  • 発起人の報酬・特別利益
  • 設立費用
  • 株主名簿管理人
  • 株券発行
  • 株主総会、取締役会及び監査役会の招集通知期間短縮
  • 取締役会の設置
  • 役員の任期の伸長 など

株券は、株式の保有を明らかにする有価証券です。株券を発行する旨を定款に明記しないと、株券不発行会社(株券を発行しない会社)となります。

会社法が定める役員の任期は、取締役は2年、監査役は4年です。しかし、非公開会社では定款に記載すれば最長10年まで伸長が可能です。株主総会を招集するには、通常2週間前までに通知を出す必要がありますが、定款に明記すると短縮できます。

また、以下の4項目は、会社の財産に大きな影響を及ぼす重要なものとして変態設立事項と呼ばれます。不正や発起人の間での不公平が起きる可能性があるため、定款で定める場合には原則として検査役による調査を受けなければいけません。


項目具体例
現物出資お金以外の出資(土地や車など)
財産引受設立成功を条件として会社が受け取る、または買う予定の財産
発起人の報酬・特別利益設立成功時の発起人に対する報酬・利益
設立費用設立後に会社が負担する例外的な設立費用

任意的記載事項

任意的記載事項は、絶対的記載事項と相対的記載事項に該当せず、かつ違法性のない内容を記載する項目です。

定款に記載しなくてもほかの文書などで明確にすれば効力を認められる点が、相対的記載事項とは異なります。

定款に記載した場合、内容を変更したいときは定款変更の手続きをしなくてはいけないため、あえて別の文書に記載しておくのもよいでしょう。

任意的記載事項の記載例としては、「役員報酬に関する事項」「株主総会の開催規定」「事業年度」「配当金に関する事項」などがあります。

定款の作り方

定款に記載する内容が決まったら、日本公証人連合会のサイトに掲載されているフォーマットなどを使って定款を作成します。以下で解説する作り方の注意事項に気をつけながら、実際に定款を作成していきましょう。

また、freee会社設立では、定款の書き方がわかるサンプルと定款の雛形が無料でダウンロードできます。初めての定款作成で不安な方はぜひご活用ください。

定款の条文の作成方法

定款に記載すべき事項(絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項)が確定したら、内容をまとめて定款の条文を作成します。

取締役会や監査役を設置しない株式会社であれば、一般的には以下の全6章の構成でまとめますが、会社の形態などによっては章が追加されることもあります。

第1章 総則:事業目的・本店所在地・公告の方法など会社の基本情報を記載
第2章 株式:発行可能株数などの株式に関する取り決めについて記載
第3章 株主総会:株主の招集方法や決議など株主総会の規定について記載
第4章 取締役及び代表取締役:取締役および代表取締役の規定について記載
第5章 計算:事業年度や決算などに関わる規定について記載
第6章 附則:会社設立に際して1~5章に書かれた内容以外の規定について記載

出典:日本公証人連合会「定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)」

定款のフォーマット

日本公証人連合会のサイトで公開されている定款のフォーマットのうち、中小企業の会社設立時に使えるフォーマットは以下の3つです。

定款のフォーマット

  • 小規模会社(取締役1名・監査役・会計参与非設置・株式非公開)
  • 中規模会社(取締役1名以上・取締役会非設置・監査役非設置会社・株式非公開)
  • 中規模会社(取締役3名以上・取締役会設置会社・監査役設置会社・株式非公開)

どのフォーマットを利用するかは、以下を参考に決めていきます。

出典:日本公証人連合会「定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)」

1. 公開会社か非公開会社か

公開会社と非公開会社の違いは、株式に譲渡制限があるかないかです。全株式について定款で譲渡制限している株式会社が非公開会社、それ以外の株式会社が公開会社です。

譲渡制限をつけていないと、共同創業者が辞めるなどした際に、経営にこれまで携わってこなかった第三者に株を売り、経営権が移行してしまう可能性があります。

このような経営リスクを避けるためにも、設立直後の段階では、譲渡制限を付与しておくのが安全です。

2. 取締役の人数

非公開会社では取締役が最低1名、公開会社では取締役が3名以上必要です。取締役の人数が1名、1名以上3名未満、3名以上で定款のフォーマットが変わります。

また、取締役の人数やそれぞれの任期も定款に記載が必要です。

3. 取締役会の設置の有無

公開会社では、取締役会を設置する必要があります。非公開会社には取締役会の設置義務はありません。取締役会を設置しない場合の意思決定機関は株主総会です。

設置した場合は、ある一定までの意思決定を取締役会だけで行うことができるので、経営のフットワークが軽くなるというメリットがあります。

4. 監査役の有無

取締役会を設置した場合は、監査役を設ける必要があります。取締役会がない場合に監査役を置くか否かは任意ですが、置かないのが一般的です。

定款を作る際の注意点

定款を作成する際の注意点は、主に以下の4つです。

定款を作成する際の注意点

  • 定款は正しい表記で記載する
  • 事業目的はわかりやすく記載する
  • 株式会社では作成した定款の認証が必要
  • 株式会社では公告方法も定款に記載することが多い

上記の注意点を押さえながら定款を作成することで、会社設立がスムーズに進み、将来的なトラブルを防ぐことができます。以下でそれぞれ詳しく解説します。

定款は正しい表記で記載する

定款を作成する際は、正しい表記で記載しましょう。

たとえば、定款の事業目的や内容を記載する際に、「または」や「および」といった接続詞を使うことがあります。

「または」は、複数の選択肢からいずれかひとつを選ぶことを意味し、「および」は、複数の事項をすべて含むことを意味するので、定款に記載した内容が本来意図した内容と異なる意味にならないように注意しましょう。

事業目的はわかりやすく記載する

定款には、会社が行う事業目的を明確に記載する必要があります。事業目的に記載されていない事業を行っても、会社法には罰則規定はありませんが、社会的信用を失うリスクがあります。

事業目的は第三者が理解しやすいようにわかりやすく書くことが重要です。専門用語や難解な表現を避け、具体的で明瞭な表現を心掛けましょう。

株式会社では作成した定款の認証が必要

定款の認証とは、定款の正当性を公証人に証明してもらう手続きです。

定款の認証を行い「会社設立時に発起人全員の同意のもとで作成した定款(原始定款)である」と公的に証明することで、定款の紛失や改ざん、社内紛争などのリスクを抑止できます。

定款の認証では以下のものが必要です。

定款の認証に必要なもの

  • 定款:3通
  • 発起人の印鑑証明書:全員分
  • 収入印紙(紙の場合):4万円分
  • 認証手数料:3万〜5万円
    ※資本金額や条件によって異なる
  • 定款の謄本交付手数料:1ページにつき250円
  • 委任状(代理人が定款の認証に出向く場合)

なお、定款の認証が必要な法人形態は「株式会社」「一般社団法人」「一般財団法人」で、持分会社である合同会社・合資会社・合名会社では定款の認証は不要です。

定款の認証手続きについて詳しく知りたい方は、別記事「定款の認証とは?認証に必要な書類や手続きの流れについて解説」をあわせてご確認ください。

株式会社では公告方法も定款に記載することが多い

公告とは、決算や合併の情報など会社の運営に関わる事項を開示することです。株式会社の場合、毎年決算公告を行うことが義務付けられています。

定款に定めることができる公告方法は、「官報に掲載する方法」「日刊新聞紙に掲載する方法」「電子公告」の3つです。公告方法に関する規定が定款にない場合は、官報に掲載して公告を行います。

公告方法は定款の絶対的記載事項ではありませんが、定款で定めることが一般的です。官報への掲載は費用がかかりますが、自社ホームページ上で公告する電子公告であれば経費削減につながります。

出典:e-Gov法令検索「会社法第四百四十条・第九百三十九条」

まとめ

会社の設立時には定款の作成が必要です。絶対的記載事項を必ず記載するとともに、相対的記載事項や任意的記載事項について記載する事項を検討したうえで定款を作成しましょう。

日本公証人連合会のサイトでは、定款のフォーマットが公開されています。定款の作り方に関するポイントも掲載されているので、作成方法に迷った場合は確認するようにしてください。

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定款のフォーマットについて詳しくは記事内「定款の作り方」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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