会社設立の基礎知識

外国人でも日本で会社設立できる?設立の条件や必要なもの、手続き、費用について解説

監修 司法書士 大﨑 麻美(おおさき あさみ)

外国人でも日本で会社設立できる?設立の条件や必要なもの、手続き、費用について解説

外国人が日本で会社設立をするには、一定の条件を満たす必要があります。それぞれの条件を詳しく知ったうえで正しく手続きを進めていくことで、スムーズに会社を設立できます。

本記事では、外国人が日本国内で会社を設立する際に求められる条件や必要書類、手続きの流れ、費用などについて解説します。特に、会社設立のために必要な手続きは順序立てて詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

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外国人でも日本で会社を設立できる?

日本人と同じように、外国人も日本で会社設立をすることはできます。ただし、会社設立は可能であるものの、設立した会社を経営したり事業を運営したりするには特定の在留資格が必要です。

まずは会社経営が行える在留資格の種類と、取得のための条件を解説します。

自由に会社設立(会社経営)ができる在留資格の種類

外国人による会社経営を認める在留資格(ビザ)には、居住資格と活動資格(経営・管理)の2種類があります。

居住資格とは、日本での身分・地位に対して与えられる資格です。居住資格には、日本での活動制限がありません。

よって、外国人が以下の在留資格を有している場合は、日本人と同じように好きな形態で会社を設立し、事業を営むことが認められます。

会社設立(会社経営)ができる在留資格

  • 日本人の配偶者等
  • 定住者
  • 永住者
  • 永住者の配偶者等

一方の活動資格とは、日本で行う活動に対して与えられる資格です。活動資格では一般的に「指定された活動のみ」が認められるため、日本での活動が制限されます。

「技術・人文知識・国際業務」「技能」「家族滞在」「留学」のいずれかの在留資格を有している外国人は、設立した会社を経営していくことができません。会社の設立後、経営を続けていくには、入国管理局にて在留資格を「経営・管理」に変更するための申請が必要です。

居住資格を取得できる条件

居住資格取得条件(日本で有する身分または地位)在留期間
日本人の配偶者等日本人の配偶者もしくは特別養子、日本人の子として出生した者5年、3年、1年または6ヶ月
定住者法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める者(第三国定住難民、中国残留邦人、日系3世など)5年、3年、1年、6ヶ月または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)
永住者法務大臣が永住を認める者(入管特例法の「特別永住者」を除く)無制限
永住者の配偶者等永住者などの配偶者、または永住者などの子として日本で出生し、その後引き続き国内に在留している者5年、3年、1年または6ヶ月
出典:出入国在留管理庁「入管法別表第二の上欄の在留資格(居住資格)」

活動資格(経営・管理ビザ)を取得するための条件

経営・管理ビザの活動資格を取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。

活動資格(経営・管理ビザ)を取得するための条件

  • 事業の継続性・安定性や経営能力がある
  • 事業所を確保している
  • 資本金か出資の総額が500万円以上または2名以上の常勤職員を雇用している
  • 営業許可や税関係の届出を済ませている

それぞれ詳しく解説します。

事業の継続性・安定性や経営能力がある

経営・管理ビザを取得するには、これから始める事業に継続性や安定性があり、かつ経営者本人に経営能力があると認められなければなりません。それらを確認するため、事業計画書の提出が求められます。

事業計画書の内容から、事業の継続性や安定性の有無が判断されます。「なぜこの事業を行いたいのか」「どのように事業を展開させていくのか」を明確にし、営業方法や組織体制、収支の見通しなどにおいて、説得力のある事業計画書を作成しましょう。

継続して活動できる事業所を確保している

日本国内に事業所を確保していることも、経営・管理ビザの取得に不可欠な要件です。バーチャルオフィスは「事業所としての実態がない」と見なされるので注意しましょう。

会社を設立するには、経営主体となる事業所が継続して一定の場所にあることが求められます。そのため、短期契約や月ごとに契約した物件は事業所として認められません。

また、「自宅兼事務所」も認められていないため、自宅とは明確に独立した事業所を確保し、賃貸借契約書などの使用目的には「事業用」と記載しておく必要があります。

資本金か出資の総額が500万円以上または2名以上の常勤職員を雇用している

経営・管理ビザを取得するにあたっては、資本金か出資の総額が500万円以上または2名以上の常勤職員を雇用していることが条件になります。

資本金か出資の条件を満たす場合は、「その資金をどのように用意したのか」の証明が必要です。自身が貯めた資金の場合は通帳のコピー、借り入れた資金の場合は金銭貸借契約書や返済計画書などの書類が欠かせません。

2名以上の常勤職員を雇用している場合は、資本金か出資の総額が500万円未満でも申請できます。

ただし、常勤職員は日本人または就労ビザ以外のビザを持っている外国人で、「日本人の配偶者等」「定住者」「永住者」「永住者の配偶者等」のいずれかの在留資格を有している人に限られます。

営業許可や税関係の届出を済ませている

許認可が必要な事業を行う場合、該当する許認可を取得していることも経営・管理ビザの取得条件です。たとえば、リサイクル店を経営するなら古物商認可の取得が必要になります。飲食店を経営するなら、食品営業許可をあらかじめ取得しなければなりません。

また、税務署に税金関係の届け出を済ませておく必要もあります。

外国人が会社設立をするのに必要な書類

株式会社を設立するのに必要な書類を次の表にまとめました。

特に外国人が注意しておきたいポイントは、印鑑証明書です。印鑑証明書のない外国人は代わりにサイン証明書が必要になるので、覚えておきましょう。


書類概要
登記申請書会社の基本事項を記載し、法務局に申請する書類です。「外国語で作成し日本語訳を付ける」という申請方法は認められないため、必ず日本語で作成しなければなりません。
登録免許納付用台紙登記手続きの際、法務局へ必要な免許税を納付するのに使用する書類です。
定款「会社の憲法」とも呼ばれている書類で、会社のルールや規則をまとめたものです。株式会社の場合、申請の前に公証人の認証を受けておく必要があります。
資本金払込証明書資本金の払込みがあったことを証明する書類です。通帳の「表紙」と「個人情報欄(1ページ目)」、「資本金の払込みが記載されているページ」をコピーして添付するのが一般的です。
就任承諾書会社の設立時代表取締役、設立時取締役、設立時監査役に就任する者が、就任について合意・承諾する旨を表明する書類です。
発起人・取締役の印鑑証明書市区町村の役所に登録された印鑑(実印)が本人のものであることを公的に証明する書類です。印鑑証明書を持たない外国人は、サイン証明書を用意する必要があります。サイン証明書は、日本にある本国の大使館や領事館などの在外公館で取得できます。
印鑑届出書会社の実印である代表者印を法務局に届け出るための書類です。
登記すべき事項を記載した書面もしくは登記すべき事項を保存したCD-R会社における登記すべき事項(商号、本店、資本金の額など)を残した書面・データです。登記すべき事項が少なければ、登記申請書に直接記載しても問題ありません。

設立する会社(合同会社と株式会社)による必要書類の違い

合同会社とは、「出資者=会社の経営者」となる会社形態です。出資したすべての社員が会社の決定権を持ち、出資者のなかで代表権を持つ社員を「代表社員」と呼びます。

したがって設立する会社が合同会社の場合、前述した必要書類のうち「資本金払込証明書」「就任承諾書」「印鑑証明書」は代表社員のものを用意する必要があります。

合同会社について詳しく知りたい方は、別記事「合同会社とは?特徴や設立するメリット・デメリットについて解説」をご確認ください。

外国人が国内で会社設立をするための手続きと流れ

外国人が実際に国内で会社設立をするために必要な手続きは、以下の通りです。

外国人が国内で会社設立をするための手続きと流れ

  • STEP1:基本的事項の決定や定款の作成を行う
  • STEP2:実印を作成する
  • STEP3:公証人による定款認証を行う
  • STEP4:資本金の払込みをする
  • STEP5:会社設立の登記申請をする
  • STEP6:諸官庁や機関へ届出をする
  • STEP7:事業に必要な許認可を取得する
  • STEP8:経営・管理ビザを保有していない場合は申請を行う

それぞれ順番に詳しく解説します。

STEP1:基本的事項の決定や定款の作成を行う

まずは基本的事項の決定や定款の作成を行います。会社設立をする業種や事業の目的、発起人を誰にするかを明確にします。

発起人とは、会社設立の際にお金を出す人(出資者)のことです。人数は一人でも複数でも構いません。会社の形態や商号、本店所在地、資本金の額などの基本的事項を決める重要な役割を担います。

発起人が決めた事項を踏まえて、定款を作成してください。freeeでは、定款の書き方サンプルとテンプレートを無料でダウンロードできます。ぜひご活用ください。

STEP2:実印を作成する

法務局に設立登記をする際には、会社の実印が必要になります。社名が決まったら実印を準備しましょう。

また、現在はオンラインで設立登記する場合に任意となっている印鑑届出書も、用意しておくのがおすすめです。銀行口座の開設や不動産購入時など、必要になる機会は多いといえます。

印鑑届出書では、実印の大きさに規定があるため注意が必要です。1辺の長さが1〜3cmの正方形に収まるものでなければなりません。

会社の実印は市販の印鑑とは異なり、専門の業者に依頼して作成します。重要な書類に押印する機会も多いため、管理には十分注意しましょう。会社を設立する際は、代表取締役印、角印、銀行印の3種類を作成するのが一般的です。

STEP3:公証人による定款認証を行う

作成した定款を公証人に認証してもらいます。定款認証は株式会社を設立する場合に必要で、合同会社を設立する際は不要です。なお、定款認証においては事前に公証人による内容チェックが必要な点にも留意してください。

定款認証を行う際は、以下が必要です。

定款認証に必要なもの

  • 定款を3通
  • 3ヶ月以内に発行された印鑑証明書を1通(発起人が複数いる場合は全員分)
  • 実印(印鑑証明書同様、発起人全員分)
  • 実質的支配者となるべき者の申告書
  • 実質的支配者となるべき者の本人確認書類

忘れずに用意しましょう。

STEP4:資本金の払込みをする

定款認証が完了したら、資本金の払込みをします。発起人の個人口座に資本金を振り込みますが、発起人が1人でなく複数いる場合は、発起人代表者の個人口座に振り込むのが一般的です。

支払いの完了後は、「通帳の表紙」「通帳の1ページ目(個人情報欄)」「資本金の払込みが記載されている欄」をコピーしておきましょう。資本金を証明する書類として次の登記申請の際に必要になるため、大切に保管してください。

STEP5:会社設立の登記申請をする

外国人が会社設立をするのに必要な書類」を揃えて、本店所在地を管轄する法務局に会社設立の登記申請をします。この登記によって、法律上会社は成立します。

不備がなければ、登記申請は10日ほどで完了です。登記完了の報告などはなく、不備があった場合にのみ連絡が届きます。

なお、登記申請は専門家報酬を支払って司法書士などに代行してもらうことも可能です。

STEP6:諸官庁や機関へ届出をする

登記を済ませたら、本店所在地を管轄する税務署に法人設立届出書を提出します。そのほか、届出が必要な書類や提出先を以下の表にまとめました。

主な届出提出する機関
法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所の開設届出書、 源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書税務署
法人設立届出書都道府県税事務所・市区町村役場
健康保険・厚生年金保険の新規適用届、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届、 健康保険の被扶養者届・国民年金第3号被保険者届年金事務所
労働保険関係成立届、労働保険概算保険料申告書労働基準監督署
雇用保険の適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届ハローワーク

STEP7:事業に必要な許認可を取得する

許認可が必要な事業を行う場合、このタイミングで許認可を取得します。必要にもかかわらず取得しないまま事業を開始すると、法令違反になってしまいます。

申請先は、保健所や都道府県庁など種類によってさまざまです。取得する許認可のWebサイトを調べ、正しく申請してください。

STEP8:経営・管理ビザを保有していない場合は申請を行う

会社経営が認められる在留資格を有していない場合は、経営・管理ビザの取得申請を行いましょう。会社が設立されていない段階で申請を行うと、出入国在留管理庁での審査時に「本当に会社の経営を行うのか?」と実現性に疑問を持たれ、承認されない可能性があります。

登記申請などの手続きを終えたタイミングで申請すると、経営・管理ビザを取得できる可能性が高くなります。

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会社設立にかかる費用一覧

以下の表は、会社設立にかかる費用を株式会社と合同会社に分けて整理したものです。

項目株式会社合同会社
定款用収入印紙代4万円
(電子定款では不要)
4万円
(電子定款では不要)
定款の謄本手数料約2,000円
(250円/1ページ)
0円
定款の認証料
(公証人に支払う手数料)
・資本金100万円未満:3万円
・資本金100万円以上300万円未満:4万円
・資本金300万円以上:5万円
0円
登録免許税15万円または資本金額×0.7%のどちらか高いほう6万円または資本金額×0.7%のどちらか高いほう
合計約22万2,000円~約10万円~

上表は設立の手続きにかかる費用です。これらに加えて、登記事項証明書代(600円/1通)や印鑑証明書代(450円/1通)、資本金や事業を開始できる環境を整えるための費用などを準備する必要があります。

日本人の場合は、資本金1円でも会社を設立できます。しかし外国人の場合は、2名以上の常勤社員を雇用できなければ500万円以上の資本金または出資金が必要です。

さらに、会社設立をするには法定費用として約25万円、司法書士などの専門家へ依頼する場合は報酬として10~15万円程度の費用が発生することも覚えておきましょう。

外国人が国内で会社設立をする際の注意点

外国人が国内で会社設立をする際は、資本金の払込みに注意が必要です。資本金の払込みは、日本の銀行法に規定されている銀行で行わなければなりません。

「発起人が日本にいない場合」や「発起人の銀行口座が国外の場合」はどのように対応すべきか、それぞれ詳しく解説します。

発起人が日本にいない場合は届出が必要

発起人全員が日本にいなくても、会社を設立することは可能です。しかし、その場合は外国為替及び外国貿易法に従って、日本銀行を経由して財務大臣と事業を管轄する大臣に対して会社設立の届出をする必要があります。

届出は基本的に登記申請後に行いますが、投資家の国籍や事業の内容によっては事前に届出をしなければならないケースもあります。事前届出が必要となると、会社設立のスケジュールにも影響します。

外国為替及び外国貿易法をしっかり確認し、専門家に相談するなどして備えておきましょう。

なお、外国為替及び外国貿易法とは、対外取引が自由に行われることを基本とし、対外取引の正常な発展、日本と国際社会の平和・安全の維持、日本経済の健全な発展に寄与することなどを目的として制定された法律です。

日本で輸出入を行う際は、この法律に則った取引を行わなければなりません。

複雑な内容も多いため、弁護士などの専門家に相談しながら行うと安心です。

発起人の銀行口座が国外の場合は協力者の国内口座を使う

発起人の銀行口座が国外にある場合は、発起人が日本の金融機関で口座を開設するか、協力者の国内口座を使うことで資本金の払込みが可能になります。

日本の金融機関で口座を開設するには、「仕事や留学のために日本に6ヶ月以上滞在していること」「住民票を取得していること」が条件です。この条件に該当する発起人がいれば、問題なく口座を開設できます。

もし条件を満たす発起人がいなければ協力者を探し、その協力者の口座に資本金を払込むことも可能とされています。外国にある内国銀行の海外支店での払込みも認められているので、あわせて検討してみましょう。

まとめ

外国人でも日本で会社を設立することは可能です。居住資格と活動資格(経営・管理ビザ)があれば、設立した会社を経営していくこともできます。会社設立する手続きの流れは、日本人が会社設立をする場合と基本的に同じと考えてよいでしょう。

ただし、印鑑証明書がない場合はサイン証明書を用意する、登記申請書は日本語で作成するなど、書類に不備がないよう進めていかなければなりません。自身で手続きを進めるのが難しい場合は専門家に依頼することも検討し、スムーズに手続きを進めましょう。

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詳しくは記事内の「会社設立にかかる費用一覧」をご覧ください。

監修 司法書士 大﨑 麻美(おおさき あさみ)

日系エアラインのCAを経て、33歳で司法書士資格を取得。2012年にあさみ司法書士事務所を設立、不動産登記、商業登記をメインとし司法書士として10年のキャリアを積む。2022年末より海外に移住し、法律・不動産専門のライターとして活動。

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